太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

その二十五 魔王様による後始末

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 伝説の巨神が完全に全機能を停止して数時間後。
 エルフ国にようやく長い夜が明けて日の光が差し込んでくる。
 そこへドワーフ国から超移動大要塞が到着。
 ドワーフ国国王であるミルクの指示によりエルフ国首都の復旧作業が始まった。
 そして私達魔王国も正規軍を通じて救援物資を運搬、難民の救済に乗り出した。

「それにしても……とんでもない被害みたいね」
「そうだねヒカルちゃん。もしこのまま巨神が暴れてたら魔王国もこうなってたかも」
「本当にそうね太助。何しろ魔法が使えなくなる能力持ちだったから厄介な奴だったわね」

 正直今回は私でもヤバかった。
 何しろ私が得意とする魔法という魔法が封じられていたのだからね。
 本当にあの巨神を作った古代エルフ文明はとんでもないわ。
 だけど何故にそれ程の文明が滅んだのかしら?
 今となっては永遠の謎ね。

 そういえばフェミーはファミーと一緒にブログとアカウント将軍の元にいたわ。
 アカウント将軍はすっかり正気を取り戻していて息子のブログとフェミーに平謝りしてるみたい。

「ルシフェル王の魅了に惑わされていたとはいえ今までの無礼の数々……誠に申し訳ございません」
「アカウント将軍、頭を上げてください。全ては人間国の陰謀によるものです」
「ですが……」
「これからのエルフ国には貴方のような方が必要なのです。もし償いたいのなら私に力を貸してくださし」
「フェミー様……」

 あらあら。
 アカウント将軍ったら大粒の涙を流して……だけど今のエルフ国復興には一人でも優秀な人材が必要よね。
 そんなフェミーの傍らにはファミーとブログがいるわ。

「フェミー、これからは君が王になっえエルフ国を立て直すんだ」
「わかってるわブログ。私は必ずエルフ国を立て直してやるわ」
「フェミー」
「そしてブログ!これからは私の傍にいてね💛そしてファミーもね」
「はっ!このファミー、主の為に尽力いたします」

 どうやら今後のエルフ国はこの三人が仕切るみたいね。
 さて、これは今後のお手並み拝見と行きますか。
 それから一週間は本当に大変だったわ。
 特に動かなくなった伝説の巨神を元の場所に戻すのには苦労したわ。
 とりあえず私が巨大化して巨神を担ぎ上げて元にお城のあった場所へも治下んだけどコイツ思ったよりも重いのなんの!
 流石に休憩しながら少しづつ移動させて……ようやく巨神を元あったお城に設置したわ。
 一仕事終えた私は元の大きさに戻り一息。

「は~っ、これはしんどいわ!」
「お疲れ、はいエリクサー」
「ありがとう太助。で、フェミーこの後どうするの?」

 フェミーは何やら少し大きめの種を出して……それを地面に埋めたわ。
 そして……フェミーは何やら詠唱を唱えたわ。
 すると、地面から大きな植物らしいのが生えてきたわ。
 その植物は急速に成長して巨神を包むように大きくなっていく。
 やがえ巨神は完全に巨大な植物に隠れてしまい……最後にはとてつもなく大きな巨木ができていたわ。

「これどとりあえず封印完了ね。後はいくつか工事を行ってお城の完成ね」

 うげ~っ。
 巨神封印と一緒にお城の土台をこうも簡単に。
 こりゃ太助曰く一夜城も真っ青ね。

 それから更に一週間後。
 エルフ国首都は魔王国とドワーフ国の支援もあり見事ほぼ完全に復旧を遂げた。
 そして今夜は新しいエルフ国のお城でささやかなパーティーが行われる事なったわ。

「太助、このドレスはどうかしら?」
「うん!ヒカルちゃんの白いドレスいいね」

 普通、魔王といえば黒い衣装が似合うのが定番だけど……今日は私の友達の晴れ舞台だから思い切って白いドレスにしちゃったわ。
 案外私って何を着ても似合うかも。
 あっ、それと太助の白いタキシードも似合ってるわよ。
 さて、一方のアンナはというと。

