太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

五 親友との再会

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 思わぬ形で再開した私とフェミー。
 フェミーはここでは何かと警備兵の詰め所へ。
 そこで私はフェミーから色々と聞かされる事に。

「全く、あのガラの悪いチンピラも相手が悪すぎたわね。相手はあの魔王国の魔王なのよ」
「これはどうも」
「それと……改めて聞くけど一国の魔王様がどうしてこんな田舎国家にやってきた訳?まさか観光って雰囲気じゃなさそうだけど」

  私はフェミーからの書状をフェミーに見せた。

「これを見たら、遠回しに助けてほしいと言ってるようなものじゃないの。だから私はフェミーを助けに来たのよ」
「!?」

 フェミーは自分が書いて私に届けた書状を見て驚く。
 
「まさか、本当に助けに来るなんて」
「そりゃ私達は友達でしょう!」
「でも……本当はそれだけじゃないんでしょう。仮にも貴方は魔王国の魔王ですもの」
「……御免、それ図星」

 私はフェミーに魔王としてエルフ国へやってきた目的を話した。

「そう、香辛料の地出入問題調査と伝説の巨神復活の阻止をしに来たんだ」
「まぁ、あの伝説の巨神とやらが魔王国に攻め込まれたら厄介だしね。だけど……私がフェミーを助けに来たのも事実よ」
「ヒカル」

 フェミーは私の手を握り大粒の涙を流す。
 余程うれしかったのね。

「ヒカル、私のブログを助けて!アカウント将軍を止めて!そしてエルフ国を救ってほしい」
「えっ?ブログって」
「私の哀切な人。そしてアカウント将軍の息子なの」

 なんですって!
 フェミーの恋人ってあのアカウント将軍の息子?
 
「ブログはダークエルフだけど私と将来を誓い合った関係。だけどあのアカウント将軍の反乱以来、彼とは連絡がとれないの」
「まさか父親の反乱に参加してるとか?」
「それにしては洗浄で見かけた兵士はいなかったそうなの。それにブログはそうゆう過激な事は嫌っていたから」
「案外、今の父親とは反目してる可能性がある訳ね」
「ブログ……今貴方はどうしているの?」

 そうか。
 現在フェミーの恋人は行方不明。
 しかも父親であるアカウント将軍と反目してる可能性もある訳か。

「フェミー、他に現状でわかってる事を話して」
「うん。アカウント将軍は海岸にある神殿から伝説の巨神復活に必要な青の刻印を入手したそうよ」
「げっ」
「伝説の巨神復活に必要な刻印は三つ。その一つの赤の刻印は母上……ルシフェル王が持っているわ」
「そう。じゃあ残る一つは何処にあるの?」
「ここから北にある森林の神殿にある緑の刻印があるわ。多分アカウント将軍の次の狙いはその神殿ね」

 成程ね。
 となると私達の次の行き先はもう決まったも当然ね。

「北の神殿……フェミー、悪いけど案内頼めるかしら?」
「えっ!今からって、もう日は暮れてるわよ。今夜はもう休んだら?」

 確かにもう日没は過ぎて月と星空が輝く時間だ。
 フェミー曰く現在アカウント将軍の一団は海南地帯から動いていないそうだ。
 もっとも現在エルフ国の軍勢がアカウント将軍の一団の侵入を防いでいるとの報告もある。
 となると今焦って行動するのは得策ではないわね。

「まぁ、神殿には明日行くとして……今夜はどう?」

 私は自分の無限バックからワインやウォッカ等のエルフ国では味わえないお酒を出した。
 これにはフェミーも大喜び。

「久しぶり~っ!正直ここのお酒は個性がないのよね。米酒もいいけど……やっぱり酒といえばこうゆうのよね」
「流石に方繰りしい警備兵の詰め所ではマズイから……フェミー、何処かにに静かな空き地がない?」
「あるある!だけどどうして空き地?なんなら宿でも行きましょうよ」
「いやぁ、エルフ国の料理は美味しいんだけど何か物足りない印象もあるから……」

 それからフェミーの案内で首都の郊外にある空き地へ案内された。
 さて、ここなら大騒ぎしても迷惑がかからないわね。
 私は無限バックから少し大きいカプセルを取り出して空き地のど真ん中へ設置。
 すると……カプセルは急速に膨張して一件の家が形成さされたわ。
 

「ヒカル……これって」
「魔王国が開発した簡易ハウスよ。結構広いからごゆっくり!」

 それからは私達にとって長い夜の幕開けとなった。
 親友と一緒に楽しい酒盛り。
 そしてアンナが作る様々な肉料理が食卓を彩る。
 あっ、助……太助は米酒以外は飲んじゃダメよ。
 太助が虎になったら宴会が台無しになるからね。

「ははは!それでね、ヒカルったら魔王国の衛兵全員に喧嘩を売って……全員ぶっ飛ばしちゃったのよ」
「やめてよ!昔の事よ」

 私とフェミーは魔王国で一緒に学んでいた時の思い出を語り合っていた。
 けど気のせいか太助を始めアンナとファブリーズも呆れていた様子。

「そういえば……ヒカルって最近結婚したそうじゃないの!相手はどんな人?」
「ふふふ!」

 私は皆の前で太助を抱きしめて「彼が私の夫よ💛」と告げた。
 
「由利太助です。魔王国の宰相をしています」
「えっ?という事は貴方がヒカルの右腕と言われている宰相太助!」
「とりあえず宰相として頑張っています」

 そこへ今度はアンナが太助に抱き着いた。
 フェミーは不思議そうに感じたわ。

「由利太助の第二婦人の紫陽花アンナだ。役職は魔王国正規軍所属の左将軍だ」
「えっ……そうだった、確か魔王国は人口事情から一夫多妻制だったわね。それにしても魔王に左将軍とは流石は魔王国の宰相ね」

 おや?
 フェミーったら今度は一人でウォッカをがぶ飲みしているファフリーズの元へ行っちゃったわ。

「ねぇ……もしかして貴方もあの宰相君の奥様なの?」
「ううっ、もしそうでしたら私全く苦労していませんわ!」

 あっ、フェミー完全に地雷を踏んだわよ。
 ファフリーズはフェミーの襟をつかみ泣きながらこう告げたわ。

「私は魔王国正規軍の右将軍ファブリーズ!現在お婿さん募集中よ!」
「はは……ちなみにファフリーズのお年は?」
「十五歳よ!それがどうかしたの長生きのエルフさん!」
「十五?確か魔王国でその年まで結婚できないと……オールドミスまっしぐらの売れ残り」

 あっ、また地雷を踏んだ。

「悪かったわね!エルフのクソババァっ!!」
「ババァ?まぁ魔族と比べたらエルフ国はそう言われても仕方がないぐらい長生きだけど……私がまだピチピチの百二十歳よ!」
「百二十?これは立派なご老人だ事で!その分だと恋愛すら知らずに……(ゴチッ)痛い」
「二人共いい加減にしなさい!今日は楽しい宴会なんだから、そうゆうのは無しよ!」
「「は~い」」

 全く困った二人ね。
 魔王である私から見ればどっちも精神年齢が同じぐらいにしか見えないわ。

 それから暫くはアンナが作った料理で盛り上がる。
 特にフェミーはエルフなのに肉料理を美味しく食べていたわ。
 まぁ魔王国へ留学していた時に肉の味を知った上に帰国後も度々狩りをしては熊とか鹿を仕留めて食べてるとか。

「うんうん!このフライドチキン最高ね!」
「魔王国で作った鶏肉を我が国最高のシェフが料理してるもの。美味しいにきまtぅ輝でしょう」
「そうね。流石は太助殿の奥さんだけの事はあるわ。同じ奥さんでもヒカルじゃこうはいかないものね」
「悪かったわね。悔しいけど料理ではアンナには敵わないわ」

 どうせ私は料理は聞きない事はないけどアンナには敵わないわよ。
 それに私だって太助には色々と手作り料理を食べてもらってるんだからね。

「ねぇヒカル……明日本当に北の神殿に行くつもり?一度私の母上、いえルシフェル王がに謁見したほうがいいのでは?」
「フェミー、私達はお忍びでこの国に来ているのよ。それに国王と謁見して魔王国が介入したとアカウント将軍側が知ったら何しでかすかわからないわよ」
「けどいいの?下手したらヒカル達まで逆賊として追われる羽目になるわよ」
「上等よ!いざとなったらアカウント将軍だろうがエルフ国の国王だろうが魔王である私がわからせてやるんだからね」
「はは、その辺は流石は魔王ね」

 それから暫く楽しい宴会は四遅くまで続いたわ。
 そして気が付けば私は太助とアンナと一緒のベットで寝ていたわ。
 後で知ったけどファフリーズが気を利かせたみたい。
 そして時刻は午前二時ぐらい。
 フェミーは簡易ハウスの外で一人物思いに耽っていたわ。
 そこへファフリーズが姿を現したわ。

「まだ眠れませんか。フェミー王女様」
「これは魔王軍の右将軍様」
「どうです?もう一杯?」

 フェミーとファブリーズは簡易ハウスの野外で一緒に飲み直す事に。
 綺麗な月夜の下で二人による無礼講。

「そうですか。ブログさんとはエルフ国帰国直後に知り合ったのですか」
「母上は最低十年は交際して見極めなさいと言ってたけど……私はこの人だと確信してるわ」
「ですが現在行方不明ですか。やはり父親と反目して姿をくらましているのかしら」
「いっそ父親と一緒にクーデターしてるほうがまだ気が楽だったわ。まぁ、彼の事だから今の父親の行動は納得できないと思うけど」
「正直フェミー王女様が羨ましいですわ。私なんか今だにいい相手に出会えていませんから」

 ファフリーズは赤ワインを一気飲みして引き続き愚痴る。

「私……なまじ才能がありすぎる故に小さい頃から殿方からは避けられている印象で」
「そりゃ魔王軍の重鎮まで上り詰めるぐらいだものね」
「だけど、次の魔王を決める時に私、魔王様と最後まで魔王の座を争っていたのですが……世の中上には上がいたようで」
「確かにヒカルはあらゆる面でけた違いだったらしいからね。そりゃ相手が悪すぎたみたいね」
「…………」
「ファフリーズさん?泣いているのですか?」

 ファフリーズは大粒の涙を流しながらフェミーにこう呟く。

「私は魔族としても一番になれず、女としても相手にされない。惨めな中途半端な存在なんです」
「ファフリーズさん」
「どうせ中途半端な新古品女なんて誰も相手にする訳がありませんわ!このまま生涯独身で終わる女ですわ!」

 完全に絶望しているファフリーズ。 
 そんなフェミーはニヤリと笑いある事を提案した。

「いっそ……あの宰相様の嫁にしてもらったら?」
「えっ!」
「あの宰相……太助君かしら。あの幼い年齢で二人の女傑をお嫁さんにしてるのよ!きっとファフリーズがその放漫なボディで迫ったらきっと轟沈可能よ」
「うへっ!わ、私が宰相様のお嫁さんに?無理よ!彼はもう魔王様にアンナの二人もお嫁さんにしてるのよ。今沢私が」
「貴方、魔王軍の将軍様でしょう。才覚だって十分資格あるじゃないの!」
「ええええええっ!」
「そのナイスバディと将軍としての才覚さえあれば、あのエロガキ宰相様を落とすなんて楽勝だと思うけどな」

 ファフリーズったら完全に頭の中が来るグルのパニック状態!
 そして酒も入っていたせいもあり、その場でノックアウト!

「うふふ、やっぱり魔族って結構可愛いものね。だけど、これでお開きね」

 こうして私達親友同士の再開を祝う宴会は今度こそこれでお開き。
 夜が明けたら北の神殿へ出発よ!
 あれ?
 私達……誰か一人忘れてなかったかしら?




「――――ひどい。私一人情報集めやらせて自分達は宴会だなんて。私も酒と料理を頂きたかった」




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