28 / 227
第2章 波乱のギルド検定試験
cys:28 レイの運命の人とぶつかる魂
しおりを挟む
レイの切なく甘い記憶……
スマート・ミレニアム軍の中でも強く美しい王宮魔導士のレイは、子供の頃からその美貌で周りを魅了してきた。
もちろん、男達からは性的な目で見られ、女達からは憧れと同時に嫉妬もされる。
けれど、やはりその分レイの言う事は他の子よりも優先されたし、魔力が元々飛び抜けて優れていたレイは、クラスのカーストの中では常に最上位だった。
それを失いたくないからこそ、自分の美しさにより磨きをかける。
レイが美しさにこだわり力とみなすのも、そんな幼少期と決して無縁ではない。
それにより、レイの美しさは日に日に高まっていった。
『私の美しさに、全ての男達は跪くの♪』
そう思っていたし、実際男はもちろんの事、女もレイの高貴な美貌にひれ伏していた。
ただそんなレイでも、1人だけ思い通りにならなかった男がいる。
かつて自分を誘拐犯から救い出してくれた上に、その後自分を弟子にしてくれたスマート・ミレニアム最強の勇者だ。
その男はレイに言い寄ってこないばかりか、レイが気のある素振りをしてもぶっきらぼうな態度を崩さない。
けれど、揺るぎない強さと優しさが自然とレイを包んでいく。
レイはその男に夢中になり、今まさにその男を嬉しそうに見つめながら話している。
「ねぇ、もっとこっち向いてよ」
「今、本を読んでんだ。見りゃ分かるだろ」
「本なんかよりも、レイを見て♪」
「無理」
「ねぇっ、なんで」
レイは可愛く甘えた顔で、口を尖らして話を続ける。
「みんなレイに夢中なのに、オカシイよ」
すると、男はメンドクサそうに呟く。
「悪いが、ガキには興味がない」
「なによ、レイは子供じゃないわ! もう大人よ。付き合ってくれたっていいじゃない」
「ハァッ。お前はまだ、見た目も中身もガキだ」
「酷いっ! みんなはレイの事、綺麗とか可愛いって言ってくれるのに……」
レイが悔しさと怒りに涙を滲ませ軽くうつむくと、男は分厚い本をパタンと閉じてレイの方へ静かに振り向き、透き通った艶のある瞳で見つめる。
「レイ、真の美しさは見えるモノじゃない。感じるモノだ」
「感じるモノ? 何よそれ。分からないわ」
「フッ。もしいつか、それをお前に分からせるヤツが現れたなら……レイ、それがお前の運命の相手だ」
◆◆◆
切なく甘い記憶を振り返ったレイは、ノーティスの事を睨みながら苛立ち身体を震わせる。
「なんで……なんでアナタなんかが同じ事を言うの?! 私の愛するあの人と同じ事を!」
「あの人……?」
「許さない……! もういいわ。絶望に染まって存在ごと消えなさい!」
レイはノーティスをギッと睨み怒鳴りつけると、手の平の上の不死鳥をより輝かせた。
その輝きがレイの美貌と交わり、神々しい輝きを周囲に溢れさせていく。
けれど、ノーティスは臆する事無くそれを見据えたまま、心の中でアルカナートに誓う。
───師匠、今こそアナタから授けてもらった力を示します!
「光のクリスタルの名の元に、輝け! 俺のクリスタルよ!!」
その瞬間、ノーティスのクリスタルから白く鮮やかな『白輝』の光が眩く輝き、その煌めきがノーティスの全身を包み込んだ!
