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新たな出会い(望の視点)~①
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喜多川望が、初めて飯岡巧に出会ったのは高校一年の終わり、桜が咲き始めた頃のことだ。学校が春休みに入ったため、友達と夜な夜な繁華街を歩く日が続いていた。目的はもちろんお金を稼ぐためである。
望達のように決して可愛く無くても、化粧で誤魔化せばJKと言うだけでスケベ心を持って近づいてくる馬鹿なおじさん達がいたからだ。また女子から相手にされたことがない、冴えないオタク臭漂う若い男達も金に物を言わせて寄ってきた。
最後の一線だけは越えないようにしながら、適当に相手をする。時には多くお金を出しそうな相手にだけ、嫌々ながら鳥肌を立てつつも我慢して足や腕などを触れさせることはあった。
ただ八千草の繁華街にはJKビジネスの店が多いと、マスコミが取り上げ騒ぎ出してから警察や補導員等の監視も厳しくなった。さらに望が所属していた店舗も摘発を受けたため、一時期仕事が無くなったのだ。
そのため中学時代からの友人である南沢絵里と二人で、別の店を探していた。探すと言っても契約する店選びは重要だ。
下手な所と関われば、売春まがいのことまで強制的にやらされる。または仲介手数料として、客が支払う金のほとんどを持っていかれる場合もあった。よって悪質な店との取引は、絶対に避けなければならない。
「あそこはやっと見つけたいい店だったのに。良心的で客質も悪くなかったよね」
「そう、際どいことをやらずに済んだからね。その分、貰えるお金も少なかったけど安全だったし」
「もっと危ないことをやっている店とか他にいくらでもあるのに、どうしてそういう店は捕まんないのかな。完全に売りをやっている子達が出入りしている所って、いっぱいあるよね」
「そうだよ。裏で警察と暴力団とが繋がってたりして。ウチらの店は手軽にJKと遊べるって評判だったし、儲かっていたでしょ。だから逆に目をつけられて潰された、とか」
「それあるかも。あとあの店は、バックに危ない連中がいるようにも見えなかったしね。だからかも。そう言うところの方が警察も捕まえやすいし、取り締まりはしっかりやっていますよ、って世間にもアピールできるじゃない。でも本当にやばい店ほど、上手く残っているんだよね。店の名前や場所とかサービス内容をコロコロ変えたりして」
「だからって、私達がそんなやばい店と関わったら何されるか判んないもんね」
「お金は欲しいけど、危ないことまでして稼ぎたくはないから」
「でもそろそろやばくない? 私、この春休み中はそれなりに稼いで置きたかったんだよね。学年が上がったら、また色々お金がかるじゃない。あれやこれやと買わなきゃいけないし、修学旅行費の積立だってあるからさ」
「ほんと勘弁してほしいよ。私立でもないのに、高校へ通っているだけでやたらお金がかかるのって。でもお金持っている奴らは全く平気だし、休み中に家族で海外旅行に行くとか話している奴らを見ていると、ほんとぶっ飛ばしたくなるよね」
望も絵里も両親は共働きをしているが稼ぎは少なく、古いアパート暮らしでその日その日を食べて生きていくのに精一杯だ。高校生活をするのにも、教科書に加えて参考書が必要だったり、制服や体操着、室内靴等その他諸々に払ったりするお金は馬鹿にならなかった。
お金持ちでなくても、それなりに収入がある家庭なら問題ないのかもしれない。だが望達のような低所得層からすれば、高校なんかにいくよりも働いた方がどれだけ家の為になるかといつも思う。
それでも望も絵里も、両親からは中卒である自分達のようになって欲しくないと説得された。その為少なくとも高校は卒業してほしいとの要望を叶えるため、受験勉強をしてなんとか近くの公立高校に入ることができたのだ。
しかし望も絵里も下に弟と妹がいるため、放課後も土日もバイト、バイトの毎日だ。なんとか日頃の生活費と、将来における彼らの学費を稼ぐために必死で、勉強など授業時間以外にやっている余裕なんかなかった。
