太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

その二十二 最後の戦いへ

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 私が心臓部そのものである水晶ドラゴンを消滅させてから数分後。
 心臓部の部屋に太助と正規軍の面々がやって来た。
 そして……他にも約一名余計な奴が。

「うひょ~っ!これはすげぇオーバーテクノロジーだぜ」
「太助……どうしてロイドまで連れてきたの?」
「ロイドさんがどうしても巨神内部を調べたいって。ルルさんは必死に止めてたけど」

 全く、魔王国の狂技術者であるロイドが来るとはねぇ。
 余程この巨神の事が気になるみたいね。
 おや?
 ロイドったら先程からファミーに色々と質問してるみたい。

「へぇ~っ、君は元々古代エルフ文明が作った端末なんだ」
「はい、本来の名前はガーディアン002です」

 古代エルフ文明ねぇ。
 ファミーは元々その産物だった訳か。
 それから色々とロイドはファミーに質問攻めしてたけど……これを見ていたフェミーが割って入ったわ。

「ちょっと!私の使い魔に何をするの。彼女はガーディアンなんとかじゃないわ!」
「で、ですが……」
「彼女はファミー!私の使い魔よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 あらら、フェミーがファミーをロイドから引き離したわ。
 まぁ無理もないけどね。
 その会話を聞いていた私と太助。
 太助は私に古代エルフ文明について聞いてきたわ。

「ヒカルちゃん、古代エルフ文明って何?」
「私も古い書物での知識しか知らないけど確か遥か昔のエルフ国はとんでもない文明国だったそうよ」
「そしてこの伝説の巨神やファミーさんはその古代エルフ文明の産物だと言いたいの?」
「多分そうだと思う。だけど、どうして古代エルフ文明が衰退したかは……」
「それは今となっては不明という訳か」
「そう、多分人間国皇帝が持つ厄介な絶対守護の護符も一説では古代エルフ文明が生み出した産物だと推測してる学者もいるそうよ」
「様々な技術を有しながら謎の消滅をした文明か。案外魔王国にも様々な古代技術が残ってる可能性があるね」

 私達が古代エルフ文明について色々話してる最中、クロが私達の元へ。
 何か話したい事があるそうだ。

「――――現在この巨神の防御能力は皆無になっている模様です。今なら厄介な頭部操縦室へ乗り込む事が可能と思われます」
「そう……それなら後は操縦室へ赴いて……あのクソババァをギッタギタにできる訳ね」

 そうだった。
 まだ肝心な事を忘れる処だったわ。
 ふっふっふっ!
 ようやく、あの自称・エルフ国国王であるルシフェルというクソババァをぶっ飛ばす事が出来る訳ね。
 
「太助……今から最後の仕上げしに行ってくるわ」
「うん、流石に今度の首謀者をそのままにしておく訳にはいかないからね」
「じゃあ今から……」
「ちょっと待ってヒカル!」
「フェミー……それにファミーも」

 私と太助の前に何やら意を決した表情をしたフェミーとファミーの姿が。

「母……いえ反逆者ルシフェルの処に行くのでしょう。私も行くわ」
「ちょっと!私、今から何をしに行くかわかってる筈よね。私はフェミーの母親を……」
「もうあれは母ではないわ!エルフ国……いえ、その周辺諸国に損害を与えようとした大罪人よ」
「フェミー」
「逆賊の処罰は正当なるエルフ国次期国王である私の手で行うのが筋よ。だから私も一緒に連れて行って」
「…………」

 正直例え逆賊でかつ血の繋がりがないとはいえフェミーに肉親殺しはさせたくないな。
 だから私が代わりに鉄槌を下そうとしてたのに。
 だけど、やっぱりフェミーの決意は固そうだ。
 私は大きく溜息をつきた後でフェミーにこう告げる。

「なら……行きましょう」
「ありがとうヒカル。ファミーも私に力を貸して」
「はっ!」

 さて、では親玉をぶっ飛ばしに行きますか。
 私とフェミー&ファミー。
 それとファブリーズも行く事に。
 また太助も今度の未届け人として同行すると言ってきた。
 私としては太助はここでお留守番して欲しかったけど……そこはファブリーズが護衛すると言ってきたので渋々承諾した。
 それにして何か太助とファブリーズったら随分と仲がいい気がするけど?
 クロも当然一緒に同行。
 ただ……アンナだけは。

「なにっ、甲冑のスペアがないだと!」
「無茶言わないでよ~っ!あの甲冑はメンテナンスも大変な上に今回ここまで豪快に壊れてしまっては」
「そこを何とかするのが技術者であるお前の仕事だろ!」
「ぐっ苦しい!いくら俺でも無理なものは無理だって!」

 あちゃ~っ。
 専用の甲冑が使い物にならないんじゃ……残念だけどアンナはここで戦線離脱ね。
 もっともあのエネルギーの塊相手に一人だけで持ちこたえていたから無理もないか。
 でもアンナ、だからといってロイドに八つ当たりはよくないわよ。
 後で外にいるルルが知ったら激怒しそうだし。

 ちなみにミルクも居残りするつもりみたい。
 実は思ったよりもドワーフ国が誇る虎の子といえる弔意同大要塞の到着が思ったよりも早くなるそうで。
 どうもその大要塞にはドワーフ国宰相のマリとミルクにとって最愛のライト伯爵も一緒に来るとか。

「悪い光るにフェミー。私も戦線離脱だわ……もうすぐ大要塞と一緒にライトきゅんも来るみたいなのよ」
「えっ?ミルクの愛玩動物が」
「愛玩動物とは失礼ね。ライトきゅんは避難したエルフ達を保護しに来るのよ」
「結構博愛的な愛玩動物……って首を絞めるな!」
「私のライトきゅんはペットではないわっ!それにウチの宰相も来る予定よ」
「ゲホッゲホッ……えっ、あのバツイチ宰相も来るの?ミルクの国も結構人員投入するのね」
「そりゃエルフ国に借りを作るにはいい機会だしね。ここで恩を売っておけば今後の交易がよくなりそうだし」

 なんだかんだで、この辺はドワーフ国の国王らしく案外計算高いわね。
 では、そろそろ私達もあのクソババァどもをぶっ飛ばしてやろうかしら?
 
 だけど……その時、実に嫌~な事が!
 突如部屋中に聞こえてくるアナウンス!




 コアシステムの致命的な破損を確認。
 これよりコアシステムの修復作業を開始します。
 なお、修復時間は約二時間ぐらいでございます。




「あ~っ!折角ぶっ壊したのに修復開始?」

 ぐぎぃぃぃっ!
 折角完膚なきまでにあの推奨ドラゴン倒したのに後に時間で復活ですって!
 思わず動揺する私達にふぁみーがこう告げた。

「やはり頭部にある操縦席から三つの刻印を外す以外に巨神を完全停止する方法がありません」
「ファミー、三つの刻印を操縦席から外せばいいのね」
「はい」

 ファミーのいう通り伝説の巨神を完全に止める方法はただ一つ!
 頭部の操縦室から三つの刻印を取り外すしかない。
 さもないと、あと二時間ぐらいで心臓部である推奨ドラゴンが蘇り巨神は再び活動を開始する。
 残る猶予時間は二時間弱。
 そんな私に太助がこう告げた。

「こうなったら残る二時間で操縦席にある刻印を外すしか方法がない。行こう!ヒカルちゃん……最後の戦いへ」
「いよっしゃあああああああっ!こうなったらやるしかないわ。太助、ファブリーズ、そしてフェミーにファミー」

 もう一刻の猶予もない。
 絶対に心臓部復活前にすべてを終わらせるしかない。

「じゃあ時間がないから皆は私に捕まって!このまま飛行して直接頭部へ行くわ」

 私は太助達の手を取り……飛行して強行突入よ!

「アンナとロイドとミルクとクロは正規軍と協力して少しでも心臓部復活を遅らせて!」
「わかったわヒカル」
「任せてくれ魔王様!」
「ライトきゅんが来るまでやってみるわ」
「――――了解しました」

 では……皆、覚悟はいい?
 いざ、魔王ヒカル・グレーズ出陣よ!
 周囲に強力バリヤーを展開、そしてそのまま飛行!
 心臓部の部屋天井をブチ破り……いざ目指すは頭部操縦席!
 オラオラ!
 無敵の魔王様のお通りだ!




「さぁ……首を洗って待ってなさい!この魔王ヒカル・グレーズが直々に審判を下してあげるわ」






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みんなの感想(1件)

蒼月丸
2024.10.02 蒼月丸

良い作品なのでお気に入り登録しました!
こちらも小説を書いています!お互い書籍化目指して頑張りましょう!

解除

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