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第4章 仲間達との絆

cys:79 渡せなかったプレゼント

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「美味ぇ」「美味しーー♪」

 お店で水を買って飲んだジークとレイ。
 酒も美味いが、やはり酔った身体に最終的に一番美味いのは水で間違いない。
 そう実感してる2人。
 さっき喧嘩してたとは思えないぐらい、仲のいい雰囲気が漂っている。

「はぁ、やっぱアルコールの分解は水だな。流石にちっと飲み過ぎたわ」
「でもジーク、そんな中今日は助けてくれてありがとう。礼を言うわ♪」
「よせよ。あたりめーの事しただけだ」

 ジークは少し照れくさそうにそう言うと、レイの自宅へと歩き出した。
 そしてレイの家の側まで辿り着くと、レイの胸元のネックレスの事に触れる。

「レイ、それってノーティスとおそろか」
「そうよ。いけない?」
「いや別に。似合ってんじゃねぇか」
「フフッ♪ ありがと」

 レイは少し顔を火照らせ、今までジークの前では見せた事の無い顔でネックレスを見つめている。
 その姿を見て、密かに胸が苦しいジーク。
 こういうのは、幾らタフでもやっぱりこたえてしまう。
 そして、分かりきってはいたが、ジークはレイにどうしても尋かずにはいられなかった。

「レイ」
「なに?」

 スッと見つめてきたレイに、ジークは意を決して尋ねる。
 聞きたいけど聞きたくない事、ナンバー1の事を。

「いや……アイツとは、ノーティスとは付き合ってんのか?」

───ケッ、なーに分かりきった事尋いてんだ俺は。バカか。

 ジークは心の中でそうボヤき。軽くそっぽを向いた。
 思わず尋いてはしまったものの恥ずかしかったし、嬉しそうな顔しながら答えるであろうレイの顔を、やっぱり見たくはなかったから。

 けれど、ジークのその考えとは逆に、レイは少しうつむき切なそうに微笑んだ。

「付き合って無いわ」

 レイのその答えに、思わず振り返りちょっと心配そうな顔をしたジーク。
 予想外の答えに一瞬嬉しかったものの、レイが辛そうな顔をしているのが気にかかったから。

「えっ、マジかよ? だって同じネックレスしてるし、それに、今日はお前さんの誕生日だろ」

 すると、レイは驚いて片手を口に当て目を見開いた。

「ウソ、覚えててくれたの? ジーク」
「あたりめーだろ」
「でも、じゃあなんで今日誘ってくれなかったのよ」

 レイにそう言われたジークは、恥ずかしそうにそっぽを向きながら顔を赤くした。

「いやだってよ、恥ずかしいじゃねーか。それに、付き合ってると思ってたから、軽く3人で飲めたらって思ったんだけどよ……」

 ジークの照れた顔を見て、本当に自分への好意があるのを知ったレイ。
 もちろん、ジークからは以前から何度もデートの誘いがあったのだがレイは断ってたし、ジークも断られても全然イヤな顔をしなかったので、挨拶みたいなモノだと思ってたのだ。

 実際、以前はそれに本当に近かった。
 なので別に間違ってはいない。

 けれど、レイがノーティスと戦い本当の意味での美しさを知って変わってから、ジークは本気でレイに惹かれていったのだ。
 ノーティスを好きになったレイに惚れてしまうとは、何とも皮肉なモノではあるが、恋というのは得てしてこういう事が多々あるから厄介だし面白い。
 
 無論、レイはノーティスの件でジークが惚れるようになったとは分かっていないし、ジークだってそれは分かっていない。

 けれど間違いないのは、今のジークからはレイを本当に好きな気持ちが伝わってくる事だ。
 レイはそれを感じ、嬉しかった。
 自分の誕生日を覚えててくれたのもそうだし、伝わってくる気持ちが凄く純粋な物なのが分かったから。
 ただ、だからこそレイは少し切なく笑みを浮べた。

「ありがとうジーク。嬉しいわ。でも私……」
「ああ、いいんだ。お前さんがどー思ってるかは分かってる。応援してるぜ♪」
「ジーク……」

 すまなさそうに瞳を軽く伏せたレイに、ジークはニカッと笑う。

「なーに、またしみったれた顔してんだよ♪」
「だって……」
「ったく、お前さんにしんみりされたら、せっかく俺が……」

 ジークはそこまで言ってハッと言葉を止めたが、レイには直感的に分かってしまった。
 さっきジークが自分を元気にする為に、ワザとヒール役に徹してくれた事が。

 それを分かったレイは、思わず胸がキュンとしてしまった。
 自分が好きな相手を元気にさせる為に、敢えて嫌われ役をやるというのは、本当に愛が無いと出来ない事だから。
 なのでレイは、ワザとビックリした顔をしてジークの後ろの方を指差した。

「ジーク、何あれ?」
「ん?」

 ジークがそう言って後ろを振り向いた瞬間、レイはジークの頬にキスをして妖しく微笑んだ。
 少し顔を火照らせたまま。

 けれど、それ以上に一瞬顔を真っ赤に火照らせたのはジークの方だ。

「なっ!?」
「フフッ♪ 今日のお礼よジーク。じゃあまた明後日ね♪」

 レイはそう言ってクルッと背を向けると、嬉しそうに自宅に帰って行った。

 その場にポツンと立ち尽くしたジークは、胸元からネックレスの箱を取り出しカパッと開きため息を吐く。
 レイが今日着けていたのと、同じネックレスを見つめながら。

「ハァッ……被っちまったし、それにあんな事されちゃ、どの道渡しそびれちまうだろーが。ったく、可愛いヤツだぜ」

 ジークは少し切なく微笑みながらそう呟くと、もう酔いもとっくに覚めた体を夜風に吹せながら帰って行った。
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