61 / 99
第四章 魔王国の日常 パート01
その八 ファブリーズの集団お見合い 03
しおりを挟む「無理です!絶対に負けるに決まってます」
ラー男爵とのスイーツ対決が始まり早三十分。
ライト君は完全に戦う前から負けると確信して逃げる姿勢を見せている。
これには私も呆れて溜息をつく。
今頃ラー男爵は別の厨房で自分の財力を駆使して最高の食材と配下のパティシエを用いて最高のスイーツを作ってるだろう。
それに比べて観念に逃げ腰のライト君はたった一人。
しかも用意された材料はお世辞にもいいものではない。
「完全にラー男爵がこちらが負けるように材料にいいもの回さないようにしてるね」
「どうするの太助……じゃなかった助さん、このままではみすみすライト君がドワーフ国を追い出される羽目になるわよ」
「ならばライト君にも助っ人を用意しようかな。アンナ姉ちゃん!」
「よし!スイーツは専門じゃないけどこんな不公平な対決されたのなら見過ごす訳にはいかないわね」
怯えるライト君にアンナが手を差し伸べる。
「ライト君……紫陽花アンナって人知ってる?」
「はい、魔王国の左将軍で料理の達人……ってまさか貴方が!」
「そうよ!この私が力を貸してあげる!一緒にあの行け透けないラー男爵をギャフンと言わせてやりましょう」
「あ、ありがとうございます……ってこの人が真王国の右将軍様って事は?」
ライト君は恐る恐る私の姿を見て、私の正体を確信したのか土下座してきたわ。
「魔王国の魔王様とは梅雨知らず、ご無礼をお許しください」
「ありゃ~っ、この子結構察しがいいわね。いかにも私は魔王国の魔王ヒカル・グレーズよ」
「やっぱり~っ!」
「そんなに怯えないで頭を上げなさい。ライト君!ウチのアンナを貸すからにはわかってるわね」
「は……はい!」
「あの気に入らないラー男爵の奴を貴方のスイーツでギャフンと言わせてやりなさい!大丈夫、貴方なら絶対に勝利できるわ」
うふふ!
ドワーフ国の中でも屈指の実力とエルス大臣が認めたライト君と我が国が誇る料理の実力を誇るアンナが組めば美味しいスイーツが作れる筈よ。
だけど太助曰く用意された材料では勝ち目が無いと判断。
そこで私の無限バックからスイーツ作りに必要な魔王国産の最上級小麦粉やイチゴ等を用意したわ。
流石に牛乳とかは魔王国には無いからミルク国王がこっそりと自分の無限バックから用意したの。
「いいの?私達はともかくドワーフ国の国王様が一方に肩入れしても」
「いいのよ💛以前からラー男爵の評判は最悪だったし一度国王としてとっちめてやりたかったのよね」
「それでミルクとしての本音は?」
「ライト君勝って~っ💛勝ってくれないとミルクが困るのよぉ~っ💛」
はい、これで私も太助もアンナもファブリーズもミルクの本音と気持ちを察しました。
これは完全に女としてターゲットロックオンしてますわ。
そりゃ不公平だと言われても仕方がありませんわ。
それから私達はアンナとライト君を厨房に残して外へ。
残念だけど私達では邪魔になるだけだしね。
さて、残り三時間ぐらい。
果たしてどんなショートケーキを出すのかしら。
そこへ現れる一つの影。
それは近頃アイドル活動をしているクロであった。
「――――魔王様に報告です。あのラー男爵は自分は酒を飲みながら作業をせずスイーツ作りを自分が雇ったパティシエに作らせているそうです」
「そう、だけどクロ……貴方結局また諜報員やってるの?アイドルに専念しなさいと辞令を出した筈よ」
「――――やはり私はこちらが天職と思いますので。ですがこの後のスイーツ対決の余興として私が一曲歌う事になりましたのでよろしく」
全く折角血生臭い諜報員から解任したのにどうして?
クロ!お願いだからもう暗殺とかはやめてよね。
「――――では歌手としての準備がありますので失礼します」
「クロ!いい曲期待してるわよ」
そしれクロがそのまま姿を消した。
それにしてもあのラー男爵って自分で作らないなんて呆れた奴ね。
後で目の者を見せてやるんだから。
それからお見合いパーティー会場でスイーツ対決が始まった!
