Bitter Sweet Sweet

こうはらみしろ

文字の大きさ
上 下
2 / 4

2

しおりを挟む

こんな調子で学校が終わり──

「崎せーんぱい。一緒に帰りましょう!」

なぜか校門で待ってる御堂に捕まった。

またか……
今日は裏門から帰ればよかった。

そう心のなかで後悔しながら、俺はにこにこ笑ってる御堂にきっぱりと言う。

「嫌だ」
「そんなぁ~」

当たり前だろ、帰りまで一緒とかやってられるか。

俺は小さく鼻を鳴らしてそのまま御堂を無視して歩きだす。

「あ、待ってくださいよぉ」
「ついてくるな」
「いいじゃないですかぁ、帰る方向が同じなんです!」
「なら離れて歩け、近づくな」
「わかりましたよぉ~」

御堂はすたすた歩く俺の後ろを拗ねた顔をしながらもついてくる。
その距離はきっちり3メートル。
それ以上離れもせず近づきもせず、距離を保ったまま歩きつづける。

不思議なやつだ。
これだけ冷たくしているのに、それでも好きだといって甘ったるい笑顔を見せる。

まったく、理解できない。

「先輩」
「……」
「崎先輩、大好きです!」

一瞬止まりそうになった足を動かして、ただ歩きつづける。

ここは無視だ。
無視して歩きつづけるんだ。

「崎せんぱーい、ムシしないでくださいよぉ」
「……」

無視。

「いいですよぉ、勝手に言ってますから」
「……」

無視。

「先輩、好きです」
「……」

無視。

「甘いもの嫌いな崎先輩が好き」
「……」

無視……

「優しいところを見せたがらない崎先輩が好き」
「……」

無視、無視……

「ムシしてるけど、ホントは気になってる崎先輩が好き」
「……」

無視、無視……っ

「崎先輩──」
「……」
「全部、大好きです」

無、理だ。

「止めろ」
「いいじゃないですか。好きです、崎先輩」

こ、いつは……
口を開けば好きだ好きだと馬鹿のひとつ覚えみたいに言いやがって、それしか言えないのか!

「うっとうしいんだよ!」
「……っ」
「……もう家も近いんだ。言うの、止めろ」
「わかりました。迷惑かけちゃいますもんね」

またへらへら甘ったるく笑って。

「帰る。じゃあなっ」
「あ、崎先輩っ!」

呼ばれたけど、振りかえらずにひたすら走って家のなかに入る。
そのまま、閉まったドアにもたれかかった。

「……迷惑なんて、もうかかってるんだよ」

イライラして、振りきるように二階の自分の部屋へと入る。
そうしたら部屋の窓が開いていて、風で深い青色のカーテンがゆらゆらと揺れていた。

閉めないと。

そうおもって鞄を椅子に置いて空いたままの窓に近づく。
それでカーテンに手を伸ばしたところではた、と気がついた。

「御、堂……」

御堂が、さっき別れた場所からこっちを見てる。
俺はおもわずカーテンの影に隠れた。

……?
なん、だ……?

チラリ、と御堂を見る。
けれどあいつは一度下を向き、すぐに帰っていった。

──イライラする。

俺は窓を閉め、そのままベットに横になる。

「やっぱりむかつく……」

ポツリと呟いた言葉は思ったより大きく、俺の部屋のなかに響いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人

こじらせた処女
BL
 過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。 それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。 しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

嘘の日の言葉を信じてはいけない

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
嘘の日--それは一年に一度だけユイさんに会える日。ユイさんは毎年僕を選んでくれるけど、毎回首筋を噛んでもらえずに施設に返される。それでも去り際に彼が「来年も選ぶから」と言ってくれるからその言葉を信じてまた一年待ち続ける。待ったところで選ばれる保証はどこにもない。オメガは相手を選べない。アルファに選んでもらうしかない。今年もモニター越しにユイさんの姿を見つけ、選んで欲しい気持ちでアピールをするけれど……。

グッバイシンデレラ

かかし
BL
毎週水曜日に二次創作でワンドロライ主催してるんですが、その時間になるまでどこまで書けるかと挑戦したかった+自分が読みたい浮気攻めを書きたくてムラムラしたのでお菓子ムシャムシャしながら書いた作品です。 美形×平凡意識 浮気攻めというよりヤンデレめいてしまった

高嶺の花宮君

しづ未
BL
幼馴染のイケメンが昔から自分に構ってくる話。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

彼者誰時に溺れる

あこ
BL
外れない指輪。消えない所有印。買われた一生。 けれどもそのかわり、彼は男の唯一無二の愛を手に入れた。 ✔︎ 四十路手前×ちょっと我儘未成年愛人 ✔︎ 振り回され気味攻と実は健気な受 ✔︎ 職業反社会的な攻めですが、BL作品で見かける?ようなヤクザです。(私はそう思って書いています) ✔︎ 攻めは個人サイトの読者様に『ツンギレ』と言われました。 ✔︎ タグの『溺愛』や『甘々』はこの攻めを思えば『受けをとっても溺愛して甘々』という意味で、人によっては「え?溺愛?これ甘々?」かもしれません。 🔺ATTENTION🔺 攻めは女性に対する扱いが酷いキャラクターです。そうしたキャラクターに対して、不快になる可能性がある場合はご遠慮ください。 暴力的表現(いじめ描写も)が作中に登場しますが、それを推奨しているわけでは決してありません。しかし設定上所々にそうした描写がありますので、苦手な方はご留意ください。 性描写は匂わせる程度や触れ合っている程度です。いたしちゃったシーン(苦笑)はありません。 タイトル前に『!』がある場合、アルファポリスさんの『投稿ガイドライン』に当てはまるR指定(暴力/性表現)描写や、程度に関わらずイジメ描写が入ります。ご注意ください。 ➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。 ➡︎ 作品は『時系列順』ではなく『更新した順番』で並んでいます。

処理中です...