太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

その六 北の森林……いや!天然大要塞

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「もう……ここって天然の要塞ね」

 今、私達はエルフ国にある北野神殿へ向かうべく北野森林地帯を歩いて向かっている。
 ただ……ここって本当にとんでもない森林ね。
 何しろ並のエルフなら即死レベルのモンスターが事あるごとに出没するのが当たり前。
 まぁ、ここまでなら想定内だし私達ならあのレベルのモンスターなんか敵ではないわ。
 だけど問題はこの森林の様々な自然の数々。
 何しろ森林のあちこちに下手なモンスターよりも恐ろしい吸血植物が襲ってくる。
 本当に血を吸う職種が迫ってくる。
 私達は火炎魔法で対処したが意外とあの吸血植物って焼却処分し辛いのが厄介だ。
 おまけに底なし沼まであったのよね。
 道中ファフリーズがその底なし沼に落ちて一時は私達もパニックになったわ。
 結局あの時はファブリーズが飛行魔法を使って自力で脱出したけど、つくづく心臓に悪い環境ね。

「しかし昔のエルフってよくもまぁこんな魔境みたいな森林のど真ん中に神殿を立てたものねフェミー」
「確か言い伝えによれば予め神殿を別の場所で建造してから魔導士数十名でこの森林へ転移させたそうよ」
「昔のエルフって結構悪知恵回るのばかりだったみたいね。この魔境に近い森林は天然の要塞みたいなものよ」
「今まで数々の盗賊や冒険家が神殿目指して挑戦したそうだけど全員逃げ帰るか死んだそうよ」

 そこへ太助が提案。

「なら、この森林を上空から焼き払えばいいんじゃないの?」
「過去にそれをしようとした人もいたけど上空にはほぼ常時複数のドラゴンが飛び回ってるから無謀な事だったわ」
「この分だと我が国の魔法航空部隊でもドラゴンの大群に邪魔されて失敗に終わりそうだね」

 地上には様々な自然障害にモンスター。
 上空は数多のドラゴンが邪魔をする。
 完全に天然環境が生んだ一端の大要塞ね。

「どうする?ヒカル達も諦める」

 まぁフェミーの忠告も当然か。
 だけど私の返答はこうだ!

「私を誰だと思ってるの?魔王国の魔王であるヒカル・グレーズよ!ここで引き下がる訳がないでしょう」
「は、やはり」
「こうなったら前進あるのみよ!目指すはこの森林にある緑の神殿よ」

 当然でしょ!
 ならば私が最初の到達者になってやるわ。
 だけど、そこへクロが私に進言してきたわ。

「――――魔王様、今日はここで休みましょう。もう東生みます……夜なると昼間よりも厄介なモンスターが現れる恐れがあります」
「そうか、じゃあ今夜はここで魔物払いの結界を展開してキャンプね」
「では私がこの辺一帯を焼き払い魔物払いの結界を張りますわ。魔王様達は簡易ハウスや料理の準備をお願いしますわ」
「じゃあ頼むわねファフリーズ」

 それからファフリーズは自分達のいる周辺を焼き払い更地にした上で魔物払いの結界を展開した。
 流石にキャンプ中は魔物の相手はしたくないからね。
 それから簡易ハウスを二つ展開して私と太助とアンナが泊まる簡易ハウスの中で料理を開始した。
 アンナが障子の準備をしている間、ファフリーズとクロとフェミーが泊まる簡易ハウスの中で今後の事を話す事に。

「…………」
「あれ?太助さん、ヒカルったら何黙ってるのかしら?」
「ヒカルちゃんは今、魔王国に残している自分の分身を通じて魔王国の定期報告を受けてるんだ」
「えっ?そうゆう事もできるんだ」
「ヒカルちゃんは魔王国の魔王だからね。やっぱり留守にしてる国の事も心配なんだよ」

 そして、私は自分の分身との交信を終えて足助に魔王国の現状を話す。

「太助、ルルからの話だと近頃、人間国が再び軍備を拡充させてるみたいよ」
「うわぁ、思ったよりあちらの復興が早かったね」
「こりゃ近々我が国へ攻め込む可能性が高いわね。まぁ今の魔王国には屈強の正規軍と義勇兵が充実してるから心配ないと思うけど」
「こうゆう時の正規軍と義勇兵だしね」
「ルルとララも今回は両将軍がいないから自慢の巨大モーニングスターで暴れてやると言ってたわ。あの二人もかなりの実力者だからね」
「確かあのルルさんとララさんってファフリーズとアンナ姉ちゃんに負けないぐらい強いと聞くからね」

 ルルとララ率いる正規軍と義勇兵があるから心配ないけど人間国が再び軍備をねぇ。
 何か……今度のエルフ国の也何に合わせてって感じ。
 
「――――それと私が魔王様に合流する前に得た情報ですが、アカウント将軍の一団がこの森林へ向かったとか」

 えっ?
 アカウント将軍の一団もこっちに向かってる?
 まぁ彼等の狙いを考えたら当然の行動ね。
 下手したら連中と鉢合わせになる可能性もあるわね。
 私個人としてはアカウント将軍の一団はこの天然大要塞の餌食になったほうが都合がいいけど。
 ただフェミー曰く。

「あの数々の武勇を誇るアカウント将軍がこの天然の要塞で潰されるとは到底考えられない」

 うわぁ。
 フェミーとしては複雑な気持ちかもね。
 何しろアカウント将軍はフェミーの恋人の父親なのだから。
 となると猶更気になる事がひとつ。

「クロ」
「――――はい魔王様」
「緑の神殿で緑の刻印を得てからでいいから貴方はアカウント将軍の息子であるブログの行方を捜して」
「――――ブログ殿ですか。わかりました」
「どうも、この一連のクーデター何かあるのよね。しかもアカウント将軍があんな事してるのに一緒に参加どころか姿が一切見えないのがねぇ」
「それは僕もそう感じてる。このクーデターには何か裏があるのは間違いないよ」

 そこへフェミーが私達へ訪ねる。

「まから……ブログが囚われてる可能性が」
「あ~っ、それはあり得そうね。案外アカウント将軍は自分の息子を人質にされてる可能性もあり得るわ」
「そしヒカルちゃんの推測が正しいなら何処かに黒幕がいるね」
「黒幕」
「案外アカウント将軍は被害者の可能性があるわ。だからフェミー。希望を捨てないほうがいいわ」

 現状を整理するとこうだ。
 どうも人間国が再び文尾を整え魔王国へ攻め込む可能性が出てきた事。
 そしてアカウント将軍は息子を人質にされて何者かに利用されている可能性が出てきた。
 そして、伝説の巨神復活阻止の為に私達は緑の刻印を入手しないといけない。
 場合によっては緑の刻印を破壊する事も間会えている。

「お~い!食事の支度が出来たぞ」
「待ってたわよ。それで今夜はなぁ~に💛」
「今夜は今日仕留めた魔物で食べられるのがいたから、その肉で鍋にしてみたぞ」
「うげ~っ!アンナ、それって大丈夫でしょうね」
「フェミー様が食べられる魔物の種類を教えてくれたからな。食べられないのは入れてないから心配すんな」
「…………フェミー、後でお腹壊したら貴方のせいだからね」

 まぁ、今度の旅は何が起こるか皆目見当がつかない。
 手持ちの食糧も可能な限り節約しないといけない。
 正直現地で仕留めた魔物の肉を食べるのも致し方がないだろう。
 さて、いざ魔物鍋を食べてみると?

「これは……結構いけるわね」
「うん!これは牛肉に近い味わいが……魔物の肉も悪くないねヒカルちゃん」
「これは予想外の美味さです。赤ワインと一緒に飲むのが最高ですわ💛」
「ファフリーズ、飲みすぎるなよ。明日も神殿へ進むんだからな」
「は~い」
「――――昨日は美味しいものを食べられなかったからな。今夜がガッツリ食べるぞ。アンナ、ご飯お代わり」
「そうね、腹が減っては戦はできないからな。それクロ!大盛りご飯だ」
「――――忝い」

 それから私達は明日に備えてお腹一杯に夕食を食べた。
 夕食後、アンナとファフリーズが後片付けをしてる中で私達は北の森林の地座を調べていた。
 ちなみにこの地図は昔のエルフ国が万が一に備えて残していたものでフェミーがこっそりy複製して持ち出していたのだ。

「今、私達がいる現在地はここ……そして問題の神殿の場所はここ」
「あら?この分だと明日には到着しそうじゃないの」
「そうね……今、私が同行しているのは魔王国最強の人達ですもの。今日だけでも結構進んだと思うわ」
「そりゃどうも」
「正直ヒカルがいなかったらどうにもならなかったわ。こんな天然要塞なんか私一人では無理だったわ」
「でも私達もフェミーがいなかったら神殿の場所探すのも一苦労だったわ。こちたこそ助かったわ」

 それから私とフェミーは太助とクロを交えて暫しの間、中身のない会話で盛り上がっていたわ。
 さて、夜も遅いしもう寝ましょう。
 明日も早いしね💛

 それから次の日。
 私達は再び襲い来るモンスターや人食い植物とかの天然の罠を潜り抜けながらひたすら前進していく。
 そしてお日様が私達の真上に差し掛かった時。

「!?ヒカル、あれを見て」
「これは……明らかに何かの建物があるわ」
「とうやら到着したみたいだね」

 私達の前にいかにも何かの文明による産物があった。
 美しい石造の建物。
 周囲には魔物払いの結界が展開されているのか魔物が寄り付く様子がない。
 間違いない。
 ここが緑の神殿だ。

「はぁ、なんとか到着したみたいね」
「フェミー、まだ気を抜くのは早いわよ。私達はここにある緑の刻印を手に入れないといけないのだから」
「そうね」

 到着した緑の神殿。
 ここに私達が欲する緑の刻印がある。
 一刻も早くアカウント将軍よりも早く手に入れなければならない。




 果たして、神殿内には何が待ち構えているのか?
 私達は神殿の内部へ進んでいく!






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