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三郷達から見た船内の様子-②
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彼はこちらの言わんとする意図を理解できたらしい。先程よりは表情が和らいだ。
真理亜は心の中で溜息をついていた。二十年余り会っていなかった甥と過ごした今回の旅で、知らずにいた事が多少なりとも判った。まず彼は両親、特に父親から専業の小説家になった事で、相当な反感を買っていることだ。
つまり真理亜の兄との関係がこじれていた。学生時代から小説家を目指していたけれども、親に猛反対されて止む無く大学へと進学したという。それでも早稲田の文学部に入学したのだから大したものだ。
その上在学中に小説は書き続けながらも、親の目を気にして普通に就職した。だが入社三年目の時に応募した作品で賞を取り、プロデビューすることとなったのだ。
長い間夢見てきた職業につけたことは、真理亜からすれば称賛に値する。しかも二足の草鞋を履きながら、成果を出したのだ。褒められはしても、叱られる事ではない。
だが兄達は違った。まだ諦めていなかったのか、と直輝を責めたという。それでも契約がある為、本は出版される。しかもそれなりに評判が良く、二作目の出版も直ぐに決まったらしい。だが兄夫婦だけでなく真理亜の両親達も、苦々しく思っていたようだ。
幸い彼の勤めている会社が理解を示してくれたおかげで、副業を責められるどころか応援して貰ったと彼から聞いた。にもかかわらず本業に支障が出ない内に、小説を書くのは止めろとまで兄達は言い出したという。
そこでこれまでは親の言う事を聞いてきた直輝に、遅い反抗期が訪れたのだろう。まだプロとして書き続けるのは難しいと、担当編集者等は兼業作家として続けるよう忠告していたけれど、彼はある時退職願を会社に提出して専業作家になると決断したのだ。
これに兄達は激怒したらしい。大学入学時から親元を離れて生活していた直輝だが、今後二度と家に帰って来るなと、親子の絶縁を申し渡されたという。
ここで上等だと言い返すほどの根性が彼にあれば、良かったのかもしれない。だが彼は怖気づいてしまったのだ。
実際その後三作目に取り掛かってはみたものの、編集者の目も厳しくなったからか、プロット段階で立て続けに没を食らい、意気消沈してしまったらしい。その為切羽詰まり、真理亜に連絡したことで今回の旅に繋がった。
しかしたった二週間余りの旅で、人が急に変われるはずもない。どうにかしようともがいていた事は確かだ。けれども真理亜から見ると、真剣さが足りないと感じていた。
必死な思いで面識のない叔母に連絡し頭を下げてきた割には、いざ取材が始まった時点で、彼から熱意は余り伝わってこなかったのだ。その為拍子抜けしたこともあり、こちらも聞かれた点に対しては答えたものの、最初は積極的に教えようとしなかった。
だが彼への負い目もあった為、まずは社会人としての心構えやマナーなど、ごく基本的な部分についての指導を優先した。それから徐々に彼の欠点を指摘し、かつ長所と思われる部分を伸ばす事を意識しながら、彼の作品作りに協力するようになったのだ。
この旅で彼はそれなりに成長できたと思う。それでもやや物足りなさは残った。彼の元来持つ気の弱さがそうさせるのか、自信の無さが表れているのかは不明だ。それに二十八歳という若さを考慮すれば、仕方ないのかもしれない。
彼も頭までは判っているのだ。でも自分だけではどうしようもない、超えられない壁にぶつかっているのだろう。真理亜にもそうした経験がある。そう思うと彼を責めることなど出来ない。何故なら自分は壁を超えることを諦め、逃げた。しかも三度も、だ。
真理亜は己の過去に思いを馳せ、不安でしょうがなかった頃を思い出した。
大学卒業後、真理亜は全国どこでも転勤があり得る総合職として、損害保険会社に就職した。しかも最初の勤務地が神戸の三宮支店だ。そこで赴任してから四年が過ぎた二十七歳の時、阪神淡路大震災を経験した。
当時借り上げの、鉄筋五階建てマンションの四階に住んでいた。まだ目覚める前の朝方、これまで経験したことのない揺れによって起こされたあの恐怖は、三十年近く経つ今でも忘れられない。
幸いマンション自体は無事だった為、逃げる時に足首を軽く捻った程度の軽傷で済んだ。仕事場だった三宮ビルも、さらに被害は小さかった。
その為地震対策本部が設置され、全国各地から地震対応の応援が駆け付けた。真理亜も担当代理店や顧客対応に追われ、忙しい毎日を過ごした。
