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ファンクラブパニック!

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しっかり誤解もとけたし、このあとは運ばれてきたごはんを食べながら新しい隊員の紹介をしようって話しになったんだけど…
ソコに、授業中に流れたのと同じ音楽が流れはじめた。

「あれ? コレって…」
「揚羽君、耳塞いでっ!」
「え?」

なんで耳? って思ったけど、弥尋先輩のいきおいに押されて言われるまま耳を塞ぐ。
でもつぎの瞬間、なんであんなにも必死だったのかがわかった。

『キャーッ!』
『ウォーッ!』

…すっごい声;

「や、弥尋先輩。なんの騒ぎで──「まだ外しちゃ駄目! つぎ来るよっ!」
「え?! ヤバッ!」

波が去ったと思って手を外すけど、慌ててまた耳を塞ぐ。

くる!って思ったけど──

『生徒会より、生徒のみなさんにお知らせをします』

かすかに聞こえてきたのは副会長の声。
ソレにおもわず油断して耳から手を離しかける。

そしたらそこに──

『キャーッ!』
『恋様ーッ!』
『ウォーッ!』
『愛栄様ーッ!』

またみんなの叫び声が食堂にひびき渡った。

「あっぶなー」

危うく叫びの餌食になるトコだったけどギリギリのトコで大丈夫だった。

うわ~、心臓がすっごいバクバクしてる。
こんなスリリングなお昼ごはんははじめてだよ;

俺は耳を塞いだまま固まる。
そしたら弥尋先輩がやさしく肩を叩いてくれた。

「揚羽くん、もう大丈夫だよ」
「あ…ありがとうございます、弥尋先輩」

弥尋先輩の笑顔で疲れた心が癒される。

可愛い子の笑顔っていいね、うん。

『生徒会で──』
「えっ、まだ話してるよ?!」

ある意味魔法だよねぇ~。
なぁんて和んでたら、また副会長の声が聞こえてきた。

ちょっと待って! 
全然、大丈夫じゃないよっ!

慌てて耳を塞いで衝撃に備える。
けど──

「…あれ?」

いつまでたっても叫び声が聞こえない。

「だい、じょうぶ…?」

恐るおそる手を離す。
そしたらさっきまでのコトがウソみたいに食堂は静まりかえってて、不思議に思ってまわりを見わたすと、なぜかみんな固まっちゃってた。

まっ、まさか…
みんな叫び声聞いちゃったのかな?
だからこんなに──

「揚羽君…」
「あっ、はい」

いけない、いけない。
思考が暴走しちゃってた;

俺は弥尋先輩に呼ばれて慌てて返事をする。

なんだろ? 
やっぱり叫びの被害にあっちゃって、保健の先生を呼んでほしいとか?

心配になって様子をうかがおうと顔を覗きこむ。

うわぉ、表情まで固まってるよ;

「や、弥尋先輩、大丈夫で──ん?」
「……」

大丈夫かどうかたしかめるために目の前で手を振ろうとしたんだけど、その手をガシってつかまれちゃった。

「弥尋先輩?」
「い、今の放送って本当…?」
「放送? すみません、耳塞いでて聞いてなかったです; えと、どんな放送だったんですか?」

手を握って、うつむいたまま動かない弥尋先輩にやさしく聞いてみる。

反応してくれるかな?

「か…」
「か?」

お、反応してくれた!
でも、『か』って──

「会長補佐に就任したって本当なの?!」
「うぇっ?!」

なんなんだろうって思うより先に、弥尋先輩がものすごいいきおいで聞いてきた。

あまりのいきおいにビックリしちゃったよ;
さっきの『か』は、会長補佐の『か』だったんだね。

「揚羽君っ」

のんびりそんなコトを考えてたら、痺れを切らしたように弥尋先輩が俺の名前を呼んだ。

「あ、すみません。えと、本当です」
「本当?!」
「はい、先ほど会長補佐に就任しました」

必死に確認してくる弥尋先輩に、可愛いなぁ…なんて思っておもわずほほ笑む。
けど弥尋先輩は──

「あ、揚羽君…」

ツリ目気味の大きな目にうっすらと涙を浮かべてた。

「え、ちょっ…弥尋先輩、なに泣いてるんですか?!」
「っ…泣いてないよ! こ、これはちょっとコンタクトがずれただけでっ」

いや、絶対泣いてるでしょ?!

やっぱアレかな? 
強気な弥尋先輩のコトだから恥ずかしがって──

「あれ? 弥尋は視力1.0じゃなかったでしたっけ」
「…ぅ゛」
「ふ、副隊長さん;」

やっぱりウソだったか。

てか、副隊長さんってなに気にSだな。
サラっとバラしちゃったよ;

「泣いてないったら泣いてない! そんなことより…みんな、正気に戻って!」

弥尋先輩はグイっと乱暴に目元を拭うと、手を叩いて固まったままのみんなに声をかけた。

『あ、隊長…』
『す、すみません』
『あまりに驚いちゃったから…』

その声に、みんな正気に返る。

よかった~、固まったままだったらどうしようかと思ったよ。

「あの状況じゃしかたないから気にしないで。それよりも今後のことを──」

みんなが正気に返ったのを確認すると、弥尋先輩はみんなをまとめて話を進めてってる。

「揚羽君っ」
「あっ、はい! なんでしょう?」

さすが親衛隊長さん、頼りになるねぇ~。
なんて心のなかでうなづいてると、弥尋先輩に覗きこまれちゃった。

すみません、まったく話を聞いてませんでした;

「就任お祝いパーティーをしましょう!」
「え?」

弥尋先輩はそう言いながらすっごいキラキラした目で見つめてくる

『いいですね、それ!』
『あっ、会場はどこにしますか?』
『やっぱりプレゼントとか──』

隊員のみんなも同じように目をキラキラさせてお祝いパーティーのコトを話しはじめた。

あぁもう、みんな可愛いなぁ~。

「皆さん落ち着いてください」

はしゃぐみんなを眺めてほほ笑ましく思ってると、副隊長さんがみんなに声をかけてソレを止めた。

「先走りすぎです。まだ揚羽君からいいと言われた訳ではないでしょう?」
「あ…予定も聞かずにごめん、揚羽君…」

副隊長さんに言われて落ちついたのか、弥尋先輩がすまなさそうにコッチを見てくる。

「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください」
「ありがと…‥それで、あの、今更だけど…夜って空いてるかな?」
「はい、空いてますよ」
「じゃあ…」
「パーティー、楽しみにしてます」

俺は素直に期待の眼差しを向けてくる弥尋先輩をほほ笑ましく思いながら即答した。
そしたらつぎの瞬間、待ってましたとでもいうように隊員のみんながまたはしゃぎだした。

『やった!』
『楽しみですっ!』
『ねぇねぇ、さっきのつづきだけど…』
『やっぱり食堂の奥を借りきってかな?』

みんなの頭のなかはもうパーティー一色みたい。

「さ、騒がしくてごめんね? 揚羽君…」

浮き足立つ隊員のみんなの様子に、弥尋先輩が申しわけなさそうに言ってきた。
俺はそんな弥尋先輩にやさしくほほ笑みかえす。

「気にしないでください。元気なのはいいコトですから♪」
「そう言ってもらえると助かるよ」

弥尋先輩は苦笑しながらそう言うと、はしゃいでいるみんなをやさしく見守る。
俺も同じようにみんなを見守りながら、残りの時間をまったりと過ごした。

就任お祝いパーティー、楽しみだなぁ♪




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