太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

その十四 フェミー危機一髪!

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 さて、私達が首都に展開されている結界に悪戦苦闘している最中。
 フェミーは一人で私たちの事を心配していたわ。

「ヒカル、アンナさんと合流できたかしら?」

 フェミーはその手に緑の刻印を握りしめ様々な事を考えていたみたい。
 何しろ自分が持っている緑の刻印は伝説の巨神を蘇らせるキーアイテムでありエルフ国の王位継承の証でもあるのだから。
 とにかくフェミーにとって色々な事が多すぎる。
 頭の中を整理するには暫しの時間が必要であった。

「とにかく……この刻印を守り抜くのが最優先ね。だけど今の私だけでは」

 フェミーは一人で悩んでいる。
 そんな時、フェミーの影の中からフェミーの使い魔であるファミーが姿を現した。

「案ずるな主よ」
「ファミー」
「主よ、我は常に主と共にある。主は決して一人ではない」

 ファミーはフェミーを抱きしめる。
 そして、ファミーはフェミーの前に跪き改めて誓いを立てる。

「主よ!我は主の盾であり剣でございます。そして我は主を守り抜いて御覧に入れます」
「ファミー……頼りにしてるわよ」

 そうよ。
 フェミーには頼りになる使い魔がいるじゃないの。
 さて、フェミーとしては今後どう動くべきか?
 少し考えた末にフェミーの答えはというと。

「アカウント将軍と戦うわ。そして将軍が持つ青の刻印を奪回して電線の巨神復活を阻止するわ」
「確かにそれが最善と思われます」

 恐らく、アカウント将軍とその一派は必ずこの首都へ襲撃するのは想定できる。
 何しろ伝説の巨神復活に必要な刻印が……一つはフェミーが、そしてもう一つは母であるルシフェル王が持っている。
 故にいずれせめてくるのは必然。
 となると今はヒカル達……即ち私達と合流するのが最優先だ。
 何しろフェミーには頼りになる仲間が少ない。
 だから一番頼りになる私達と合流して体制を整えるのが最善ね。
 その時、フェミーの部屋に一人のエルフが。

「フェミー様、ルシフェル王様が謁見の間でお待ちしております」
「わかったわ、ありがとう」

 ここで母上からの呼び出し。
 一体どうしたのかしら。
 私としては何か嫌な予感がするんだけど。
 そして場所は変わって謁見の間。

「母上、まいりました」
「フェミー……来ましたか」

 そこにはルシフェル王が二人の護衛を率いて玉座に座っていたわ。

「あれ?父上は」
「ラリーは今首都を視察している最中です」
「そうですか……それで何か私に幼児ですか母上」

 フェミーはルシフェル王に要件を聞いたわ。
 それから暫く謁見の間に静寂が。
 そして、それを破ったのはルシフェル王であった。

「フェミー……大人しく緑の刻印を渡しなさい」
{!?」

 えっ、ルシフェル王がフェミーが持つ緑の刻印を?
 これにはフェミーも疑問に感じたわ。

「どうしてですか母上。この刻印は私が試練を乗り越えて手に入れたもの。例え母上でも容易く手渡せる代物ではございません」

 当然といえるけどフェミーはルシフェル王へ反抗したわ。
 するとルシフェル王の顔が少し歪んだような感じ。

「そうですか。貴方のその発言は古津賀反逆罪になりますよ。それでもいいのですか?」
「国家反逆罪ですって!母上……いえルシフェル王よ、何を血迷った事を申すのですか」
「重ねて命じます。貴方の持つ緑の刻印を渡しなさい」
「申し訳ございません。この緑の刻印……例えルシフェル王の命でも聞き入れる訳には参りません」
「では……刻印を渡す気はないと」
「はい!」

 するとルシフェル王は謁見の間に数十名の兵士を呼び寄せた!
 そして、その兵士達はフェミーを包囲する。

「皆の者、この逆賊を……抹殺せよ!」

 自分の母親から自分への抹殺指令。
 これには流石のフェミーも驚きを隠せない。

「それが……貴方の答えですか。ならば私も覚悟を決めさせて頂きます!」

 そして問答無用とばかりに兵士達はそれぞれ槍を構えて躊躇なくフェミーに襲い掛かってきた。
 それにしても、いくら王様の命令とはいえ仮にもフェミーはエルフ国の王女様。
 なのに兵士達は躊躇なく襲い掛かるなんて。
 だけど……フェミーもその辺は大丈夫。

「遅い」

 フェミーは襲ってくる兵士達の前から忽然と姿を消す!
 そして、その直後に次々と兵士達は気絶して倒れていく。
 数秒後、この場にいた兵士達は全て気絶して倒されていたわ。
 兵士達が倒された後でフェミーは再び姿を現しルシフェル王を指さしたわ。

「こんな雑兵で私が倒せると思いましたか?」
「ううっ」
「ルシフェル王に申し上げます!何故に私が持つ緑の刻印を没するのですか!」
「…………」
「まさかルシフェル王自らが伝説の巨神を復活されるつもりでは?さぁ答えなさい国王!」

 これにはルシフェル王も驚きを隠せない。
 どうやらフェミー曰く図星のようだ。
 なら、何故にルシフェル王は伝説の巨神復活を目論むのか。
 
「理由を答える気がないなら私にも考えがあります。父ラリーと協議して貴方を王位から降りてもらいます」
「ううっ」

 さぁ、ルシフェル王はどうるる気かしら?
 しかし!その時……謁見の間に一人の男が姿を現した。

「これまでだ」
「!?まさか……アカウント将軍」

 なんと謁見の間に現れたのはアカウント将軍!
 まさか……エルフ国において反乱分子である筈の彼がどうしてこのお城に!

