僕の坊ちゃんは乙女ゲームの攻略キャラでした

記憶のカケラ

男の人が好きだということがバレて虐められて以来ずっと引きこもりをしている『僕』は、今日も今日とて引きこもっている自分の部屋でベッドに寝ころびながら、一心不乱にとある乙女ゲームをしている。

このゲームは、引きこもりになった『僕』の慰めにと姉が薦めてきたものだ。
最初はせっかく薦めてくれたものだからと渋々やっていたのだが、バトルや育成要素もあったし、推しキャラもできてどんどんハマっていった。

そのキャラは柔和な顔立ちで、肩につくくらいの艶やかな漆黒の髪と太めの二重でたれ気味のエメラルドのような瞳を持つ、優しいけれど少し影のある幸薄の宰相子息だ。

｢はぁ……かっこいい。好き……｣

柔らかな表情で未来を語る推しキャラの背中にヒロインが思わず抱きつくシーンのスチルを見て、『僕』はほぅ…と息を吐く。

このあとは告白イベントに入って、それを受け入れればハッピーエンドのはずだ。

｢その前にトイレへ行って風呂に入っておこっと｣

せっかくの告白イベントを邪魔されたくないからね。

そう思って立ちあがったんだけれど──

｢あ、れ……？｣

急にめまいがしてふらついたと思ったら、プツリと意識がとぎれた。