両親には悪いけれど、折角入った高校だがこんな生活を送って高卒という名ばかりの学歴を手に入れても、貧しい生活から脱却できる就職などできるとは思えない。それが一年通って見て判ったことだ。
しかも同級生で中流と呼ばれる程度の生活をしている子達のほとんどが、一人っ子または子供が二人という家庭が多い。親の学歴はほとんど大卒ばかりだ。
裕福な家庭であればある程その傾向は強いと思う。貧乏なのに子供が多い望や絵里のような家庭は、自らの首を絞めているのかもしれない。
「世の中は少子化だ、なんだと騒いでいるみたいだけど、結局子供を多く産んだ方が損だと思うから当たり前じゃん。金持ちの家ほど子供を産まないし、子供の教育にお金をかけて、裕福な生活を送らせて大学に行かせて、その子が大きくなればまた裕福な家庭を築くんでしょ。その繰り返しだからね」
絵里はそうぼやいていた。だからといって、絵里も望も自分達の下に弟妹がいることが嫌だとは思わない。望の弟は中二で妹は小四、絵里のところは妹が中一で弟が小五だ。
望が中学に入学するのをきっかけに今住むアパートに引っ越し、先に入居していた絵里の家族と家族ぐるみの付き合いをしていた。子供達の年齢がそれぞれ近かったからだろう。
生活水準も境遇も似通っている望と絵里はすぐに仲良くなり、貧しくてもお互い家庭はうまくいっている。忙しく働く両親の代わりに望も弟や妹の面倒を看てきたため、時折生意気で喧嘩もするが基本的には可愛くて仕方がない。
絵里の家もそうだという。妹や弟は自分の子供のようにも思えると、二人で笑って話し合ったことがあった。
だからこそ二人は、彼らの為にもお金を稼がなくてはいけなかったのだ。しかも学校が休みに入ったこの時期は、一日中働くことできる貴重な期間であり稼ぎ時である。それなのに肝心の雇い主が閉店に追い込まれたため、望達は焦っていた。
そこで慎重に次の店を探す繋ぎとして、二人は夜の繁華街を歩きながら今まで相手をしてきた客を見つけると、直接声をかけて交渉をすることで自ら仕事を取り始めたのだ。
そうすると今までと違い仲介料を取られなくなった分、直接自分達に入るお金が増える。そこで味をしめて、調子に乗ったのがいけなかった。
望達のように決して可愛く無くても、化粧で誤魔化せばJKと言うだけでスケベ心を持って近づいてくる馬鹿なおじさん達がいたからだ。また女子から相手にされたことがない、冴えないオタク臭漂う若い男達も金に物を言わせて寄ってきた。
最後の一線だけは越えないようにしながら、適当に相手をする。時には多くお金を出しそうな相手にだけ、嫌々ながら鳥肌を立てつつも我慢して足や腕などを触れさせることはあった。
ただ八千草の繁華街にはJKビジネスの店が多いと、マスコミが取り上げ騒ぎ出してから警察や補導員等の監視も厳しくなった。さらに望が所属していた店舗も摘発を受けたため、一時期仕事が無くなったのだ。
そのため中学時代からの友人である南沢絵里と二人で、別の店を探していた。探すと言っても契約する店選びは重要だ。
下手な所と関われば、売春まがいのことまで強制的にやらされる。または仲介手数料として、客が支払う金のほとんどを持っていかれる場合もあった。よって悪質な店との取引は、絶対に避けなければならない。
「あそこはやっと見つけたいい店だったのに。良心的で客質も悪くなかったよね」
「そう、際どいことをやらずに済んだからね。その分、貰えるお金も少なかったけど安全だったし」
「もっと危ないことをやっている店とか他にいくらでもあるのに、どうしてそういう店は捕まんないのかな。完全に売りをやっている子達が出入りしている所って、いっぱいあるよね」
「そうだよ。裏で警察と暴力団とが繋がってたりして。ウチらの店は手軽にJKと遊べるって評判だったし、儲かっていたでしょ。だから逆に目をつけられて潰された、とか」
