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第二章 天翔零と『悪魔の瞳』
D.E.R─30 悪魔の契約と願いの代償
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「ルミの奪還?!」
思わず声を上げた翔。
目の前の悪魔の口から、今、翔が一番願っている事。
それが叶うと言われたからだ。
「そうです。私と契約すれば可能です。そして、悪魔は契約に関して決して嘘をつきません」
悪魔から言い放たれたその言葉に、沈んでいた翔の心が一気に脈打つ。
「ルミを……」
「えぇ、取り戻せますよ翔さん。アナタが愛する、あの朝比奈瑠美さんを」
翔の心臓がドクンと波打ち、脳裏に次々に浮かぶ。
翔に向かい無邪気に笑いかけてきたりプーっと膨れたりする、幸せいっぱいなルミの姿が。
それは、二人が愛し合った短くも幸せだった日々の記憶。
「ルミ……」
翔は思わず声を漏らしたが、同時に嫌でも甦る。
その幸せだった日々を、突然根こそぎ奪われた事。
朝比奈拳武の圧倒的な力によって、完膚無きまでに叩き潰された事が。
「どうやって……どうやって取り戻すんだよ!アイツから!」
憤る翔に悪魔は不敵な笑みを向ける。
まるで、その言葉を待っていたかのような笑み。
「それを今からお伝えしましょう。それこそが、この契約(ディール)の内容なのですから」
悪魔は翔にそう告げ一呼吸置くと、翔から少し身体を離して両手を広げるポーズを取った。
スタイリッシュな体型と合わさり、まるで後ろに黒い後光が指すようだ。
「まず翔さん、貴方の魂は素晴らしいです。もうお気づきかもしれませんが、この教会自体貴方の魂が引き寄せたモノでございます。ここは、選ばれた者しか辿り着く事は出来ません」
翔はそう言われて悪い気はしなかったが、同時にハッとし戦慄を覚えた。
有り得ない話だが、この教会は半分異界。
いや、完全に異世界かもしれない。
少なくとも今自分は、現実世界には存在しない教会にいる事が分かったから。
───そうか……やけに変わった教会だと思った。
けれど、今さらそれについてジタバタする気にはならなかった。
今日は、これで驚くにはあまりにも色々な事が起こり過ぎている。
何より、今翔自身の目の前にいるのは、まごう事無き悪魔なのだから。
「悪魔に魂を褒められるのがいいのかよく分からんけど、それと契約(ディール)、一体何の関係が……」
翔はそこまで尋ねた時、自身の言葉にハッとした。
「お前に、俺の魂を売れという事か」
二イッと笑みを浮かべる悪魔。
「流石ですね翔さん。その通りです。そうすれば、必ず願いは叶います」
そして悪魔は瞳を妖しく輝かせ、その光で飲み込むように翔を見つめた。
「アナタの魂と引き換えに」
思わず声を上げた翔。
目の前の悪魔の口から、今、翔が一番願っている事。
それが叶うと言われたからだ。
「そうです。私と契約すれば可能です。そして、悪魔は契約に関して決して嘘をつきません」
悪魔から言い放たれたその言葉に、沈んでいた翔の心が一気に脈打つ。
「ルミを……」
「えぇ、取り戻せますよ翔さん。アナタが愛する、あの朝比奈瑠美さんを」
翔の心臓がドクンと波打ち、脳裏に次々に浮かぶ。
翔に向かい無邪気に笑いかけてきたりプーっと膨れたりする、幸せいっぱいなルミの姿が。
それは、二人が愛し合った短くも幸せだった日々の記憶。
「ルミ……」
翔は思わず声を漏らしたが、同時に嫌でも甦る。
その幸せだった日々を、突然根こそぎ奪われた事。
朝比奈拳武の圧倒的な力によって、完膚無きまでに叩き潰された事が。
「どうやって……どうやって取り戻すんだよ!アイツから!」
憤る翔に悪魔は不敵な笑みを向ける。
まるで、その言葉を待っていたかのような笑み。
「それを今からお伝えしましょう。それこそが、この契約(ディール)の内容なのですから」
悪魔は翔にそう告げ一呼吸置くと、翔から少し身体を離して両手を広げるポーズを取った。
スタイリッシュな体型と合わさり、まるで後ろに黒い後光が指すようだ。
「まず翔さん、貴方の魂は素晴らしいです。もうお気づきかもしれませんが、この教会自体貴方の魂が引き寄せたモノでございます。ここは、選ばれた者しか辿り着く事は出来ません」
翔はそう言われて悪い気はしなかったが、同時にハッとし戦慄を覚えた。
有り得ない話だが、この教会は半分異界。
いや、完全に異世界かもしれない。
少なくとも今自分は、現実世界には存在しない教会にいる事が分かったから。
───そうか……やけに変わった教会だと思った。
けれど、今さらそれについてジタバタする気にはならなかった。
今日は、これで驚くにはあまりにも色々な事が起こり過ぎている。
何より、今翔自身の目の前にいるのは、まごう事無き悪魔なのだから。
「悪魔に魂を褒められるのがいいのかよく分からんけど、それと契約(ディール)、一体何の関係が……」
翔はそこまで尋ねた時、自身の言葉にハッとした。
「お前に、俺の魂を売れという事か」
二イッと笑みを浮かべる悪魔。
「流石ですね翔さん。その通りです。そうすれば、必ず願いは叶います」
そして悪魔は瞳を妖しく輝かせ、その光で飲み込むように翔を見つめた。
「アナタの魂と引き換えに」
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