その九か月後にひと段落着いたこともあり、地元に近い関東への異動辞令が出た。しかしあれから高いマンションには恐ろしくて住めなくなり、借り上げマンションもできるだけ低い部屋を探して貰うようになったのだ。
ちなみに真理亜は二十八歳で結婚した。相手は大学時代から付き合っていた恋人だ。関東への異動で彼との距離が縮まったこともきっかけになったが、震災の経験が大きく影響していたのは否定できない。
死ぬかもしれないと思う揺れを、一人でいた時に感じたからだろう。このままではいけないとの意識が働き、誰か一緒に居て欲しいとの気持ちが強くなった。それが結婚へと向かわせる後押しになったのだ。
直輝は、その時の真理亜と同じ年齢である。後に五年で破綻してしまう、結婚という道に逃げ込んだ自分自身と比べれば、ずっとマシかも知れない。それに取材依頼を受けた身とはいえ、今回の船旅に誘ったのは真理亜だ。彼は単に巻き込まれただけだった。
そう思い直し、追い詰めるような厳しい言葉を浴びせた事をもう一度詫びた。
「御免なさい。こんな危険なクルーズ船に乗る羽目になったのは、私のせいだったわね」
だが彼は首を強く振って否定した。
「いいえ、それは違います。無理を言ったのは、僕からです。この船旅への同行も自分が決めたことで、嫌なら断ることだって出来たのですから」
「だからって、あなたにプレッシャーをかけ過ぎたのは確かだから」
「いえ、それは期待しているからこそですよね。真理亜さんの場合の叱咤はその表れだと、この二週間余りで理解できました。言っても無駄だと思う人には、何も言わない。そう仰っていた事がありましたよね。城之内さんに、不必要な労力はかけたくありませんとズバリ言った真理亜さんの言葉は、とても印象的でした」
最初の寄港地だった、上海での話をしているらしい。取引先の企業と関係する役人と会食した際、彼は自らの懐に入る賄賂ばかり気にしていた。だが肝心な情報を出そうとしなかった為に、単なる出し惜しみではなく重要案件を任される立場にいないと悟った。
よって関わらない方がマシと判断した為、城之内に直ぐ立ち去る提案をしたのだ。
「よく覚えていたわね」
「それはそうですよ。だってまだ最近担当し始めたばかりの大口顧客に、遠慮なく言い切っていましたよね。資産運用のプランナーって、そんなに立場が強いのかと驚いたくらいです。でも日が経つにつれて、そうではないと気付きました」
「褒められているのか、貶されているのか良く分からないけど」
「感心しているんです。単に我が強いのではなく、あれは顧客の事を真摯に考えた上での行動だったと、後で思い知らされました。ケースによっては体を張ったり頭を下げたりして、相手側から有利な条件を引き出し、情報を掴んでいたと聞いています」
「そんな事、私は話してないでしょ。誰が言ったの」
「主に八神さんです。真理亜さんは懇親の場でも、さり気なく先方に探りを入れていた。相手側からセクハラまがいの事をされながら、上手く受け流しつつ機嫌を取っていたようですね。時には酔った相手に怒鳴られ、何も悪く無いのに謝ったとも聞きました。城之内さんも噂以上の遣り手だと、満足気にしていたようですよ」
これには苦笑せざるを得ず、皮肉を込めて言った。
「それは良かった。ただ八神さんは、余計な話をしてくれたようね」
「確かに甥っ子には、知られたくない姿だとは思います。でもその話を聞いて、プロの仕事とは何かを学びました。それに比べ僕は何て不甲斐ないと、情けなかったです。でも現在僕達が置かれた状況を考えれば、そんな弱気な事を言っている場合じゃないから、真理亜さんは叱ってくれたんですよね。僕は甘えていました。親父に叱られても、ずっと言いなりになっていたから駄目なんですね。いざ自分の力で何か行動しようとしても、上手くいくはずがない。そう諦めている自分が、どこかにまだいるんだと思います。それじゃいけないと一念発起したつもりなのに」
「会社を辞めて、専業作家になったことを言っているの?」
「初めて大きな反抗をした事自体は、全く後悔していません。でもその後が駄目でした」
「だから変わろうとして、私に連絡をしてきたんでしょ」
「はい。おかげで大変貴重な経験をさせて頂きました。すごく勉強になりましたし、いい刺激を受けたと思っています。でもこれで大丈夫かと言われれば、自信がありません。だからこんな態度になってしまうのでしょう」
そこから彼の目の色が変わった。断り得てから入り口に周り、真理亜の部屋へと入って来た。そこで距離を保った位置にある椅子に腰かけて言った。
「話を戻しますが、僕達や八神さんが陰性でした。そう考えると、城之内さんは犯人の手によって感染させられたという船長の話は確かでしょう。最初は単に自分達には関係ないと喜んでいましたが、こんな騒ぎが起こったら別の意図があるんじゃないかと疑ってしまいます」
