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恋と友情とレモン味!
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しおりを挟む「なぁ、組みわけどうする?」
「2、2で別れるか?」
「組みわけかぁ…」
入口についた俺たちは組みわけをどうしよっか話すけど、ひなたちゃんが怖がってみんなで行きたいっていったからそのままみんなで入るコトになった。
ぶっちゃけ俺もみんなで行きたかったからスゴい助かったよぉ。
ひなたちゃん、ナイスです!
「よし、行くか!」
「…は~い」
あんま行きたくないなぁ~なんて思ってたんだけど、ちょっとワクワクした様子の不良くんに今さらイヤだなんていえなくて、ボロボロの門をくぐってなかへと足を進める。
日本家屋の玄関を目指して庭を歩いてくんだけど、その庭もいかにもいわくつきの廃屋ですって感じで、もっと凝ってるだろうなかのコトを思うとちょっと憂鬱になる。
あー…日本家屋風のお化け屋敷とかやめてよねぇ~。
家帰ったら思い出しそうじゃ~ん;
「玄関まで来たけど…たしか、なんか指示あったよな?」
「あ、うん。あるある~、ちょっと待ってねぇ」
不良くんに言われて、入り口で渡されたミッションの書かれた紙のコトを思い出して広げてみる。
このお化け屋敷はただまわるだけじゃなくて、ミッションをこなしながら出口を目指すヤツなんだよね。
俺としてはそんなんふっ飛ばしてまっすぐ出口まで行きたいんだけど…
まぁ、そんなんムリですよね!
「え~と、ミッションはぁ…『玄関の呼び鈴を鳴らす』だって」
うわ~、コレ絶対なんか起きるヤツじゃ~ん。
まぁ、起きても仕掛けだってわかるからいいけどさ。
「呼び鈴を鳴らす、な。わかった」
そう言ってうなづいた不良くんは、すぐになんの躊躇もなく玄関の呼び鈴を押した。
ちょっ、心の準備ぐらいさせてくださいよ不良くん!
呼び鈴は押した瞬間に古めかしいブーって音を鳴らして、すぐにシンと静まる。
鳴らしたからにはなにか起こるはず。
俺たちはそう考えて待ちかまえるけど、すこし経ってもなにも起きない。
「…コレ、なにも起きないやつかな?」
「そう、かもね…」
「なんだ、なにも起きないのか。だったらさっさとなかに入ろうぜ」
そう言って不良くんが玄関の戸に手をかけた瞬間。
──ガタガタガタッ!!──
玄関の戸がものすごい勢いで揺れて大きな音を立てた。
「──っ!!」
「ひゃぁああっ!!」
「うおっ、びっくりしたー」
「これすげぇうるさいな…」
油断したトコでいきなりきた仕掛けに、みんなビックリしてそれぞれ反応する。
いや、みんなじゃないな…
響介うるさいっていってるだけだもん。
くそぅ、平気な顔しやがってぇ!
「うぅ…」
「ひなた大丈夫か?」
「だ、大丈夫。でも…ちょっと手繋いでもいい、かな…?」
「あぁ、ほら」
「ありがと…」
…なんか響介がいい思いしててムカつくけど、ひなたちゃんの怖い気持ちがすこしでもなくなるならガマンするか。
「じゃあ、気を取りなおして開けるぞ」
「はぁーい」
そう言って不良くんがまた玄関の戸に手をかけるけど、今度はなにもなくすんなりと開いた。
「こ、今度はなにも起こらなかったね」
「なにも起こらなくてよかったね」
「うん…」
不良くんが玄関の戸を開けるとき、ひなたちゃん響介の手ぇギュッと握ってたもんね。
可愛かったけど、握るなら俺の手にして欲しかったなぁ~。
まぁ、今の状況じゃ俺は向いてないんだけどね;
「行くぞー」
「…はぁ~い」
不良くんに促されて、しぶしぶ玄関をとおり抜けて屋敷のなかを進んでく。
仕様なのか、床がギシギシと軋むのがすごい不気味でイヤな感じだ。
「部屋、いっぱいあるな」
「ちょっ!」
そんななか、不良くんがそうのんきに言いながら近くの部屋の障子を開けはなってくれやがって、おもわずひなたちゃんとふたりして声にならない悲鳴をあげる。
なかに変なのいたらどうすんだよーっ!
「ここは…居間か?」
「み、みたい、だね…」
「チッ、なにも起こんねぇな」
起こらなくていいですーっ!
なに言ってんだ不良くん。
ホントになにか起こったらどうしてくれるんだ!!
「よし、なんもねぇし行くか」
「はいはい、行きましょうねぇ~」
つまんなそうにつぶやく不良くんを恨みがましく見ながらそう返事をしてその後ろをついてく。
そのあとも不良くんは気まぐれに障子を開けたりして、俺とひなたちゃんの心臓をイジメたおしてくれた。
「ねぇ、不良くん。もう不用意に障子開けるのやめようよ…」
そんな暴挙に疲れた俺は不良くんにそう言ったんだけど、つぎの瞬間──
──ガタンッ! ベチャッ──
「…っ」
「ひ…っ!」
後ろの、とおりすぎた部屋から大きな物音がした。
ガタンはいいけどベチャってなんだよー!