最初に余興としてクロ・ヒマワリによる一曲が疲労された。
クロ・ヒマワリは既に魔王国のみならずドワーフ国でもかなり人気があり、これには出席した貴族や大臣達も大絶賛であった。
そして司会をボルト将軍が行い遂にショートケーキによる試食が行われる事に!
「では……まずはラー男爵によるショートケーキを召し上がり下さい」
ラー男爵が用意したのは実に豪華そうな飾りつけをしたショートケーキ。
いかにも豪華さが目立つ装飾をしたショートケーキである。
それを配下のパティシエが切り分けて貴族達に手渡していく。
「私が用意したショートケーキはドワーフ国の高貴なる貴族の為の代物です!では皆様メシアがっえ下さい」
ラー男爵の発言と同時に出席した貴族達は手にしたショートケーキを口にする。
そのショートケーキの味は結構上々で「素晴らしい」と絶賛する者が多かった。
そりゃそうよね。
普通に美味いパティシエに任せてた上に材料も自分の権力を駆使していいものを揃えたのだから。
ちなみにラー男爵は何もしてないから笑い種だわ。
「さて、続いてはライト君によるショートケーキでございます!」
ライト君とアンナが会場へ自分達が作ったショートケーキを運んできた。
なんと!そのショートケーキにはイチゴでミルク国王の似顔絵が書かれていた。
これにはミルク国王も大満足だ。
「では……皆柾試食お願いします」
出席している貴族達に切り分けされたライト君のショートケーキが配られる。
しかし……そうゆう訳か誰一人ライト君のショートケーキを食べようとしない。
それ処か「食べるに値しない」とか聞こえてくる始末。
「ちょっと!これでは審査にならないわよ。国王命令よ!すぐに食べなさい」
ミルク国王の命令も空しく誰もライト君のショートケーキを食べようとしない。
これには流石のミルク国王も頭に青筋を立てて怒り心頭!
国王自ら実力行使に出ようとした時であった!
「はっはっはっ!皆様あの男爵様に弱みを握られてる訳ですか。実に情けない貴族の皆様ですねぇ」
「ひ、ヒカル」
ここで私達コショウ問屋の一人娘ご一行の入場よ。
ラー男爵様は「またお前等か」と怒鳴ってくる。
「あら、これは男爵様。今日は素晴らしいお客様にお越し願いましたの」
「何だと!誰を連れてきた」
「僕達だよ、ラー男爵」
「!?ローブ宰相にエルス大臣!」
ふふふ!実はこうなるんじゃないかと思ってローブ宰相と奥さんのマリさん、それにエルス大臣をここへ招待したのよね。
「では……宰相様にエルス大臣様、まずはライト君のショートケーキをどうぞ召し上がってください」
ローブ宰相達三人はライト君のショートケーキを頂く事に。
そして三人がそのショートケーキを食べた瞬間……揃って美味い!と叫んだわ。
「これは……ショートケーキ、イチゴの他に色々なフルーツが入っているぞ。しかもそのフルーツの組み合わせが上手くマッチしている」
「このスポンジってもしかして隠し味にブランデー入れてるの?」
「これは随分遊び心のあるショートケーキね!流石は私が見込んだパティシエね」
おおっ、これはローブ宰相を始め大絶賛みたいね。
試しに私と太助とファブリーズも食べたけど本当に美味しいわ!
「ラー男爵様、なんならこのショートケーキを食べて見たらどうですか?」
「ぐぬぬ……誰が、誰が下賤のクズが作ったスイーツを食べるものか!この勝負は私の勝ちだ」
うわぁ、素直に食べたらいいのに。
そこへラー男爵様の足元へ小刀が飛来して突き刺さる!
そしてその小刀を投げたのは他でもないクロだった。
「――――往生際が悪いぞ。既にここにいる貴族達が貴様から買収を受けていた事はもう調べはついているぞ」
「なに!」
おやぁ?
これは面白い事を聞いたわね。
さぁ、ミルク国王様……どうしますか?
「この場にいる貴族達に告ぐ!すぐに手にしているショートケーキを食べて素直に感想を述べよ!さもないと反逆罪で逮捕するそ!!」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)


冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる