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第三章 ドワーフ国騒乱!
その十五 エルスの涙
しおりを挟む唸るエルスの鞭が徐々にアンナとファブリーズを追い詰めていく。
正直攻撃力自体はアンナとファブリーズが上の筈。
しかし、エルスの鞭がそんな二人を翻弄する。
それに……どうもエルスには何やら訳ありだという事をアンナとファブリーズは察していた。
故に本気で戦う事を躊躇っていた。
しかし、アンナとファブリーズは気付いていなかった。
エルスは鞭を古いながら中枢部のマイクと監視カメラを破壊していた事に。
「エルスさん!貴方……まさか何か弱みを握られているのではないですか?」
「例えば……人質とかな」
「!?」
一瞬、エルスの動きが止まった!
どうやら図星みたいね。
恐らくエルスさんは自分の身内を人質に取られているのでは?
「やはりそうでしたか。ならば猶更こんな事はやめるべきです」
「……」
「その人質は何処だ?なんなら魔王軍の諜報員がすぐに救助して保護するぞ」
「ううっ」
エルスの目から涙がこぼれ落ちる。
そして……涙を流しながらエルスは再びアンナとファブリーズはへ悲しみの鞭を振るう。
「監視カメラとマイクは破壊しておいた。だから今から私は本心を放す……頼む!艦橋に捕まっている私の娘マリを救ってくれないか」
えっ?
今エルスさん何を言ったの?
マリ……その人がエルスさんの人質。
そして、その居場所は……この要塞の艦橋!
エルスは……自分の人質とその居場所をこっそりアンナとファブリーズに教えてくれた!
「やはりそうゆう事だったのね」
「そうよ!今は卑劣なヌーク大臣の手下に囚われているわ。そして私はどうする事もできないのよ!」
これは……明らかにエルスがアンナとファブリーズに密かに託したメッセージ。
二人共!
この悲痛な懇願に答えない訳にはいかないわよね!
「ファブリーズ」
「何かしら」
「ここは頼めないか。私はここの艦橋へ行き……彼女の娘を助け出す!」
「わかったわ。ここは任せて」
アンナは自分の甲冑に闘気を注ぐ!
そして……アンナはその姿を変身させる!
アンナ・ホーク
再び大鷲の姿へ変身したアンナは中枢部の天井をぶち破り一路、要塞の艦橋へ!
目的は捕らわれているエルスの娘・アンを救い出す事!
そして、中枢部に残ったファブリーズとエルス。
「すみませんがエルスさん。ここはアンナを信じて私達はさっさと要塞の全機能を停止させましょう」
「すまない。迷惑をかける……今なら奴等の監視がないからな」
はい、とりあえず要塞の全機能を停止させちゃいましょうね。
エルスさんも事実上私達の仲間になったしね。
「はい、それではスイッチを押しま~す「
ファブリーズが緊急停止ボタンに触れようとした瞬間!
なんと、別の扉からめんどくさい改造兵士がわんさか出てきたわ。
また他そしてないのがいたの?
「どうやら、すんなり物事通りにはいかないみたいですわね」
「すまぬ、あれもヌーク大臣の犠牲者だ。手を貸してくれるな」
「当然ですわ」
敵は面倒な改造兵士数百体。
ファブリーズの心境としては本当に厄介極まりない。
しかし眼前の化物を駆除……いや供養しないと要塞の機能停止は不可能だ。
こうしてファブリーズとエルスによる中枢部での戦闘が開始された。
一方、要塞の艦橋では?
「おい!中枢部の監視カメラが途絶したぞ」
「これではエルスの監視ができんではないか」
艦橋ではヌーク大臣の配下達が中枢部の監視カメラ破壊で大混乱。
監視対象のエルスを見失い驚く連中を後目に囚われのマリは高笑い。
「ははは……どうやら貴方達へ天罰が落ちる時が来たようですね。間もなくこの要塞は沈黙するでしょう」
「煩い!」
配下の一人がマリに殴りかかろうとした時!
艦橋の床が……凄まじい轟音と共にぶち破られ、そこから巨大な大鷲がその姿を現した。
そして大鷲は変身し……アンナの姿へ戻っていく。
「!?ここが艦橋……あれは!」
アンナの視線には複数の兵士と数名の大臣らしき連中。
そして鎖に繋がれた一人の少女の姿が。
間違いない。
彼女がエルスの娘のアンだ。
「魔王国正規軍左将軍紫陽花アンナ推参!その娘さんを即刻解放せよ!さもないと……」
我等がアンナ推参!
しかし……卑劣な大臣どもはマリを使って脅そうとする!
全くどこまでも卑劣な奴等なの!
「剣を捨てろ!さもないと女の命はないぞ」
「卑劣な」
「早く剣を捨てて手を上げろ!」
はぁ~っ、本当に典型的な小悪党のやり方ね。
だけど実直なアンナには結構友好なのが頭にくるわ。
でも小悪党の皆様、世の中そんなに甘くないわよ。
「は――っははははは!」
「!?何が可笑しい」
あれ?
何だかマリの様子がおかしいぞ。
具体的には……著しくキャラが違うって感じかな。
「お、お前はマリではないな!」
「――――今頃気付いたか」
するとアンの姿が変貌していく。
そして、マリの姿は……私達が知る黒装束の少女に。
正体を現した黒装束の少女……魔王国諜報部最強であるクロは自分を捕まえていた男の首を跳ねる!
アンナは一瞬驚くがすぐに気持ちを立て直して艦橋にいる兵士や大臣達を次々とぶっ飛ばす!
「クロ、お前も要塞に侵入していたのか」
「――――二人が任乳した時に……そして艦橋に忍び込んでこの現状を把握した」
「そういえば……クロがマリさんに化けていたという事は本物のマリさんは?」
「ここです」
なんと!艦橋のメンテナンスハッチが開き、中から本物のマリが姿を現した。
真理さんの話だと先程アンナがアンナ・ホークで艦橋へ突入した混乱に乗じてクロはマリを救出して入れ替わったのだ。
「いずれにしても、これでエルスさんも一安心だろう。私はまた中枢部へ戻りエルスさんへ娘さんの無事を伝えに行こうと思う」
「――――では私はマリさんを守りつつ、艦橋から要塞の機能を停止できないか試してみる」
「すみません、母上の事をお願いします。私は無事だと安心させてください」
「じゃあクロ、後は頼むぞ」
そして、再びアンナ・ホークは中枢部へ急ぐ!
もっとも……中枢部ではとんでもない事になっていたとは今のアンナは知る由も無かった!
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