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第8章 反逆の狼煙
cys:183 永遠の愛への別れ
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「ライト、お誕生日おめでとう!」
アネーシャの嬉しそうな掛け声と共に、クラッカーのパンッ! と、いう音が部屋に響いた。
「アネーシャ、みんな、ありがとう!」
アネーシャの脳裏に謎の映像が流れてからしばらくの後、今日はシドとキースも呼び、ライトの誕生会を開いているのだ。
テーブルにはバースデーケーキやチキン、他にもライトの好きな料理がズラッと並べられていて、それをライトを中心に皆が温かい雰囲気で囲んでいる。
そんな中、アネーシャは幸せいっぱいのライトの顔を覗き込み、ニコッと微笑んだ。
そして同時に、綺麗に包装された箱を両手で渡す。
「はい、ライト。誕生日プレゼントよ♪」
「わあ! ありがとうアネーシャ!」
大好きなアネーシャからプレゼントを手渡しでもらったライトは、嬉しくて瞳をキラキラさせた。
「ねぇ、これ開けていい?」
「もちろんよ」
「やったぁ♪」
ライトは、嬉しさと共に包装紙を子供らしくバリバリ破って開けると、パァァァッ! と、顔を輝かせた。
そのプレゼントは、ライトがずっと欲しがってたオモチャだったから。
「アネーシャ、ありがとう! 嬉しいっ!」
「フフッ、よかった。大切にしてね」
「うんっ! アネーシャ大好き!」
満面の笑みでギュッと抱きついたライトを、アネーシャは抱きしめ囁く。
「ライト、私も大好きよ」
二人から温かい愛が溢れ出し、部屋いっぱいに広がってゆく。
すると、シドやキース、そしてマーヤも次々とプレゼントを差し出した。
アネーシャは、そんな温かく優しい光景を見つめている。
まるで、心の奥に焼き付けるように。
そして、ケーキを両手でスッと手に取ると立ち上がった。
「じゃあ、みんなの分、切り分けてくるね」
アネーシャはそう言ってキッチンへ行くと、ゆっくりケーキを切り分けてゆく。
一つ一つ想いを込めて。
───もう少しだけ……お願い。後少しだけ……
心に湧き上がる切なさをグッと抑えるアネーシャの瞳が、涙でジワッと滲んでゆく。
───ダメッ! 今は、まだ泣いたらダメだから。
必死に自分自身に言い聞かせるアネーシャ。
そう。もう気付いてしまっているのだ。
ここが『夢の世界』である事に。
アネーシャがこれに完全に気付いたのは、あの映像が流れ込んできた日だ。
部屋に戻り一人になった時、アネーシャの心に浮かんできたから。
ノーティスとの記憶と共に、これまでの全ての記憶が。
それと同時に、刀と鎧も自分の身体に復活したのだ。
その瞬間アネーシャはドシャッ! と、へたり込み涙を零した。
「うっ……ううっ……くっ……なんで、なんで気付いてしまったの……私、本当はずっとここに……」
そして今、ケーキを切るアネーシャの手に涙がポタポタと零れ落ちる。
───そう、これは夢の世界。レイの技にかかり見せられてる夢の世界。現実の私は戦ってる。だから行かないと……!