どうやらスイッチが入ったようだ。心強く思いながらも顔には出さず尋ねた。
「どういう意味?」
「だっておかしくないですか。船の旅が終わろうとしている時に、新型ウィルスの感染者が出たという点。またVIPという事もあるでしょうけど、高齢者だから念の為にドクターヘリを要請した。これは日本近海まで近づいていたからこそ、そういう判断がされたのですよね。もしもっと遠ければ、もうしばらく船内で様子を見ていたと思いませんか」
「そうね。ドクターヘリが往復できる距離がどの程度までなのかは知らないけど、症状が相当悪化しない限りは、医務室で処置されていたはず。それだけの設備が、ここでは整っているらしいから。それがこの船の売りでもあるからね」
「そこです。テロリストがこの船に、潜入していると仮定しましょう。それならいつからいたのか。もし最初からなら、何故このタイミングで行動を起こしたのかが疑問です」
彼の推理力を高める為、真理亜はわざと考えさせるように仕向けた。
「爆弾を持ち込めたのが、最後に寄ったマニラからしか無理だったのかもしれないわよ。 普通の税関と比べれば、クルーズ船は甘いと以前から指摘されているけど、この船は特定のVIPを招待してのクルーズだからね。実際私達も途中四か所で乗り降りしたけど、乗組員に対しては、それ程厳しく無かったのかもしれない。感染予防の確認は時間がかかったけど、最後に寄ったマニラだけは、甘くなった可能性はあるわよ」
「限られた招待客との乗組員で旅が始まっていますから、途中からテロリストが新たに乗り込むのは無理でしょう。でも爆弾などの武器を、警備が甘くなった途中のマニラで手に入れてから実行しようと、最初から計画していたのなら頷けます」
「でもそれと城之内さんが感染症を発症した事が、どう関わってくるっていうの?」
「マニラを出発してから、今日は四日目です。何故もっと早くどこかで爆弾をしかけ、シージャックしなかったのでしょうか。その方が救援を呼ばれたとしても、駆け付けるまで時間が稼げます。何が目的かは知りませんが、どこかへ逃げるにしても日本よりは、マニラなど島が多数ある地域で事件を起こした方が、犯人にとって得だと思いませんか」
確かにそうだ。もちろん日本近海にも、無人島を含め数多くの島は存在する。だが優秀な日本の海上保安庁等が動けば、どこへ隠れたとしても直ぐ追跡できるだろう。
フィリピンの警察が、日本より劣っているとまでは言わない。それでもマニラ周辺の近海の方が、素人目では逃走に向いているはずだ。あの周辺も大小様々島があり、逃走経路を確保しやすい。そこで真理亜は賛同した。
「確かに、何故日本に近づいたあのタイミングで、犯人達は行動を起こしたのか。そう考えれば、城之内さんの件が無関係とは思えなくなってくるわね」
「しかも尾翼の破壊だけなら爆薬も最小限で済むけど、与える衝撃はかなり大きい。感染者を外へ運びだせなくなっただけでなく、次に来る救助ヘリの着陸も阻止できたのですから。しかもただ邪魔するだけなら、上手くいけばドローンだけでも可能だったかもしれません。でもそれでは単なる事故扱いになりかねません」
「なるほど。最少の仕掛けで最大のダメージを与える事が目的だったら、今回の件は大成功ね。ヘリもだけど感染者が船内にいると思わせるだけで、恐怖を与えられる。つまり城之内さんを意図的に感染させた理由は、そこにあった訳ね」
「そう考えれば辻褄が合います。ピンポイントでVIPかつ高齢者の城之内さんを狙えば、乗員乗客だけでなく運営会社に対しても、大きな効果が得られます」
「そうね。この船での感染者が彼一人だったら、その確率はかなり高くなるわ。そうなるとテロリストは乗組員の中にいて、誰なのかも絞り込むこともできるでしょう」
「あ、そうか。城之内さんが口にする物にウイルスを入れたとすれば、乗客だとやや無理があります。調理部門やウエイター、バーテンダーや給仕係なら可能でしょう」
「いえ、バーだったらいつ城之内さんが寄るか、読めないから違うと思う。ウイルスを混入したのなら、恐らく犯人達は発症するタイミングも考えたはず。さっきの話から考えると、あまり早く発症しても困るでしょう。上陸してから発症したら遅すぎるし」
「発症のタイミングまで、コントロールできるものでしょうか。でも持ち込んだウイルスが、いつ頃症状が出ると予想できるものだったとしたら、その可能性はありますね」
「もちろん、乗客や他の乗組員の中にも仲間がいることは考えられる。一人や二人でこんな大きな船相手に、テロを仕掛けるとは思えないから」
「ウイルスや爆弾を持ち込んでいる事から考えれば、それなりの組織が動いていると考えていいでしょう。先程話していたように、相当な身代金が期待できますからね」
