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プロローグ
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テレビ局の楽屋に案内された保曽井藤子は、緊張のし過ぎで既にぐったりとしていた。初めての経験に加え、生放送というプレッシャーが加わっていたからだろう。その時既に弟が亡くなっていたことなど、もちろん知る由もない。
待ち時間も長かった。外は暗く寒い中、いつもより二時間早い朝の四時に起き、局へ入ったのは七時半だ。まだ気温は低かったが、周囲はすっかり明るくなっていた。その上念入りにメイクを施され、直前の最終確認を経てもうすぐ十時になる。
他人に顔を触られるのも慣れていないから、余りいい気持ちはしなかった。また鏡越しでチラチラ送られる視線が品定めされているように感じられ、余計に気分がささくれた。点けっぱなしにされたテレビから、この局で放送中の天気予報が流れていた。いつ桜が開花するかと説明する気象予報士の声さえ、耳障りに感じられたほどだ。
気疲れの理由がそれらだけで無いと、頭では理解している。しかし今更逃げる訳にもいかない。今回のテレビ出演は、一ヶ月以上前から打ち合わせを行ってきたのだ。それでも手汗が止まらない。
思わず周囲を見渡すと、担当編集者である中川の姿を捉えた。どうやら彼女もこうした状況には不慣れらしい。その証拠に先程から台本を持つ手が微妙に震えている。藤子の浮足立った気配に影響されたのかもしれない。視線もどこか泳いでいるように見えた。
ここへ無理矢理連れて来た張本人のくせにと心の中で嘲笑しつつ、これから出演するコーナーの流れが書かれた部分を、藤子も同じく眺めた。しかし朝が早かったせいもあってか、さっぱり頭に入ってこない。
昔から朝方だった藤子は、今も毎日六時に起きて朝食を作り、七時半頃から執筆に取り掛かっている。それでも通常と異なるペースに戸惑わされていた。
この半年間は特にそうだ。これから毎週金曜放送の情報番組に出る藤子は、自分が書いた本の宣伝を兼ね、コメンテーターも務めなければならない。出番はもうそろそろだと聞いている。心の準備が整わないまま時間だけが過ぎて行く。そんな時、部屋のドアがノックされた。
どうぞ、と答える声が震える。しかし入って来たスタッフは、慣れた調子で言った。
「白井先生、あと五分経ったらスタジオに入って頂きますので、宜しくお願いします」
「分かりました」
ペンネームの白井真琴で応募した“伝えたい”が文潮堂賞大賞を取り、藤子は四十九歳の九月に作家デビューが決まった。それだけでも夢のような出来事だったのに、あろうことかその作品が同じ二〇二一年の十二月、純文学の新人に与えられる芥山《あくたやま》賞の候補に挙げられたのだ。しかも翌年の一月に行われた選考会を経て、受賞までしてしまったのである。
藤子の経歴を含めた様々な要因に加え、アラフィフにしては見栄えの良い点が評判になったらしい。マスコミが大きく取り上げ、あっという間に有名作家として祭り上げられた。雑誌等の取材が殺到し、テレビ出演のオファーもいくつか来た。今回はその中で選んだ最初の番組だ。しかし全く気が乗らなかった藤子は、中川に散々断って欲しいと申し入れをしていたのである。
けれど新人作家の立場は弱い。また出版業界も長い間厳しい環境に置かれている。そんな中で“伝えたい”が近年の純文学作品、しかも新人では異例の五十万部を突破する勢いに乗ったのだ。
マスコミの影響であることは明らかで、このままいけばミリオンも狙えると文芸編集部は意気込んでいた。そこで次作を書かせるより、しばらくは受賞作品の宣伝を優先すると決めたらしい。その一環として、今回のテレビ出演が決まったのである。
と言っても出番はワンコーナーの二十分程度に過ぎない。けれどこの番組は視聴率が良いだけでなく、ここで紹介される作品は必ずと言っていい程売れるともっぱらの噂だった。しかも出演すれば単なる宣伝に留まらず、番組内で扱われるニュース等についてのコメントが求められる。その対応次第では、今後の作家としての人気度が決まるとまで言われていた。
これには編集部だけでなく、出版社挙げての強力な後押しを受けた。それに逆らえず、藤子は言われるがままここまで来てしまったのだ。不本意だったがもう後戻りは出来ない。覚悟を決めた藤子は、再び現れたスタッフの後に続きスタジオへと向かった。そこで司会者達が揃う場所から、少し離れた椅子に座るよう促された。
指示通り腰かけ、次に声をかけられるまで再び待機しなければならない。溜息をつきながら思わずにはいられなかった。これまで費やした時間があれば、短編の一つは書けたはずだ、と。それでも今後の宣伝効果や、“伝えたい”の更なる重版に繋がると考えれば、止むを得なかった。その上出演料だって馬鹿にはできない。それにたった二十分だ。そう自分に言い聞かせ、再び台本に目を通す。
スタッフの合図で横にいる女性インタビュアーにカメラが切り替わり、彼女の仕切りで藤子と作品の紹介がされる予定だ。そこからは打ち合わせ通りの流れに沿い、決められた受け答えをすれば良かった。
ただしそこにワイドショーならではのコメントが加わる。事前の打ち合わせで聞いたニュースの内容やそこで決めた質問に対する答えが、予め台本に書かれていた。それでも自らが発した言葉であるかのように感情を込め、棒読みにならないよう注意しなければならない。番組側としては唯一懸念している点だろう。しかし藤子には別の想いがあった。
スタジオでは司会者が、二年目に入ったアメリカの民主党政権のニュースについて触れている。二〇一五年に同性婚を事実上合法化したにも関わらず、差別や権利の不平等が問題となっていた件だ。
そこで多様性を前面に打ち出し、多くのマイノリティを大臣に任命していた新政権がLGBTQ等に対する権利の拡大を保証する、新法案を可決したと報道していた。
しかし日本では長期政権を維持している政府が保守的な為、そうした動きは全くない。野党が次々に改革案を出しているけれど関心は薄かった。
その話題が終わり、ようやく自分の番が来た。読書家のモデル兼タレントとしてここ最近活躍し始めている女性が、アドリブで藤子の作品だけでなく容姿まで褒め出す。内心舌打ちをしながら、それでも笑顔で応える。
自己紹介と作品の宣伝等については、何とか無難に乗り切った。後はニュースに対するコメントを一つ言えば終わりだ。内容は、受賞作品内でも扱っている中年男女の婚活に関してだった。だからわざわざその話題が選ばれたのだろう。
しかしここで予期せぬ事態が起きた。ニュース速報が入って来たのだ。その為男性司会者が、急遽スタッフから渡された原稿を読みだした。それによると今日の午前八時頃、都内某マンションの住民と思われる中年男性が、屋上から落ちて死亡したらしい。
通常それだけなら速報にならない内容だ。問題は男性が落ちた際、たまたま歩いていたという同じマンションに住む七十三歳の女性と接触し、重症を負った為と思われる。しかも通学途中の小学生等が周辺にいる時間帯だった為、大騒ぎとなったのだ。
そこで司会者は、このニュースについてのコメントを藤子に求めてきた。一見滅茶ぶりにも思えるが、それなりの理由があった。“伝えたい”は独身中年男性と女性の悲哀を綴った物語で、文中に男性がマンションから飛び降りようとするシーンが描かれていたからだ。そこではある記憶が頭を過り、思い止まる内容となっていた。
そうした流れもあり、番組側はこのタイミングでニュースを速報として扱い、原稿を作成したと思われる。司会者はその空気を察したらしい。咄嗟の判断としては間違っておらず、既読の視聴者や番組制作サイドにとっても、さすがだと膝を叩いていたようだ。
