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第2章 波乱のギルド検定試験
cys:34 知らないけど知ってる記憶
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「ノーティス、お主は……」
何か重大な事を告げようとしているアンリの顔を、ノーティスは跪いたままジッと見つめている。
とてつもなくイヤな予感に、心臓をバクバクさせたまま。
そんなノーティスを、澄んだ瞳でジッと見つめているアンリ。
───まだ、告げるのは早いかもしれぬな。
そう思ったアンリは、言おうとしていた言葉を咄嗟に変えた。
大事なモノこそ、言うべきタイミングが大切だから。
「エネルギーの影響を受けやすい体質なのじゃ」
「エネルギーの影響を?」
「そうニャ♪ まあ、光の勇者の宿命ともいうべきものかもしれんの。だから、異世界から見知らぬ記憶が流れ込んできたのじゃろ」
アンリからそう告げられたノーティスは、多少違和感や肩透かし感を喰らった。
話の筋は一応通ってはいるものの、アンリがさっき見せた表情と今の話のバランスが、イマイチ取れてないように感じたから。
「本当に、そうなんでしょうか……」
「まあ、私の研究が正しければだけれどニャ♪」
アンリはニコッと笑ってそう言うが、内心軽く冷や汗をかいていた。
───フゥッ、ギリギリじゃわ。我ながらよく誤魔化せたが、コヤツまだ少し疑っておるな。さて、どうしたものかの……
笑いながらそう考えたアンリは、そのまま表情を変えずにノーティスの肩に片手をポンと乗せ、ちょっと賭けに出た。
多少の違和感を払拭する為には、それ以上の動きで別に逸らすしか無いから。
「ノーティス、今回は一瞬しかゲートが開かんかったが、貴重なデータが取れたぞい! 礼を言うニャ♪」
「いや、俺の方こそ貴重な体験をさせてもらえたし……」
謙虚な態度のノーティスに、アンリは嬉しそうにニコニコ笑う。
「うんうん♪ それとノーティス、お主ならギルドの試験に合格するのは容易いじゃろ」
「いや、それはまだ分からないさ」
「あらまっ、謙遜しおってからに~~♪」
アンリはニヤニヤしながら、人差し指をクルクルさせると、ノーティスに凛とした瞳を向けた。
「ただ、本当の試練は勇者になってからじゃ。なので、もし何かあればいつでも私を訪ねてくるがよい。いつでも歓迎するニャ♪」
「……ありがとうアンリ」
「う~~ノーティス、こちらこそだニャー♪」
アンリはニコニコしたままノーティスにサッと抱きつくと、耳元でそっと囁く。
(特に、王国の事で異変を感じたらすぐに来い。よいな?)
(……はい!)
ノーティスはそれ以上深追いしなかった。
アンリが自分にそっと告げてきた以上、この場の他の者にはもちろん、自分対しても今はまだ、これ以上は言えない事がある事を察したからだ。
アンリにとってもこの告げ方は賭けではあったが、ノーティスがちゃんと察してくれた事を感じると、ワザと大げさにノーティスの背中をパンパンと叩く。
「いやー、お主のお陰でいい物が見れたニャ♪ お主は見た目も中身もイケてるヤツだのう♪ どうだ、私と付き合わんか?」
「ア、アンリ」
ノーティスが軽く顔を火照らすと、隣でルミがコホンと軽く咳払いをした。
もうそろそろ、いちゃつくの止めてもらえませんか、という雰囲気を醸し出している。
「アンリ樣、そろそろお時間かと」
「おっ、なんじゃルミ。嫉いとるのかニャ♪」
「ち、違います!」
頬を赤くして叫ぶルミの側で、ムスッとするエレナ。
「お姉様に続いて、アンリ様までズルいですっ!」
アンリは2人から上手く注意を逸らせた事を密かに微笑むと、ノーティスからサッと離れた。
「ノーティス、お主も色々と大変じゃの♪ まあ、今度隠れてデートでもするかニャ♪」
「アンリ、何を言ってるんだよ」
ノーティスが軽くボヤくと、アンリは魔法収納空間からサッと魔導の杖を取り出し、スッとノーティス達に向け二ッと微笑む。
「じゃ、応援しとるニャ♪ お主たちに幸多き事を」
魔導の杖がピカッと光った瞬間、ノーティス達は元いたギルド試験会場の広場に戻された。
「ひや~~~、何だか凄い方でしたね。後、本当にもうご体調は大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。ありがとうルミ。けど、Sランクの王宮魔導士は、考える事が本当にぶっ飛んでるな」
「ハハッ、そうですね。瞬間召喚に異世界への扉とか、普段考えもしませんし」