この世界で夢を見させられてる間に現実の自分は殺されてしまう可能性は充分ある。
この夢の世界と現実の世界で時間の進み方が大幅に違ったとしても、いつかはそうなる。
───だから……行かなきゃ……
アネーシャはここまで気付いているにも関わらず、なぜ夢から醒めようとしなかったのか。
もちろん、この世界がアネーシャの理想の世界だからというのはある。
この先、どんなに戦っても決して辿り着く事の出来ない場所。
アネーシャ自身が一番いたい場所。
それに加え、この誕生日だけはどうしても過ごしたかったのだ。
現実では、ライトはこの誕生日を迎える前にクリザリッドに殺されてしまったから。
───でも……でも、本当はここにいたい! シド、キース、ライト、マーヤ……みんなと一緒に。
アネーシャが瞳から涙を、心からは血を流していると、シドがアネーシャを心配そうに見つめてきた。
「アネーシャ、どうしたんだ。大丈夫か」
「うぅっ……シド……!」
「アネーシャ!」
両手で肩をガシッと掴み真摯な瞳でアネーシャを見つめてくるシドを、アネーシャは綺麗な瞳から涙をボロボロ零しながら見つめ声を絞り出す。
「……ありがとう……シド……そして、ごめんなさい……」
「アネーシャ?! どうした。何を言ってるんだ」
「私、ずっと、ずっと……貴方に会いたかったの」
アネーシャが見つめ泣きながらそう告げた瞬間、シドはアネーシャの事をギュッと抱きしめた。
まるで、あの日のように。
「ここにいるだろうアネーシャ。これまでも、これからもキミとずっと一緒だ。愛してる」
シドから溢れる愛が、アネーシャの心に優しく染みわたってくる。
それは何よりも嬉しい事なのに、同時にアネーシャの胸をギュギュっと締め付ける。
この愛と、もうお別れしなければいけないから。
永遠に。
───ああっ……シドと一緒にいたい……これが本当なら、どんなに……
アネーシャは、心でその想いをギュッと抱きしめる。
けれど、両手でシドの体をスッと離すと、涙を流しながらニコッと微笑んだ。
ここからの笑顔を、シドに覚えておいてほしいから。
例えそれが夢の世界の人だったとしても。
「シド、私も貴方を愛してるわ」
「アネーシャ……!」
「でも、私もう行かないと……」
「えっ?」
シドが、なぜ? という顔をした瞬間、アネーシャはシドの胸の中からサッと離れ部屋を飛び出した。
「アネーシャ!」
そう叫びシドが追いかけると、他のみんなも、どうした? と、いう顔を浮かべシドの後に続く。
そして、夕暮れ時の街をアネーシャを追いかけ、息を切らしながら走っていくと、街の入り口にいるアネーシャを見つけた。
「ハァッ……ハァッ……アネーシャ……」
苦しそうな顔で見つめるシド達。
そんな風に見つめられる中、アネーシャは入り口に手を翳し感じていた。
何もないハズの空間に張られている、結界のような物を。
───きっと、ここが境界線。ここから出たらもう二度と……
それを確かめた涙を浮かべるアネーシャの背中に、シドが大きく声をぶつける。
「アネーシャ、どこへ行くんだ!」
「シド……」
涙の乾かぬ瞳でそっと振り向いたアネーシャに、シドは哀しいオーラを立ち昇らせザッと足を踏み出した。
だが、その瞬間だった。
「来ないで!!」
「アネーシャ、一体どうしたんだ?! なんで急にそんな事を……」
切ない顔でアネーシャを見つめているシド。
他の皆も同じだ。
アネーシャとシド達の間に、切なく哀しい空気が広がってゆく。
その中で、アネーシャは皆を一人一人ジッと見つめる。
涙の滲む瞳で、ゆっくりと。
「キース。これからも、シドと素敵な音楽を作ってね」
「アネーシャ……」
「マーヤ。いつも元気でいてくれてありがとう。ライトと仲良くね」
「アネーシャお姉ちゃん、なんで……!」
「ライト。貴方はきっと素敵な男性になるわ。マーヤをちゃんと守るのよ」
「アネーシャ姉ちゃん、いっちゃヤダよ! ううっ……!」
涙を零すライトを、アネーシャは涙を湛えた凛とした瞳で見つめニコッと微笑んだ。
視界が涙で歪む。
そしてそのまま、最後にシドを見つめた。
「シド。あの時、ずっと言えなくて後悔してたの……愛してるわ、シド」
そう告げクルッと背を向けたアネーシャに、シドが叫ぶ。
「アネーシャ、俺も愛してる! だから行くな!!」
けれど、アネーシャは振り返らない。
振り返ってしまったら、もう戻れなくなってしまうから。
本当はずっといたいこの世界に。
───シド……!!
だからこそ、涙を零したままザッと足を前に踏み出した。
しかしその瞬間、アネーシャの背中にライトの鳴き声がこだまする。
「アネーシャ姉ちゃーーーーーーーーーん!! いかないでーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
その鳴き声が、アネーシャの心を引き裂き血を流す。
───ライト……!!
