27 / 35
第一章 出逢ってから、奪われるまで
D.E.R─26 ごめんね、翔。ずっと一緒にいたかったよ……
しおりを挟む
「イヒッ……イヒッ……!」
拳武は狂喜の笑みを浮かべると、ルミの方へ振り向いた。
「どうやら翔くんと話しても、私の誠意も慈悲も伝わらないようだ。なのでルミ、お前に決めてもらう」
「パパ……一体何を考えてるの?」
拳武の恐ろしさに震えながら声を絞り出したルミに、拳武は告げる。
実に悪魔的愉悦に満ちた顔をしながら。
「なぁにルミ、簡単な事だ。お前が翔くんと縁を切ると言わない限り、今から翔くんの指が一本一本無くなっていく事になる。作家としての命の指が、一本、一本……!ヒーッヒッヒッヒッ」
「やめてパパ!!」
ルミは、気が狂いそうになりながら叫んだ。
分かっているからだ。
これが脅しでもなんでもなく、本気である事が。
むしろ拳武は躊躇うどころか、楽しんでそれをやる人間。
だからこそルミは、翔を絶対そんな目に遭わせたくない。
けれど凌牙と流星はルミの叫びに止まる事なく、翔の手を力ずくで開かせた。
凌牙と流星にとって、拳武の命令は何よりも絶対であるからだ。
翔をガシッと押さえつける凌牙と、スッとナイフを構えた流星。
拳武はそれが自らの瞳に映った瞬間、心から悪魔的愉悦の笑みを浮かべた。
まるで、観たくてたまらなかった映画の幕が上がったかのように。
「さあ!ショータイムだ♪まずは一本目ぇ!」
拳武の顔が悪魔的狂喜で染め上げられ、流星は氷のような眼差しで翔を見下ろしながら、翔の指を目掛けてナイフをサッと振り下ろした。
その瞬間、ルミは部屋中が震える程大きな叫びを上げる。
「翔とは別れるからっ!!!」
ルミが悲しみで顔を歪め涙を迸らせた時、流星のナイフを振り下ろす手は翔の指の寸前で、間一髪ピタッと止まった。
「ハァッ……ハァッ……ううっ……翔、翔……」
息を切らし涙と共に翔の名前を溢しながら、耐えきれない悲しみに身体を震わすルミ。
拳武はそんなルミを憐れむどころか、満足気な悪魔的笑みを向けている。
「ん~~ホントは最低2.3本くらい切ってから決めて欲しかったんだが、まあいい。目的は達した」
拳武が慈悲や誠意と対極にある言葉を放った時、ルミは膝を曲げ、その場にペタンとへたりこんでうつむいた。
まるで全ての糸が切れたようなルミは、そのまま翔に話続ける。
瞳から大粒の涙をポロポロ溢しながら。
「翔……翔……本当に、ごめんね。私の事はもう忘れて幸せになってね。今まで本当にありがとう……私、翔と一緒にいれて、幸せだったよ。私と別れても、翔の夢だけは捨てないでねっ……」
愛する翔を守る為に、その翔と永遠の別れを選んだルミ。
心が引きちぎられ、そこから翔との思い出が溢れてくる。
もう戻れない日々と、二度と会えない翔の笑顔。
それがルミは悲しくて悲しくて、気が狂いそうになるほど悲しくて、でも、ルミはその絶望の中にあっても、自分じゃなく、翔の心から流れ出ている血を止めようとしていた。
まるで、泣き崩れる聖女のように……
ルミのその姿を見た翔は、ルミを救えなかった事が心から悔しくて悲しくて、どうしようもなくやりきれなくて、悔恨の言葉を叫ぶ。
うつ伏せの姿のまま歯を食い縛り、涙で滲む瞳にルミを映したまま。
「ルミ……!くっ……!こんな事、こんな事ありかよっ……!!!」
拳武の屈強な部下達よって床に押さえつけられたまま、絶望の嗚咽を漏らした翔。
それを拳武は、静かに見下ろす。
冷徹な眼差しと共に。
「翔くん。これが力だ。力の無いモノは何も出来ない。キミの小説が誰にも認められないように」
「……うるせぇ!黙れっ!」
声を絞り出して叫ぶ翔。
すると拳武は膝を曲げ、怒りと涙にまみれた翔の顔をニタァっとしながら覗き込む。
「クックック……もう分かっているだろう、翔くん。キミの小説が、キミその物なのだ」
「……くっ!」
心の奥で密かに感じていた事を、一番言われたくない相手から心に突き刺された翔。
翔の心が絶望に染まり、心に黒い十字架が刻まれた。
「まあ、ルミを解放する事……翔くん、もしキミが日本一のベストセラー作家になれば、考えてやらん事もない。が、そんな事は所詮、夢のまた夢よ……」
拳武はなぜか一瞬哀しみを湛えた瞳で翔にそう告げると、その場から立ち去った。
側近の凌牙と流星。
そして、涙の止まらぬルミを連れて……
愛するルミを連れ去られ絶望と共に床に伏せたまま、立ち上がる気力さえも無くした翔。
けれど、その時窓から吹き込む風が、翔のボツになった小説の原稿をパラパラとめくった。
まるでここから始まる、逆転の物語を告げているかのように……!
拳武は狂喜の笑みを浮かべると、ルミの方へ振り向いた。
「どうやら翔くんと話しても、私の誠意も慈悲も伝わらないようだ。なのでルミ、お前に決めてもらう」
「パパ……一体何を考えてるの?」
拳武の恐ろしさに震えながら声を絞り出したルミに、拳武は告げる。
実に悪魔的愉悦に満ちた顔をしながら。
「なぁにルミ、簡単な事だ。お前が翔くんと縁を切ると言わない限り、今から翔くんの指が一本一本無くなっていく事になる。作家としての命の指が、一本、一本……!ヒーッヒッヒッヒッ」
「やめてパパ!!」
ルミは、気が狂いそうになりながら叫んだ。
分かっているからだ。
これが脅しでもなんでもなく、本気である事が。
むしろ拳武は躊躇うどころか、楽しんでそれをやる人間。
だからこそルミは、翔を絶対そんな目に遭わせたくない。
けれど凌牙と流星はルミの叫びに止まる事なく、翔の手を力ずくで開かせた。
凌牙と流星にとって、拳武の命令は何よりも絶対であるからだ。
翔をガシッと押さえつける凌牙と、スッとナイフを構えた流星。
拳武はそれが自らの瞳に映った瞬間、心から悪魔的愉悦の笑みを浮かべた。
まるで、観たくてたまらなかった映画の幕が上がったかのように。
「さあ!ショータイムだ♪まずは一本目ぇ!」
拳武の顔が悪魔的狂喜で染め上げられ、流星は氷のような眼差しで翔を見下ろしながら、翔の指を目掛けてナイフをサッと振り下ろした。
その瞬間、ルミは部屋中が震える程大きな叫びを上げる。
「翔とは別れるからっ!!!」
ルミが悲しみで顔を歪め涙を迸らせた時、流星のナイフを振り下ろす手は翔の指の寸前で、間一髪ピタッと止まった。
「ハァッ……ハァッ……ううっ……翔、翔……」
息を切らし涙と共に翔の名前を溢しながら、耐えきれない悲しみに身体を震わすルミ。
拳武はそんなルミを憐れむどころか、満足気な悪魔的笑みを向けている。
「ん~~ホントは最低2.3本くらい切ってから決めて欲しかったんだが、まあいい。目的は達した」
拳武が慈悲や誠意と対極にある言葉を放った時、ルミは膝を曲げ、その場にペタンとへたりこんでうつむいた。
まるで全ての糸が切れたようなルミは、そのまま翔に話続ける。
瞳から大粒の涙をポロポロ溢しながら。
「翔……翔……本当に、ごめんね。私の事はもう忘れて幸せになってね。今まで本当にありがとう……私、翔と一緒にいれて、幸せだったよ。私と別れても、翔の夢だけは捨てないでねっ……」
愛する翔を守る為に、その翔と永遠の別れを選んだルミ。
心が引きちぎられ、そこから翔との思い出が溢れてくる。
もう戻れない日々と、二度と会えない翔の笑顔。
それがルミは悲しくて悲しくて、気が狂いそうになるほど悲しくて、でも、ルミはその絶望の中にあっても、自分じゃなく、翔の心から流れ出ている血を止めようとしていた。
まるで、泣き崩れる聖女のように……
ルミのその姿を見た翔は、ルミを救えなかった事が心から悔しくて悲しくて、どうしようもなくやりきれなくて、悔恨の言葉を叫ぶ。
うつ伏せの姿のまま歯を食い縛り、涙で滲む瞳にルミを映したまま。
「ルミ……!くっ……!こんな事、こんな事ありかよっ……!!!」
拳武の屈強な部下達よって床に押さえつけられたまま、絶望の嗚咽を漏らした翔。
それを拳武は、静かに見下ろす。
冷徹な眼差しと共に。
「翔くん。これが力だ。力の無いモノは何も出来ない。キミの小説が誰にも認められないように」
「……うるせぇ!黙れっ!」
声を絞り出して叫ぶ翔。
すると拳武は膝を曲げ、怒りと涙にまみれた翔の顔をニタァっとしながら覗き込む。
「クックック……もう分かっているだろう、翔くん。キミの小説が、キミその物なのだ」
「……くっ!」
心の奥で密かに感じていた事を、一番言われたくない相手から心に突き刺された翔。
翔の心が絶望に染まり、心に黒い十字架が刻まれた。
「まあ、ルミを解放する事……翔くん、もしキミが日本一のベストセラー作家になれば、考えてやらん事もない。が、そんな事は所詮、夢のまた夢よ……」
拳武はなぜか一瞬哀しみを湛えた瞳で翔にそう告げると、その場から立ち去った。
側近の凌牙と流星。
そして、涙の止まらぬルミを連れて……
愛するルミを連れ去られ絶望と共に床に伏せたまま、立ち上がる気力さえも無くした翔。
けれど、その時窓から吹き込む風が、翔のボツになった小説の原稿をパラパラとめくった。
まるでここから始まる、逆転の物語を告げているかのように……!
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説


ご飯を食べて異世界に行こう
compo
ライト文芸
会社が潰れた…
僅かばかりの退職金を貰ったけど、独身寮を追い出される事になった僕は、貯金と失業手当を片手に新たな旅に出る事にしよう。
僕には生まれつき、物理的にあり得ない異能を身につけている。
異能を持って、旅する先は…。
「異世界」じゃないよ。
日本だよ。日本には変わりないよ。



百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる