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第二章 天翔零と『悪魔の瞳』
D.E.R─31 異世界の悪魔は翔の魂と契約したい
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「ハッ……流石も何も、悪魔の典型的な契約条件じゃんか」
翔は軽く脱力気味に言い放ったが、同時に気になる事があった。
「けどよ、なんでアンタは俺の魂を欲しがるんだ?」
すると、悪魔は少し斜め下へ瞳を伏せて少しせつなそうな表情を零した。
悪魔の中で、勇者達と戦った時の記憶が甦ったからだ。
「翔さん、私も先の戦いで勇者達から相当なダメージを被りました……回復させるには、貴方の素晴らしい魂のエネルギーが必要なのです」
そうは言いながらも今ですら圧倒的なオーラを放つ悪魔に、翔は一つ疑問を抱く。
───だったら契約(ディール)なんてせずに、俺から直接魂を奪えばいいだけの話なんじゃ……
「フフッ♪翔さん。そうはいかないんです」
「えっ?」
「翔さん、申し訳ございません。私、人の心が読めますので」
「ア、アンタ、本当に何でもありだな」
思わず後ずさった翔。
本能がより恐ろしさを感じてしまったのだ。
「何でもありという訳ではありませんが、まあ、人間よりは多少色々と出来ますね。ただ翔さん、魂は契約でしか頂く事は出来ないのです」
「なぜ?」
「その人の魂に命令出来るのは、その魂の持ち主だけですから」
「ふーん、そうか。よく分かったよ。けど……」
翔は納得すると同時に、また幾つか疑問が出てきた。
「その話の通りなら、俺はアンタという悪魔の復活の手助けをする事になるんだよな?」
「その通りです。その代わり、翔さんの願いも叶う。winwinじゃないですか♪」
「そこだ」
「えっ?」
思わず声を漏らした悪魔に、翔は強く言う。
「アンタ、復活したら何をしようと企んでる?!」
「フフッ♪そこですか……まあ、詳しくはお話できませんが、私個人として叶えたい事がありますので……」
悪魔は内容を濁したが、翔はそれ以上は追及しなかった。
どちらにせよ、悪魔のやる事。
その内容がいい事でないのは、間違いないと思ったからだ。
「そうか……じゃあ、もう一つ教えてくれ」
「えぇ、構いませんよ」
「魂を売るってのは、具体的にはどういう事なんだ?何が起こって、なぜルミの奪還に繋がるのかを知りたい」
翔がそう問いかけると、悪魔は胸の前で軽くを両手を叩いた。
禍々しい教会の中に似合わない、パンッという軽快な音が響く。
「そうです翔さん♪ここが一番大切な所です」
そうなのだ。
翔は悪魔の復活に手を貸すのは嫌なのだが、ルミを取り戻す事の方が重要なのだ。
その為に魂を差し出すと、一体何がどうなるのか?
