太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

その十七 伝説の巨神を攻略せよ!

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 巨神の操縦室でとんでもない事が起こってる最中、私達は一旦退却の真っ最中!
 ついでにパニックになっている首都のエルフ国の国民たちも避難誘導を同時にしてるからもう大変!

「魔王様、首都にいるエルフはほぼ全員避難完了です。どうも例の結界が無くなったみたいですので近くの村々へ避難可能みたいです」
「巨神復活したから、もう結界は無意味という訳ね」

 結界が無くなった。
 それを聞いたミルクはドワーフ国へリンクミラーで緊急連絡!

「あっミルク様。どうしたのです?」
「ライトきゅん💛悪いけどマリに超移動要塞をエルフ国へ出撃せせてくれるように言って!」
「えっ?要塞出撃だなんて何があったの?」
「とにかくボルト将軍にそう通達してくれる!緊急事態よ」

 うわぁ、ミルクったら……あの私ですら苦戦した弔意堂宇大要塞を出撃させるつもり?
 確かにあの魔法が使えない伝説の巨神相手ではあの超移動大要塞が有効でしょうねぇ。
 それから、すぐにミルクのリンクミラーにドワーフ国の宰相マリから連絡が。

「ミルク様、状況はライト伯爵から伺いました。エルフ国で面倒な事になったそうですね」
「相手は魔法を無力化する巨大な化け物よ。ここはエルフ国へ恩を売る事も考えて出撃よ!」
「了解しました。既にsy津劇体制は整っております。ただ……超移動要塞の到着がどうしても明後日になります」
「明後日?せめて明日までに到着させなさい!そうしないとエルフ国が更地にされちゃうわよ」
「わかりました!最善を尽くします」

 う~ん。
 あの化物巨神と互角に戦えそうなドワーフ国が誇る超移動大要塞の到着は明後日か。
 確かにあの要塞って火力と防御力は私が認めるぐらい強力だけど動きが亀波に鈍いからなぁ。

「あ~っ!マリには明日までには来いと言ったけど……それまでエルフ国全体が持つかしら」

 さて、私達は現状唯一まともに対抗できそうな超移動大要塞が到着するまでどう対処しようかしら?
 あの巨神の周囲は一切魔法が使えないから我が魔王国が誇る魔法航空部隊は役立たず。
 だからといって我が陸戦部隊の武器では巨神に傷ひとつ付けられないし。

 さて、私達はエルフの皆様を近隣の村々へ避難させた後に首都郊外に陣取った拠点で色々と考える事に。
 しかし、魔法は通じないわ物理攻撃も生半端な攻撃では無駄。
 ここはやはりドワーフ国が誇る超移動大要塞の到着を待つしかないのかしら。

「太助……何か打つ手はないの?」
「…………」

 太助は私達幹部が議論している中で一人だんまりだ。
 この中で一番頭が切れるのがこれじゃあねぇ。
 そんな中で太助はボソッと一言。

「せめて何処か巨神で脆い箇所があれば……」

 えっ?
 太助としては内部へ侵入して破壊なの?
 そして太助のボソッとした発言は続く。

「どうにかして内部へ侵入できたら少数精鋭で巨神の内部へ侵入して内部から破壊するんだけどなぁ」

 考えてみれば確かに内部から侵入して食い破るのが現実的ね。
 となると問題はどうやって巨神の硬い体にどてっぱらを開けて侵入するかだ。

「問題はそれだけではないよ。仮に侵入できたとしても多分巨神の内部でも魔法はまともに使えない」
「となると……内部で破壊活動できる人は限られる訳ね」
「幸い僕の推測では……闘気を扱う人や協力な物理攻撃が使える人が適任だと思う」

 ん?
 それにアンナとファブリーズとクロとミルクが反応したわ。

「なら……必然的に突入メンバーには僕が入るね」
「私の格闘術も奴に立ちますわ」
「――――侵入しての破壊活動ならお任せください」
「ふっふっふっ、この大斧のサビにしてやるわよぉ」

 そうか。
 確かにこのメンツなら巨神の内部で破壊行為が可能ね。
 だけど……今回は。

「ヒカルちゃん」
「太助」
「ヒカルちゃんは戦闘スタイルが魔法主体だから……今回は僕と一緒にお留守番だよ」

 そうね。
 魔法主体の私では今回は足手まとい。
 本当にこればっかりはね。

「ヒカル、これは私も同じよ」
「フェミー」
「今回は闘気とか用いる人が向いている任務よ。今回は私と一緒に無事を祈りましょう」
「でも」
「本当は私が直々にあのバカ母をぶん殴ってやりたいけど……」

 そうか。
 待つのも魔王の役目か。
 でも……やっぱり何処か納得いかないなぁ。
 そこへ私達の陣へ一人の間族の男が訪ねてきた。

「作戦会議中失礼します魔王様!」
「あっ、ロイドじゃないの」
「貴方!」
「大変そうだなルル。ララもお前の事を心配してたぞ」

 私たちの元へ現れたのは仙台魔王の息子にしてルルとララの亭主。
 そして我が魔王国において技術顧問を担当する重鎮であるロイド。

「とりあえず結界が無くなったからエルフ国に来てみれば……難だぁ、あのデカ物は?」
「あれは現在私達にとって最大の頭痛の種よ。それで何をしに来た訳?」

 私からの質問にロイドは自分の無限バックから一着の服を取り出したわ。
 そしてロイドはその服を私に手渡したわ。

「あら?これって私への献上物なの」
「はい、これは我が研究部が開発した新型戦闘服です。もっともまだ施策段階ですが」
「試作段階の戦闘服ねぇ。どうしてこれを私に?」
「実はルルkら魔法が一切使えない巨神が蘇って魔法航空部隊が使い物にならないとリンクミラーを通じて泣きついてきたもんだから」
「それでこれを?」
「この戦闘服は魔族の魔力を闘気に変換する事ができる戦闘服なんです。魔力が封じられてるなら闘気に変換して戦えばいいと思いまして」

 えっ?
 この服を着たらアンナみたいに闘気を用いた戦いが出来る訳なの。
 おおっ、これなら魔力を封じられても戦えるわ!

「一応、服は百着程用意しましたが……いかんせん試作品ですから飛行と身体能力強化、それに気弾を撃つ事しかできませんよ」
「ふふふ!それだけあれば十分よ」

 私は早速ロイドから貰った戦闘服を着る事に。
 ババッと自分の服を脱いで裸になってお着換え開始!

 あれっ?
 皆どうしたの?
 揃って唖然茫然になっちゃって。

「ヒカルちゃん……仮にも天下の魔王様が人前で」
「相変わらず大胆だな」
「あぁ、私ってこの大胆さが無いから行き遅れてるのですね(泣)」

 何よ太助にアンナにファフリーズ。
 何を今の私を見て呆れてる訳?

「いやぁ流石は魔王様だねぇ!素晴らしい脱ぎっぷりだな」
「ロイド!関心しないの。魔王様、人前で裸など何を考えてるのですか」
「はは……もう貴方には何も言う事はないわ」
「…………」
「ぎゃはははははは!相変わらず品の無い魔王ね。ここまで来たら立派とした言いようがないじゃない」

 ロイドとルルの突っ込み。
 そしてフェミーとミルクは完全に私の公開ストリップに何か悟った印象。
 ちなみにブログさんは……完全に沈黙。

 ふふふ!
 最強というのは裸も最強なのよ。
 私の可愛くて美しい裸体を見ながら拝みなさいな!

 さて、いつまでも裸でいる訳にもいかないからロイドから受け取った試作型戦闘服を身に着けたわ。
 丁度サイズもぴったり!
 しかも結構動き易いわね。
 私は試しとばかりに陣営の外へ出て……とりあえず飛行してみる事に!

「おおっ、これは飛行魔法と同じ要領で飛べるわ」

 実際に戦闘服を身に着けて感じたが……飛行ひとつでも魔力とは違う体の流れを感じるわ。
 これが闘気って奴なのかしら。
 そして私は右手を空にかざして……火炎魔法を放つ感覚で気弾を放つ!
 すると、右手から大きな白い塊が発射!
 その白い気弾は凄まじい速度でエルフ国の夜空を飛んで行った。
 これは……いける!
 私はゆっくりと皆がいる地上へ降り立つ。

「ふふふ!これなら魔法が使えなくても問題ないわ」
「ありがとうございます魔王様」

 これなら私もあのデカ物に対して十分に戦える。
 となると……私が取るべき行動はひとつ!

「アンナ、ファブリーズ、クロ、ミルク!私も巨神突入に加わるわよ」
「「「「えっ?」」」」

 それを聞いたアンナ達は呆れて溜息。
 太助に至っては「やはりこうなったか」と頭を抱える始末。
 だけど、あの魔法が使えない状況に対抗する手段があるなら使うしかないでしょう!
 
