遠かった近い未来

こうはらみしろ

文字の大きさ
上 下
7 / 7

7

しおりを挟む

企画部にもどると、入り口で根本が不機嫌そうに俺を待っていた。

「どうしたんだ、根本? 不機嫌そうな顔して」
「だって先輩、俺の質問を無視するんですもん」
「あっ、悪い」

そういえばなにか聞いてきてたよな

あのときは皇貴のことでいっぱいいっぱいだったから気づけなかった。

「じゃあ、俺の質問に答えてください。……ここじゃ邪魔になるし、屋上に行きましょう?」
「あぁ、そうだな」

俺はあいつの言葉にうなづき、屋上へと向かった。

「で、さっきのつづきなんですけど……今日ぶつかったやつ、あいつ知り合いなんですか?」

屋上についたとたん根本は質問してきた。

すこしピリピリしてる気がする。
なにがそんなに気になるんだ?

「なんだ? やっぱ同じ男として、できるやつは気になるのか?」
「いや、そうじゃないですけど……」

根本はうつ向き、歯切れが悪そうにしている。
なんか珍しいな。

「あいつは……高校のとき、友達だったやつだよ」

友達という言葉に、俺は笑いたくなった。

あのときだって今だって
あいつを友達だなんておもえないのに──

「友達、ですか……?」
「あぁ、寮の部屋が一緒だったからな」
「そう、ですか……」
「だからって、弱味とか聞いても無駄だぞ?」

微妙に気まずい雰囲気を変えるためにふざけてみる。

こいつとこんな雰囲気になるなんて──
本当、珍しいな。

「そんなこと聞きませんって。てか、弱味なんか聞かなくても楽勝でしょ」
「お、言ったなぁ~」

俺はわざとカッコつけて言ったあいつの頭をグリグリと押す。

「痛い、いたい!先輩、痛いですってぇ」
「ふっ……悪い、わるい」
「いえ、元気になったみたいですね」

あいつのせいだとはバレてないとおもうけど、驚いて固まってしまった。
俺は慌ててごまかす。

「あ、あぁ。なんか、海外の企画に参加することになってさ、しばらくお前らと仕事できなくなるとおもうと寂しくてなぁ……」
「先輩、可愛いこといってくれますね♪」
「なっ、先輩に可愛いとはなんだ!? 教育しなおしてやるっ!」
「わぁ~っ! 先輩ギブ、ギブっ!!」

この日は梶本のおかげで、乱れていた心がなんとか持ちなおした。 
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

アルファとアルファの結婚準備

金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。  😏ユルユル設定のオメガバースです。 

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

処理中です...