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第五章~剛
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翌日は予定していた買い物に出かけるため、九時過ぎには家を出て郊外のショッピングモールへと車を走らせた。いくつかのお店を見て回り、お昼は予定していた和食店に入って食事をする。
その後食品売り場に行き、買い出しをするつもりだったが、予想外の出来事が起こったため、二人はしばらくそちらに気を取られていた。というのも専門店街を歩いている時、急に一人の客が踊りだしたかと思うと、二人、三人と離れた場所で同じく踊りだす人が出てきたのだ。中には外国人も混じっていたのでギョッとする。
最終的には数十人近い団体でリズムを合わせて踊りだし、音楽が流れた。そこでこれはイベントだと彼女が先に気付いた。
「フラッシュモブ、ね。でも生で見たのは初めて」
フラッシュモブとは近年流行しだした、サプライズを兼ねた一種のパフォーマンスだ。何気なく歩いている一見関係無さそうなそれぞれの通行人達が、何かのきっかけで一斉に踊り出したり、歌いだしたりしてパフォーマンスを見せる。そして他の通行人やそこに集まっている人達を驚かせながらも喜ばせて楽しませてくれるイベントの一種だ。
珍しいものを見たと話しながら、余りにも多くの人が集まったため少し慄いて後ずさりする彼女を庇い、集団から離れる。パフォーマンスが一通り終わった時点で、予定していた食材売り場へと移動した。
同棲を始めてから、毎週末はこうして一緒に買い物をする機会が多くなった。おかげで今までは気が付かないことが目に付き、色々と学んだことがある。二人で行動するようになってからは、彼女が買い物をしている間、少し離れた他人の通行の妨げにならない場所を確保するようになった。そしてカゴを乗せたカートを持って待機するのだ。
間違っても複数の客が手を伸ばすような、野菜売り場や特売売り場の中に突入することはしない。じっと離れた場所で待ち、彼女が買い物をしている様子を窺う。彼女の選び取った食材が手に余りそうになると、剛に近づいて来てカゴに入れるのだ。
そしてまた別の食材が置いてある場所に向かう。剛はそれをじっと見守っていた。その繰り返しが一番人の邪魔にならず、こちらもストレスを感じない方法なのだ。
何故かと言えば、一人の時は買いたい物をおおまかにリストアップし、一直線にその売り場へ行って済ませていた。しかし明日香との買い物ではそうならないからだ。
献立は彼女が決めている。そのため買いたい食材も、彼女があらかじめ細かくリストアップしたメモを持ち、それを参考にして売り場を回る。
最初の頃はその後ろを何気なくついて歩いていた。しかし日曜日のためか、剛と同じく奥さんと一緒に買い物をしている男性の姿が、他にも多くいることにある時気付いたのだ。
その様子を俯瞰してみるようになると、分かったことがいくつかあった。それは普段買い物に慣れていない旦那が付いてくる場合、他の買い物客にとって大抵の男性は邪魔な存在だということである。
まず多くの男性は、奥さんの後を付いて回るだけだ。周囲を見る余裕がないのか鈍感なのか、そう思われている感覚すら持ち合わせていない。
その為平気で買い物籠を乗せたカートに加え、奥さんと二人で食材置場のスペースや通路を塞いでしまったりする。そういう剛も、同じ過ちを何度かしてしまったことがあった。
それに奥さんの気分次第、または予測できない動きに合わせて歩くため、旦那達の動線がふらつく。自分の行きたい場所に向かっていないから、あっちへ行ったりこっちへ行ったりする。そうかと思えば、立ち止まったり急に動きだしたりするのだ。
本人も含めて予測不能のため、当然ながら周囲にいる客は、その動きに翻弄されてしまう。しかしそれは男性に限ったことでは無い。買い物している女性客でさえそうなのだ。
一人で一心不乱に買い物をしている時には、気付かないものだ。しかし実際は買い物メモを片手にふらふらと歩く女性達もまた、お互いの存在が目に入っていないことが多い。夢中になって食材を吟味したり、献立を考えながら歩いていたりするからだろう。知らぬ間に、他人の邪魔をしてしまうのだ。
そのことに気付いたことで、少なくとも剛自身が邪魔にならないよう行動することを学び、通路の隅へ立つようになった。
あるブロックの範囲の買い物を終えると、次の目的地に向かって一緒に移動する。そこでまた新たな場所を確保して、待機するのだ。その行動を何度か繰り返し、最終的に彼女と買い物リスト通りに購入できたかを確認すればいい。
それらを買い終えた後は、ゆっくりと他の売り場に移動する。ちらちらとお買い得なものや、何か変わったものがないかを確認するのだ。見落としたものはないかも見て回り、何も追加購入がない場合は、そのままレジで会計を済ませる。
今日も日曜日で天気も良かったからか、買い物客は多かった。いつものように少し離れた場所を確保し、彼女の買い物姿を目で追う。しかし今はすぐに他の事を考えてしまう。もちろんモナコ行きのことだ。
昨日頭に浮かんだ考えをもう一度思い返す。加奈に連絡すべきかどうかだ。するならメールより電話の方がいいだろうか。かけるのなら旦那が仕事中でいない平日の昼間にしよう。では何と言えばいいのか。
だがそう考えただけでぞっとした。あの最悪な思い出話を、よりにもよってトラウマに関わった当の本人と話すなんてできるだろうか。だったら明日香に白状した方がマシではないか。
いや、それでまた失敗したらどうする。それこそ取り返しがつかなかったら最悪だ。それが嫌だから加奈に連絡してみるという、悪手だとは思うが最後の手段を取ろうと考えたのだ。
「どうしたの? 何かあった?」
気付けば彼女が野菜売り場から玉ねぎやカボチャ、キュウリや冬瓜、長ネギなどを抱えてカゴに入れていた。
「い、いや、ごめん。ちょっとぼんやりしていただけだよ」
「売り場から戻ってみたら、しかめ面しているから何か気にくわないことでもあったのかと思った」
「い、いや、そうじゃないよ」
慌てて顔を繕った。そんな険しい顔をしていたのだろうか、と自分でも驚いたが加奈の事を考えていたため、それもしょうがない。
「そう、だったらいいけど。今度はあっちの魚売り場へ行くから」
「ああ、分かった」
いつもとほぼ同じ、だいたい決まった順路で別のブロックへ移動した二人は、目ぼしい魚があるかを一通り見てから、剛はいつもの隅に陣取る。彼女は目を付けた魚を手に取り剛の元に戻ってカゴに入れると、今度はその近くにある卵売り場へと移動した。
剛はその場で待機したままだ。彼女が手に卵を一パックと豆腐売り場から油揚げを取って戻ってくる。こうしていくつかの売り場へ移動しながら買い物を済ませた二人は、レジに並んだ。
会計を終わらせると、持参しているマイバッグに入れ直す。詰め直しが終わってから、今度はゆっくりとお菓子売り場などいくつかの店舗を見た。
「じゃあ、帰ろうか」
という彼女の言葉に従い、駐車場へと移動して荷物を車に乗せ家路に着いた。
部屋に戻ると、彼女は真っ先に食材などを冷蔵庫や野菜室などに移す。その間に手を洗いうがいをして素早く部屋着へと着替えた剛は、その他に買った雑貨などをバッグから出し、彼女に確認しながらそれぞれの収納場所へと移動させた。
それが終わると彼女が夕飯の支度をし始めるまでは、お互いの自由時間になる。彼女がどういう動きをするかを見極めるため、剛は何げなくソファに坐ってくつろぎ、昨日読んでいた本を手に取って何となく目を通した。しかしまたもや全くと言っていいほど内容が入ってこない。
すると同じく部屋着に着替えた彼女は、ノートパソコンを持って来て食卓の上で開き、立ち上げ始めた。つまり昨日の続きの調べ物をするのだろう。内容はモナコの事に違いない。それならば、と剛は小説を読む振りをしながら、違うことを考え出した。先ほど途中で思考が止まった、加奈へ電話する件だ。さて、どう切り出せばいいだろう。
結婚したことは知らせてある。その後は一切何の連絡もないが、それはお互い様だ。そこで剛から結婚したのだけれど、と言い出したら彼女は何と言うだろうか。
別におめでとうという言葉を聞きたい訳ではない。基本的には会話なんかしたくないのだ。あの件を除いては何も話す話題など無い。だったらこういうのはどうだろう。
「結婚したけどさ、君に失望されたような失敗をしたくないので聞くけど、今度新婚旅行でフランス語圏内に行くことになったから、あの件の事を今の妻に言っておいた方がいいかな。それとも君は言わない方が良いと思う?」
離婚してから十年近く経っていきなりそんな電話を受けたら、彼女はどう反応するだろうか。そんなこと知らないわよ、勝手にすれば、と冷たく突き放されて終わりのような気もする。だったら連絡する意味がない。
いや、第一どういう答えが欲しくて彼女に電話をしようというのか。悩みを相談するなら、剛の事を思い、真剣に解決策を考えてくれる相手でないと意味がないのではないか。
ではそれなら誰か。今のところ身近にいるのは同期の手塚だ。しかしあいつはトラウマのことを知らない。そんな相手に自分の弱点である過去の汚点を打ち明けていいものだろうか。
しかも彼は明日香のいる課の隣にいる。あまりにも近すぎるからうっかりと口を滑らし、彼女の耳に入ることだって考えられた。それだけは避けたい。彼女があの事を知るとすれば、少なくとも自分の口から伝えたいからだ。
それでは詳しいことは伏せて、どう思うか聞いてみる手もある。そうか。加奈に電話するよりも先に、まずは手塚に相談してみよう。それでも自分の中で解決方法が決まらないようだったら、加奈に電話してみても遅くない。
そうこう考えている間、気付いた時にはいつの間にかまたソファで寝てしまっていたらしく、彼女の声で起こされた。
「お夕飯の準備ができたわよ」
思わず跳び起きて立ち上がり、少し寝ぼけた頭を掻きながら食卓についた。今日買ったサバが味噌煮として出され、ニラとネギが添えられている。同じく冬瓜と油揚げの煮物が副菜として出されていた。そこにご飯とお味噌汁が置かれている。
「お昼が和食だったから夕飯はお肉にしようかと思ったけど、魚は早めに食べた方が良いと思って。ごめんね」
「いいよ、いいよ。和食は好きだし、カツオのたたきとサバの味噌煮じゃあ、味は全然違うから」
「そう? じゃあ、いただきます」
「いただきます」
二人で手を合わせて食事を始める。こういう何気ない瞬間が幸せなのだろう。昼食と夕食とが全く同じものが被っている訳でもないのに、そんな事を気遣ってくれながら彼女は剛の健康も考え、夏野菜が入った食事を作ってくれる。
冬瓜など一人暮らしではまず食べない。外食先でもそう出てくるお店は無い、まさしく家庭料理だ。しかも冬瓜はこの地元愛知県が生産量で全国一位の食材らしい。冬という文字が入っているが夏野菜で、体を冷やす効果があるという。それを油揚げと一緒に煮て、片栗粉でとろみをつけて食べるのだ。
シンプルで優しい味付けがまさしく剛好みだった。というより、もうすでに五カ月余りの生活で彼女の作った料理の味付けが、剛の舌に馴染んでしまった、と言った方が良い。
例えば幼い時から食べ慣れてきた家庭の味、お袋の味が大人になっても忘れられないと言う人がいる。だが剛はそれほど食に執着が無かった。中学高校は岐阜の片田舎である親元を離れ、名古屋の中高一貫校に入って下宿生活をしていたからかもしれない。
大学は東京へ行き、そして僅かな結婚生活もほぼ独身時代と変わらず生きてきた。年に一、二回ほど帰省して食べる機会はあったものの、家庭の味など中学時代から数えると約二十年以上縁遠くなっている。
だからだろう。明日香とは食べ物や味の好みが似ていたからか、彼女の作るもの全てが剛好みの味付けだった。しかも独身の時とは違い、うっかり寝てしまっても起こしてくれ、食事がすでに出来上がっているのだ。こんな贅沢なことは無い。
かつてなら慌てて暗くなった外へと出かけ、コンビニで弁当を買って帰り、一人寂しくテレビを付けながら食べることがほんの半年前までは当たり前だった。それが今では目の前に出来立てで手作りの食事があり、正面には支店でもマドンナと言われ、誰もが羨む可愛い顔をした明日香が座っているのだ。
お嬢様育ちなのに気取ったところがなく、ごく自然な形で剛とのごく普通の会社員生活に馴染んでいた。こんな幸せなことが合っていいのかと思う。結婚して良かった、と心から思える。
以前の結婚では全く感じたことがなかった。だからこそこの幸せを壊すことは、絶対に避けたい。剛は何度も同じ結論に到り、そしてまた頭を悩ませることになった。
「どうしたの? あんまり美味しくない?」