「う~ん」
「あら?どうしたのアンナ」
「ヒカルか……僕としてはドレスよりも太助ちゃんみたいなタキシードのほうがいいんじゃないか」

 はは……確かにアンナは男装の麗人が似合いそう。
 だけどアンナも太助の奥さんの一人なんだからキッチリとドレスを着てほしいな。

「仕方がないわね。ほら!このドレスはどう?」
「おいヒカル!やめろって」
「仮にも太助の妻の一人が往生際が悪いわよ!ほら、このドレスはどう」
「ひえええええええええええええっ」

 全く、いい加減にしてよね。
 アンナも女性なんだから!

「はは……ヒカルちゃんもアンナ姉ちゃんも程々にね」

 太助もこれには呆れてるわね。
 そこへ私達の客室にファフリーズが入ってきたわ。

「失礼します」
「あっ、ファブリーズさん」

 おや?
 今日のファフリーズったら情熱的な深紅のドレスを着ているわ。
 これは女の私が見ても強烈な色気を感じずにいられないわ。
 それに……ファフリーズったら太助を前にして何かよそよそしいわ。

「太助様……本当にいいんですか?」
「うん。もうヒカルちゃんとアンナ姉ちゃんにも話してあるしね」
「太助様……不束者ですがよろしくお願いします」

 そう、なんとファブリーズは太助の三人目の嫁になる事になったのよねぇ。
 それにしても太助の物好きは前々からそうだったけど、まさか魔王国では行き遅れで有名なファブリーズを三人目にするとは。
 だけどこれで太助の周囲は益々賑やかになるのは間違いなさそうね。
 さぁ、そろそろ私達四人は揃ってパーティー会場へ!

「うわぁ……賑やかにやってるわね」
「そうだねヒカルちゃん。本当に一週間前にあれだけの戦いがあったのがウソみたいだよ」
「エルフ国は魔法技術が我が魔王国よりも進んでるから思ったより城下町の復旧が早かったみたいよ」
「そうか。エルフって僕達が思ってるよりも逞しいんだね」

 本当にエルフ達の逞しさには魔王の私も恐れ入るわ。
 これぞ自然と共に生きるエルフの底力って奴かしら?

「ん?あれはミルクにライトじゃないの」
「本当だ」

 ふとパーティー会場にドワーフ国国王のミルクとその恋人であるライト伯爵の姿が。
 私達はそんなミルクとライトの元へ。

「お~いミルク!」
「あやヒカルに太助じゃないの。それに魔王軍の両将軍まで」
「こんばんは魔王様に宰相様」
「ライト伯爵もしばらくです」

 今回事件に直接関わったミルクはとおかく、どうしてライトまで会場に?
 ミルクにそれを聞いたら?

「ライトきゅんには今夜のパーティーの為にスイーツをドワーフ国の代表して色々と作ったの」
「となると……会場にある色々なスイーツはライトが?」
「そうそう!ライトきゅんのスイーツはエルフ達に好評なのよ~っ💛」
「はは……確かにライト伯爵のスイーツなら納得かしら」

 うぬぬ!
 ミルクめ……早速エルフ国の幹部達ををライト伯爵のスイーツで心を掴む算段か。
 流石はドワーフ国の国王ね。
 ミルクもしたたかねぇ。

「ヒカルちゃん……大丈夫!」
「太助」
「実はアンナ姉ちゃんに予め用意してもらったのがあるんだ」
「太助、アンナに一体何を頼んだの」

 私は思わず、この場にいるアンナにきいてみる。

「ふっふっふっ!そろそろ始まる頃かな」
「始まる?何が始まるのアンナ」

 すると会場に何やら我が国の正規軍が大鍋を持ってきたわ。
 しかも持ってきた大鍋から美味しそうな香りが……これってまさかカレー?

「アンナ……これはまさか!」
「僕が魔王国特産スパイスを配合して作ったオリジナルカレーさ。ちなみにお米は魔王国で作った一級品だぜ」

 それにしても太助とアンナもいつの間に。
 おや?
 パーティー会場にいるエルフを始めとする人達はそんなカレーを食べようと集まってきたみたい。
 まぁエルフ国のエルフにしてみればカレーライスなんて珍しいんでしょうね。
 そしてエルフ達がそんなカレーを食べてる訳ですが……その感想は?

「こ、これは!」
「美味いっ!これは素晴らしい」
「この程よい辛さ……これは癖になりそうだ」

 おおっ、やった!
 流石はアンナね。
 エルフにとって珍しいカレーライスは完全に招待客のハートを鷲掴み!
 後で私も食べようかな。
 ん?
 あれはフェミーとブログじゃないの。

「フェミー!この料理はなんなのだ?」
「カレーよ!魔王国で食べられる料理よ。魔王国にいた頃に食べたことがあるわ」
「これは素晴らしいな。この辛さがたまらん」
「だけど……これって明らかに私達エルフが好むような味付けされてるわ。一体このカレーwお作ったのは誰かしら?」

 おおっ、あのカレー……エルフ国の国王と宰相の胃袋まで。
 アンナ……あのカレーはどうやって作ったの?
 も~辛抱溜まらん!
 こうなれば私も食べた~い。
 気が付けば私達はカレーを配っている場所にいたわ。

「あらヒカルじゃないの」
「フェミー……それにブログさん」
「いい所へ会えたわ。このカレーを作ったのは誰なの?」

 フェミーの問いに私はこの場にいたアンナを指さした。
 思わずアンナは驚き「ひ、ヒカル!」と首を横に振る。

「そうですか!アンナ殿は料理に関してはかなりの腕前だとお聞きしてましたが……そうですか」
「し、失礼ながら国王様……お気に召しましたか?」
「はい!久々にカレーを食べましたが素晴らしい味でしたわ」
「光栄でございます!」

 アンナがフェミーと話している間に私と太助とファフリーズはその評判のカレーライスを食べる事に。

 !?

 これは美味い!
 流石はアンナが作ったオリジナルカレー。
 確かに会場内にいる皆が夢中になるのも無理はないわ。

「うわぁ!これは美味いわ。流石はアンナね」
「うんうん!相川アズアンナ姉ちゃんの料理は凄いなぁ」
「このスパイスの調合は神がかかってるわ。流石は私の強敵(とも)ですわ」

 そして同じくアンナのオリジナルカレーを食べたミルクとライトは?

「悔しいけど……これは癖になるわ!もう辛抱溜まらんっ、お替りよ」
「流石はアンナ殿。やはり料理に関しては到底……恐れ入りました」

 ミルクの奴、今度はカレーを大森でお替りしちゃって。
 まぁ、これで我が魔王国もメンツが保たれたわね。
 もっとも魔王国はカレーでドワーフ国はスイーツだから勝負する意味は皆無だけど。

 それから私達会場にいる人達の前でエルフ国の新国王であるフェミーの戴冠式が行われた。
 戴冠式でフェミーの傍らには使い魔であるファミーと今度フェミーの夫となりエルフ国の宰相になぅったブログの姿が。
 そして、戴冠式を終えた後、フェミー国王は私達の前で今後のエルフ国の政策を発表した。
 まず、エルフ国の各都市の再開発と整備。
 そして仙台国王により迫害されていたダークエルフやホビット族を国民として受け入れ共に暮らす事を宣言。
 更に今度の一件による反省から独自に軍事力の充実化を決めた。
 また今後は我が魔王国とドワーフ国と改めて同盟を結ぶ方針を発表した。
 今後は魔王国とドワーフ国もエルフ国との交易が益々盛んになるだろう。
 




 そして……もうこの後はパーティーは間然に無礼講のドンチャン騒ぎに!
 こうして面倒くさかっあ騒乱は終わりを告げ……新しい始まりを迎えるであった。











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