56 / 99
第四章 魔王国の日常 パート01
その三 クロ・ヒマワリのアイドル化計画 01
しおりを挟むさて、我が魔王国には様々な魔族が働いて国を成り立たせている訳である。
だけど……その中には裏で暗躍して色々と蔭で動いてくれている者達もいる。
今回はその魔王国諜報員の中で最強である少女・クロにスポットを当ててみようかしら?
「己~っ!まだ城の修復が終わらんのか!」
「はっ、現在急ピッチで修復を急いでますが……」
ここは我が魔王国と犬猿の仲である人間国。
先日、巨大化した私が人間国の城を滅茶苦茶にした為に現在は国と城の復旧作業に忙しい。
そして今日もバカな人間国の皇帝陛下様が配下達に当たり散らしているみたい。
本当にこんな皇帝に人間の皆様は大変ね。
「くっ、宰相……何か食事の余興が欲しいぞ!流石に大規模なのは無理だが今の気分を間際らすのがいいぞ」
こんな大変な時に余興とはいいご身分だ事。
すると宰相がある提案を。
「そういえば……近頃城下町に評判のいい吟遊詩人が滞在しているとか。何でしたらその者を呼んでみたらどうでしょうか」
「吟遊詩人か。よし、すぐにその者を呼びだせ」
「ははっ」
それから二時間後。
皇帝陛下が大広間で昼食をとるみたい。
それにしても皇帝陛下の献立って……見るからに豪華そうじゃないの!
牛のステーキに豪華な料理の数々。
少しは庶民の為に還元しなさい!
私なんか昼食は愛しの太助と食堂で地味な献立だけなのに。
「皇帝陛下、吟遊詩人のクロでございます」
「おおっ、待っていたぞ」
皇帝陛下と宰相の前に現れた一人の可愛い少女。
その手には木製のギターを携えている。
「お初にお目にかかります皇帝陛下様。私は吟遊詩人のクロと申します」
「待っていたぞ。其方が近頃城下町で噂の吟遊詩人か」
「では……早速一曲目を」
吟遊詩人クロは手にしたギターを鳴らしながら皇帝陛下とこの場にる宰相や兵士達へ一曲!
最初の曲は……人間国の軍歌である「我等人間は市場なり」だ。
♪大陸制覇をいざ目指し~っ百戦錬磨の我等は行く~っ。
流石は城下町で評判の吟遊詩人。
これには兵士達や宰相は勿論の事、皇帝陛下も気分を良くしていた。
最初の曲が終わり大広間中に喝采と拍手が響き渡る。
何よりも皇帝陛下様もご満悦で食事も進んでいるみたい。
「素晴らしい!流石は評判の吟遊詩人だ」
「では……次の曲を」
続いてクロが歌うは「偉大なる勇者よ」であり、人間国が召喚した勇者を称える歌だ。
♪その剣は点を切り裂き~っ、その足は馬よりも早く~っ!討て~っ眼前の敵を~っ。
続くこの曲も皇帝陛下を始め大好評。
再び喝采と拍手で大広間が響き渡る。
「素晴らしい歌だ。最高の気分だ!」
「ありがとうございます。では、そろそろ最後の曲を」
「えっ?もう次で終わりか。もっと歌って欲しいのだか」
「残念ですが……今回そこにいる宰相様との契約している演奏時間が終わりに近いので」
「宰相~っ!」
「申し訳ございません。現在我が国の財政を考えるとこれが精一杯でしたので」
「うぬぬ、致し方なしか……ではクロ殿、最後の曲をお願いしようか」
「畏まりました。では最後に……私の故郷の歌を歌います。この曲は現在城下町で一番評判のいい曲でございます」
「そうか!我が国の民が好む歌がどんなものか楽しみだな」
吟遊詩人クロはギターを手にして本日最後の歌を皇帝陛下に疲労する。
その歌は……なんと!
♪魔王国に住まう魔王様は~史上最強国士無双!無能な皇帝をぶん殴れ~っ、さっさと皇帝やてめまえ~っ。
「なっ、何だと!」
これには皇帝陛下も大激怒!
そりゃそうよね。
これって魔王である私を称える歌にして人間国の皇帝を酷評してる歌ですもの。
「や、やめんか~っ!すぐにその歌をやめろ~っ」
だけど吟遊詩人の歌は止まらない。
♪いっそこの国魔王に支配された方が素晴らしい~っ、魔王様万歳!魔王様万歳!
はい、これで最後の曲が終了。
これで皇帝陛下の気分はぶち壊しになり大激怒!
しかし……怒り心頭になっているのは皇帝陛下一人だけで、他の兵士達や宰相は意外にも拍手こそないが大好評。
アンタ相当人望が無いわよ。
「いかがですか……私の故郷の歌である”魔王ヒカル賛歌”の感想は」
「何っ、魔王だと!もしや……貴様は魔族だな」
皇帝陛下のその私的に吟遊詩人クロは不敵に笑う。
「――――ようやく気付いたか。この最低君主が」
「!?そ、その声……まさか」
吟遊詩人クロはその身に着けている衣服を脱ぎ捨てる!
すると、皇帝陛下の眼前に黒装束の魔族少女が姿を現した。
「やはり貴様はあの時の魔族!」
「―――いかがでしたか?我が魔王国からの余興は」
そして……正体を現したクロは予め大広間に設置していた小型配信装置を回収した。
「――――なお、この茶番劇はこの配信装置を通じて人間国の領地内は勿論の事、我が魔王国やドワーフ国に生配信されていましたのであしからず」
はい、場所は変わって魔王国の魔王城。
そこで私や太助、それにアンナとファブリーズが大広間でこの一部始終を設置してある大型リンクミラーで視聴させて頂きました!
「ぎゃはははははははっ!これは傑作だわ。見た?あの無能皇帝の間抜け顔」
「今回は意図的にこの大陸中に届くように配信してるからね。これであの皇帝は大陸中の恥さらしだね」
「駄目だ……笑いが止まらねぇ!」
「クロさん、素晴らしい歌でしたわ。そして皇帝……ざまぁ」
そこへ私のリンクミラーから着信音。
応答すると出てきたのはドワーフ国のミルク国王。
(ヒカル!やってくれたわね。これは傑作だわ!最初からこうゆうのを流しなさいよね)
「これはどうも!魔王国国営配信局は近日正式開局になるから楽しみにしてねミルク」
(楽しみにしてるけど……頼むからこの間のような裸ラインダンスはやめて頂戴ね)
どうやら今回はミルク国王にも大評判みたい。
そりゃミルク国王も人間国の皇帝陛下は生理的に嫌いだと言ってたし。
そうだ!
再び舞台は人間国のお城へ。
「おのれ~っ!この曲者を捕らえよ……いや抹殺しろ!」
まぁ、これは当然というかブチ切れの皇帝陛下様はクロの抹殺を命じる。
しかし……肝心の兵士達は全く動く気配はない。
それ処か兵士達はクロに対して拍手と喝采の嵐。
これって間違いなく今の皇帝陛下に対して不満あるみたい。
「――――本日お越しになられたお客様。今宵は本当にありがとうございました」
「こら~っ!さっさとあいつを殺さんか」
「――――それでは本日のショーはこれでお開きとさせて頂きます。では、また機会があればお会いしましょう」
するとクロの体から黒い煙幕が噴き出してきた。
その黒い煙幕は大広間中を覆い隠す。
その煙幕が消えた頃には……クロは大広間から完全に姿を消していた。
そして、大広間に黒の声が響き渡る。
(――――そうだ、魔王様からの置き土産をあるから……受け取るがいい)
その直後、城の数か所が凄まじい大爆発を起こした!
これでは城の修復がまた著しく遅れる事間違いないだろう。
本当、皇帝陛下にとっては最低最悪の食事になった事は間違いないわね。
「魔王め~っ!覚えていろよっ、今に人間国の恐ろしさを思い知らせてやるからな!」
ちなみにこの一部始終の再生回数は約三十億回を超えたとか。
昔から他人の不幸は蜜の味と言ったものだけど……あのバカ皇帝だと同情する奴なんか誰もいないわよね💛
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)


冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる