太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

その一 エルフ国の大使

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 エルフ国の内乱発生から二日後。
 こちら魔王国はエルフ国とは平和そのもの。
 もっとも……エルフ国の内乱による影響はこの魔王国にも及んでいたわ。
 私が魔王城の執務室で太助と一緒に各種書類に目を通していた中で官僚長であるミクシィが血相を変えてやってきた。
 勿論毎度ながら豪快に大転倒したのはお約束。

「たたた、大変です魔王様」
「どうしたのミクシィ。平和な魔王国で何があったの?」
「魔王国自体は現状問題ありません。ですが……昨日からエルフ国からの穀物の輸入が止まっております」
「えっ?エルフ国の穀物の輸入が?」

 魔王国とエルフ国とは昔から作物と香辛料の輸出入が盛んである。
 穀物そのものは魔王国でも生産されており自給自足できるのだが実の処エルフ国の作物の方が悔しいが出来がいいのだ。
 故に我が国の高級レストラン等ではエルフ国の農作物が重宝されており時折私達の食事にもエルフ国の食材が用いられる事が多い。
 そういえばアンナの奴はエルフ国産のコメがお気に入りだそうで。
 そしてその代わり我が国としてはコショウとかの香辛料をエルフ国へ安い関税で輸出している。
 我が国の香辛料はエルフ国には好評だそうだ。
 しかし……そのエルフ国の農作物の輸入が突如止まったなんて一体何があったのかしら?

「行商人から聞いた話によれば……エルフ国で内乱は起こったらしく、それで危険を察して行商人達がエルフ国の輸出入を控えているそうです」
「エルフ国が内乱?」

 エルフ国内乱と聞いた太助はすぐにリンクミラーを取り出して正規軍のルルを呼び出す。
 そして何やら指示を与えてるみたい。

「ヒカルちゃん、とりあえず正規軍にエルフ国へ諜報員を送り込むように要請したよ」
「太助」
「内乱と聞いたら少しでも情報が欲しくてね。とにかく現状どうなってるか把握しないと」

 流石は太助。
 我が国の宰相だけの事はあるわ💛
 だけど……エルフ国が内乱発生とは個人的に気になる事がひとつあるけど。
 そこへ執務室へ執事のパンジーが入ってきた。

「失礼します魔王様」
「どうしたのパンジー」
「実はエルフ国の大使が魔王様と謁見したいと訪ねてきました」
「エルフ国の大使?」
「現在、城の応接間でお待ちしてもらってますがどうなさいますか」

 エルフ国内乱発生を知ったタイミングでエルフ国の大使か。
 ある意味丁度いいわ。
 エルフ国の大使から色々と話を聞きたいと思っていたし。

「わかったわ。すぐに大使を謁見間に通して」
「かしこまりました」

 パンジーは謁見の準備の為に執務室を出た。
 そして私は太助にお願いする。

「太助、一緒に来てくれる?」
「うん」

 こして私と太助は城の謁見の間へ。
 そこで……私と太助は意外な人物と再会する事になる。

「さて、貴方がエルフ国の大使……って貴方は確か」
「お久しぶりです、魔王ヒカル・グレーズ様」
「そして初めまして魔王国の魔王ヒカル・グレーズ様」

 玉座に座った私が見たのは……二人の人物だった。
 内一人は明らかにエルフ族の女性であるが問題はもう一人の男。
 その男は若いドワーフ族の男……しかもその男は私と太助は見覚えがある人物であった。

「私はエルフ国の大使でアリカと申します。以後お見知りおきを」
「貴方がエルフ国の大使ね。私が魔王ヒカル・グレーズよ、そしてここにいるのは宰相で私の夫の太助よ」

 彼女がエルフ国の大使のアリカさんね。
 それにしても女の私が見てもお人形みたいに綺麗なエルフさんね。
 さて、問題のもう一人だが。

「それと久しぶりねドワーフ国のローブさん。確かエルフ国へ大使として飛ばされたと聞いたけど」
「はは……これは暫くです魔王様に宰相様。ドワーフ国の外交官であるローブでございます」
「ローブさん、エルフ国の空気はどうですか?あそこは作物が美味しいから太ったのでは?」
「滅相もない!私は今でも健康体でございます」

 あぁ、この男は相変わらずみたいね。
 まさか、また女の外見だけで判断してるんじゃないでしょうね。

「まぁ……丁度良かったわ。まずはエルフ国に何が起こったか知ってる限り話してくれないかしら……悪いけど我が国への要求はそのにお願いね」
「わかりました。ではエルフ国の現状を話せる限りお話いたします」

 それから私と太助はアリカからエルフ国の現状を聞いてみる事に。
 反乱の首謀者はダークエルフのアカウント将軍。
 既にアカウント将軍の一団はエルフ国の海岸地帯を占拠済みで現在エルフ国の正規軍と交戦状態だそうだ。

「それで……他に隠してる事はないの?」
「い、いいえ!ただアカウント将軍がエルフ国の実験を握ったら次は魔王国かドワーフ国を攻め込むとか言ってました」

 えっ?
 冗談でしょう。
 確かにエルフ国には我が国に負けない正規軍がいるけど……正直我が国の正規軍とはほぼ互角と聞くわ。
 第一エルフ国が我が国やドワーフ国を攻め込むメリットなんて皆無の筈よ。

「私もアカウント将軍の考えは承服できません。森とともに生きるエルフ族にとってあまり他国の文明には興味がありませんから」
「そうね。確かに」

 そうなのだ。
 以前、我が国はエルフ国にリンクミラーを始めとする便利な道具や機械を格安で売ろうとしたのだが全てエルフ国の国王は断っているのだ。
 故にエルフ国には香辛料とかの類しかまともに商談に乗ろうとしない。
 それを反乱者の考えとはいえ今更他国の道具や機械を欲しがるのはどうゆう事なのかしら?

「すみません魔王様、そろそろこちらの要件を」
「あぁ、そうだったわね。で、エルフ国の大使である貴方が私に会いに来た目的は?」
「実は……エルフ国の王女であるフェミー様から魔王様へ書状を持ってきました」
「えっ?」

 私はフェミーという名前を聞いた時に内心驚いた。
 何故なら……彼女は私の……。
 私はすぐにアリカからその書状を受け取り、すぐに書状を確認した。

「……確かにこれはフェミーの直筆だわ。なになに?」

 書状にはこう記されていた。


 親愛なるヒカルへ。
 この書状が届いている頃には我が国は内乱状態になっていると思います。
 信頼できる貴方だからお話しますが反乱者であるアカウント将軍はエルフ国に伝わる伝説の巨神を復活してエルフ国の実験を握るつもりです。
 もし、伝説の巨神が復活したらエルフ国は滅ぼされる事は確実でしょう。
 ですが私は国の王女として必ずアカウント将軍の反乱を鎮め伝説の巨神復活を阻止してみせるわ。
 だkらヒカルは魔王国の魔王としてしっかり自分の国を治めていて欲しい事を願います。
 
 そして、今度の反乱が静まったら私は魔王国へ貴方を訪ねに行こうと思います。
 今度直接会えたら……色々とお話しましょう。
 今はそれを楽しみに反乱鎮圧に奔走しようと思います。

 私は絶対にくじけません。
 私は……大丈夫だからね。

 親愛なる貴方の友人・フェミーより。


 私がこの書状を読み終えた時、何故か目から涙が零れ落ちた。
 
「ヒカルちゃん」
「フェミー……何遠回りにこんな書状書いて来たのよ」

 間違いない。
 書状には自分達で反乱を鎮圧するって書いてあったけど……これは明らかにフェミーは私に助けを求めているわ。
 これは遠回しに魔王国に救援要請して欲しいという書状だわ。
 全く……素直に助けてと書けばいいのに。

「太助……すぐに全幹部に緊急招集よ」
「やはりエルフ国についてかいヒカルちゃん」
「そう、エルフ国にいる私のt友達がピンチなのよ!」
「友達?」
「それとここにいる大使には手厚くエルフ国の大使館へ送ってあげて」

 エルフ国の内乱。
 伝説の巨神復活による我が国の危機。
 そして……私の友達の危機!





 もう……これはエルフ国だけの問題ではない。 
 アカウントだかバカウントか知らないけど私の友達を困らせるというなら黙ってはいないわ!
 さぁ、新たなる戦いの始まりよ。






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