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退っ引きならない事情にて!

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「ちょっと待ちなよ!」
「まだ痛めつけてる途中なんだけどぉ!」
「勝手なことしないでください!」

あ、クソ!
ジャマ入った…

どうしよ、ガチムチたちが3人の言うコト聞いちゃったら;

「うるせぇな! 言うこと聞いてやってんだから黙ってろ」
「今度はお前らがアイツを押さえてろよ」
「ちょーっと楽しむだけだって」

ヤバいなぁ…
なんて思ったけどそんな心配いらなかったみたい。

怒鳴られた3人は悔しそうにしながらもしぶしぶチワワくんのほうに行って逃げないように押さえてる。

よし、これで…

「それじゃあ気持ちよくしてもらおうか」
「たっぷりとなぁ」
「いいよぉ」

コイツらをブッ潰せる。

「性癖変わるくらい嬲ってやるよっ!」
「なっ…ぐぁっ!」

素早く立ちあがって間合いを詰めたあと、容赦なく顎を蹴りあげた。
キレイに入ったその蹴りで、目の前のガチムチはあっさり撃沈。

「ごめんねぇ、しょっぱなからウソついちゃった♪」
「てめぇっ!」
「でも…お前らもウソついたからおあいこだよ、ねっ!」

今度は横腹を狙ってまわし蹴り!

「おわっ!」
「チッ」

でも避けられちゃった。

あーもう! 
やっぱ縛られてるとやりづらいな…

相手も最初と違って警戒してるし、なかなか決まらない。
早くブッ潰してチワワくんを安心させてあげたいのに。

「クソ…っ」
「ずいぶん手こずっとるみたいやなぁ」
「大丈夫か、揚羽っ!?」
「えっ」

もどかしくて悪態をついた瞬間、どこからか覚えのある声がした。
まさかと思って振りむくと──

「会長と…神!?」
「すごい格好でやっとんなぁ。すぐ解いたるわ」
「あ、ありがとうございます」

ふたりの登場に驚いてると、神がのんきな声を出しながら拘束を解いてくれた。
会長はそのあいだ、殴りかかってくるヤツらを倒してく。

拘束が解けるころにはガチムチ全員、屍になってた。

とりあえずソイツらは放置して、チワワくんを押さえてる3人のほうに向きなおる。

「その子、放してくんない?」

怒りのにじんだ声でそう言うと、3人は怯えたようにすぐチワワくんを放した。
チワワくんは元気よくコッチに走ってくる。

見たかんじ、ケガとかしてないみたいだね。
よかった…

「あの、帝様…これは…」

ホッと息をついてると、敬語のチワワくんが会長に焦ったように話しかけた。
でも会長は鋭い視線を投げて冷たくいい放つ。

「俺はお前らの言いぶんを聞いてやるつもりはない」
「…っ」

その言葉に顔を真っ青にしてうつむくけど、自業自得だ。
関係ないチワワくんまで巻きこんで、こんなコトしちゃったんだから。

「光、あとは頼む」
「了解。みんなー、コイツら連れてくぞー」
『はいっ!』

うわ、びっくりした!

神が声をかけたと思ったらゾロゾロとガタイのいいヤツらが出てきた。

どうなってんのコレ?

驚いてると、神が俺の頭をすこし乱暴に撫でてきた。

「わ、っ」
「アイツらは風紀委員や。…そんで俺は風紀委員長」
「風紀、委員長!?」

特別棟に入れるんだからソッチ関係だとは思ってたけど…
まさか委員長だなんて思わなかったんですけど!

「だからなんかあったら連絡してこやぁって言ったのになぁ」
「う゛…ごめんなさいι」

そんなコトすっかり頭から抜けおちてました。

「まぁ、ちょっと遅れてまったけど助けれてよかったわ。あの帝んとこの親衛隊員に礼言っとけよ? アイツから連絡なかったら、たぶんここに来ることすらできんかったからな」
「チワワくんが?」

なんでいたのかとは思ったけど、まさかそんなコトしてくれてたなんて…
ホント、ケガとかさせなくてよかったよ。

「じゃ、あとは俺らに任せといて」

そう言って、神は捕まえたヤツらを連れてった。
俺はソレを見おくりながら小さく息を吐く。

やっと終わった…

「大丈夫か? 揚羽」

体と精神的な疲れにボーっとしてると、会長に心配そうに声をかけられた。
頬も引っぱたかれてちょっと赤くなってるし、蹴られたりしたせいで制服もボロボロになってる。

コレは心配にもなりますよね;