心配そうに尋ねられて、自分の顔が険しくなっていたことに気付く。いやいやと慌てて首を振り、美味しいよ、とサバの身を突いてほぐし、口に運んで冬瓜にも手を付けた。
「にやにやして食べていたと思ったら、急に怖い顔をしたりするから、変な味でもするのかと心配になっちゃったけど、大丈夫だよね」
どうも考えていたことが表情に出ていたらしい。
「大丈夫。味はいつも通りどれも美味しいよ。途中まで幸せだなあ、って思って食べていたら、ちょっと昔の嫌なことを思い出したから、それが顔に出ていたのかも」
「何? 昔の嫌なことって」
ここは正直に言うことにした。
「ああ、ごめん。前の結婚時代の事さ。以前はこんな美味しい食事を出してもらったことが無かったからね。だから今は幸せだなあ、って思っていたからだよ」
「本当? だったらいいけど」
彼女は嬉しそうに顔を赤くして笑った。嘘はついていない。今が幸せであり、以前の結婚生活では無かったことも本当だ。ただ嫌な事という中に、昔の汚点が含まれることまでは言わなかった。
以前の結婚生活の事は、詳細を省いて大まかな説明をしていた。若さから勢いで結婚してしまい、結婚当初は気付かなかったが、二人だけで一緒に過ごし始めた途端にずれが生じ、元妻が流産したという不幸も重なり早い段階で結婚生活が破たんした、と伝えている。
その後の約一年半の家庭内別居生活の状況も教えていた。二人が結婚することが決まった際、彼女が籍を入れる前だが早く一緒に生活したいと言い出した理由は、その事とも関係していたと思う。
籍を入れてしまう前に、一緒に暮らしてみて二人の間にズレが生じるかどうかを確かめたかったに違いない。問題ないと確信を持ってから籍を入れ、式を上げた方が良いと彼女は考えたのだろう。
だが剛もあの頃のように若くは無い。彼女だってそれなりにいい年齢で人生経験もあり、仕事柄多くの人と接してきて人を見ている。それまでの交際期間で、二人が暮らし始めたとしても心配ないという根拠のない自信はあった。
それでも人と人との付き合いであり、実際に暮らしてみないと判らないこともある。だからお互いの不安を完全に解消するためにも、入籍前の同棲生活という提案を剛もすんなりと受け入れたのだ。予想通り、いや予想以上に二人での生活は心地よく、ストレスがほとんどない状態から始まった。
もちろん生活する上で、剛が住んでいた部屋に彼女が加わったこととお互い働いているために、いくつかのルール作りは必要だった。そこで役割分担を決め、食事と洗濯は彼女が、掃除やごみ出しなどは剛が行うようにした。それでも共同生活において、几帳面かそうでないかは個人差がある。剛はおおざっぱで彼女は綺麗好きだ。
そういう時は、綺麗好きな人に合わせれば間違いない。剛だって部屋が汚かったり物が散乱していたりするよりは、整頓されている方が良かった。しかし一人暮らしの時は毎晩遅く、疲れて帰ってくる中できっちりと片付けをすることはなかなか難しい。掃除は家事の中でも優先順位が低いため後回しにし、つい疎かになって散らかっていくのだ。
けれど今は彼女が食事や洗濯などをやってくれるおかげで、剛は掃除をする余裕が持てた。最初は彼女の指導の元に掃除を行って部屋をある一定の状態まで整頓し、後はその状態を維持するよう、最低週に一回は片付けるようにしたのだ。
面白いもので、気が付いた時には掃除が自分の分担だという自覚が生まれ、汚れていたり片付いていない場所を見つけたりすると、その度に綺麗にする癖が身についた。
そうして二人でゆっくりと過ごす時間を作ったり、またそれぞれが別々に過ごしたりする時間を加えた生活リズムを整えた。それが一度出来上がってしまいスムーズに流れ始めれば、後は繰り返して行くだけだ。
そのように始まった二人の同棲生活は、一カ月もしないうちに馴染み、今や完全に形が出来上がっている。しかも快適に、そして楽しく、リラックスしてお互いが過ごせているのは間違いない。
やはり出会ってから、交際を続けている間にお互いの相性が良いと思っていた感覚は間違っていなかった。本当に彼女こそが結婚式で誓ったように、一生添い遂げたいと思う相手なのだ。その為に絶対この先、躓くわけにはいかない。剛の頭の中では今日何度目かの、同じ悩みのループを辿り始めていた。