「過去にもそういう事例が、確かあったわ。映画にもなったんじゃなかったかな」
彼と今回の事件における意見を交わしながら、真理亜は再びかつて味わった苦い思い出を頭に浮かべていた。
真理亜が結婚相手は、転勤のない会社に勤務していた。給与も良かったので、会社を辞めて専業主婦になる選択肢も残ってはいた。けれど自分はまだ仕事を続けたい気持ちが残っていた為、共働きすることとなった。
しかし結婚前、将来の人生設計に向けた話し合いを曖昧にしていたからだろう。子供が欲しい夫と、それほど焦っていなかった真理亜との考えがすれ違い始めたのだ。
しかも真理亜が妊娠しにくい体質だと判り、彼の両親達による説得もあって不妊治療をする事になった。それが苦痛になり始め、結局三十三歳で離婚したのだ。
治療は三年程度の期間だった。体が辛ければ、会社を辞めることも出来た。そうすれば、もっと長く取り組めただろう。子供を授かる可能性は広がったかもしれない。
けれど真理亜はそうしなかった。その間の事は余り思い出したくない。それ程苦痛だったし、精神的に追い詰められていた。そうした気持ちが彼に届いていなかったことも影響したのだろう。
それに元夫が病院での検査を、最後まで拒絶したことも関係していた。妊活は女性だけの問題ではなく、三割から五割は男性側に原因があると言われていたのに、だ。
それが彼への不信感に繋がり、愛情も徐々に冷めた。心が離れ始め、三十三歳で不妊治療を辞めたその年に離婚が成立した。これが二度目の逃げだ。
ちなみにこの件が、真理亜の両親との確執にも繋がっている。あくまで夫側の意見に同調していた彼らに辟易した真理亜は、離婚の話し合いを始めたのを機に、彼らと距離を置くと決めたのだ。
しかし不幸はさらに続く。入社十五年目の三十七歳の冬、酷い体調不良になりうつ病と診断され、三年半の休職期間を経て退職した。これが三度目の逃げだ。
幸いだったのは、会社の福利厚生がとても恵まれていたことだろう。最大三年半の休職期間中は、給与がほぼ全額近く支払われたおかげとそれまでの貯蓄もあったことから、経済的な不安は余りなかった。
ただ期間を過ぎても復職できなければ、退職しなければならない。だが休職中は体調を整えることを最優先にできた。この時程、体が資本だと言葉通り痛感したことはない。
どれだけ優秀な能力があっても、怪我や病気になれば力の十分な発揮は難しくなる。
それでも人は生き続けなければならない。その為三年半の間に、なんとか健康な体と心を取り戻そうと、色んな取り組みをした。
おかげで退職してから半年後には、今の会社に再就職できたのだ。それでも未だにメンタルクリニックへは、通院をし続けている。仕事に支障はないけれど、様様な要因があって完全な回復には至らなかったからだ。
ちなみに両親とは、休養中にもかなり揉めた。うつ病というものを、彼らは病とは認めていなかったからだろう。そうした偏見を持つ者は、その頃少なくなかった。両親、特に父親は自分に甘えているだけだと、真理亜を非難したこともある。
そうした影響もあって、今では完全に疎遠となった。その為離れて住む八十四歳になる父と八十二歳の母の面倒は、比較的近くに家を建てて現在五十八歳になる兄夫妻に任せっきりになった。その彼らの子供の一人が、直輝だ。
その彼が何かを吹っ切るように言った。
「ありましたね。今の内に考えられることは、全部出し切りましょう。時間が経てば、また新たな展開が起こり、状況は変化すると思います」
真剣に訴える目を見て、真理亜は敢えて尋ねた。
「どうするつもり?」
彼は大きく頷いて言った。
「今後どうなっても対処できるよう、あらゆることを想定しておくことは、生き残る為には必要です。僕だって、こんなところで死にたくはありません。それどころかこんな貴重な体験をしている事自体、考えてみれば大きなチャンスです。これを小説なりノンフィクションとして世に出せれば、僕は変われると思います」
ピンチをチャンスに変える為、何らかの目標を掲げるのは悪くない方法だ。彼の場合、今回の困難を乗り切れば命が助かるだけでなく、小説家として足踏みを続けている状況を抜け出せる好機だと捉えたのだろう。そう考える事で、自らを奮い立たせたらしい。
聞いた時は、一瞬目先の利益を追いかけるやや安直な考えかと思った。だがネガティブな思考から抜け出せるのなら、それもいいだろう。実際起こった大きな事件の被害者になった経験を生かすのも、狙いとしては意外といけるかもしれない。
そこで真理亜は、彼を試すように質問した。
「だったらまず、私達は何をすればいい?」
彼は唸るように答えた。
「今の所はこのまま部屋でじっとしている方が、安全かもしれません。どこに犯人がいて、どう動くか判りませんから。でもその間に今まで起こった事を整理して、犯人の思惑や今後取るだろう行動を予測してみませんか」
真理亜は心の中で溜息をついていた。二十年余り会っていなかった甥と過ごした今回の旅で、知らずにいた事が多少なりとも判った。まず彼は両親、特に父親から専業の小説家になった事で、相当な反感を買っていることだ。
つまり真理亜の兄との関係がこじれていた。学生時代から小説家を目指していたけれども、親に猛反対されて止む無く大学へと進学したという。それでも早稲田の文学部に入学したのだから大したものだ。
その上在学中に小説は書き続けながらも、親の目を気にして普通に就職した。だが入社三年目の時に応募した作品で賞を取り、プロデビューすることとなったのだ。
長い間夢見てきた職業につけたことは、真理亜からすれば称賛に値する。しかも二足の草鞋を履きながら、成果を出したのだ。褒められはしても、叱られる事ではない。
だが兄達は違った。まだ諦めていなかったのか、と直輝を責めたという。それでも契約がある為、本は出版される。しかもそれなりに評判が良く、二作目の出版も直ぐに決まったらしい。だが兄夫婦だけでなく真理亜の両親達も、苦々しく思っていたようだ。
幸い彼の勤めている会社が理解を示してくれたおかげで、副業を責められるどころか応援して貰ったと彼から聞いた。にもかかわらず本業に支障が出ない内に、小説を書くのは止めろとまで兄達は言い出したという。
そこでこれまでは親の言う事を聞いてきた直輝に、遅い反抗期が訪れたのだろう。まだプロとして書き続けるのは難しいと、担当編集者等は兼業作家として続けるよう忠告していたけれど、彼はある時退職願を会社に提出して専業作家になると決断したのだ。
これに兄達は激怒したらしい。大学入学時から親元を離れて生活していた直輝だが、今後二度と家に帰って来るなと、親子の絶縁を申し渡されたという。
ここで上等だと言い返すほどの根性が彼にあれば、良かったのかもしれない。だが彼は怖気づいてしまったのだ。
実際その後三作目に取り掛かってはみたものの、編集者の目も厳しくなったからか、プロット段階で立て続けに没を食らい、意気消沈してしまったらしい。その為切羽詰まり、真理亜に連絡したことで今回の旅に繋がった。
しかしたった二週間余りの旅で、人が急に変われるはずもない。どうにかしようともがいていた事は確かだ。けれども真理亜から見ると、真剣さが足りないと感じていた。
必死な思いで面識のない叔母に連絡し頭を下げてきた割には、いざ取材が始まった時点で、彼から熱意は余り伝わってこなかったのだ。その為拍子抜けしたこともあり、こちらも聞かれた点に対しては答えたものの、最初は積極的に教えようとしなかった。
だが彼への負い目もあった為、まずは社会人としての心構えやマナーなど、ごく基本的な部分についての指導を優先した。それから徐々に彼の欠点を指摘し、かつ長所と思われる部分を伸ばす事を意識しながら、彼の作品作りに協力するようになったのだ。
この旅で彼はそれなりに成長できたと思う。それでもやや物足りなさは残った。彼の元来持つ気の弱さがそうさせるのか、自信の無さが表れているのかは不明だ。それに二十八歳という若さを考慮すれば、仕方ないのかもしれない。
彼も頭までは判っているのだ。でも自分だけではどうしようもない、超えられない壁にぶつかっているのだろう。真理亜にもそうした経験がある。そう思うと彼を責めることなど出来ない。何故なら自分は壁を超えることを諦め、逃げた。しかも三度も、だ。
真理亜は己の過去に思いを馳せ、不安でしょうがなかった頃を思い出した。
大学卒業後、真理亜は全国どこでも転勤があり得る総合職として、損害保険会社に就職した。しかも最初の勤務地が神戸の三宮支店だ。そこで赴任してから四年が過ぎた二十七歳の時、阪神淡路大震災を経験した。
当時借り上げの、鉄筋五階建てマンションの四階に住んでいた。まだ目覚める前の朝方、これまで経験したことのない揺れによって起こされたあの恐怖は、三十年近く経つ今でも忘れられない。
幸いマンション自体は無事だった為、逃げる時に足首を軽く捻った程度の軽傷で済んだ。仕事場だった三宮ビルも、さらに被害は小さかった。
その為地震対策本部が設置され、全国各地から地震対応の応援が駆け付けた。真理亜も担当代理店や顧客対応に追われ、忙しい毎日を過ごした。
その九か月後にひと段落着いたこともあり、地元に近い関東への異動辞令が出た。しかしあれから高いマンションには恐ろしくて住めなくなり、借り上げマンションもできるだけ低い部屋を探して貰うようになったのだ。
ちなみに真理亜は二十八歳で結婚した。相手は大学時代から付き合っていた恋人だ。関東への異動で彼との距離が縮まったこともきっかけになったが、震災の経験が大きく影響していたのは否定できない。
死ぬかもしれないと思う揺れを、一人でいた時に感じたからだろう。このままではいけないとの意識が働き、誰か一緒に居て欲しいとの気持ちが強くなった。それが結婚へと向かわせる後押しになったのだ。
直輝は、その時の真理亜と同じ年齢である。後に五年で破綻してしまう、結婚という道に逃げ込んだ自分自身と比べれば、ずっとマシかも知れない。それに取材依頼を受けた身とはいえ、今回の船旅に誘ったのは真理亜だ。彼は単に巻き込まれただけだった。
そう思い直し、追い詰めるような厳しい言葉を浴びせた事をもう一度詫びた。
「御免なさい。こんな危険なクルーズ船に乗る羽目になったのは、私のせいだったわね」
だが彼は首を強く振って否定した。
「いいえ、それは違います。無理を言ったのは、僕からです。この船旅への同行も自分が決めたことで、嫌なら断ることだって出来たのですから」
「だからって、あなたにプレッシャーをかけ過ぎたのは確かだから」
「いえ、それは期待しているからこそですよね。真理亜さんの場合の叱咤はその表れだと、この二週間余りで理解できました。言っても無駄だと思う人には、何も言わない。そう仰っていた事がありましたよね。城之内さんに、不必要な労力はかけたくありませんとズバリ言った真理亜さんの言葉は、とても印象的でした」
最初の寄港地だった、上海での話をしているらしい。取引先の企業と関係する役人と会食した際、彼は自らの懐に入る賄賂ばかり気にしていた。だが肝心な情報を出そうとしなかった為に、単なる出し惜しみではなく重要案件を任される立場にいないと悟った。
よって関わらない方がマシと判断した為、城之内に直ぐ立ち去る提案をしたのだ。
「よく覚えていたわね」
「それはそうですよ。だってまだ最近担当し始めたばかりの大口顧客に、遠慮なく言い切っていましたよね。資産運用のプランナーって、そんなに立場が強いのかと驚いたくらいです。でも日が経つにつれて、そうではないと気付きました」
「褒められているのか、貶されているのか良く分からないけど」
「感心しているんです。単に我が強いのではなく、あれは顧客の事を真摯に考えた上での行動だったと、後で思い知らされました。ケースによっては体を張ったり頭を下げたりして、相手側から有利な条件を引き出し、情報を掴んでいたと聞いています」
「そんな事、私は話してないでしょ。誰が言ったの」
「主に八神さんです。真理亜さんは懇親の場でも、さり気なく先方に探りを入れていた。相手側からセクハラまがいの事をされながら、上手く受け流しつつ機嫌を取っていたようですね。時には酔った相手に怒鳴られ、何も悪く無いのに謝ったとも聞きました。城之内さんも噂以上の遣り手だと、満足気にしていたようですよ」
これには苦笑せざるを得ず、皮肉を込めて言った。
「それは良かった。ただ八神さんは、余計な話をしてくれたようね」
「確かに甥っ子には、知られたくない姿だとは思います。でもその話を聞いて、プロの仕事とは何かを学びました。それに比べ僕は何て不甲斐ないと、情けなかったです。でも現在僕達が置かれた状況を考えれば、そんな弱気な事を言っている場合じゃないから、真理亜さんは叱ってくれたんですよね。僕は甘えていました。親父に叱られても、ずっと言いなりになっていたから駄目なんですね。いざ自分の力で何か行動しようとしても、上手くいくはずがない。そう諦めている自分が、どこかにまだいるんだと思います。それじゃいけないと一念発起したつもりなのに」
「会社を辞めて、専業作家になったことを言っているの?」
「初めて大きな反抗をした事自体は、全く後悔していません。でもその後が駄目でした」
「だから変わろうとして、私に連絡をしてきたんでしょ」
「はい。おかげで大変貴重な経験をさせて頂きました。すごく勉強になりましたし、いい刺激を受けたと思っています。でもこれで大丈夫かと言われれば、自信がありません。だからこんな態度になってしまうのでしょう」
そこから彼の目の色が変わった。断り得てから入り口に周り、真理亜の部屋へと入って来た。そこで距離を保った位置にある椅子に腰かけて言った。
「話を戻しますが、僕達や八神さんが陰性でした。そう考えると、城之内さんは犯人の手によって感染させられたという船長の話は確かでしょう。最初は単に自分達には関係ないと喜んでいましたが、こんな騒ぎが起こったら別の意図があるんじゃないかと疑ってしまいます」
どうやらスイッチが入ったようだ。心強く思いながらも顔には出さず尋ねた。
「どういう意味?」