しかし想定外の対応を迫られた藤子からすれば最悪だった。その上生放送の為、絶対に答えなければならない。更にはこの反応次第で、白井真琴という作家の価値さえ決まりかねないというのだから尚更だった。
藤子は自らを落ち着かせ、また悲しい報道でより心を痛めたとの想いを伝える為、意図的に大きく息を吸い吐き出した後、口を開いた。
「巻き込まれお怪我をされた方にとっては、本当にお気の毒な事でした。お見舞い申し上げます。また男性の行為が自殺だったとしたら、とても悲しい事件です。もし私の作品を読んで頂いていたなら、違った形になっていたかもしれない。そう思うのは傲慢でしょうか。こういう時、作家または一人の人間としての無力さを痛感させられます」
こうしたコメントを受け、司会者は上手くニュースに関してまとめ上げ、コーナーを終わらせた。そうして藤子の出番も終了した。
帰りがけには中川だけでなく、番組のプロデューサーまでもがアドリブのコメントにしては良かった、と褒めてくれた。少しネタバレになったが、作品内ではどういう展開を迎えるか気になるし、読みたいと思わせる点が評価されたようだ。その為、社交辞令だろうが次もお願いしますとまで言われ、気分良く局を後にしたのである。
テレビ局が手配したタクシーに乗り込み、自宅へ戻る途中にラジオで流されたニュースが耳に入った。どうやら先程コメントした話題の続報らしい。
死亡したのはマンションの住民で、ワタベリョウ四十八歳男性だと身元が判明したという。巻き込まれた女性の命に別状はなかったが、全治三カ月以上の大腿骨骨折だと報じていた。
若ければまだ良いけれど、高齢者による足の付け根の骨折は、その後のリハビリが大変だと聞いている。骨折前の状態に戻るにはとても時間がかかり、最悪の場合は寝たきりになってしまう人も少なくないようだ。
そうならないよう無事を祈るしかない。その時は本気で思った藤子だがその後多忙だったこともあり、そんな出来事などすっかり忘れていた。その為死亡した人物が、後に藤子の弟の保曽井雄太だと告げられるなんて、当時は全く想像もしていなかった。
さらに四十八歳で独身だった彼の不審死が、藤子のその後の人生を大きく狂わせるほどの波乱を巻き起こしたのである。
待ち時間も長かった。外は暗く寒い中、いつもより二時間早い朝の四時に起き、局へ入ったのは七時半だ。まだ気温は低かったが、周囲はすっかり明るくなっていた。その上念入りにメイクを施され、直前の最終確認を経てもうすぐ十時になる。
他人に顔を触られるのも慣れていないから、余りいい気持ちはしなかった。また鏡越しでチラチラ送られる視線が品定めされているように感じられ、余計に気分がささくれた。点けっぱなしにされたテレビから、この局で放送中の天気予報が流れていた。いつ桜が開花するかと説明する気象予報士の声さえ、耳障りに感じられたほどだ。
気疲れの理由がそれらだけで無いと、頭では理解している。しかし今更逃げる訳にもいかない。今回のテレビ出演は、一ヶ月以上前から打ち合わせを行ってきたのだ。それでも手汗が止まらない。
思わず周囲を見渡すと、担当編集者である中川の姿を捉えた。どうやら彼女もこうした状況には不慣れらしい。その証拠に先程から台本を持つ手が微妙に震えている。藤子の浮足立った気配に影響されたのかもしれない。視線もどこか泳いでいるように見えた。
ここへ無理矢理連れて来た張本人のくせにと心の中で嘲笑しつつ、これから出演するコーナーの流れが書かれた部分を、藤子も同じく眺めた。しかし朝が早かったせいもあってか、さっぱり頭に入ってこない。
昔から朝方だった藤子は、今も毎日六時に起きて朝食を作り、七時半頃から執筆に取り掛かっている。それでも通常と異なるペースに戸惑わされていた。
この半年間は特にそうだ。これから毎週金曜放送の情報番組に出る藤子は、自分が書いた本の宣伝を兼ね、コメンテーターも務めなければならない。出番はもうそろそろだと聞いている。心の準備が整わないまま時間だけが過ぎて行く。そんな時、部屋のドアがノックされた。