その後食品売り場に行き、買い出しをするつもりだったが、予想外の出来事が起こったため、二人はしばらくそちらに気を取られていた。というのも専門店街を歩いている時、急に一人の客が踊りだしたかと思うと、二人、三人と離れた場所で同じく踊りだす人が出てきたのだ。中には外国人も混じっていたのでギョッとする。
最終的には数十人近い団体でリズムを合わせて踊りだし、音楽が流れた。そこでこれはイベントだと彼女が先に気付いた。
「フラッシュモブ、ね。でも生で見たのは初めて」
フラッシュモブとは近年流行しだした、サプライズを兼ねた一種のパフォーマンスだ。何気なく歩いている一見関係無さそうなそれぞれの通行人達が、何かのきっかけで一斉に踊り出したり、歌いだしたりしてパフォーマンスを見せる。そして他の通行人やそこに集まっている人達を驚かせながらも喜ばせて楽しませてくれるイベントの一種だ。
珍しいものを見たと話しながら、余りにも多くの人が集まったため少し慄いて後ずさりする彼女を庇い、集団から離れる。パフォーマンスが一通り終わった時点で、予定していた食材売り場へと移動した。
同棲を始めてから、毎週末はこうして一緒に買い物をする機会が多くなった。おかげで今までは気が付かないことが目に付き、色々と学んだことがある。二人で行動するようになってからは、彼女が買い物をしている間、少し離れた他人の通行の妨げにならない場所を確保するようになった。そしてカゴを乗せたカートを持って待機するのだ。
間違っても複数の客が手を伸ばすような、野菜売り場や特売売り場の中に突入することはしない。じっと離れた場所で待ち、彼女が買い物をしている様子を窺う。彼女の選び取った食材が手に余りそうになると、剛に近づいて来てカゴに入れるのだ。
そしてまた別の食材が置いてある場所に向かう。剛はそれをじっと見守っていた。その繰り返しが一番人の邪魔にならず、こちらもストレスを感じない方法なのだ。
何故かと言えば、一人の時は買いたい物をおおまかにリストアップし、一直線にその売り場へ行って済ませていた。しかし明日香との買い物ではそうならないからだ。
献立は彼女が決めている。そのため買いたい食材も、彼女があらかじめ細かくリストアップしたメモを持ち、それを参考にして売り場を回る。
最初の頃はその後ろを何気なくついて歩いていた。しかし日曜日のためか、剛と同じく奥さんと一緒に買い物をしている男性の姿が、他にも多くいることにある時気付いたのだ。
その様子を俯瞰してみるようになると、分かったことがいくつかあった。それは普段買い物に慣れていない旦那が付いてくる場合、他の買い物客にとって大抵の男性は邪魔な存在だということである。
まず多くの男性は、奥さんの後を付いて回るだけだ。周囲を見る余裕がないのか鈍感なのか、そう思われている感覚すら持ち合わせていない。
その為平気で買い物籠を乗せたカートに加え、奥さんと二人で食材置場のスペースや通路を塞いでしまったりする。そういう剛も、同じ過ちを何度かしてしまったことがあった。
それに奥さんの気分次第、または予測できない動きに合わせて歩くため、旦那達の動線がふらつく。自分の行きたい場所に向かっていないから、あっちへ行ったりこっちへ行ったりする。そうかと思えば、立ち止まったり急に動きだしたりするのだ。
本人も含めて予測不能のため、当然ながら周囲にいる客は、その動きに翻弄されてしまう。しかしそれは男性に限ったことでは無い。買い物している女性客でさえそうなのだ。
一人で一心不乱に買い物をしている時には、気付かないものだ。しかし実際は買い物メモを片手にふらふらと歩く女性達もまた、お互いの存在が目に入っていないことが多い。夢中になって食材を吟味したり、献立を考えながら歩いていたりするからだろう。知らぬ間に、他人の邪魔をしてしまうのだ。
そのことに気付いたことで、少なくとも剛自身が邪魔にならないよう行動することを学び、通路の隅へ立つようになった。
あるブロックの範囲の買い物を終えると、次の目的地に向かって一緒に移動する。そこでまた新たな場所を確保して、待機するのだ。その行動を何度か繰り返し、最終的に彼女と買い物リスト通りに購入できたかを確認すればいい。
