太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

その八 神殿内の戦い

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 さ~て、緑の神殿で私達とアカウント将軍の一団による仁義なき抗争が幕を開けた。
 アカウント将軍率いるダークエルフ達は結構素早い印象だ。
 アンナもリーズも剣拳で攻撃しようとするが素早くて思うように当たらない。
 しかもダークエルフ側は手にしたナイフでアンナとリーズに襲い掛かる。
 しかし流石にアンナとリーズも歴戦の戦士。
 ダークエルフのナイフなんか一撃たりとも当たりはしない。
 しかし、これでは一向に勝負がつかない。

「こいつ等、結構強いな。かなりの熟練者揃いだぞリーズ」
「攻撃は貧弱ですが回避能力は侮れませんね。このままでは」

 さて、アンナとリーズが手練れのダークエルフ達に手こずってるさ中で私は敵の副隊長らしき女と対峙していたわ。
 コイツ……かなりの手練れみたい。
 先程から色々と魔法を繰り出したけど彼女はことごとく無力化してしまったわ。
 間違いなく強いわ。

「ほほう、見た処……魔族みたいだけど名を名乗りなさい」
「あら?なら貴方のほうが先に名乗るのが礼儀ってものでしょう」
「私はカエリ!元エルフ国の士官だ。故あってアカウント将軍側についている」
「コショウ問屋一人娘のヒカルよ。しがない商人の娘って奴ね」
「商人か……それ絶対に嘘だろう。本当の身分と名を名乗れ!」
「私を倒せたら明かしてあげるわ!倒せたらの話だけど」

 するとカエリの奴、背中から巨大な剣を引き抜いて私に襲い掛かってきたわ!
 それにしても元来非力なエルフがあんな重そうな大剣振り回すなんて。
 案外脳みそ筋肉のエルフっていたのね。
 
「うわぁ、当たったら痛そう」
「黙れ魔族!貴様のような嘘つきなど、この大剣で切り刻んでやる」

 ひぃぃぃっ!
 もし、あの大剣が一撃でも受けたら私でもひとたまりもないわ。
 本当に世の中は広いものね。 

 され、問題は私よりもフェミーね。

「アカウント将軍……何故我が国に反乱を?」
「エルフ国の采女に話す事はない。ただ、お命頂戴するまで」
「それと……ブログは何処?貴方の息子は今何処にいるの?」
「今から死にゆく者に答える必要はない」
「アカウント将軍!」
「…………フェミー王女、覚悟!」

 今回の内乱の首謀者と思われるアカウント将軍。
 どうもフェミーの言葉は届いていないみたい。
 もう、こうなったら闘うしかない。
 まず仕掛けたのはアカウント将軍!




 マジックミサイル




 アカウント将軍の周囲に無数の魔法の塊が出現、その無数の塊がフェミー目掛けて襲ってくる。
 しかし!フェミーもそれに負けず魔法を詠唱!




 ディスペル・フィールド




 するとフェミーを中心に巨大な魔方陣が展開!
 その展開された魔方陣の効力により平井する無数の魔法の塊が次々と消滅していく!
 更にフェミーは魔法を詠唱!



 サンダーボルト



 フェミーの両手から強烈な雷撃が放たれる。
 その雷撃はアカウント将軍の体を貫こうと狙う!
 しkし、アカウント将軍は身に着けたマントを展開!
 そのマントで雷撃を耐えて防ぐ!
 
 その神殿内での攻防を助さんはクロに守られながら見守っている。

「情けないな。こうゆう時何もできないなんて」
「――――気にしないでください。貴方は宰相であり武人ではありませんから」
「けどね、こうゆう時は非力な自分が嘆かわしいよ」

 こうゆう時無力な自分を嘆く助さん……いや太助。
 自分は見守るしかないのかと自分を責める。
 だが、その時!

「死ねっ!」

 ダークエルフの一人が太助とクロに襲い掛かってきた!
 クロは太助を守るべく臨戦態勢を取る。
 しかし……意外にも太助の動きは早かった。
 太助は本能的に……唯一仕える魔法を詠唱する!