翔にとって、この契約の内容が一番重要な関心事だった。
「まず、魂を売るというのは、決してそのまま頂くという訳ではありません」
「ん?アンタに魂を渡すんじゃないのか?」
「いいえ、違います。翔さんの魂と契約をさせて頂き、そこから発せられるエネルギーを頂くという事です」
「ハッ、そんなんでいいのか。なんか、肩透かしを食らった気分だわ」
「私は復活の為に、翔さんの魂から発生するエネルギーを得る事こそが重要なので」
「そうか……で、その契約がなんでルミを助け出す事に繋がるんだ?」
すると悪魔は一瞬沈黙した後、翔に向けてグッと瞳を大きく開いた。
「授けるからです。『悪魔の瞳』を」
悪魔のその眼差しにゾクッとした物を感じた翔は、直感的に分かった。
この契約が、やはりとんでもない物だという事を。
けれどここまで聞いた以上、それが何なのかをハッキリさせたい気持ちに駆られる。
「悪魔の瞳?」
「そうです。翔さんに悪魔の瞳を授けます。全てを見通す力を持つ、悪魔の瞳を」
「全てを見通す力?」
「えぇ、悪魔であればそれが可能な事、翔さんならもうお分かりでしょう」
翔はここまでのやり取りを聞いて、納得するしかなかった。
自分のこれまでの事や、心を完全に見抜かれてきたから。
「た、確かにそうだな……」
「この悪魔の瞳の力は、目の前の相手の心だけではありません。相手の過去や、物事の真実や最適解も見通す事が可能です」
「ス、スゲーな……それ!」
「なので、この力があれば世界一の作家になるだけではなく、あの朝比奈拳武をも倒す事が可能です」
「アイツを……!」
「えぇ、そうです」
突然凄まじい力を得れる事になった翔だが、一つ引っかかった。
「その悪魔の瞳、確かにスゲーと思うんだけど、なんつーかな……世界一の作家になるだけじゃダメなのかな?」
「ダメですね」
キッパリと答えた悪魔に、翔は逆に謎が深まった。
「なんで?世界一の作家になってアイツに俺を認めさせれば、ルミは解放されるんじゃないのか?」
「翔さん」
「なんだよ」
「彼を、朝比奈拳武を甘く見てはいけません」
「いや、そんな事ねーけど、アイツがそう言ったんだぜ」
悪魔はフゥッとため息を零した後、翔に少し厳しい眼差しを向けた。
「翔さん。彼は権力だけではなく絶大な力を持っています。また彼の性格上、翔さんが世界一の作家になったとしても、そのアナタに必ず牙を向けてくる事でしょう」
「くっそ……なんだよそれ」
「お気持ちは分かりますが、これから彼と戦っていけば分かります」
翔は納得いかない気持ちもあったが、聞き入れるしかなかった。
この悪魔がそう言う以上、それが本当の事なのだろうから。
「それよりも翔さん。悪魔の瞳を宿すにあたって、一つ大切な事があります」
「大切な事?」
平然とそう聞き返した翔だが、心臓はドキドキと波打っている。
この悪魔と契約の話を始めてから、ずっと感じているとてつもなくイヤな予感と共に。
そして、その答えが今告げられる事になる。
「えぇ、翔さん。悪魔の瞳を宿す時、アナタの人格は喪失するという事です」
翔は軽く脱力気味に言い放ったが、同時に気になる事があった。
「けどよ、なんでアンタは俺の魂を欲しがるんだ?」
すると、悪魔は少し斜め下へ瞳を伏せて少しせつなそうな表情を零した。
悪魔の中で、勇者達と戦った時の記憶が甦ったからだ。
「翔さん、私も先の戦いで勇者達から相当なダメージを被りました……回復させるには、貴方の素晴らしい魂のエネルギーが必要なのです」
そうは言いながらも今ですら圧倒的なオーラを放つ悪魔に、翔は一つ疑問を抱く。
───だったら契約(ディール)なんてせずに、俺から直接魂を奪えばいいだけの話なんじゃ……
「フフッ♪翔さん。そうはいかないんです」
「えっ?」
「翔さん、申し訳ございません。私、人の心が読めますので」
「ア、アンタ、本当に何でもありだな」
思わず後ずさった翔。
本能がより恐ろしさを感じてしまったのだ。
「何でもありという訳ではありませんが、まあ、人間よりは多少色々と出来ますね。ただ翔さん、魂は契約でしか頂く事は出来ないのです」
「なぜ?」
「その人の魂に命令出来るのは、その魂の持ち主だけですから」
「ふーん、そうか。よく分かったよ。けど……」
翔は納得すると同時に、また幾つか疑問が出てきた。
「その話の通りなら、俺はアンタという悪魔の復活の手助けをする事になるんだよな?」
「その通りです。その代わり、翔さんの願いも叶う。winwinじゃないですか♪」
「そこだ」
「えっ?」
思わず声を漏らした悪魔に、翔は強く言う。
「アンタ、復活したら何をしようと企んでる?!」
「フフッ♪そこですか……まあ、詳しくはお話できませんが、私個人として叶えたい事がありますので……」
悪魔は内容を濁したが、翔はそれ以上は追及しなかった。
どちらにせよ、悪魔のやる事。
その内容がいい事でないのは、間違いないと思ったからだ。
「そうか……じゃあ、もう一つ教えてくれ」
「えぇ、構いませんよ」
「魂を売るってのは、具体的にはどういう事なんだ?何が起こって、なぜルミの奪還に繋がるのかを知りたい」
翔がそう問いかけると、悪魔は胸の前で軽くを両手を叩いた。
禍々しい教会の中に似合わない、パンッという軽快な音が響く。
「そうです翔さん♪ここが一番大切な所です」
そうなのだ。
翔は悪魔の復活に手を貸すのは嫌なのだが、ルミを取り戻す事の方が重要なのだ。
その為に魂を差し出すと、一体何がどうなるのか?