それらを買い終えた後は、ゆっくりと他の売り場に移動する。ちらちらとお買い得なものや、何か変わったものがないかを確認するのだ。見落としたものはないかも見て回り、何も追加購入がない場合は、そのままレジで会計を済ませる。
今日も日曜日で天気も良かったからか、買い物客は多かった。いつものように少し離れた場所を確保し、彼女の買い物姿を目で追う。しかし今はすぐに他の事を考えてしまう。もちろんモナコ行きのことだ。
昨日頭に浮かんだ考えをもう一度思い返す。加奈に連絡すべきかどうかだ。するならメールより電話の方がいいだろうか。かけるのなら旦那が仕事中でいない平日の昼間にしよう。では何と言えばいいのか。
だがそう考えただけでぞっとした。あの最悪な思い出話を、よりにもよってトラウマに関わった当の本人と話すなんてできるだろうか。だったら明日香に白状した方がマシではないか。
いや、それでまた失敗したらどうする。それこそ取り返しがつかなかったら最悪だ。それが嫌だから加奈に連絡してみるという、悪手だとは思うが最後の手段を取ろうと考えたのだ。
「どうしたの? 何かあった?」
気付けば彼女が野菜売り場から玉ねぎやカボチャ、キュウリや冬瓜、長ネギなどを抱えてカゴに入れていた。
「い、いや、ごめん。ちょっとぼんやりしていただけだよ」
「売り場から戻ってみたら、しかめ面しているから何か気にくわないことでもあったのかと思った」
「い、いや、そうじゃないよ」
慌てて顔を繕った。そんな険しい顔をしていたのだろうか、と自分でも驚いたが加奈の事を考えていたため、それもしょうがない。
「そう、だったらいいけど。今度はあっちの魚売り場へ行くから」
「ああ、分かった」
いつもとほぼ同じ、だいたい決まった順路で別のブロックへ移動した二人は、目ぼしい魚があるかを一通り見てから、剛はいつもの隅に陣取る。彼女は目を付けた魚を手に取り剛の元に戻ってカゴに入れると、今度はその近くにある卵売り場へと移動した。
剛はその場で待機したままだ。彼女が手に卵を一パックと豆腐売り場から油揚げを取って戻ってくる。こうしていくつかの売り場へ移動しながら買い物を済ませた二人は、レジに並んだ。
会計を終わらせると、持参しているマイバッグに入れ直す。詰め直しが終わってから、今度はゆっくりとお菓子売り場などいくつかの店舗を見た。
「じゃあ、帰ろうか」
という彼女の言葉に従い、駐車場へと移動して荷物を車に乗せ家路に着いた。
部屋に戻ると、彼女は真っ先に食材などを冷蔵庫や野菜室などに移す。その間に手を洗いうがいをして素早く部屋着へと着替えた剛は、その他に買った雑貨などをバッグから出し、彼女に確認しながらそれぞれの収納場所へと移動させた。
それが終わると彼女が夕飯の支度をし始めるまでは、お互いの自由時間になる。彼女がどういう動きをするかを見極めるため、剛は何げなくソファに坐ってくつろぎ、昨日読んでいた本を手に取って何となく目を通した。しかしまたもや全くと言っていいほど内容が入ってこない。
すると同じく部屋着に着替えた彼女は、ノートパソコンを持って来て食卓の上で開き、立ち上げ始めた。つまり昨日の続きの調べ物をするのだろう。内容はモナコの事に違いない。それならば、と剛は小説を読む振りをしながら、違うことを考え出した。先ほど途中で思考が止まった、加奈へ電話する件だ。さて、どう切り出せばいいだろう。
結婚したことは知らせてある。その後は一切何の連絡もないが、それはお互い様だ。そこで剛から結婚したのだけれど、と言い出したら彼女は何と言うだろうか。
別におめでとうという言葉を聞きたい訳ではない。基本的には会話なんかしたくないのだ。あの件を除いては何も話す話題など無い。だったらこういうのはどうだろう。
「結婚したけどさ、君に失望されたような失敗をしたくないので聞くけど、今度新婚旅行でフランス語圏内に行くことになったから、あの件の事を今の妻に言っておいた方がいいかな。それとも君は言わない方が良いと思う?」
離婚してから十年近く経っていきなりそんな電話を受けたら、彼女はどう反応するだろうか。そんなこと知らないわよ、勝手にすれば、と冷たく突き放されて終わりのような気もする。だったら連絡する意味がない。
いや、第一どういう答えが欲しくて彼女に電話をしようというのか。悩みを相談するなら、剛の事を思い、真剣に解決策を考えてくれる相手でないと意味がないのではないか。