 テレポート



 その詠唱を終えた時、襲ってきたダークエルフは忽然と姿を消した。
 とうやら太助のテレオートにより何処かへ飛ばされたようだ。
 これを見たクロは太助にこう告げる。
「――――お見事です。非力な割には上出来です宰相様」
「まぐれだよ。多分毎回こうはいかないと思うよ」
「――――そう自分を過小評価しないでください。ではまた襲ってきたらテレオートで飛ばしてください」

 さて、太助が意外な活躍を見せる中でアンナとリーズによるダークエルフの一団との戦いは?

「じゃあ……本気出すか」

 アンナは身に着けた旅人福を脱ぎ捨てる!
 すると中からは金色の甲冑姿が!
 そしてアンナは叫ぶ!




 アンナ・ローラー




 アンナは瞬時にして巨大なローラー者に変貌!
 後は一方的なひき逃げしょーたむの開幕だ。

「「「うわぁ、助けてくれ!」」」

 はい、こうなるとダークエルフ側がお気の毒。
 あるダークエルフはそのままローラーの下敷きにされてペシャンコに。
 またあるダークエルフは見事に跳ねられて神殿の壁面へ叩きつけられて気絶!
 この様子を見ていたリーズはただ「えぐい」と一言。
 こりゃ雑魚掃除はもうすぐ終わりそうみたい。

 だけど、その一方で面倒な事になってるのは私の方。
 コイツめっぽう強い上に何処か危ない性癖持ってる印象があるのよね。

「ねぇ……貴方、私の女にならない?」
「えっ?私は女よ。まさか……アンタってレズ?」
「ご名答。私って男は生理的に受け付けないのよね。まぁアカウント将軍は屈強な男だからダークエルフとしては尊敬してるけど」
「うげ~っ、生憎私はノーマルで人妻なのよ!女とレズ行為する趣味はないわ」
「あら、それは残念」

 全くエルフって長生きなのか時々変な奴が出てくるものね。
 私は太助一筋だっつ~の!
 はい、これで戦闘再開!
 このレズエルフの奴、次々と魔法を無詠唱でぶっ放してくるわ。
 まぁ、こんな魔法は私には一切通用しないけどね。

「ああっ、やっぱり貴方は強いわ……今夜私とベットインしてくれう?」
「冗談じゃないわよ、絶対にお断りよ!」

 もう、この変態レズビアン・エルフを相手にするのは嫌だっ!
 キレた。
 コイツ……完全に息の根を止めよう。
 私は静かに魔法を詠唱。
 そして、あの変態レズエルフを指差して魔法を起動!



 ハイパー・デバフ




 はい、これで処刑準備完了。
 さ~て、私の魔法を受けた感想は?

「!?どうしたんだい、急に魔法が使えない上に動きが……」
「はい、貴方はこれでオシマイです。処で貴方はドS?それともドМ?」
「Sよ!私は可愛い娘をいじめるのが大好きなのよ!」
「そう、それは残念ね」

 では今から彼女が嫌うドМ行為の開幕よ!
 はい、私自慢の身体能力であの変態エルフへ急接近。
 そこへ私の有難い鉄拳のオラオラオラの連続ぶん殴り!
 おっと、時々強烈な蹴りも忘れずに!
 結果あの変態レズビアン・ダークエルフのカエリさんは完全に全身ボロ雑巾。

「ご……ごめんなさい、ごめんなさい!」
「ごめんなさいで済めば戦争不要だって~の!はいトドメ!」

 最後は私の渾身の拳を変態エルフの顔面に思いっきり叩き込む!
 哀れダークエルフのカエリさんは凄まじい速度でぶっ飛ばされて神殿大広間の壁面へ激突!
 はいこれで完全にノックアウト!
 勝利!
 完全に私の完全勝利……という訳にもいかないわね。
 アカウント将軍と闘ってるフェミーはどうかしら?

「あの泣き虫がよくぞここまで……この場で潰さなければならんのが惜しいな」
「そうゆう貴方こそ何故我が国に反乱を?それ程の腕を持ちながら」

 どうも、こちらは完全に膠着状態ね。
 それと気のせいかアカウント将軍には何処か迷いがある感じがするわ。
 それでも二人の技量はほぼ互角。
 二人の周囲には数多の魔法が放たれた痕跡がある上、二人とも体のあちこちに小さな傷があるわ。
 だけど、このまでは!

「フェミー、加勢するわ」
「ヒカル、大丈夫よ。私にはまだ切り札が残ってるから」
「切り札?」
「その切り札はヒカルも知ってるでしょう。だからもう少しだけ私にやらせて」

 変態エルフを片づけた私が加勢しようとするがフェミーは断った。
 本当に頑固なんだから。
 フェミー……アカウント将軍にあれを使う気ね。

「助けてもらった方が良かったのでは?」
「ふん!反逆者如きに私が後れを取るとでも?」
「では今暫く王女様との戦いを楽しむか。そして緑の刻印をもらい受ける!」

 再び戦いを挑むアカウント将軍。
 しかし、フェミーの顔は半ば呆れていた。

「悪いけど……もう終わりにしましょう」
「なんだと」
「そろそろ切り札を出させてもらうわ。これで終わりよ……ファミー!」

 フェミーの掛け声と共にフェミーの影から一人のエルフが姿を現した!
 そう、彼女の名はファミー。
 先程受けた緑の刻印の試練で得た使い魔……いや相棒だ。

「なにっ!フェミーが二人だと……分身か」
「生憎彼女は分身じゃないわよ……ファミーは私の相棒よ!」

 そしてフェミーとファミーは二人一緒にアカウント将軍へ襲い掛かる!
 フェミーとファミーによる隙のない猛攻!
 これには流石のアカウント将軍も驚きを隠せない。
 
「まさか……このような奥の手を隠していたとは」
「アカウント将軍、お覚悟!」

 一対一ではほぼ互角だった両者。
 しかし、フェミーに頼もしい相棒が加わり形成は一気にフェミーに傾いた!
 流石に歴戦の戦士であるアカウント将軍もい詰められていく。
 そして、フェミーとファミーはアカウント将軍の動きと止めた!
 思わず膝をつくアカウント将軍。
 どうやら、これで勝負有りね。

「其方の勝利だフェミー王女。さぁ私を反逆者として抹殺するがいい」

 あらら、その辺は潔いわね。
 だけど……フェミーの答えはこうだった。

「アカウント将軍!貴方の身柄は私達が拘束します」
「なんだと」
「貴方には色々と聞きたい事が多すぎます。それに……ブログの事も気になりますし」

 確かに今回の内乱は私としても何処かおかしい処があるからね。
 ここは反乱の首謀者を捕えて事の真相を吐いてもらうのが一番ね。
 丁度、アンナとリーズが他の連中をぶっ倒したみたいだし……では皆様全員ひっ捕えなさ~い!
 だが、その時!

「ふふふ、まさか将軍が敗北するとは想定外でしたなぁ」
「!?」
「あっ、貴方は確かホーン!」

 なんと、突如神殿内にアカウント将軍の副官であるホーンが姿を現した。
 そしてホーンは無詠唱魔法で折角倒したアカウント将軍の一団を自分の足元へ瞬時に引き寄せてしまった。
 あちゃ~っ。
 あのホーンってダークエルフ……相当なやり手みたいね。

「アカウント将軍、今回は我々の負けです。ここは一旦引き下がりましょう」
「待ちなさい!このまま逃がすと思っているのですか!」
「フェミー王女ですか。今回の敗因は貴方の行動力と戦闘能力を侮っていた事ですな」

 あれ?
 ホーンの奴、何やら魔法の詠唱を始めたみたい。
 しかも……明らかにこれは大きな魔法を使うつもりね。

「残念ですが貴方達全員はここで死んで頂きます!それからゆっくりと緑の刻印を探して回収させてもらいましょう」
「!?まずいわ、すぐにここから離れて」
「もう遅いですよ……さようなら皆様」

 その直後……ホーンの大魔法が神殿内で起動した。
 私達はそれに成すすべもなく……どうにもならなかった。





 ジ・アトム




 その原子爆発といえる大爆発と共に緑の神殿は瞬時にして凄まじい熱と爆風により跡形もなく消滅した。
 そして……私達もどうなったのか?



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