そう零したルミの隣で、
「そーだよね。私も確かに異界とか初めて見たし。でも楽しかったーーー♪ ねっ、ノーティス」
そう言って、勢いでノーティスの腕に笑顔でギュッと抱きついたエレナ。
ニコニコしながらノーティスを見上げている。
「ねぇ、今日はもう試験終わったんでしょ?」
「まあ、確かに今日はもう終了だ。そうだよなルミ」
「えぇ、そうですね。後は今日の試験の合格者のみ、1ヶ月後に実技試験がありますが……」
ルミはそこまで答えると、エレナに向かい大きく口を開く。
「エレナ、いい加減ノーティス様から離れなさい!」
「べーーーっ! せっかくまた会えたのに、離れる訳ないじゃん♪ 悔しかったら、お姉ちゃんもこーすればいいじゃん」
「まったく、アナタって子は……!」
イラっとしながら頭を抱えるルミだが、そんな中、何とエレナはノーティスの腕をそっと離した。
そして、キラキラした眼差しでノーティスを見つめる。
「ねぇノーティス。2人でじゃなくていいから、お姉ちゃんと3人で美味しい物でも食べに行こうよ♪」
「えっ?」
ちょっと予想外の提案に驚いたノーティス。
エレナが自分から腕を外したのもそうだし、てっきりこのまま2人でと言われると思ってたから。
「ルミと一緒ならいいけど……」
「やったぁ♪」
笑顔ではしゃぎながら、内心ちょっとあざとく考えているエレナ。
───えへへっ♪ エレナ、前と同じ失敗はしないもーん。お姉ちゃんと3人でデートしながら、エレナの魅力で惚れさせちゃえばいいのよ♪
ルミはそんな思惑を感じながらも、3人でいうのならダメとも言えない。
そもそも、ノーティスがいいと言ってしまったし。
なのでルミは軽くハァッとため息をつくと、仕方なく3人でそこから歩き始めた。
そしてノーティスは、そんなルミとエレナに挟まれて歩きながら考えていた。
───王国の異変とは一体何だ? きっと、アンリは答えを知ってるハズ。俺になだれ込んできた記憶は知らない人の記憶じゃない……
そこまで考えたノーティスは、再びさっきの事を思い返し確信する。
───なぜ分かるのかすら、俺には分からない。けどあれは間違いなく、俺の……本当の父さんと母さんとの記憶だ……!
何か重大な事を告げようとしているアンリの顔を、ノーティスは跪いたままジッと見つめている。
とてつもなくイヤな予感に、心臓をバクバクさせたまま。
そんなノーティスを、澄んだ瞳でジッと見つめているアンリ。
───まだ、告げるのは早いかもしれぬな。
そう思ったアンリは、言おうとしていた言葉を咄嗟に変えた。
大事なモノこそ、言うべきタイミングが大切だから。
「エネルギーの影響を受けやすい体質なのじゃ」
「エネルギーの影響を?」
「そうニャ♪ まあ、光の勇者の宿命ともいうべきものかもしれんの。だから、異世界から見知らぬ記憶が流れ込んできたのじゃろ」
アンリからそう告げられたノーティスは、多少違和感や肩透かし感を喰らった。
話の筋は一応通ってはいるものの、アンリがさっき見せた表情と今の話のバランスが、イマイチ取れてないように感じたから。
「本当に、そうなんでしょうか……」
「まあ、私の研究が正しければだけれどニャ♪」
アンリはニコッと笑ってそう言うが、内心軽く冷や汗をかいていた。
───フゥッ、ギリギリじゃわ。我ながらよく誤魔化せたが、コヤツまだ少し疑っておるな。さて、どうしたものかの……
笑いながらそう考えたアンリは、そのまま表情を変えずにノーティスの肩に片手をポンと乗せ、ちょっと賭けに出た。
多少の違和感を払拭する為には、それ以上の動きで別に逸らすしか無いから。
「ノーティス、今回は一瞬しかゲートが開かんかったが、貴重なデータが取れたぞい! 礼を言うニャ♪」
「いや、俺の方こそ貴重な体験をさせてもらえたし……」
謙虚な態度のノーティスに、アンリは嬉しそうにニコニコ笑う。
「うんうん♪ それとノーティス、お主ならギルドの試験に合格するのは容易いじゃろ」
「いや、それはまだ分からないさ」
「あらまっ、謙遜しおってからに~~♪」
アンリはニヤニヤしながら、人差し指をクルクルさせると、ノーティスに凛とした瞳を向けた。
「ただ、本当の試練は勇者になってからじゃ。なので、もし何かあればいつでも私を訪ねてくるがよい。いつでも歓迎するニャ♪」
「……ありがとうアンリ」
「う~~ノーティス、こちらこそだニャー♪」
アンリはニコニコしたままノーティスにサッと抱きつくと、耳元でそっと囁く。
(特に、王国の事で異変を感じたらすぐに来い。よいな?)