どうぞ、と答える声が震える。しかし入って来たスタッフは、慣れた調子で言った。
「白井先生、あと五分経ったらスタジオに入って頂きますので、宜しくお願いします」
「分かりました」
ペンネームの白井真琴で応募した“伝えたい”が文潮堂賞大賞を取り、藤子は四十九歳の九月に作家デビューが決まった。それだけでも夢のような出来事だったのに、あろうことかその作品が同じ二〇二一年の十二月、純文学の新人に与えられる芥山《あくたやま》賞の候補に挙げられたのだ。しかも翌年の一月に行われた選考会を経て、受賞までしてしまったのである。
藤子の経歴を含めた様々な要因に加え、アラフィフにしては見栄えの良い点が評判になったらしい。マスコミが大きく取り上げ、あっという間に有名作家として祭り上げられた。雑誌等の取材が殺到し、テレビ出演のオファーもいくつか来た。今回はその中で選んだ最初の番組だ。しかし全く気が乗らなかった藤子は、中川に散々断って欲しいと申し入れをしていたのである。
けれど新人作家の立場は弱い。また出版業界も長い間厳しい環境に置かれている。そんな中で“伝えたい”が近年の純文学作品、しかも新人では異例の五十万部を突破する勢いに乗ったのだ。
マスコミの影響であることは明らかで、このままいけばミリオンも狙えると文芸編集部は意気込んでいた。そこで次作を書かせるより、しばらくは受賞作品の宣伝を優先すると決めたらしい。その一環として、今回のテレビ出演が決まったのである。
と言っても出番はワンコーナーの二十分程度に過ぎない。けれどこの番組は視聴率が良いだけでなく、ここで紹介される作品は必ずと言っていい程売れるともっぱらの噂だった。しかも出演すれば単なる宣伝に留まらず、番組内で扱われるニュース等についてのコメントが求められる。その対応次第では、今後の作家としての人気度が決まるとまで言われていた。
これには編集部だけでなく、出版社挙げての強力な後押しを受けた。それに逆らえず、藤子は言われるがままここまで来てしまったのだ。不本意だったがもう後戻りは出来ない。覚悟を決めた藤子は、再び現れたスタッフの後に続きスタジオへと向かった。そこで司会者達が揃う場所から、少し離れた椅子に座るよう促された。
指示通り腰かけ、次に声をかけられるまで再び待機しなければならない。溜息をつきながら思わずにはいられなかった。これまで費やした時間があれば、短編の一つは書けたはずだ、と。それでも今後の宣伝効果や、“伝えたい”の更なる重版に繋がると考えれば、止むを得なかった。その上出演料だって馬鹿にはできない。それにたった二十分だ。そう自分に言い聞かせ、再び台本に目を通す。
スタッフの合図で横にいる女性インタビュアーにカメラが切り替わり、彼女の仕切りで藤子と作品の紹介がされる予定だ。そこからは打ち合わせ通りの流れに沿い、決められた受け答えをすれば良かった。
ただしそこにワイドショーならではのコメントが加わる。事前の打ち合わせで聞いたニュースの内容やそこで決めた質問に対する答えが、予め台本に書かれていた。それでも自らが発した言葉であるかのように感情を込め、棒読みにならないよう注意しなければならない。番組側としては唯一懸念している点だろう。しかし藤子には別の想いがあった。
スタジオでは司会者が、二年目に入ったアメリカの民主党政権のニュースについて触れている。二〇一五年に同性婚を事実上合法化したにも関わらず、差別や権利の不平等が問題となっていた件だ。
そこで多様性を前面に打ち出し、多くのマイノリティを大臣に任命していた新政権がLGBTQ等に対する権利の拡大を保証する、新法案を可決したと報道していた。
しかし日本では長期政権を維持している政府が保守的な為、そうした動きは全くない。野党が次々に改革案を出しているけれど関心は薄かった。
