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戦後編・選択の時代

戦後編・選択の時代・参・第116章・代理人

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第4次宇宙計画の資金調達の為に

連邦政府代表として

A大使を乗せた輸送機は

カリブ海上空に入る

操縦室の機長から

A大使に呼び出しが入る

急ぎ操縦室に入るA大使が見たのは

輸送機前方の光る球体

機長は

〔無線が入り

球体の誘導に従い着陸しろと

指示して来ました

如何しますかA大使?〕

『指示に従おう機長頼む』

A大使の真剣なまなざしに

機長は腹をすえて

〔分かりました〕と答えた

『ありがとう』

機長の肩を軽く叩き

A大使は座席に戻る

郵送機は

本来の飛行ルートを外れ

地図に無い筈の島に下りる

輸送機は密林でカモフラージュされた

格納庫に誘導される

A大使達はタラップを降りて

エスコート役の女性に誘導され

地下に張り巡らされた

チューブ型リニアに乗せられる

同行している技術者はA大使に

<これは日本のリニアより進んだ

上下4箇所で支える次世代型です>と伝えた

リニアは地下チューブを10分以上走り

目的地に到着した

<A大使ここは空港がある島とは

別の島の地下だと思われます>

同行している補佐官は

《これだけの設備を作れるとは

さすがビック3だけの事は在る》

だが嗜める様にA大使は

『判断するにはまだ早い

交渉のテーブルに付いてからだ』

案内された部屋に着くと

間もなく交渉相手が現れた

外交儀礼の挨拶が終わり

ビック3の代理人との

交渉が始まる

まずビック3の代理人が話し始める

「あなたがた国際連邦政府の宇宙計画への

資金提供に関して我がビック3は

条件付で同意します」

話を聞いていたA大使は

『条件とは?

詳しくお聞きしたい』

「たいした事は在りません

第2次世界大戦の戦勝国5カ国が常任理事国の権限で

国際連合の議会で決議した内容に対して

5カ国の同意なくしては認められなかった様に

国際連邦議会でも

第3次世界大戦の戦勝国による

常任理事国制度を作って頂きたいのです

勿論日本も常任理事国に加わる事は

お約束します

初めての事ではありません

難しい事とは思えませんが

どうでしょう?」

代理人の目を見ながら

A大使は答える

『この70年間国際連合は

常任理事国の対立に終始し

結果世界中で起きた戦争を

止める事も解決する事も出来ず

ついに常任理事国同士の戦争で国際連合は崩壊

戦争が齎した結果は

総人口の3分の1を失い

地球上の半数が汚染され

食料生産は激減

食料はあと5年で底を付く

国際連合の最大の失敗は

常任理事国制度にある

同じ失敗を繰り返すつもりは無い』

だが代理人はA大使に対し

「確かに常任理事国制度は失敗した

元々資本主義と共産主義の妥協で出来た組織が

水と油で長年対立した

だが今回は違う

イデオロギーによる対立は無い

それに何よりも食料生産を急ぐ上でも

強力なリーダーシップが要る

違いますかな?」

A大使は身をよりだし代理人に

『あなた方の狙いは今後も戦争をしたい

違いますか?』

言葉に詰まる代人に対しA大使は

『インドと南中国の対立は

今は表面上収まっていますが

常任理事国として強大な権力を持てば

対立が何時表面化してもおかしくない

そうなれば冷戦状態でも

武器が売れる

双方が大戦の再建復興の名目で

世界中に勢力を伸ばす為の

覇権争いを行なえば

米ソ冷戦時代と同じ様に

いずれ第三国で代理戦争が始まり

武器が売れ莫大な富が手に入る

だが戦争が全世界に広がり

第四次世界大戦に広がれば

地球上の文明は完全に滅び

経済も崩壊する』

代理人は薄笑顔を浮かべ

「経済が崩壊すれば

我々ビック3も終わりだ

そんな事を我々は望まない

戦争など望んではいない」

しかしA大使は納得せず話を続ける

『地上で戦争が起き戦争による

莫大な利益を火星開発に回し

地球上で人類が死滅しても

火星に新たな人類社会を作り

其処でも地球と同じ様に対立させ

戦争を起こし莫大な利益を上げる

やがて戦争が終り火星が統一された時に備え

地球を再建して火星と対立させ

果てしない星間戦争を行い

あなた方は永遠に戦争で

莫大な利益を上げたい

それが本音ですね?』

代理人は高笑いを上げ

『さすがはA大使噂以上の切れ者だ

だが食料増産の為には

我々の資金が要る

こちらの条件が入れられない場合は

いずれ食糧不足の末

戦争が起き今度こそ人類は滅びる

我々は確かに戦争で利益を上げたい

だからこそ人類を滅亡させたりはしない

どちらを取るかは君次第だ』
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