太助と魔王

温水康弘

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第四章 魔王国の日常 パート01

その六 ファブリーズの集団お見合い 01

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「まさか一人でドワーフ国へ来る事になるとは思いもしませんでしたわ」

 現在、魔王国正規軍右将軍ファブリーズは所要によりドワーフ国に来ていた。
 一応、休暇である。 
 ファブリーズとしてもたまには外国でゆっくりするのもいい休暇になるでしょうね。
 ただ、今回の休暇はある目的で来ていたのである。
 話は今から一週間前に遡る。

「えっ?ドワーフ国から集団お見舞いですか?」
「そうよファブリーズ。実はミルク国王主催で大義母なお見合いパーティーが開催されるらしいの」
「ミルク国王様主催ですか。それと私に何が?」
「実はそのミルク国王からのお願いで是非同じ独身であるファブリーズに出席して欲しいそうよ」
「お見合いですか……ドワーフ国ですからドワーフの方々が多いでしょうね」
「まぁ、案外いい人見つかるかも知れないわよ。一度休暇を兼ねて参加してみたら?」

 という訳でファブリーズは魔王国の親善を兼ねてお見合いパーティーに参加する事になった訳である。
 関所を通り入国するとファブリーズは私服姿の知っている顔と出会う事に。

「ファブリーズさん!ようこそドワーフ国へ」
「えっ?まさか……ミルク国王様!」
「し~っ、今の私は御忍びでここにいるのよ。今日は友人としてファブリーズに会いに来たのよ」

 あぁ、道理で地味な私服姿で姿を見せた訳ですかミルク国王様。
 それから二人は近くの定食屋へ入り一緒にお食事。

「ふふふ、ここの焼肉定食は格別なのよ!私が奢るから是非食べて頂戴」
「では、遠慮なく頂きます」

 この定食屋名物の焼肉定食。
 ドワーフ国特産の牛肉に新線や野菜が盛り沢山。
 そして大森ご飯が最高である。

「それにしても国王様、この国も随分立ち直ったみたいですね」
「えぇ……あの裏切り者の宰相がしっかり仕切ってるお陰でそれなりにね」

 うわぁ、ミルク国王まだローブ宰相の事を引きずってるみたい。
 しかもミルク国王は大粒の涙を流しながらファブリーズに語る。

「本当は……ローブを婿にして楽しい夫婦になる筈だったのに、どうしてこうなったの、ううっ」
「判ります、さぞかし無念でしたでしょう」

 それからミルク国王様による怨念籠った語りがファブリーズに聞かされる。
 そして、とうとうミルク国王は大きな声で泣き出したわ。

「びぇぇぇぇぇっ!どうしてアイツ国王の私よりも地味な村娘選んだ訳?納得いかないわよ」

 まぁ、正確には有力な大臣の娘さんですがね。
 余程ミルク国王の失恋の傷は深いようで。

「まぁまぁ、だから今回大規模なお見合いパーティーを開催なさるのでしょう。お互いいい殿方が見つかるといいですわね」
「ううっ、ファブリーズ!」

 これは悲しい独り身同士の女にしか理解できないわね。
 それからファブリーズはドワーフ国の城で宿泊する事になった。
 しかもその宿泊部屋は俗にいう特別室。

「私、他国の将軍ですよ。いいのかしら……このような豪華な部屋に宿泊して」

 それからファブリーズは容易された食事を頂いた後で部屋にあるお酒を飲む事に。
 ちなみに部屋のお酒は自由に飲んでいいと許しを得ていたので遠慮なく。

「うわぁ、これってドワーフ国特産のウォッカじゃないですか。そしてこれは最上級のウイスキー……ミルク国王様、本当にこれ飲んでいいのですか?」

 流石にファブリーズも部屋にある高級酒の数々に遠慮する事に。
 しかもドワーフ国の酒は強いという評判だから下手に飲んで明日のお見合いパーティーに影響が出たら面倒だ。
 ファブリーズは持参していた無限バックから赤ワインとグラスを取り出して飲む事に。

「はぁ、やはり酒はワインに限りますわね」

 そして、ファブリーズは自分のリンクミラーを用いて魔王国からの配信番組を楽しむ事に。
 すると……そのリンクミラーの画像に映るのは?

(紫陽花アンナの料理教室~っ!皆様こんばんわ、紫陽花アンナです)

 えっ?
 アンナの奴いつの間に料理教室なんか配信してるの?
 そういえばアンナって脳筋な割に料理が得意だったわね。
 だけどアンナが自分の配信番組持つなんて意外だったわね。
 しかもこの配信番組は魔王国は勿論、ドワーフ国の視聴者も多いみたい。

「流石はアンナって処ね。料理かぁ、私もできなくはないんだけどねぇ」

 意外かも知れないけどファブリーズも料理自体は出来るのよね。
 ただ……味や健康バランスはいいのを作るけど見掛けが結構個性的なのが多いのよね。
 それとファブリーズは一人暮らしのせいか家事全般が得意なのよね。
 だけど、魔王国で十五歳一人暮らしは結構肩見せまいのよね。
 普通、魔王国では早いと十一歳で結婚して家庭に入ったりするからね。
 だからファブリーズはある意味異端なのよね。
 だから私も今度の集団お見合いパーティーに参加させたのよ。

「本当に明日のパーティーで相手が見つかるかしら?」

 ファブリーズはそれから暫くワインを飲みながらドワーフ国での長い夜を一人で過ごした。
 それから次の日。
 場所は変わってノーズ山脈の麓に設置された特設ステージ。
 そこには数々のドワーフ国の貴族や大臣、それに軍人や仕官が男女問わず一堂に集まつていた。

「それでは皆様、今宵はこのパーティーを楽しんでください!」

 このパーティーの主催者であるミルク国王が正装姿で挨拶。
 これから楽しい……いや、弱肉強食の奪い合いが始まろうとしていた!
 果たしてファブリーズはこの修羅場を戦い抜く事ができるのか?



 以下、次回に続く!




※今回執筆中に体調を崩しましたので通常よりも短い事をこの場を借りてお詫びします。 
 
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