アネーシャはそれに必死に耐えるように両拳をググッと力いっぱい握りしめると、ザッ! と、前に駆けだした。
その綺麗な瞳から、ボロボロと涙を横に迸しらせながら。
そして、心で祈るように皆に誓う。
───みんなの事、私、ずっとずっと絶対に忘れないから……!! ありがとうみんな……愛してるわ、シド。
アネーシャから零れ落ちる涙が夕日に照らされ、キラリと切なく煌めいた……
アネーシャの嬉しそうな掛け声と共に、クラッカーのパンッ! と、いう音が部屋に響いた。
「アネーシャ、みんな、ありがとう!」
アネーシャの脳裏に謎の映像が流れてからしばらくの後、今日はシドとキースも呼び、ライトの誕生会を開いているのだ。
テーブルにはバースデーケーキやチキン、他にもライトの好きな料理がズラッと並べられていて、それをライトを中心に皆が温かい雰囲気で囲んでいる。
そんな中、アネーシャは幸せいっぱいのライトの顔を覗き込み、ニコッと微笑んだ。
そして同時に、綺麗に包装された箱を両手で渡す。
「はい、ライト。誕生日プレゼントよ♪」
「わあ! ありがとうアネーシャ!」
大好きなアネーシャからプレゼントを手渡しでもらったライトは、嬉しくて瞳をキラキラさせた。
「ねぇ、これ開けていい?」
「もちろんよ」
「やったぁ♪」
ライトは、嬉しさと共に包装紙を子供らしくバリバリ破って開けると、パァァァッ! と、顔を輝かせた。
そのプレゼントは、ライトがずっと欲しがってたオモチャだったから。
「アネーシャ、ありがとう! 嬉しいっ!」
「フフッ、よかった。大切にしてね」
「うんっ! アネーシャ大好き!」
満面の笑みでギュッと抱きついたライトを、アネーシャは抱きしめ囁く。
「ライト、私も大好きよ」
二人から温かい愛が溢れ出し、部屋いっぱいに広がってゆく。
すると、シドやキース、そしてマーヤも次々とプレゼントを差し出した。
アネーシャは、そんな温かく優しい光景を見つめている。
まるで、心の奥に焼き付けるように。
そして、ケーキを両手でスッと手に取ると立ち上がった。
「じゃあ、みんなの分、切り分けてくるね」
アネーシャはそう言ってキッチンへ行くと、ゆっくりケーキを切り分けてゆく。
一つ一つ想いを込めて。
───もう少しだけ……お願い。後少しだけ……
心に湧き上がる切なさをグッと抑えるアネーシャの瞳が、涙でジワッと滲んでゆく。
───ダメッ! 今は、まだ泣いたらダメだから。
必死に自分自身に言い聞かせるアネーシャ。
そう。もう気付いてしまっているのだ。
ここが『夢の世界』である事に。
アネーシャがこれに完全に気付いたのは、あの映像が流れ込んできた日だ。
部屋に戻り一人になった時、アネーシャの心に浮かんできたから。
ノーティスとの記憶と共に、これまでの全ての記憶が。
それと同時に、刀と鎧も自分の身体に復活したのだ。
その瞬間アネーシャはドシャッ! と、へたり込み涙を零した。
「うっ……ううっ……くっ……なんで、なんで気付いてしまったの……私、本当はずっとここに……」
そして今、ケーキを切るアネーシャの手に涙がポタポタと零れ落ちる。
───そう、これは夢の世界。レイの技にかかり見せられてる夢の世界。現実の私は戦ってる。だから行かないと……!