「ど、どうして貴方がこの謁見の間に」
「…………」

 フェミーが察するに明らかにアカウント将軍の目は正気ではない。
 何処か狂気を感じずにはいられない。
 前に戦った時はフェミーの助けでなんとかなったが今度も切り抜けられるか?
 フェミーはナイフを手にしてアカウント将軍に立ち向かおうとした時であった。




 アイス・アロー




 それは……明らかに不意打ちであった。
 フェミーの腹部に鋭い氷の矢が深く突き刺さる!

「う、うあああああああああああああっ」

 襲い来る激しい激痛と出血。
 フェミーはそのまま成す術なく、その場に倒れる。
 そして倒れたフェミーの体をアカウント将軍が探る。
 
「ありました」
「ご苦労」

 今、アカウント将軍の手には緑の刻印が!
 そして奪った緑の刻印をアカウント将軍は自分が所持していた青の刻印と一緒にルシフェル王へ手渡す。

「やった!これで伝説の巨神は私のものだっ」

 謁見の間にルシフェル王の高笑いが響き渡る。 
 そして……品詞のフェミーを見たルシフェル王はアカウント将軍へこう告げる。

「消せ。もうこいつは用済みだ」

 えっ?
 まさか自分の娘を殺す気?
 アカウント将軍はゆっくりとフェミーに近づき……手にしたシミターでフェミーの命を奪おうとしているわ!
 ダメ!
 フェミーが危ない。
 だけど、その時だったわ。




「我が主は……私が守る!」




 フェミーの影からフェミーの使い魔・ファミーがその姿を現した!
 ファミーは迫るアカウント将軍はに渾身の蹴り!
 それにより謁見の間の壁へ叩きつけられるアカウント将軍!
 更に間髪入れる間もなくファミーは品詞のフェミーを抱えて謁見の間の窓ガラスを壊して飛び降りた!

「逆賊が逃げたぞ。すぐに追跡して……抹殺しろ!」

 ルシフェル王の号令によりフェミーはエルフ国のお尋ね者にされてしまったわ。
 しかも当のフェミーは腹部に大怪我。
 
「とりあえず首都から出ないと……主が危ない」

 そんな中でファミーは品詞のフェミーを抱えて迫る追手から流れながらなんとかして首都からの脱出を試みる。
 そして何とか首都の郊外まで辿り着き、いざ首都から出ようとした時であった。

「!?これは」

 なんと、ファミーの前に見えない壁が!
 間違いない。
 これは結界だわ。

「どうやら……意地でも我々を首都から出さないつもりだな」
「いたぞ!」

 しかもタイミングの悪い事に数百名の衛兵に見つかってしまった。
 数百名の衛兵により完全に包囲されて、もはや逃げる事は敵わない。
 正に多勢に無勢だ。
 ファミーも品詞で意識が朦朧としているフェミーも……もはや万事休す!

「もはやこれまで!こうなれば一人でも多く道連れにしてくれよう」

 ファミーもここが自分の死に場所と察したのか覚悟を決める。
 品詞のフェミーも立ち上がり自分の最後を覚悟した。

「「さぁ来るがいい。私達の最後に相応しい戦いをやろうではないか」」

 これで……フェミー王女はエルフ国の逆賊として無残な最期を遂げるであろう。
 だが決してタダでは死なない。
 一人でも……一人でも襲い来る兵士達を道連れにしてくれる。
 そして私達は華々しく散っていこう。
 もう……二人に迷いはない。
 そして、数百名の衛兵達が一斉にフェミーとファミーの生命を奪わんと襲い掛かってきた。
 これが二人にとって最後の祭りだ。





 だが!その時、夜空の何処かがすさまじい轟音と共に割れる音が響き渡った。
 同時にフェミーとファミーの前に一筋の閃光が舞い降りた!





「どうやら……ギリギリだったみたいね」
「まさか……嘘でしょうヒカル」

 フェミーとファミーの前にあらわ得たのは魔王国の最強魔王であるヒカル・グレーズ。
 更にその後ろには太助・アンナ・ファフリーズ・ミルク・クロ……そしてフェミーが一番会いたかった恋人ブログの姿があった。

「ぶ、ブログ」
「ひどい目にあったみたいだなフェミー」

 ブログは品詞で満身創痍であるフェミーを優しく抱きしめる。
 これを見た私達は少しホッとする。
 そして私達は目の前にいる衛兵達の事を確認して……鋭い眼光を!





「よくも私の大切な友達をいじめてくれたわね。とりあえず私からは地獄への片道切符をあげる……キレたわ!」





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