太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

その二 友達を助けたい!

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 さて、エルフ国内乱発生について我が魔王国も全幹部を招集して緊急会議を始める事に。
 私と太助を筆頭に官僚長のミクシィに正規軍総司令官のルルに義勇兵ギルドマスターであるララ。
 それと我が国が誇る二大将軍であるファフリーズとアンナに今では我が国の技術師長であるロイドもいる。

「さて、現在判明しているエルフ国で起こってる状況は今話した通りよ。そこで皆の意見を聞いてみたいわ」

 果たして、皆はどう答えるのかしら?
 まずは官僚長であるミクシィの意見だ。

「正直個人的には内乱そのものは放置すべきですが……現実は香辛料の輸出げできず我が国の財政に影響が出ています」
「で、ミクシィの結論は?」
「幸いエルフ国とは緊急時の軍事同盟がありますので我が国の魔法航空部隊を送り込み反乱軍を即時殲滅すべきです」
「つまり個人的には嫌だけど国益の為に航空部隊送り込んで反乱分子をせん滅したほうがいいと」
「はい」

 個人的に嫌といいながら結構ミクシィったら過激な判断ね。
 だけど……それではエルフ国を戦火で焼きかねないわ。
 次はルルとララね。

「私は諜報部の暗殺部隊を差し向けてアカウント将軍を暗殺するのが手っ取り早いと思います」
「反乱の首謀者さえ消せば後は烏合の衆。後はエルフ国の軍勢がなんとかしれくれるでしょう」

 うわぁ。
 確かにアカウント将軍を暗殺すれば反乱なんか即終了。
 わが軍も無駄に血を流す必要がないわ。
 だけど……私個人としては何かが引っかかるのよね。
 ある意味軍部のトップらしい意見ね。
 ちなみにファフリーズとアンナにも意見を聞いたけど……もうお察しでしょう。
 ズバリ二人が出向いて殲滅!
 はぁ、この脳筋コンビに聞いた私が大馬鹿だったわ。
 一方で変わった意見を出したのはロイドだ。
 彼はエルフ国に伝わる伝説の巨神に興味があるみたい。

「魔王様、いっそ内乱のどさくさに紛れて俺達が伝説の巨神の封印を解いて解析してやりましょうか」
「却下!流石にエルフ国の最高機密を探ると色々と面倒になるからダメ!」
「はは……やっぱりダメですか」

 この研究バカ。
 少しは奥さんであるルルとララの事を考えなさいよ。
 最後は太助ね。

「僕はもう少し保留かな。アカウント将軍が何を考えてるか判断し兼ねるし……それに」
「それに何?」
「何処か引っかかるんだよね。森とともに生きる自給自足のエルフの国が何故にクーデター起こして他国に攻め込む意味ったあるのかな?」
「太助」
「僕があの国の王だったら他国に攻め込む事なんか一片たりとも考えないけどね」

 太助はそう少し様子見か。
 私も個人的には太助の意見に近いかな。
 何より……迂闊に他国への干渉は後々面倒な事になる場合もある。
 けど、私はやっぱりフェミーの事が気になるわ。

「とにかく、この一見の最終判断は現在エルフ国に送り込んでいる諜報員の報告待ちにするわ」
「ただ正規軍はいつでもエルフ国へ出撃できるようにしたほうがいいね。最悪の場合に備えてね」

 という訳で緊急会議はひとまず解散。
 それぞれ万が一に備える事になったわ。
 
「ふぅ……」
「お疲れ様ヒカルちゃん」

 私と太助は魔王城のカフェテラスで少し一息。
 パンジーが入れた紅茶を飲み色々を考え事。
 
「ヒカルちゃん……エルフ国の内乱が起こってから、いや謁見の間で大使からの書状を受け取ってから何か辛そうだよ」
「太助……やっぱり太助にはわかっちゃうんだ」

 私は太助に大使からの書状……いやエルフ国の友達からの手紙を見せた。
 そして太助がその手紙を読み終えた。

「フェミーって……ヒカルちゃんの友達?しかもエルフ国の王女様ってヒカルちゃんって結構顔が広いね」
「うん。だけど今、彼女は苦しい立場にあるの。フェミーの恋人はダークエルフでアカウント将軍の息子なのよ」
「なんだって!!

 私は太助にファミーとはどうやって知り合ったか。
 そして、どうゆう経緯で友達になったかを太助に話し始めた。

「私の実の家族が天変地異でなくなって先代魔王様に引き取られた事は知ってるわよね」
「うん」
「そして私は先代魔王様から様々な英才教育を受けてたけど……その時、一緒に勉強したのが当時エルフ国から留学していたフェミーだったのよ」

 フェミーはエルフ国の王女として見分を広める為に魔王国へ短期留学していた時期があったの。
 最初出会った頃はあまりいい印象を持ってはいなかったわ。
 何しろ私は当時十歳、フェミーは既に百歳を超えていたのだから。
 だけど……フェミーと一緒に勉強しているうちに何処か親近感を抱くようになっていたの。
 儀が付けば私とフェミーは姉妹に近い友達になっていたわ。
 そして私が魔王になる試練を突破して魔王になったのを見届けてフェミーは留学を終えてエルフ国へ帰っていったの。

「これでも最近までは手紙でのやり取りを続けてたけど……まさかエルフ国がこんな事になったなんて」
「ヒカルちゃん」
「何?」
「ヒカルちゃんはどうしたいの?」

 そりゃ……私としてはすぐにエルフ国へ駆けつけてフェミーの危機を救いたい。 
 だけど今の私は魔王国の魔王。
 軽々しい真似はできないわ。

「ヒカルちゃん!」

 突然太助が私を睨みつける!
 そして、こう言い放った。

「まさか……ヒカルちゃん、自分が魔王国の魔王だから動けないとでも言いたいの?」
「そ、そうよ。私は魔王だもの!」
「ヒカルちゃん、一国の領主としては正しい判断だけど……そんなの僕が好きなヒカルちゃんじゃないよ!」
「えっ?」
「傍若無人で自分勝手。その癖友達が困ってる時は何も考えずに助けに行くのがヒカル・グレーズという女の子の筈だよ」
「……」

 太助は私の肩を叩く。
 そして太助は私にこう告げた。

「少しは自分の思うようにすればいいと思うよ。それが僕が大好きなヒカルちゃんなのだから」

 その言葉を聞いた時、私の決意は固まった。
 絶対にあのエルフ国の内乱には何か裏がある。
 そして裏で動いている何者かのせいで私の友達が苦しんでいる。
 もう、じっとしてはいられない。





 行くか!暗雲渦巻くエルフ国へ。
 友達の窮地を救う為に!





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