その話題が終わり、ようやく自分の番が来た。読書家のモデル兼タレントとしてここ最近活躍し始めている女性が、アドリブで藤子の作品だけでなく容姿まで褒め出す。内心舌打ちをしながら、それでも笑顔で応える。
自己紹介と作品の宣伝等については、何とか無難に乗り切った。後はニュースに対するコメントを一つ言えば終わりだ。内容は、受賞作品内でも扱っている中年男女の婚活に関してだった。だからわざわざその話題が選ばれたのだろう。
しかしここで予期せぬ事態が起きた。ニュース速報が入って来たのだ。その為男性司会者が、急遽スタッフから渡された原稿を読みだした。それによると今日の午前八時頃、都内某マンションの住民と思われる中年男性が、屋上から落ちて死亡したらしい。
通常それだけなら速報にならない内容だ。問題は男性が落ちた際、たまたま歩いていたという同じマンションに住む七十三歳の女性と接触し、重症を負った為と思われる。しかも通学途中の小学生等が周辺にいる時間帯だった為、大騒ぎとなったのだ。
そこで司会者は、このニュースについてのコメントを藤子に求めてきた。一見滅茶ぶりにも思えるが、それなりの理由があった。“伝えたい”は独身中年男性と女性の悲哀を綴った物語で、文中に男性がマンションから飛び降りようとするシーンが描かれていたからだ。そこではある記憶が頭を過り、思い止まる内容となっていた。
そうした流れもあり、番組側はこのタイミングでニュースを速報として扱い、原稿を作成したと思われる。司会者はその空気を察したらしい。咄嗟の判断としては間違っておらず、既読の視聴者や番組制作サイドにとっても、さすがだと膝を叩いていたようだ。
しかし想定外の対応を迫られた藤子からすれば最悪だった。その上生放送の為、絶対に答えなければならない。更にはこの反応次第で、白井真琴という作家の価値さえ決まりかねないというのだから尚更だった。
藤子は自らを落ち着かせ、また悲しい報道でより心を痛めたとの想いを伝える為、意図的に大きく息を吸い吐き出した後、口を開いた。
「巻き込まれお怪我をされた方にとっては、本当にお気の毒な事でした。お見舞い申し上げます。また男性の行為が自殺だったとしたら、とても悲しい事件です。もし私の作品を読んで頂いていたなら、違った形になっていたかもしれない。そう思うのは傲慢でしょうか。こういう時、作家または一人の人間としての無力さを痛感させられます」
こうしたコメントを受け、司会者は上手くニュースに関してまとめ上げ、コーナーを終わらせた。そうして藤子の出番も終了した。
帰りがけには中川だけでなく、番組のプロデューサーまでもがアドリブのコメントにしては良かった、と褒めてくれた。少しネタバレになったが、作品内ではどういう展開を迎えるか気になるし、読みたいと思わせる点が評価されたようだ。その為、社交辞令だろうが次もお願いしますとまで言われ、気分良く局を後にしたのである。
テレビ局が手配したタクシーに乗り込み、自宅へ戻る途中にラジオで流されたニュースが耳に入った。どうやら先程コメントした話題の続報らしい。
死亡したのはマンションの住民で、ワタベリョウ四十八歳男性だと身元が判明したという。巻き込まれた女性の命に別状はなかったが、全治三カ月以上の大腿骨骨折だと報じていた。
若ければまだ良いけれど、高齢者による足の付け根の骨折は、その後のリハビリが大変だと聞いている。骨折前の状態に戻るにはとても時間がかかり、最悪の場合は寝たきりになってしまう人も少なくないようだ。
そうならないよう無事を祈るしかない。その時は本気で思った藤子だがその後多忙だったこともあり、そんな出来事などすっかり忘れていた。その為死亡した人物が、後に藤子の弟の保曽井雄太だと告げられるなんて、当時は全く想像もしていなかった。
さらに四十八歳で独身だった彼の不審死が、藤子のその後の人生を大きく狂わせるほどの波乱を巻き起こしたのである。
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