太助と魔王

温水康弘

文字の大きさ
上 下
62 / 99
第四章 魔王国の日常 パート01

その九 ファブリーズの集団お見合い 04

しおりを挟む

「この場にいる貴族達に告ぐ!すぐに手にしているショートケーキを食べて素直に感想を述べよ!さもないと反逆罪で逮捕するそ!!」

 うわぁ、ミルク国王権力使って脅すとは同じ王としては悪手だと思うわよ。
 はぁ、これは裏目に出るんじゃないの?
 
「煩い!いくら王様でも嫌なものは嫌なんだよ。誰が下賤のクズが作ったケーキなんか食うんんだ」
「そうだそうだ!スイーツは元来俺達貴族の為の菓子だっ!」
「追放だっ!これ作った奴は国外追放だっ!」

 こ、コイツ等!
 ドワーフ国の貴族って最低な奴ばかりなのね。
 あぁ、この状況を見てローブ宰相や奥さんのマリさんにエルス大臣にボルト将軍まで唖然として半ば絶望してるわ。
 もうミルク国王様に至っては怒り心頭で暴発寸前!

「ローブ……コイツ等ぶっ飛ばしていい?」
「仮にも一刻の王が私怨で配下ぶっ飛ばすのはね……けど僕もこれには頭に来るな」
「ならどうする気?こんな忠誠心の欠片のない奴等見てると……頭が痛いわ」

 もう、私もブチ切れそう。
 いっそ……この連中に爆裂魔法をぶっ放してやろうか(怒)
 あれ?
 ファブリーズ!どこに行くの?
 
「貴方……折角のショートケーキ、食べたらどうです?」
「なんだぁ?魔族風情が何出しゃばってる……って何をする!」

 げげっ!
 ファブリーズったら貴族の口を強引こじ開けてライト君のショートケーキを無理矢理口の中へ入れちゃったわ。
 そしてファブリーズは次々と嫌がる貴族ドモにライト君のショートケーキを口に強引に入れていったわ。
 
「これで全員ね……どう?今食べたショートケーキの味は?」
「「「…………」」」

 だんまりしている貴族ドモ。
 それに激怒したのかファブリーズは近くにあったテーブルをぶん殴り見事にぶっ壊してしまったわ!
 これには貴族ドモも腰を抜かしたわね。

「美味しかったの!不味かったの!そんな簡単な事すら答えられないなんてアンタ達金玉ついてるの!」

 うわぁ……ファブリーズの目が怖~い!
 すると……貴族ドモの感想が小さな声が聞こえてきたわ。

「お……美味しいです」
「実に……味わいのある風味……です」
「ラー男爵様のと比べると個性的です」

 次々と聞こえてくるライト君のショートケーキの評判のいい感想。
 この貴族ドモも自分の舌には嘘はつけなかったみたいね。
 この結果にファブリーズはニッコリと笑顔で。

「素直でよろしい!そして、これで勝負ありましたね」

 明らかにライト君のショートケーキが評判がいいのは明白!
 これはもう勝負ありね!

「このスイーツ対決、ライト君の勝利とする!」

 やはりというべきかライト君のショートケーキが一枚上手だったものね。
 しかも敗北したラー男爵本人がライト君のショートケーキを食べてるのがお笑い種ね。

「くそっ……負けを認めざるを得ないな。あのパティシエはクビだ!今度はもっと腕のいい……」
「そりゃ自分が作ってないんじゃ負けて当然ね」
「こ、国王様!」
「道理で最近貴方のスイーツが美味しくない理由がわかったわ。貴方近頃自分の弟子にスイーツ作らせて自分は何もしてないでしょう」
「!?どうして」
「昔……私が子供の頃に父上に連れられて貴方が作ったスイーツを食べた事があって、その時は本当に美味しかったわよ」
「……」
「どう?今度私の為にスイーツを作ってくれる?今度は自分のその手を使ってね」
「こ……国王様!」

 あらあら!
 ラー男爵ったら大粒の涙を流しながらミルク国王に頭を下げてるわ。
 案外この人はスイーツ作りを傲慢になって怠っていただけなのかも。
 根は案外いい人かもね。

 こうしてスイーツ対決を終えて勝者であるライト君に褒美が与えられる事に。
 今回のスイーツ対決に関わった人達の前でミルク国王がライト君に{何が欲しい?}と問われる。
 
「いえ!とんでもありません。今度の勝利も国王様のお情けによるものですし」
「もう、謙虚な処も可愛いわね。なら……ライト君にはこのミルクから二つご褒美をあげるわ」

 えっ?
 ご褒美を二つ上げるって何をあげる気なのミルク!

