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しおりを挟むこんな調子で学校が終わり──
「崎せーんぱい。一緒に帰りましょう!」
なぜか校門で待ってる御堂に捕まった。
またか……
今日は裏門から帰ればよかった。
そう心のなかで後悔しながら、俺はにこにこ笑ってる御堂にきっぱりと言う。
「嫌だ」
「そんなぁ~」
当たり前だろ、帰りまで一緒とかやってられるか。
俺は小さく鼻を鳴らしてそのまま御堂を無視して歩きだす。
「あ、待ってくださいよぉ」
「ついてくるな」
「いいじゃないですかぁ、帰る方向が同じなんです!」
「なら離れて歩け、近づくな」
「わかりましたよぉ~」
御堂はすたすた歩く俺の後ろを拗ねた顔をしながらもついてくる。
その距離はきっちり3メートル。
それ以上離れもせず近づきもせず、距離を保ったまま歩きつづける。
不思議なやつだ。
これだけ冷たくしているのに、それでも好きだといって甘ったるい笑顔を見せる。
まったく、理解できない。
「先輩」
「……」
「崎先輩、大好きです!」
一瞬止まりそうになった足を動かして、ただ歩きつづける。
ここは無視だ。
無視して歩きつづけるんだ。
「崎せんぱーい、ムシしないでくださいよぉ」
「……」
無視。
「いいですよぉ、勝手に言ってますから」
「……」
無視。
「先輩、好きです」
「……」
無視。
「甘いもの嫌いな崎先輩が好き」
「……」
無視……
「優しいところを見せたがらない崎先輩が好き」
「……」
無視、無視……
「ムシしてるけど、ホントは気になってる崎先輩が好き」
「……」
無視、無視……っ
「崎先輩──」
「……」
「全部、大好きです」
無、理だ。
「止めろ」
「いいじゃないですか。好きです、崎先輩」
こ、いつは……
口を開けば好きだ好きだと馬鹿のひとつ覚えみたいに言いやがって、それしか言えないのか!
「うっとうしいんだよ!」
「……っ」
「……もう家も近いんだ。言うの、止めろ」
「わかりました。迷惑かけちゃいますもんね」
またへらへら甘ったるく笑って。
「帰る。じゃあなっ」
「あ、崎先輩っ!」
呼ばれたけど、振りかえらずにひたすら走って家のなかに入る。
そのまま、閉まったドアにもたれかかった。
「……迷惑なんて、もうかかってるんだよ」
イライラして、振りきるように二階の自分の部屋へと入る。
そうしたら部屋の窓が開いていて、風で深い青色のカーテンがゆらゆらと揺れていた。
閉めないと。
そうおもって鞄を椅子に置いて空いたままの窓に近づく。
それでカーテンに手を伸ばしたところではた、と気がついた。
「御、堂……」
御堂が、さっき別れた場所からこっちを見てる。
俺はおもわずカーテンの影に隠れた。
……?
なん、だ……?
チラリ、と御堂を見る。
けれどあいつは一度下を向き、すぐに帰っていった。
──イライラする。
俺は窓を閉め、そのままベットに横になる。
「やっぱりむかつく……」
ポツリと呟いた言葉は思ったより大きく、俺の部屋のなかに響いた。
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