 となると残る問題は?

「となると問題はどうやって巨神内部へ入るかだね」
「まずは、あの硬い巨神の体をぶち抜くかだね」
「いっそ頭部にある操縦席へ直接入るのが一番だけど……多分また即刻強制排除されるのがオチだろうね」

 突入するメンツは決まったが肝心の突入手段が思いつかない。
 あの巨神を見た限り比較的侵入し易い頭部操縦席が思いうが部が乗り込んだら先程の私達みたいに即刻退場されるからなぁ。
 ならば他の箇所へ風穴空けて侵入するしかない訳ですが……本当にどうしよう?
 だけど……そんな中でロイドがニヤリと笑う。

「貴方、何か打つ手があるの?」
「ルル!お前は知ってるだろ?先日ララと一緒に俺の研究所を視察した時に見れたアレを」
「!?まさか……アレが出来たの?」

 ちょっと!
 夫婦二人で何を話してるのよ。
 すると……ロイドは自分の無限バックから何やら一メートルぐらいのリングを取り出したわ。

「ロイド、それは何?」
「実は研究中偶然判明した原理を用いて出来た代物でして……なんと、このリングを壁とかに取り付けたら壁の向こう側へ通り抜けられるんですよ」
「壁の向こう側へ通り抜け可能?」
「しかも使用には魔力は必要ないんだ。原則誰もが持っている僅かな闘気で動くんだ」

 ロイドは試しに陣営の壁面にそのリングを張り付ける。
 そしてロイドはその張り付けたリングの中へ……するとロイドは楽々と壁の向こう側へ!
 続いて太助も設置したリングへ首を突っ込む。
 すると、やはり太助もリングを通じて壁の外側の景色を見た。
 太助はニヤリと笑いながら私達にこう告げた。

「ヒカルちゃん!これを使えば巨神の内部へ侵入可能だよ」
「えっ?」
「あのリングを巨神の体に貼り付けたら……楽々と巨神の内部へはいれる筈だよ」
 
 そうか!
 このリングを使えば巨神の内部へ侵入できる。
 これで巨神の硬い体を魔力を用いずにどう突破するかは解決したわ。
 そして太助が私達へ具体的な作戦概要を伝えたわ。

「まずルルさんは正規軍を率いて外部から敵巨神を可能な限り攻撃……簡単に言えば陽動をお願いします」
「了解しました」
「なお正規軍にはロイドさんが持ってきてくれた試作型戦闘服を着用して。慣れないと思うけど今回は魔法ではなく魔力変換した闘気で戦ってね」

 まずはロイドが持ってきた試作型戦闘服を着用した正規軍が巨神相手に陽動ね。
 ただルルとしては戦闘服のレクチャーを正規軍の皆にしたいそうだから一時間程時間が欲しいとの事。

「そして……ヒカルちゃん、アンナ姉ちゃん、ファフリーズさん、クロちゃん、そしてミルク様で少数精鋭による突入部隊を編成」
「そして私達がこのリングでデカ物内部へ突入する訳ね、太助」
「そう、ただ一つ注意しないといけない事が。それはくれぐれも真っ先に巨神頭部にある操縦席には行かない事!」
「あぁ、真っ先に行ったら即刻外へ退場されちゃうからね」
「だから、ヒカルちゃん達の狙いは多……分巨神動態の何処かにある心臓部だよ」
「心臓部?」
「中枢部とか動力室と呼ぶべきかもしれないけどね。とにかく、そこさえ破壊すれば流石の巨神も全機能を停止する筈」
「巨神の全機能を停止さえたた……後は頭部へ乗り込んでクソババァ達をぶちのめすという算段ね」
「心臓部さえ潰せば操縦室の面倒なセキュリティも停止する筈だからね」

 これで作戦はほぼ決まったわね!
 待ってなさいクソババァ……今から私がギッタギタにしてやるんだからね!
 そして、作戦開始は正規軍への戦闘服レクチャーを含めて二時間後!
 首を洗って待ってなさい。

 あれ?
 そういえばフェミーの姿が見えないけど?
 えっ、戦闘服が一着足りないって!





「この戦闘服さえあれば魔法が使えなくても戦える。やはりエルフ国の失態は私が自ら決着をつけるわ」








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