この世界で夢を見させられてる間に現実の自分は殺されてしまう可能性は充分ある。
この夢の世界と現実の世界で時間の進み方が大幅に違ったとしても、いつかはそうなる。
───だから……行かなきゃ……
アネーシャはここまで気付いているにも関わらず、なぜ夢から醒めようとしなかったのか。
もちろん、この世界がアネーシャの理想の世界だからというのはある。
この先、どんなに戦っても決して辿り着く事の出来ない場所。
アネーシャ自身が一番いたい場所。
それに加え、この誕生日だけはどうしても過ごしたかったのだ。
現実では、ライトはこの誕生日を迎える前にクリザリッドに殺されてしまったから。
───でも……でも、本当はここにいたい! シド、キース、ライト、マーヤ……みんなと一緒に。
アネーシャが瞳から涙を、心からは血を流していると、シドがアネーシャを心配そうに見つめてきた。
「アネーシャ、どうしたんだ。大丈夫か」
「うぅっ……シド……!」
「アネーシャ!」
両手で肩をガシッと掴み真摯な瞳でアネーシャを見つめてくるシドを、アネーシャは綺麗な瞳から涙をボロボロ零しながら見つめ声を絞り出す。
「……ありがとう……シド……そして、ごめんなさい……」
「アネーシャ?! どうした。何を言ってるんだ」
「私、ずっと、ずっと……貴方に会いたかったの」
アネーシャが見つめ泣きながらそう告げた瞬間、シドはアネーシャの事をギュッと抱きしめた。
まるで、あの日のように。
「ここにいるだろうアネーシャ。これまでも、これからもキミとずっと一緒だ。愛してる」
シドから溢れる愛が、アネーシャの心に優しく染みわたってくる。
それは何よりも嬉しい事なのに、同時にアネーシャの胸をギュギュっと締め付ける。
この愛と、もうお別れしなければいけないから。
永遠に。
───ああっ……シドと一緒にいたい……これが本当なら、どんなに……
アネーシャは、心でその想いをギュッと抱きしめる。
けれど、両手でシドの体をスッと離すと、涙を流しながらニコッと微笑んだ。
ここからの笑顔を、シドに覚えておいてほしいから。
例えそれが夢の世界の人だったとしても。
「シド、私も貴方を愛してるわ」
「アネーシャ……!」
「でも、私もう行かないと……」
「えっ?」
シドが、なぜ? という顔をした瞬間、アネーシャはシドの胸の中からサッと離れ部屋を飛び出した。
「アネーシャ!」
そう叫びシドが追いかけると、他のみんなも、どうした? と、いう顔を浮かべシドの後に続く。
そして、夕暮れ時の街をアネーシャを追いかけ、息を切らしながら走っていくと、街の入り口にいるアネーシャを見つけた。
「ハァッ……ハァッ……アネーシャ……」
苦しそうな顔で見つめるシド達。
そんな風に見つめられる中、アネーシャは入り口に手を翳し感じていた。
何もないハズの空間に張られている、結界のような物を。
───きっと、ここが境界線。ここから出たらもう二度と……
それを確かめた涙を浮かべるアネーシャの背中に、シドが大きく声をぶつける。
「アネーシャ、どこへ行くんだ!」
「シド……」
涙の乾かぬ瞳でそっと振り向いたアネーシャに、シドは哀しいオーラを立ち昇らせザッと足を踏み出した。
だが、その瞬間だった。
「来ないで!!」
「アネーシャ、一体どうしたんだ?! なんで急にそんな事を……」
切ない顔でアネーシャを見つめているシド。
他の皆も同じだ。
アネーシャとシド達の間に、切なく哀しい空気が広がってゆく。
その中で、アネーシャは皆を一人一人ジッと見つめる。
涙の滲む瞳で、ゆっくりと。
「キース。これからも、シドと素敵な音楽を作ってね」
「アネーシャ……」
「マーヤ。いつも元気でいてくれてありがとう。ライトと仲良くね」
「アネーシャお姉ちゃん、なんで……!」
「ライト。貴方はきっと素敵な男性になるわ。マーヤをちゃんと守るのよ」
「アネーシャ姉ちゃん、いっちゃヤダよ! ううっ……!」
涙を零すライトを、アネーシャは涙を湛えた凛とした瞳で見つめニコッと微笑んだ。
視界が涙で歪む。
そしてそのまま、最後にシドを見つめた。
「シド。あの時、ずっと言えなくて後悔してたの……愛してるわ、シド」
そう告げクルッと背を向けたアネーシャに、シドが叫ぶ。
「アネーシャ、俺も愛してる! だから行くな!!」
けれど、アネーシャは振り返らない。
振り返ってしまったら、もう戻れなくなってしまうから。
本当はずっといたいこの世界に。
───シド……!!
だからこそ、涙を零したままザッと足を前に踏み出した。
しかしその瞬間、アネーシャの背中にライトの鳴き声がこだまする。
「アネーシャ姉ちゃーーーーーーーーーん!! いかないでーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
その鳴き声が、アネーシャの心を引き裂き血を流す。
───ライト……!!
アネーシャはそれに必死に耐えるように両拳をググッと力いっぱい握りしめると、ザッ! と、前に駆けだした。
その綺麗な瞳から、ボロボロと涙を横に迸しらせながら。
そして、心で祈るように皆に誓う。
───みんなの事、私、ずっとずっと絶対に忘れないから……!! ありがとうみんな……愛してるわ、シド。
アネーシャから零れ落ちる涙が夕日に照らされ、キラリと切なく煌めいた……
応援ありがとうございます!
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