(……はい!)
ノーティスはそれ以上深追いしなかった。
アンリが自分にそっと告げてきた以上、この場の他の者にはもちろん、自分対しても今はまだ、これ以上は言えない事がある事を察したからだ。
アンリにとってもこの告げ方は賭けではあったが、ノーティスがちゃんと察してくれた事を感じると、ワザと大げさにノーティスの背中をパンパンと叩く。
「いやー、お主のお陰でいい物が見れたニャ♪ お主は見た目も中身もイケてるヤツだのう♪ どうだ、私と付き合わんか?」
「ア、アンリ」
ノーティスが軽く顔を火照らすと、隣でルミがコホンと軽く咳払いをした。
もうそろそろ、いちゃつくの止めてもらえませんか、という雰囲気を醸し出している。
「アンリ樣、そろそろお時間かと」
「おっ、なんじゃルミ。嫉いとるのかニャ♪」
「ち、違います!」
頬を赤くして叫ぶルミの側で、ムスッとするエレナ。
「お姉様に続いて、アンリ様までズルいですっ!」
アンリは2人から上手く注意を逸らせた事を密かに微笑むと、ノーティスからサッと離れた。
「ノーティス、お主も色々と大変じゃの♪ まあ、今度隠れてデートでもするかニャ♪」
「アンリ、何を言ってるんだよ」
ノーティスが軽くボヤくと、アンリは魔法収納空間からサッと魔導の杖を取り出し、スッとノーティス達に向け二ッと微笑む。
「じゃ、応援しとるニャ♪ お主たちに幸多き事を」
魔導の杖がピカッと光った瞬間、ノーティス達は元いたギルド試験会場の広場に戻された。
「ひや~~~、何だか凄い方でしたね。後、本当にもうご体調は大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。ありがとうルミ。けど、Sランクの王宮魔導士は、考える事が本当にぶっ飛んでるな」
「ハハッ、そうですね。瞬間召喚に異世界への扉とか、普段考えもしませんし」
そう零したルミの隣で、
「そーだよね。私も確かに異界とか初めて見たし。でも楽しかったーーー♪ ねっ、ノーティス」
そう言って、勢いでノーティスの腕に笑顔でギュッと抱きついたエレナ。
ニコニコしながらノーティスを見上げている。
「ねぇ、今日はもう試験終わったんでしょ?」
「まあ、確かに今日はもう終了だ。そうだよなルミ」
「えぇ、そうですね。後は今日の試験の合格者のみ、1ヶ月後に実技試験がありますが……」
ルミはそこまで答えると、エレナに向かい大きく口を開く。
「エレナ、いい加減ノーティス様から離れなさい!」
「べーーーっ! せっかくまた会えたのに、離れる訳ないじゃん♪ 悔しかったら、お姉ちゃんもこーすればいいじゃん」
「まったく、アナタって子は……!」
イラっとしながら頭を抱えるルミだが、そんな中、何とエレナはノーティスの腕をそっと離した。
そして、キラキラした眼差しでノーティスを見つめる。
「ねぇノーティス。2人でじゃなくていいから、お姉ちゃんと3人で美味しい物でも食べに行こうよ♪」
「えっ?」
ちょっと予想外の提案に驚いたノーティス。
エレナが自分から腕を外したのもそうだし、てっきりこのまま2人でと言われると思ってたから。
「ルミと一緒ならいいけど……」
「やったぁ♪」
笑顔ではしゃぎながら、内心ちょっとあざとく考えているエレナ。
───えへへっ♪ エレナ、前と同じ失敗はしないもーん。お姉ちゃんと3人でデートしながら、エレナの魅力で惚れさせちゃえばいいのよ♪
ルミはそんな思惑を感じながらも、3人でいうのならダメとも言えない。
そもそも、ノーティスがいいと言ってしまったし。
なのでルミは軽くハァッとため息をつくと、仕方なく3人でそこから歩き始めた。
そしてノーティスは、そんなルミとエレナに挟まれて歩きながら考えていた。
───王国の異変とは一体何だ? きっと、アンリは答えを知ってるハズ。俺になだれ込んできた記憶は知らない人の記憶じゃない……
そこまで考えたノーティスは、再びさっきの事を思い返し確信する。
───なぜ分かるのかすら、俺には分からない。けどあれは間違いなく、俺の……本当の父さんと母さんとの記憶だ……!
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