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太陽系の夜明け・移民の時代

太陽系の夜明け・移民の時代・士・第206章・早過ぎる進化の悲劇

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人類が宇宙に進出して1世紀

当初宇宙飛行士達の一部の子や孫に見られた

DNAの異常は人類が無重力状態を経験する事で

それまで重力下で世代を重ねる事で

失われ退化していた能力が

再び進化を始めた結果である事が判明

具体的には2種類のDNAへと進化を始めた

それまでのDNA2重螺旋構造から

メビウス型の2重螺旋構造のDNA2´

立体3重螺旋構造のDNA3へと

両者の違いは

DNA2´が知的精神的進化

IQが高く先進的な発明や的確な判断力

予知に近い先読みの能力そしてテレパシーを備え

軍の将校・政治家や科学者・教師・企業家など

社会のトップに立つ人材が多く輩出された

DNA3は超能力者スポーツ選手や警察

軍隊では下士官や兵士として

その能力をいかんなく発揮した

だがこの能力は生まれつき持っている物ではなく

環境によりある日突然目覚める事が多く

たとえ一卵性の双子でも

全く違う環境で育つと

片方は一生平々凡々な人生を歩み

もう片方はスーパーマンに様に進化する

どの国も能力を認められた者は

一か所に集められ英才教育を施された

しかしその様な環境を嫌い

自分の能力を隠し続け

平凡な人生を送る者達もいた

そんな中それまで予測だけで語られた

DNA3´やDNA4が現れた

彼らが現れるのはまだ50年以上先と思われていた

シークレットガバメントが極秘裏に進めた

宇宙計画は第一次世界大戦直後から始まり

人類が公式に宇宙空間に進出した1960年代より

半世紀も早く彼らが現れたのは必然だった

しかしその能力をコントロール出来る程

人類の精神面は向上しておらず

その有り余る能力を暴走させる者が後を絶たず

DNA2´とDNA3からなる制圧部隊エヌエーを作り対応した

その中には少数だがDNA3´やDNA4も含まれていた

次第に追い詰められたDNA3´やDNA4達は

地下組織ネヲを作り行動を始めた

太陽系を離脱して自分達だけのテリトリーを作る為に

目を付けたのは海王星圏移民船団

目的地は冥王星の彼方に存在する

準惑星帯の一つ

この準惑星は内部に巨大な空洞があり

移動用コロニーも入る事が出来る入り口があり

一旦内部に入り込み入り口をカモフラージュすれば

発見される恐れは無かったが

リーダであるハタは

この計画が失敗した場合の保険を掛けたくなった

DNA3´のリーダー・ハタ・イチローは双子の弟で

日本連邦政府科学技術庁・長官・ガド・ジローに協力を依頼して来た

二人はそれぞれ幼い時に別々の家に養子に出されていた

ジローの自室にイチローは二人のDNA4の能力者と共に現れた

一人は瞬間移動のテレポーターもう一人は

周囲に結界と言えるほどのバリアーを張り巡らす

二人は別室に下がり

イチローとジローの二人きりになる

『兄さんいきなり来てびっくりしたよ』

【驚かせてすまん

追われる身ではこうでもしないと

お前と話が出来ないからな】

『俺たちの本当の両親の墓の前で別れた時以来だね兄さん』

【まだ俺を兄と思って居てくれたか・・・】

しばしの間無言が続き

『今日危険を冒してまで会いに来たのは

再会を喜ぶ為でなく他に何か在るんだろう?』

【ああやはりお前に隠し事は出来ないな】

深呼吸をしてイチローは話し出す

【俺達DNA3´やDNA4は

DNA2やDNA2´DNA3から見れば

化け物にしか見えないかもしれないが

同じ人類として生きる道を探す為に

火星事変までは優秀な軍人としての地位が保たれていた

しかし平和な時代にになり

唯一の敵対勢力のゴースト艦隊での戦いは

ほとんどが艦隊決戦になり

俺達の出る幕はない

唯一情報部員として

一部が政府と軍に残るだけだ

ジローお前は情報部員の長として

今日まで残されたDNA3´やDNA4を

組織の一員としてよく守り抜いてくれた

感謝している・だが俺の下では

軍から放り出された奴らがいる

あいつらはもう希望が見えなくなり

暴れまくり次々に死んでゆく

おれはこの世界で生きる事は諦めた

あいつらと共に新天地を目指す】

『兄さんは軍のエリートとしての道を捨て

軍を放り出された彼らを受け入れ

彼らを社会に溶け込ませようとしたが

拒絶されついに政府や軍と戦い

多くの部下を失い

これ以上の犠牲を出す事を望まない事も分かる

何処に行くとも

どうやって行くとも聞かないが

それだけの大人数が移動するには

それなりの船や大量の物資が必要になる

いずれ俺の知る所となる』

【見逃せとは言わない

これから生まれてくる

DNA3´やDNA4を受け入れてくれる

社会を作ってくれ

頼むジロー】

この日の出会いが二人に取り最後のものとなった
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