翔にとって、この契約の内容が一番重要な関心事だった。
「まず、魂を売るというのは、決してそのまま頂くという訳ではありません」
「ん?アンタに魂を渡すんじゃないのか?」
「いいえ、違います。翔さんの魂と契約をさせて頂き、そこから発せられるエネルギーを頂くという事です」
「ハッ、そんなんでいいのか。なんか、肩透かしを食らった気分だわ」
「私は復活の為に、翔さんの魂から発生するエネルギーを得る事こそが重要なので」
「そうか……で、その契約がなんでルミを助け出す事に繋がるんだ?」
すると悪魔は一瞬沈黙した後、翔に向けてグッと瞳を大きく開いた。
「授けるからです。『悪魔の瞳』を」
悪魔のその眼差しにゾクッとした物を感じた翔は、直感的に分かった。
この契約が、やはりとんでもない物だという事を。
けれどここまで聞いた以上、それが何なのかをハッキリさせたい気持ちに駆られる。
「悪魔の瞳?」
「そうです。翔さんに悪魔の瞳を授けます。全てを見通す力を持つ、悪魔の瞳を」
「全てを見通す力?」
「えぇ、悪魔であればそれが可能な事、翔さんならもうお分かりでしょう」
翔はここまでのやり取りを聞いて、納得するしかなかった。
自分のこれまでの事や、心を完全に見抜かれてきたから。
「た、確かにそうだな……」
「この悪魔の瞳の力は、目の前の相手の心だけではありません。相手の過去や、物事の真実や最適解も見通す事が可能です」
「ス、スゲーな……それ!」
「なので、この力があれば世界一の作家になるだけではなく、あの朝比奈拳武をも倒す事が可能です」
「アイツを……!」
「えぇ、そうです」
突然凄まじい力を得れる事になった翔だが、一つ引っかかった。
「その悪魔の瞳、確かにスゲーと思うんだけど、なんつーかな……世界一の作家になるだけじゃダメなのかな?」
「ダメですね」
キッパリと答えた悪魔に、翔は逆に謎が深まった。
「なんで?世界一の作家になってアイツに俺を認めさせれば、ルミは解放されるんじゃないのか?」
「翔さん」
「なんだよ」
「彼を、朝比奈拳武を甘く見てはいけません」
「いや、そんな事ねーけど、アイツがそう言ったんだぜ」
悪魔はフゥッとため息を零した後、翔に少し厳しい眼差しを向けた。
「翔さん。彼は権力だけではなく絶大な力を持っています。また彼の性格上、翔さんが世界一の作家になったとしても、そのアナタに必ず牙を向けてくる事でしょう」
「くっそ……なんだよそれ」
「お気持ちは分かりますが、これから彼と戦っていけば分かります」
翔は納得いかない気持ちもあったが、聞き入れるしかなかった。
この悪魔がそう言う以上、それが本当の事なのだろうから。
「それよりも翔さん。悪魔の瞳を宿すにあたって、一つ大切な事があります」
「大切な事?」
平然とそう聞き返した翔だが、心臓はドキドキと波打っている。
この悪魔と契約の話を始めてから、ずっと感じているとてつもなくイヤな予感と共に。
そして、その答えが今告げられる事になる。
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