「それあるかも。あとあの店は、バックに危ない連中がいるようにも見えなかったしね。だからかも。そう言うところの方が警察も捕まえやすいし、取り締まりはしっかりやっていますよ、って世間にもアピールできるじゃない。でも本当にやばい店ほど、上手く残っているんだよね。店の名前や場所とかサービス内容をコロコロ変えたりして」
「だからって、私達がそんなやばい店と関わったら何されるか判んないもんね」
「お金は欲しいけど、危ないことまでして稼ぎたくはないから」
「でもそろそろやばくない? 私、この春休み中はそれなりに稼いで置きたかったんだよね。学年が上がったら、また色々お金がかるじゃない。あれやこれやと買わなきゃいけないし、修学旅行費の積立だってあるからさ」
「ほんと勘弁してほしいよ。私立でもないのに、高校へ通っているだけでやたらお金がかかるのって。でもお金持っている奴らは全く平気だし、休み中に家族で海外旅行に行くとか話している奴らを見ていると、ほんとぶっ飛ばしたくなるよね」
望も絵里も両親は共働きをしているが稼ぎは少なく、古いアパート暮らしでその日その日を食べて生きていくのに精一杯だ。高校生活をするのにも、教科書に加えて参考書が必要だったり、制服や体操着、室内靴等その他諸々に払ったりするお金は馬鹿にならなかった。
お金持ちでなくても、それなりに収入がある家庭なら問題ないのかもしれない。だが望達のような低所得層からすれば、高校なんかにいくよりも働いた方がどれだけ家の為になるかといつも思う。
それでも望も絵里も、両親からは中卒である自分達のようになって欲しくないと説得された。その為少なくとも高校は卒業してほしいとの要望を叶えるため、受験勉強をしてなんとか近くの公立高校に入ることができたのだ。
しかし望も絵里も下に弟と妹がいるため、放課後も土日もバイト、バイトの毎日だ。なんとか日頃の生活費と、将来における彼らの学費を稼ぐために必死で、勉強など授業時間以外にやっている余裕なんかなかった。
両親には悪いけれど、折角入った高校だがこんな生活を送って高卒という名ばかりの学歴を手に入れても、貧しい生活から脱却できる就職などできるとは思えない。それが一年通って見て判ったことだ。
しかも同級生で中流と呼ばれる程度の生活をしている子達のほとんどが、一人っ子または子供が二人という家庭が多い。親の学歴はほとんど大卒ばかりだ。
裕福な家庭であればある程その傾向は強いと思う。貧乏なのに子供が多い望や絵里のような家庭は、自らの首を絞めているのかもしれない。
「世の中は少子化だ、なんだと騒いでいるみたいだけど、結局子供を多く産んだ方が損だと思うから当たり前じゃん。金持ちの家ほど子供を産まないし、子供の教育にお金をかけて、裕福な生活を送らせて大学に行かせて、その子が大きくなればまた裕福な家庭を築くんでしょ。その繰り返しだからね」
絵里はそうぼやいていた。だからといって、絵里も望も自分達の下に弟妹がいることが嫌だとは思わない。望の弟は中二で妹は小四、絵里のところは妹が中一で弟が小五だ。
望が中学に入学するのをきっかけに今住むアパートに引っ越し、先に入居していた絵里の家族と家族ぐるみの付き合いをしていた。子供達の年齢がそれぞれ近かったからだろう。
生活水準も境遇も似通っている望と絵里はすぐに仲良くなり、貧しくてもお互い家庭はうまくいっている。忙しく働く両親の代わりに望も弟や妹の面倒を看てきたため、時折生意気で喧嘩もするが基本的には可愛くて仕方がない。
絵里の家もそうだという。妹や弟は自分の子供のようにも思えると、二人で笑って話し合ったことがあった。
だからこそ二人は、彼らの為にもお金を稼がなくてはいけなかったのだ。しかも学校が休みに入ったこの時期は、一日中働くことできる貴重な期間であり稼ぎ時である。それなのに肝心の雇い主が閉店に追い込まれたため、望達は焦っていた。
そこで慎重に次の店を探す繋ぎとして、二人は夜の繁華街を歩きながら今まで相手をしてきた客を見つけると、直接声をかけて交渉をすることで自ら仕事を取り始めたのだ。
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