「だっておかしくないですか。船の旅が終わろうとしている時に、新型ウィルスの感染者が出たという点。またVIPという事もあるでしょうけど、高齢者だから念の為にドクターヘリを要請した。これは日本近海まで近づいていたからこそ、そういう判断がされたのですよね。もしもっと遠ければ、もうしばらく船内で様子を見ていたと思いませんか」
「そうね。ドクターヘリが往復できる距離がどの程度までなのかは知らないけど、症状が相当悪化しない限りは、医務室で処置されていたはず。それだけの設備が、ここでは整っているらしいから。それがこの船の売りでもあるからね」
「そこです。テロリストがこの船に、潜入していると仮定しましょう。それならいつからいたのか。もし最初からなら、何故このタイミングで行動を起こしたのかが疑問です」
彼の推理力を高める為、真理亜はわざと考えさせるように仕向けた。
「爆弾を持ち込めたのが、最後に寄ったマニラからしか無理だったのかもしれないわよ。 普通の税関と比べれば、クルーズ船は甘いと以前から指摘されているけど、この船は特定のVIPを招待してのクルーズだからね。実際私達も途中四か所で乗り降りしたけど、乗組員に対しては、それ程厳しく無かったのかもしれない。感染予防の確認は時間がかかったけど、最後に寄ったマニラだけは、甘くなった可能性はあるわよ」
「限られた招待客との乗組員で旅が始まっていますから、途中からテロリストが新たに乗り込むのは無理でしょう。でも爆弾などの武器を、警備が甘くなった途中のマニラで手に入れてから実行しようと、最初から計画していたのなら頷けます」
「でもそれと城之内さんが感染症を発症した事が、どう関わってくるっていうの?」
「マニラを出発してから、今日は四日目です。何故もっと早くどこかで爆弾をしかけ、シージャックしなかったのでしょうか。その方が救援を呼ばれたとしても、駆け付けるまで時間が稼げます。何が目的かは知りませんが、どこかへ逃げるにしても日本よりは、マニラなど島が多数ある地域で事件を起こした方が、犯人にとって得だと思いませんか」
確かにそうだ。もちろん日本近海にも、無人島を含め数多くの島は存在する。だが優秀な日本の海上保安庁等が動けば、どこへ隠れたとしても直ぐ追跡できるだろう。
フィリピンの警察が、日本より劣っているとまでは言わない。それでもマニラ周辺の近海の方が、素人目では逃走に向いているはずだ。あの周辺も大小様々島があり、逃走経路を確保しやすい。そこで真理亜は賛同した。
「確かに、何故日本に近づいたあのタイミングで、犯人達は行動を起こしたのか。そう考えれば、城之内さんの件が無関係とは思えなくなってくるわね」
「しかも尾翼の破壊だけなら爆薬も最小限で済むけど、与える衝撃はかなり大きい。感染者を外へ運びだせなくなっただけでなく、次に来る救助ヘリの着陸も阻止できたのですから。しかもただ邪魔するだけなら、上手くいけばドローンだけでも可能だったかもしれません。でもそれでは単なる事故扱いになりかねません」
「なるほど。最少の仕掛けで最大のダメージを与える事が目的だったら、今回の件は大成功ね。ヘリもだけど感染者が船内にいると思わせるだけで、恐怖を与えられる。つまり城之内さんを意図的に感染させた理由は、そこにあった訳ね」
「そう考えれば辻褄が合います。ピンポイントでVIPかつ高齢者の城之内さんを狙えば、乗員乗客だけでなく運営会社に対しても、大きな効果が得られます」
「そうね。この船での感染者が彼一人だったら、その確率はかなり高くなるわ。そうなるとテロリストは乗組員の中にいて、誰なのかも絞り込むこともできるでしょう」
「あ、そうか。城之内さんが口にする物にウイルスを入れたとすれば、乗客だとやや無理があります。調理部門やウエイター、バーテンダーや給仕係なら可能でしょう」
「いえ、バーだったらいつ城之内さんが寄るか、読めないから違うと思う。ウイルスを混入したのなら、恐らく犯人達は発症するタイミングも考えたはず。さっきの話から考えると、あまり早く発症しても困るでしょう。上陸してから発症したら遅すぎるし」
「発症のタイミングまで、コントロールできるものでしょうか。でも持ち込んだウイルスが、いつ頃症状が出ると予想できるものだったとしたら、その可能性はありますね」
「もちろん、乗客や他の乗組員の中にも仲間がいることは考えられる。一人や二人でこんな大きな船相手に、テロを仕掛けるとは思えないから」
「ウイルスや爆弾を持ち込んでいる事から考えれば、それなりの組織が動いていると考えていいでしょう。先程話していたように、相当な身代金が期待できますからね」
「過去にもそういう事例が、確かあったわ。映画にもなったんじゃなかったかな」
彼と今回の事件における意見を交わしながら、真理亜は再びかつて味わった苦い思い出を頭に浮かべていた。
真理亜が結婚相手は、転勤のない会社に勤務していた。給与も良かったので、会社を辞めて専業主婦になる選択肢も残ってはいた。けれど自分はまだ仕事を続けたい気持ちが残っていた為、共働きすることとなった。
しかし結婚前、将来の人生設計に向けた話し合いを曖昧にしていたからだろう。子供が欲しい夫と、それほど焦っていなかった真理亜との考えがすれ違い始めたのだ。
しかも真理亜が妊娠しにくい体質だと判り、彼の両親達による説得もあって不妊治療をする事になった。それが苦痛になり始め、結局三十三歳で離婚したのだ。
治療は三年程度の期間だった。体が辛ければ、会社を辞めることも出来た。そうすれば、もっと長く取り組めただろう。子供を授かる可能性は広がったかもしれない。
けれど真理亜はそうしなかった。その間の事は余り思い出したくない。それ程苦痛だったし、精神的に追い詰められていた。そうした気持ちが彼に届いていなかったことも影響したのだろう。
それに元夫が病院での検査を、最後まで拒絶したことも関係していた。妊活は女性だけの問題ではなく、三割から五割は男性側に原因があると言われていたのに、だ。
それが彼への不信感に繋がり、愛情も徐々に冷めた。心が離れ始め、三十三歳で不妊治療を辞めたその年に離婚が成立した。これが二度目の逃げだ。
ちなみにこの件が、真理亜の両親との確執にも繋がっている。あくまで夫側の意見に同調していた彼らに辟易した真理亜は、離婚の話し合いを始めたのを機に、彼らと距離を置くと決めたのだ。
しかし不幸はさらに続く。入社十五年目の三十七歳の冬、酷い体調不良になりうつ病と診断され、三年半の休職期間を経て退職した。これが三度目の逃げだ。
幸いだったのは、会社の福利厚生がとても恵まれていたことだろう。最大三年半の休職期間中は、給与がほぼ全額近く支払われたおかげとそれまでの貯蓄もあったことから、経済的な不安は余りなかった。
ただ期間を過ぎても復職できなければ、退職しなければならない。だが休職中は体調を整えることを最優先にできた。この時程、体が資本だと言葉通り痛感したことはない。
どれだけ優秀な能力があっても、怪我や病気になれば力の十分な発揮は難しくなる。
それでも人は生き続けなければならない。その為三年半の間に、なんとか健康な体と心を取り戻そうと、色んな取り組みをした。
おかげで退職してから半年後には、今の会社に再就職できたのだ。それでも未だにメンタルクリニックへは、通院をし続けている。仕事に支障はないけれど、様様な要因があって完全な回復には至らなかったからだ。
ちなみに両親とは、休養中にもかなり揉めた。うつ病というものを、彼らは病とは認めていなかったからだろう。そうした偏見を持つ者は、その頃少なくなかった。両親、特に父親は自分に甘えているだけだと、真理亜を非難したこともある。
そうした影響もあって、今では完全に疎遠となった。その為離れて住む八十四歳になる父と八十二歳の母の面倒は、比較的近くに家を建てて現在五十八歳になる兄夫妻に任せっきりになった。その彼らの子供の一人が、直輝だ。
その彼が何かを吹っ切るように言った。
「ありましたね。今の内に考えられることは、全部出し切りましょう。時間が経てば、また新たな展開が起こり、状況は変化すると思います」
真剣に訴える目を見て、真理亜は敢えて尋ねた。
「どうするつもり?」
彼は大きく頷いて言った。
「今後どうなっても対処できるよう、あらゆることを想定しておくことは、生き残る為には必要です。僕だって、こんなところで死にたくはありません。それどころかこんな貴重な体験をしている事自体、考えてみれば大きなチャンスです。これを小説なりノンフィクションとして世に出せれば、僕は変われると思います」
ピンチをチャンスに変える為、何らかの目標を掲げるのは悪くない方法だ。彼の場合、今回の困難を乗り切れば命が助かるだけでなく、小説家として足踏みを続けている状況を抜け出せる好機だと捉えたのだろう。そう考える事で、自らを奮い立たせたらしい。
聞いた時は、一瞬目先の利益を追いかけるやや安直な考えかと思った。だがネガティブな思考から抜け出せるのなら、それもいいだろう。実際起こった大きな事件の被害者になった経験を生かすのも、狙いとしては意外といけるかもしれない。
そこで真理亜は、彼を試すように質問した。
「だったらまず、私達は何をすればいい?」
彼は唸るように答えた。
「今の所はこのまま部屋でじっとしている方が、安全かもしれません。どこに犯人がいて、どう動くか判りませんから。でもその間に今まで起こった事を整理して、犯人の思惑や今後取るだろう行動を予測してみませんか」
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