その輝きに照らされ、美しい目を大きく開いたレイ。
「ノーティス、アナタの魔力クリスタルは無色のハズじゃ……!」
「……師匠から教えてもらったんだ。勇者の光を発揮させる為には、他の色よりも心の力が必要なのさ」
「なんですって?!」
「だから、一見無色の魔力クリスタルにしか見えないし、心を輝かせなきゃ無色のままなんだ」
「そんな……」
ノーティスから無色のクリスタルの秘密を聞かされたレイだが、どうしても納得出来ない事があった。
「でも、どうやって……アナタは無色の魔力クリスタルのせいで、これまで散々苦しめられてきたハズよ。なのになぜ……心が闇に染まらなかったの!」
大きく叫んだレイに、ノーティスは必殺剣の構えのまま凛とした瞳で答える。
「……レイ、言っただろ。俺の心には大切な人達が宿ってるって」
「くっ……そんな事認めないわ! これで終わりよ! 『ディケオ・フレアニクス』!!」
ノーティスに向かい、巨大なエネルギーで作られた不死鳥が襲いかかる。
けれどノーティスはその不死鳥を真正面から見据え、より白輝の煌めきを輝かせた。
「だから、俺はこの技でキミに答える……全ての絶望を斬り裂く、数多の流星の斬撃『メテオロン・フォーススラッシュ』!!」
その瞬間、まるで流星群のような輝きを放つ数多の光の斬撃が、レイの放った不死鳥に飛び向かっていく。
神々しく輝くレイの不死鳥と、闇を切り裂くようなノーティスの流星。
それは正に、レイとノーティスの魂その物に思える。
その両者は空中でぶつかると、カッ!! とした眩い閃光が走り辺りを白く激しく照らす。
そして、レイの不死鳥は空中で斬り刻まれ、虚空にバシュンッ!! と、激しく消し飛んだ。
それにより起こった凄まじい衝撃波と斬撃がレイを襲う。
「キャーーーーっ!!」
レイは大きく吹き飛ばされ背中から地面に倒れると、悔しそうに顔をしかめながら上半身を起こし跪いた。
傷付いた体に片手を添えたまま。
「くっ……そんな。私の不死鳥が破られるなんて……! しかも、今の光と技は、間違いなく私が愛してるあの人の……」
嘆きを零しながら戸惑うレイに、ノーティスがゆっくりと近づいてくる。
───ううっ、このままじゃ、やられる……
レイが悔しさでその瞳に涙を滲ませた時、試験場のドアがバンッと勢いよく開かれ、そこからレイに駆け寄ってくる男がいた。
それは何と、あのエミリオだ。
エミリオは傷付き跪いているレイの側に駆け寄ると、レイの両方に手を乗せ心から心配している顔で見下ろす。
「姉さん! 大丈夫?!」
「エミリオ……アナタなぜ……」
レイが少し呆然とした顔で問いかけると、エミリオはレイの前に背中を向けてバッと立ち、ノーティスに向かい両手を広げた。
「姉さんはボクが守る! ノーティス、お前なんかに姉さんは殺させない!!」
レイを倒したノーティスの力に恐怖しながらも、それよりも遥かに強い気持ちでレイを守る為に、エミリオはその身を盾にして立ち塞がった。
すると、エミリオに遅れ、なんとルミも入口から駆け込んできた。
ルミは息をハアハア切らせて駆け寄り、ノーティスの事を見つめる。
「ノーティス様っ、ご無事ですか! さっきの爆発音が気になってしまって……!」
ルミから心配されたノーティスだが、ノーティスはその瞬間ニヤリと笑う。
「フッ、ルミ。何も心配する事はない。今からこの女にトドメを刺すだけだからな」
「ノ、ノーティス樣……?」
ルミはギョッとして見つめた。
邪悪な笑みを浮かべ、エミリオとレイを見下ろすノーティスの横顔を……
スマート・ミレニアム軍の中でも強く美しい王宮魔導士のレイは、子供の頃からその美貌で周りを魅了してきた。
もちろん、男達からは性的な目で見られ、女達からは憧れと同時に嫉妬もされる。
けれど、やはりその分レイの言う事は他の子よりも優先されたし、魔力が元々飛び抜けて優れていたレイは、クラスのカーストの中では常に最上位だった。
それを失いたくないからこそ、自分の美しさにより磨きをかける。
レイが美しさにこだわり力とみなすのも、そんな幼少期と決して無縁ではない。
それにより、レイの美しさは日に日に高まっていった。
『私の美しさに、全ての男達は跪くの♪』
そう思っていたし、実際男はもちろんの事、女もレイの高貴な美貌にひれ伏していた。
ただそんなレイでも、1人だけ思い通りにならなかった男がいる。
かつて自分を誘拐犯から救い出してくれた上に、その後自分を弟子にしてくれたスマート・ミレニアム最強の勇者だ。
その男はレイに言い寄ってこないばかりか、レイが気のある素振りをしてもぶっきらぼうな態度を崩さない。
けれど、揺るぎない強さと優しさが自然とレイを包んでいく。
レイはその男に夢中になり、今まさにその男を嬉しそうに見つめながら話している。
「ねぇ、もっとこっち向いてよ」
「今、本を読んでんだ。見りゃ分かるだろ」
「本なんかよりも、レイを見て♪」
「無理」
「ねぇっ、なんで」
レイは可愛く甘えた顔で、口を尖らして話を続ける。
「みんなレイに夢中なのに、オカシイよ」
すると、男はメンドクサそうに呟く。
「悪いが、ガキには興味がない」
「なによ、レイは子供じゃないわ! もう大人よ。付き合ってくれたっていいじゃない」
「ハァッ。お前はまだ、見た目も中身もガキだ」
「酷いっ! みんなはレイの事、綺麗とか可愛いって言ってくれるのに……」
レイが悔しさと怒りに涙を滲ませ軽くうつむくと、男は分厚い本をパタンと閉じてレイの方へ静かに振り向き、透き通った艶のある瞳で見つめる。
「レイ、真の美しさは見えるモノじゃない。感じるモノだ」
「感じるモノ? 何よそれ。分からないわ」
「フッ。もしいつか、それをお前に分からせるヤツが現れたなら……レイ、それがお前の運命の相手だ」
◆◆◆
切なく甘い記憶を振り返ったレイは、ノーティスの事を睨みながら苛立ち身体を震わせる。
「なんで……なんでアナタなんかが同じ事を言うの?! 私の愛するあの人と同じ事を!」
「あの人……?」
「許さない……! もういいわ。絶望に染まって存在ごと消えなさい!」
レイはノーティスをギッと睨み怒鳴りつけると、手の平の上の不死鳥をより輝かせた。
その輝きがレイの美貌と交わり、神々しい輝きを周囲に溢れさせていく。
けれど、ノーティスは臆する事無くそれを見据えたまま、心の中でアルカナートに誓う。
───師匠、今こそアナタから授けてもらった力を示します!
「光のクリスタルの名の元に、輝け! 俺のクリスタルよ!!」
その瞬間、ノーティスのクリスタルから白く鮮やかな『白輝』の光が眩く輝き、その煌めきがノーティスの全身を包み込んだ!
その輝きに照らされ、美しい目を大きく開いたレイ。
「ノーティス、アナタの魔力クリスタルは無色のハズじゃ……!」
「……師匠から教えてもらったんだ。勇者の光を発揮させる為には、他の色よりも心の力が必要なのさ」
「なんですって?!」
「だから、一見無色の魔力クリスタルにしか見えないし、心を輝かせなきゃ無色のままなんだ」
「そんな……」
ノーティスから無色のクリスタルの秘密を聞かされたレイだが、どうしても納得出来ない事があった。
「でも、どうやって……アナタは無色の魔力クリスタルのせいで、これまで散々苦しめられてきたハズよ。なのになぜ……心が闇に染まらなかったの!」
大きく叫んだレイに、ノーティスは必殺剣の構えのまま凛とした瞳で答える。
「……レイ、言っただろ。俺の心には大切な人達が宿ってるって」
「くっ……そんな事認めないわ! これで終わりよ! 『ディケオ・フレアニクス』!!」
ノーティスに向かい、巨大なエネルギーで作られた不死鳥が襲いかかる。
けれどノーティスはその不死鳥を真正面から見据え、より白輝の煌めきを輝かせた。
「だから、俺はこの技でキミに答える……全ての絶望を斬り裂く、数多の流星の斬撃『メテオロン・フォーススラッシュ』!!」
その瞬間、まるで流星群のような輝きを放つ数多の光の斬撃が、レイの放った不死鳥に飛び向かっていく。
神々しく輝くレイの不死鳥と、闇を切り裂くようなノーティスの流星。
それは正に、レイとノーティスの魂その物に思える。
その両者は空中でぶつかると、カッ!! とした眩い閃光が走り辺りを白く激しく照らす。
そして、レイの不死鳥は空中で斬り刻まれ、虚空にバシュンッ!! と、激しく消し飛んだ。
それにより起こった凄まじい衝撃波と斬撃がレイを襲う。
「キャーーーーっ!!」
レイは大きく吹き飛ばされ背中から地面に倒れると、悔しそうに顔をしかめながら上半身を起こし跪いた。
傷付いた体に片手を添えたまま。
「くっ……そんな。私の不死鳥が破られるなんて……! しかも、今の光と技は、間違いなく私が愛してるあの人の……」
嘆きを零しながら戸惑うレイに、ノーティスがゆっくりと近づいてくる。
───ううっ、このままじゃ、やられる……
レイが悔しさでその瞳に涙を滲ませた時、試験場のドアがバンッと勢いよく開かれ、そこからレイに駆け寄ってくる男がいた。
それは何と、あのエミリオだ。
エミリオは傷付き跪いているレイの側に駆け寄ると、レイの両方に手を乗せ心から心配している顔で見下ろす。
「姉さん! 大丈夫?!」
「エミリオ……アナタなぜ……」
レイが少し呆然とした顔で問いかけると、エミリオはレイの前に背中を向けてバッと立ち、ノーティスに向かい両手を広げた。
「姉さんはボクが守る! ノーティス、お前なんかに姉さんは殺させない!!」
レイを倒したノーティスの力に恐怖しながらも、それよりも遥かに強い気持ちでレイを守る為に、エミリオはその身を盾にして立ち塞がった。
すると、エミリオに遅れ、なんとルミも入口から駆け込んできた。
ルミは息をハアハア切らせて駆け寄り、ノーティスの事を見つめる。
「ノーティス様っ、ご無事ですか! さっきの爆発音が気になってしまって……!」
ルミから心配されたノーティスだが、ノーティスはその瞬間ニヤリと笑う。
「フッ、ルミ。何も心配する事はない。今からこの女にトドメを刺すだけだからな」
「ノ、ノーティス樣……?」
ルミはギョッとして見つめた。
邪悪な笑みを浮かべ、エミリオとレイを見下ろすノーティスの横顔を……
応援ありがとうございます!
31
お気に入りに追加
367
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる