太助と魔王

温水康弘

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第五章 内乱のエルフ国

プロローグ

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 魔王国に属する港町ウエストから北の方角。
 ウエスト山脈の向こう側の森林地帯にある森林地帯。
 そこに……エルフ族が統治するエルフ国が存在していた。

 エルフ……太古からこの大陸に住まう一族でやはりその最大の特徴は長寿といえる寿命であろう。
 平均寿命は約五百から六百歳ぐらい。
 中には千年近く生きる個体もいるそうだ。
 彼等は森とともに生きる事を常として主に農作業で生計を立てている者が多い。
 また例外もいるがあまり肉は食べずに野菜や穀物を主食として食べている。

 そのエルフ国のほぼ中心部にある樹齢五千年近くの巨木。
 こここそがエルフ国の国王が住まう生きた城である。
 現在そんなエルフ国を統治しているのはルシフェル王という女性エルフ。
 それを夫であり宰相でもあるラリーが支えている。

「それで……今年の作物の収穫状況はどう?」
「今年は豊作だと……そうなると今年の収穫祭は賑わう事でしょう」
「となると、それなりに余裕がありそうだな。今度魔王国の商人から多数の調味料が入手できそうだな」
「確かにルシフェルはあそこの調味料……特にコショウはお気に入りだよな」
「うふふ、あのコショウで味付けしたサラダは格別よね、貴方」

 実はエルフ国と我が魔王国とは昔から国交があり新鮮な穀物を輸入する代わりに様々な調味料を輸出しているのだ。
 私個人としては便利な道具も輸出したいのだが森と一体になって生きるのがエルフだという事で断れれている。

「母上に父上!こちらでしたか」
「あらファミーお帰り……貴方また狩りを」
「いいじゃないの。近頃近隣の田畑を荒らしていた熊を倒したんだから。今夜は熊鍋かしら」
「ファミーもよくそうゆうのが食べられるわね。やはり前に魔王国へ留学させた影響かしら?」
「結構いけるわよ母上。この味がわからないのが残念だわ」

 この自ら弓で仕留めた熊を引っ張って表れたエルフの娘はファミー。
 エルフ国国王ルシフェルと宰相ラリーの娘である。
 それにしてもこのファミーってエルフにしては珍しく肉は食べるわ熊ぐらいなら引っ張って運ぶぐらいの怪力の持ち主。
 どうも前に魔王国へ留学した影響らしいけど……相変わらずねファミー。

「とにかく、その熊は何処かに片づけてくれる?私は血生臭いのは苦手なのよ」
「ファミー、すぐに片づけなさい」
「は~い!」

 ファミーは熊を引きづって部屋から出ていく。
 自分達の娘の行動にルシフェル王とラリーは少し頭が痛くなる。

「やはり魔王国へ留学させたのは間違いだったのかしら?まさかこのような娘になるなんて」
「ルシフェル、案外次の王はこうゆうのが相応しいかもしれないよ」

 二人は少し苦笑いしながら娘の現状を語りあう。
 それでも……森と共に生きるエルフ族にとって静かな日々といえる。
 いつまでも……静かな日々が続くと思っていた筈。
 しかし、それは三日後に打ち砕かれた!




 それは……夜も更けて星空が輝く頃。




「何っ!ダークエルフが一斉蜂起だと」
「はい、既に国の海岸地帯がダークエルフの一段に選挙されました!」

 突如、王と宰相の寝室に伝令が緊急の報告と駆け付けてエルフ国の海岸線がダークエルフの一団に占拠されたという知らせを受ける。

「既に海岸は結界が張られており迂闊には近づけません!なお反乱の首謀者は……アカウント様です」
「何っ、アカウント将軍だと!」

 どうやら反乱の首謀者はダークエルフのアカウント将軍。
 しかも伝令からの報告では反乱した軍勢は約五万人ぐらい。
 エルフ国の総人口の事を考えたらかなりの軍勢だ。

「母上!」
「ファミーか」
「ダークエルフの一団が……アカウント将軍が反乱を起こしたのは本当ですか!」
「残念ながら事実です。現在我が国の衛兵が鎮圧しに向かいましたが」
「そうですか、母上……いえ国王よ!反乱分の盗伐に加わろうと思います」
「それはなりません!貴方は仮にもこのエルフ国の跡取り。軽々しい真似はよしなさい」
「ですが」
「なりません!貴方はここで私と共にいなさい」

 これには流石にフェミーも渋々従うしかないわね。
 それにしてもダークエルフのアカウント将軍は何を考えてるのかしら?
 
「しかし、あのアカウント将軍が何故に謀反を?」

「それは……アカウント将軍が隣国制服の野望を抱いたからでございます」
「あっ、ガント大臣」

 そこへ現れたのはエルフ国の大臣の一人であるガントという男。
 ガント大臣はルシフェル国王にこう告げたわ。

「恐らくアカウント将軍はエルフ国の伝わる伝説の巨神を蘇らせて我が国の統治権を奪った上で諸外国へ侵略を行うつもりです!」
「なんですって!」
「現にアカウント将軍が乗っ取った海岸地帯には三つある封印のひとつがあった筈。恐らくダークエルフ達の狙いはそれでしょう」

 エルフ国に伝わる伝説の巨神。
 このエルフ国に存亡の危機が訪れた時、このエルフ国のお城の近くにある大神殿に眠る巨神が蘇り国の危機を救うという言い伝えがあるみたい。
 そして、巨神の封印を解くには三つの神器が必要であり……その内の一つがアカウント将軍が選挙した海岸地帯にあるという。

「ルシフェル!」
「わかってるわ貴方、アカウント将軍が伝説の巨神復活が目的なら……恐らく私が持つ神機・赤の刻印を狙ってくる筈」

 ルシフェル王が首にかけているペンダント。
 それこそが封印の一つである赤の刻印であった。

「何故にアカウント将軍が謀反を起こしたのかは私には理解できません。ですが彼等の目的がこの封印なら……我々は絶対に守り抜かないといけません」

 もうルシフェル王の決意は固い。
 アカウント将軍の反乱を鎮め、伝説の巨神の復活を阻止する事。

「ラリー、すぐに一個師団を出撃させなさい。そしてアカウント将軍の反乱を見事沈めてみなさい」
「はっ!仰せのままに」

 宰相のラリーはすぐにエルフ国の一個師団へ出撃要請しに寝室を出る。
 そして……その様子を見てガント大臣はニヤリと笑う。
 この緊急事態のさ中、寝室のベランダでフェミーは一人思いを抱く。

「ブログ……これはどうゆう事なの?今、貴方の父親が我が国を脅かそうとしてるわ」

 そして……フェミーは一粒の涙を流しながら今の状況を嘆いていた。




「こうゆう時、貴方ならどうするの……ヒカル」






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