俺とひなたちゃんがイヤな物音に固まってると、不良くんは喜々として物音が聞こえてきた部屋に近づいてく。
「お、なんだなんだー?」
「ちょっ、不良くん!」
「た、龍虎くん…待って…っ」
ひなたちゃんとふたりして不良くんをとめようとするけど、俺たちの制止なんてなんも効かなくて、問題の物音がした部屋の障子はあっさりと開けられちゃった。
そして開いた部屋のなかには案の定──
「ち、血がっ…ひ、人が…っ!」
「うわぁ~」
白装束を着た髪の長い女の人が血まみれで床に倒れこんでた。
見た目はちょっとエグいけど、明らかにスタッフさんだってわかるから怖くはないかなぁ。
けどひなたちゃんにはクリーンヒットしたみたいで、プルプル震えながら響介の腕にしがみついてる。
「うぅぅ~…」
「大丈夫か、ひなた?」
「だ、大丈夫だけど…もうすこしだけ、こうさせてて…」
「あぁ、わかった」
そう言って響介は怖がるひなたちゃんを腕にしがみつかせたまま、落ちつかせるようにやさしく背中を撫でた。
そのおかげで落ちついてきたのか、ひなたちゃんが響介に向かって小さくほほ笑んでる。
その様子は完璧にふたりの世界って感じで…
あれ?
コレ、見せつけられてる?
…よし、こうなったら俺も不良くんとイチャついてやる!
そうおもって不良くんに声をかけようとしたんだけど──
「こんなんで怖がるとか、ひなたは本当に怖がりだな」
不良くんのその一言で、空気が不穏なものにガラリと変わった。
お化け屋敷でいっちゃいけない言葉に入るソレは、ばっちり女の人の耳に入っちゃったみたいでピクリと体を反応させた。
「不良くん、それ今言っちゃダメなヤツっしょ…;」
他のふたりもそれに気づいたみたいで、なんとかしようとしてるけどもう遅い。
「ぅ゛、ぁ゛…ぁあ゛あ゛…」
血まみれの女の人は途切れとぎれにうなりながら血で汚れてる上半身を起こして、恨みのこもった目を俺たちに向けながらコッチまでゆっくりと這ってくる。
「ひっ……いやぁぁあああっ!!」
「チッ、逃げるぞ」
その恐怖に耐えられなかったひなたちゃんの悲鳴を合図に俺たちはいっせいに逃げるけど、もちろんあんなお言葉をいただいた女の人が許すわけもなくて、恐怖の鬼ごっこがはじまった。
「不良くんがあんなコト言うから~!」
「言っちまったもんはしょうがねぇだろ!」
そう不良くんと言いあってるうちにひなたちゃんを抱っこした響介は、不良くんがさっき開けた安全な部屋へ滑りこんで戸を閉めた。
「お前らは頑張れ」
さっさと恐怖の鬼ごっこから抜けた響介にちょっと恨めしく思うけど、ひなたちゃんのあんな怖がる様子を見ちゃったら文句なんかいえない。
てか、文句いってる場合じゃない。
「ちょっ、もう来たよ!」
「くっそ!」
後ろを見れば、血まみれの女の人が髪を振り乱して血をボタボタとたらしながら、鬼気迫る表情ですぐソコまで追ってきてた。
「こっち来い、揚羽!」
「うわっ…!」
すごい表情してる女の人に、コレどうしよう…なんて考えてたら、いきなり不良くんに腕を引っぱられてつき当りにあったトイレに押しこめられる。
ソレに動揺してるあいだに、不良くんがトイレの扉を開けられないようにカギを閉めた。
「これでよし」
「よかった…」
コレであの女の人が入ってくるコトはない。
そう一安心した瞬間──
──ドンドンドンッ!!──
トイレの扉がものスゴいいきおいで叩かれた。
オマケにうめき声とかも聞こえる。
ソレはものスゴく怖いけど、それより気になるコトがある。
「ふ、不良くん、狭くない?」
「うるさい、我慢しろ」
ひとり用の狭いトイレに男ふたりは完璧に容量オーバーだよね;
身体が密着してるし…
ふ、不良くんの足がちょっとヤバいトコに当たってるっていうか;
「ちょっ、不良くん! 足、動かさないで…ぁっ」
「っ…いきなり変な声出すな、揚羽!」
「だって不良くんが足動かすから!」
「わっ、わざとじゃねぇよ!」
「っ、だから動くなって…!」
もぅ、不良くんのバカー!
身体が密着してるせいで体温とか色々伝わってくるし、ヤバいトコはグリグリ刺激されるし…
このままじゃ反応しちゃうよぉ~;
「おい、なにやってんだお前ら」
お化け屋敷で反応しちゃうのは絶対ヤだ!
なんて考えてたら、外から響介の呆れた声が…
「宮部っ!?」
「響介!」
響介がココにいるってコトはもうあの女の人はいないってコトだよね!?
やばいコトになる前にさっさとココから出ないと!
俺はあわててトイレのカギを開けて外に出た。
不良くんも赤くなった顔を手のひらで隠しながらなかから出てくる。
普段だったら顔が赤いのとかからかったりするんだけど、はっきりいって今はそんな余裕ないっす。
「あ、危なかった…!」
「だ、だからわざとじゃねぇって!」
「そんなのわかってるよ!」
「落ちつけふたりとも。ひなたが疲れてきてるし、さっさとここから出るぞ」
「あぁ…」
「…わかったよ」
ひなたちゃんの具合が悪くなったら大変だからね。
大人しくさっさと出口を目指しますかぁ。
…そういえば、血まみれのあの人はいついなくなったんだろ?
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