「まず一つ目の褒美は……ライト君に伯爵の爵位を授与するわ!」
「え、えええええええええええっ!」
「別に驚く事は無いわ。確かライト君の父親も伯爵だった筈だから家督を引き継ぐだけの事よ」
「で、ですが」
「これはライト君をドワーフ国にとって有能だと判断しての事よ。これからは伯爵としてスイーツ研究に勤めなさい」

 ライト君が伯爵になるのはミルク国王だけではなくローブ宰相やエルス大臣も賛成してるみたい。
 確かにお菓子の技術を向上させるのはドワーフ国の文化発展には重要だしね。
 ライト君少し悩んだみたいだけど……どうやら気持ちが固まったみたい。

「国王様、このライト・フォーミュラー亡き父の後を受け継ぎ伯爵の爵位を拝命いたします」
「頼むわよライト。ドワーフ国の菓子文化発展の為にお願いね」
「はっ!」

 これでライト伯爵の誕生ね。
 今後ライト伯爵はドワーフ国のお菓子文化発展の為に尽力する事間違いなしね。
 機会があればライト伯爵が作ったお菓子を私も食べたいわね。

「ではライト伯爵……もう一つのご褒美なんだけど💛」
「はい、なんでしょうか」

 すると……なんとミルク国王は私達やローブ宰相にエルス大臣のいる前でライト伯爵に抱き着いたわ。

「うふふ!もう一つの褒美は……わ・た・し💛」
「こ!国王様っ、何を!!」
「いやぁ~っ最初に君を見た瞬間に運命ってものを感じていたのよね💛ミルク、ライト君の事気に入っちゃったのよねぇ」
「えええええええええええっ」

 これは会場中にいる私達の間ででの大胆な逆プロデュースだわ!
 まさか、このタイミングでこれをやる訳!
 流石にこれには私もこうゆう感想。

「ははは!これはめでたいわ。ある意味ミルクらしい告白ね」
「これでドワーフ国も安泰だねヒカルちゃん」
「そうね太助、これで魔王国もドワーフ国と色々と交渉し易くなりそう」

 あのミルクとライトの縁談はきっと魔王国にとっても国益になる事間違いなし。
 これはいい朗報ね。

「こ、国王様!僕でいいんですかっ、僕はお菓子作りしか取り柄が無いんですよ」
「ミルクって呼んで💛まぁ、いきなり結婚とかは早いと思うし……まずは色々とお互いの事を知りましょうライト💛」
「本当に……僕でいいのですか国王……」
「ミ・ル。ク!」
「は、はいミルク様!」

 あ~あ、早速ミルクったらグイグイとライト君を引っ張ってる感じ。
 これはライと君これから大変そうね。
 結果的にこのお見合いパーティーは国王様の婚約発表パーティーになった訳ね。
 どうやらこれにて一件落着って奴かしら。
 あれ?
 先程からアンナの姿が見えないけど。

「それではドワーフ国の貴族の皆様!氷見沈みましたので、これより私がミルク国王様の婚約を祝して私が特製とんこつラーメンを用意しました!」
「あ、アンナ……いつの間に」
「では沢山ありますので皆様どうぞ召し上がって下さい!」

 アンナったらいつの間に。
 しかもマリさんとエルス大臣も一緒に作ってたみたい。
 そういえばここはドワーフ国だから豚肉が容易に手に入るからね。
 早く魔王国の家畜産業も軌道に乗せたいわね。

「美味い!これは素晴らしい」
「このチャーシューも美味い!」

 おおっ、このとんこつラーメンはドワーフ国の貴族達も大好評ね。
 おや?
 ラー男爵ったらアンナに土下座しているわ。

「この素晴らしい料理の腕前……是非私を弟子にしてください!」
「あっ、私はまだ弟子を取る程の人間じゃないわ。それに貴方の専門はスイーツでしょう……私は料理専門だから畑違いよ」

 これはアンナもモテるようで。




 本来はこれでこの一件は終わりなのだが……実はまだ一波乱起こるとは、その時は私も想定はしていなかった。

 


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...