「あー、ちょっと痛むけど大丈夫です。そんなヤワじゃないですから」
「そうか…」

俺は心配させないようにへらりと笑って答える。
そしたら会長は安心したように表情をゆるめたんだけど──

不意打ちのイケメンスマイル。

男前の笑顔って破壊力が高いよね。
みつくん、ちょっと赤くなっちゃったよ。

ソレが恥ずかしくて、赤くなったのを隠すように顔をそらす。

そしたら顔を強張らせてるチワワくんと目が合った。
その瞬間、チワワくんの瞳から涙がブワッて溢れる。

「チ、チワワくんっ!?」

俺はソレにビックリして、とっさにチワワくんのコトを抱きしめた。
抱きしめた体は恐怖からか小さく震えてた。

感じるのは罪悪感。

「ごめんね、チワワくん。怖い思いさせちゃったね…」

やさしく声をかけて、落ちつけるように背中をポンポン叩く。
そしたらチワワくんがなにかつぶいた。
けど、その声は小さすぎて俺の耳には届かない。

「ん? どうしたの?」

今度は聞きのがさないように顔を近づけてそう声をかけた。
そしたら──

「アンタは悪くないだろ!?」
「えっ」

涙を流しながらキツく睨まれた。
チワワくんは溢れた涙を乱暴に拭って言葉をつづける。

「見つかったのはボクの落ち度だし、人質はそんなことしたあいつらが卑怯なんだ! それになんだよ、いうこと聞いて大人しく殴られたりして! 恩でも売ろうっていうの?!」
「いや、そんなつもりは──「ボクだって男なんだからちょっとくらい殴られても平気だよ!」
「あ、えと、そうかもしれないけど──「大体、同じようなことしたボクを庇うってどれだけお人好しなんだよっ!」

チワワくんは怒りに任せてものすごいいきおいで畳みかけてくる。
すごい怒りようだからまだつづくかと思ったんだけど──

「でも……助けてくれて、ありがと…」

つぎに聞こえてきたのは感謝の言葉だった。

顔を伏せちゃったからどんな表情してるかわかんないけど、小さな耳が真っ赤に染まってる。

あーもう、可愛い! 
強気な子が素直になったときってめっちゃ可愛いですよねっ!

もうコレは抱きしめて可愛がるしかないよ!!

「チワワくん、可愛いっ」

俺は思いのままにチワワくんをギュッと包みこむように抱きしめなおした。

あぁ、この腕のなかにスッポリ収まるかんじも可愛い。

「ちょっ…く、苦しいよ! てかボクの話ししっかり聞いてた?!」
「うんうん、聞いてたよぉ。心配させちゃってごめんねぇ?」
「べ、別に心配なんか…って、あ、頭撫でるのやめてよっ」

チワワくんは顔を真っ赤にして噛みついてくる。

もう、なにコレ! 
可愛すぎるっ!

止めるなんてもったいないコトするワケないじゃん!!

そう心のなかで叫んでもっと構いたおそうと手をのばしたんだけど、ソレを遮るように咳払いが──

「……じゃれあうのはそのくらいにしてほしいんだが」
「み、帝会長!」
「あ…」

会長の存在忘れてた;

チワワくんもそうだったのか、あわてて俺から離れようとしてる。

無理やり引きとめても、ね。

そう思って逆らわずに腕から力を抜く。
でも、できるならもうちょっと堪能したかったなぁ。

「それで、ふたりとも怪我は?」
「ボクはありません…」
「俺はまぁ、それなりに;」
「なら手当をしよう、揚羽は俺についてこい。お前は教室に戻れ」

俺は返事をして言われたとおり会長についてく。
でも、数メートル歩いたトコでチワワくんに呼びとめられた。

なにかと思って振りむけば、後悔をにじませた顔をしてるチワワくんと目が合った。

「あのっ…あのときはごめんなさい! もう二度としないからっ!」

その言葉に俺は笑顔でうなづいて手を振った。

「今度会ったときはじっくり口説かせてねぇ~♪」
「…っ、絶対口説かれたりしないから!」

そう言うわりに顔は赤くて、その可愛い反応に笑みを浮かべながら俺は待っててくれた会長のもとへかけ出した。




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