ではそれなら誰か。今のところ身近にいるのは同期の手塚だ。しかしあいつはトラウマのことを知らない。そんな相手に自分の弱点である過去の汚点を打ち明けていいものだろうか。
しかも彼は明日香のいる課の隣にいる。あまりにも近すぎるからうっかりと口を滑らし、彼女の耳に入ることだって考えられた。それだけは避けたい。彼女があの事を知るとすれば、少なくとも自分の口から伝えたいからだ。
それでは詳しいことは伏せて、どう思うか聞いてみる手もある。そうか。加奈に電話するよりも先に、まずは手塚に相談してみよう。それでも自分の中で解決方法が決まらないようだったら、加奈に電話してみても遅くない。
そうこう考えている間、気付いた時にはいつの間にかまたソファで寝てしまっていたらしく、彼女の声で起こされた。
「お夕飯の準備ができたわよ」
思わず跳び起きて立ち上がり、少し寝ぼけた頭を掻きながら食卓についた。今日買ったサバが味噌煮として出され、ニラとネギが添えられている。同じく冬瓜と油揚げの煮物が副菜として出されていた。そこにご飯とお味噌汁が置かれている。
「お昼が和食だったから夕飯はお肉にしようかと思ったけど、魚は早めに食べた方が良いと思って。ごめんね」
「いいよ、いいよ。和食は好きだし、カツオのたたきとサバの味噌煮じゃあ、味は全然違うから」
「そう? じゃあ、いただきます」
「いただきます」
二人で手を合わせて食事を始める。こういう何気ない瞬間が幸せなのだろう。昼食と夕食とが全く同じものが被っている訳でもないのに、そんな事を気遣ってくれながら彼女は剛の健康も考え、夏野菜が入った食事を作ってくれる。
冬瓜など一人暮らしではまず食べない。外食先でもそう出てくるお店は無い、まさしく家庭料理だ。しかも冬瓜はこの地元愛知県が生産量で全国一位の食材らしい。冬という文字が入っているが夏野菜で、体を冷やす効果があるという。それを油揚げと一緒に煮て、片栗粉でとろみをつけて食べるのだ。
シンプルで優しい味付けがまさしく剛好みだった。というより、もうすでに五カ月余りの生活で彼女の作った料理の味付けが、剛の舌に馴染んでしまった、と言った方が良い。
例えば幼い時から食べ慣れてきた家庭の味、お袋の味が大人になっても忘れられないと言う人がいる。だが剛はそれほど食に執着が無かった。中学高校は岐阜の片田舎である親元を離れ、名古屋の中高一貫校に入って下宿生活をしていたからかもしれない。
大学は東京へ行き、そして僅かな結婚生活もほぼ独身時代と変わらず生きてきた。年に一、二回ほど帰省して食べる機会はあったものの、家庭の味など中学時代から数えると約二十年以上縁遠くなっている。
だからだろう。明日香とは食べ物や味の好みが似ていたからか、彼女の作るもの全てが剛好みの味付けだった。しかも独身の時とは違い、うっかり寝てしまっても起こしてくれ、食事がすでに出来上がっているのだ。こんな贅沢なことは無い。
かつてなら慌てて暗くなった外へと出かけ、コンビニで弁当を買って帰り、一人寂しくテレビを付けながら食べることがほんの半年前までは当たり前だった。それが今では目の前に出来立てで手作りの食事があり、正面には支店でもマドンナと言われ、誰もが羨む可愛い顔をした明日香が座っているのだ。
お嬢様育ちなのに気取ったところがなく、ごく自然な形で剛とのごく普通の会社員生活に馴染んでいた。こんな幸せなことが合っていいのかと思う。結婚して良かった、と心から思える。
以前の結婚では全く感じたことがなかった。だからこそこの幸せを壊すことは、絶対に避けたい。剛は何度も同じ結論に到り、そしてまた頭を悩ませることになった。
「どうしたの? あんまり美味しくない?」
心配そうに尋ねられて、自分の顔が険しくなっていたことに気付く。いやいやと慌てて首を振り、美味しいよ、とサバの身を突いてほぐし、口に運んで冬瓜にも手を付けた。
「にやにやして食べていたと思ったら、急に怖い顔をしたりするから、変な味でもするのかと心配になっちゃったけど、大丈夫だよね」
どうも考えていたことが表情に出ていたらしい。
「大丈夫。味はいつも通りどれも美味しいよ。途中まで幸せだなあ、って思って食べていたら、ちょっと昔の嫌なことを思い出したから、それが顔に出ていたのかも」
「何? 昔の嫌なことって」
ここは正直に言うことにした。
「ああ、ごめん。前の結婚時代の事さ。以前はこんな美味しい食事を出してもらったことが無かったからね。だから今は幸せだなあ、って思っていたからだよ」
「本当? だったらいいけど」
彼女は嬉しそうに顔を赤くして笑った。嘘はついていない。今が幸せであり、以前の結婚生活では無かったことも本当だ。ただ嫌な事という中に、昔の汚点が含まれることまでは言わなかった。
以前の結婚生活の事は、詳細を省いて大まかな説明をしていた。若さから勢いで結婚してしまい、結婚当初は気付かなかったが、二人だけで一緒に過ごし始めた途端にずれが生じ、元妻が流産したという不幸も重なり早い段階で結婚生活が破たんした、と伝えている。
その後の約一年半の家庭内別居生活の状況も教えていた。二人が結婚することが決まった際、彼女が籍を入れる前だが早く一緒に生活したいと言い出した理由は、その事とも関係していたと思う。
籍を入れてしまう前に、一緒に暮らしてみて二人の間にズレが生じるかどうかを確かめたかったに違いない。問題ないと確信を持ってから籍を入れ、式を上げた方が良いと彼女は考えたのだろう。
だが剛もあの頃のように若くは無い。彼女だってそれなりにいい年齢で人生経験もあり、仕事柄多くの人と接してきて人を見ている。それまでの交際期間で、二人が暮らし始めたとしても心配ないという根拠のない自信はあった。
それでも人と人との付き合いであり、実際に暮らしてみないと判らないこともある。だからお互いの不安を完全に解消するためにも、入籍前の同棲生活という提案を剛もすんなりと受け入れたのだ。予想通り、いや予想以上に二人での生活は心地よく、ストレスがほとんどない状態から始まった。
もちろん生活する上で、剛が住んでいた部屋に彼女が加わったこととお互い働いているために、いくつかのルール作りは必要だった。そこで役割分担を決め、食事と洗濯は彼女が、掃除やごみ出しなどは剛が行うようにした。それでも共同生活において、几帳面かそうでないかは個人差がある。剛はおおざっぱで彼女は綺麗好きだ。
そういう時は、綺麗好きな人に合わせれば間違いない。剛だって部屋が汚かったり物が散乱していたりするよりは、整頓されている方が良かった。しかし一人暮らしの時は毎晩遅く、疲れて帰ってくる中できっちりと片付けをすることはなかなか難しい。掃除は家事の中でも優先順位が低いため後回しにし、つい疎かになって散らかっていくのだ。
けれど今は彼女が食事や洗濯などをやってくれるおかげで、剛は掃除をする余裕が持てた。最初は彼女の指導の元に掃除を行って部屋をある一定の状態まで整頓し、後はその状態を維持するよう、最低週に一回は片付けるようにしたのだ。
面白いもので、気が付いた時には掃除が自分の分担だという自覚が生まれ、汚れていたり片付いていない場所を見つけたりすると、その度に綺麗にする癖が身についた。
そうして二人でゆっくりと過ごす時間を作ったり、またそれぞれが別々に過ごしたりする時間を加えた生活リズムを整えた。それが一度出来上がってしまいスムーズに流れ始めれば、後は繰り返して行くだけだ。
そのように始まった二人の同棲生活は、一カ月もしないうちに馴染み、今や完全に形が出来上がっている。しかも快適に、そして楽しく、リラックスしてお互いが過ごせているのは間違いない。
やはり出会ってから、交際を続けている間にお互いの相性が良いと思っていた感覚は間違っていなかった。本当に彼女こそが結婚式で誓ったように、一生添い遂げたいと思う相手なのだ。その為に絶対この先、躓くわけにはいかない。剛の頭の中では今日何度目かの、同じ悩みのループを辿り始めていた。
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※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
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『140字小説〜ロスタイム〜』
開幕‼︎
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