太助と魔王

温水康弘

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第三章 ドワーフ国騒乱!

その十四 中枢部を守る強敵

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 さて、アンナとファブリーズが要塞奈部へ侵入したけど。
 現在私達はどうしてるかというと?

「うりゃあああああああああああああっ!」

 私は再び巨大化して超移動大要塞相手に大奮闘!
 もっとも相手は全長一キロもある巨大要塞。
 初戦伸長四十メートルぐらいにしか大きくなれない私ではマトモもダメージを与えられないわ。
 せめて展開しているバリヤーの内側に入れたらいいんだけど。
 今、巨大化してる状態でギガ・イレース使ったらすぐに私の魔力が枯渇するから使えないし。
 ちなみにアンナとファブリーズが率いていた陸戦部隊はミルク王女とボルトさんに指揮を委託して大砦内にいる残存戦力を倒すように頼んでいる。

「うわっ、当たってたまるか!」

 うわぁ危ない。
 要塞の連中、魔法縮退砲を私に向けて発射してきた!
 私はすぐに回避するんだけど……うわぁ、私の後ろで凄まじい魔法爆発!
 それは大きなクレーターが出来たみたい。
 こんなのマトモに受けたら無敵の私でも一たまりもないわ。
 だけど……これでいいの。
 今、私が巨大化して超移動大要塞を正面から相手にしてるのは……あくまで囮。
 可能な限り私の方へ敵の気を向けて今内部で暴れているアンナとファブリーズへの注意を反らすのが目的だから。

「さぁ、この魔王ヒカル・グレーズ様が直々に相手になるわ!そ~んなデカいだけの要塞に私が倒せる訳がないんだから」

 とにかく内部の破壊は頼むわよ……三人とも気を付けて!
 さて、一方内部に侵入しているアンナとファブリーズはというと?

「かなり奥まで来たわね」
「それにしても結構広い要塞だ。あれから要塞内の放送でヒカルが巨大化して外で暴れてるみたいだぞ」
「きっと魔王様が囮になってくれてるのですわ。道理で先程から守備している兵隊の姿が見えませんし」

 現在、無駄な闘気の消耗を避ける為にアンナ・ローラーの状態から元に戻りファブリーズと一緒に要塞の中枢を目指している。
 先程から私が外で暴れてるせいか先程から兵士の姿が見当たらない。

「アンナ……ちょっと待って!探査魔法で要塞のエネルギーの動きが激しい箇所を探ってみるわ」
「頼む。闇雲に探しても中枢にたどり着けないからな」

 ファブリーズは静かに魔法を詠唱。
 すると……ファブリーズの目にエネルギーの動きが見えた!

「あそこです!向こうにエネルギーの塊が見えます!」
「意外と近いな。よし!行くぞ」

 アンナとファブリーズはそのエネルギーの集まっている場所へ!
 そして……その考えはビンゴ!
 そこにはいかにも屈強そうな兵隊が複数名が防衛している。
 間違いない。
 あの防衛網の向こうが中枢だ。
 そして当然交戦開始!

「流石に中枢を防衛しているだけあってそれなりに出来る方々ですね」
「できれば別の形で出会いたかった……そして私達二人の敵ではないな!」

 流石は中枢を守るだけの事はあるみたいでドワーフの中でも強い部類の精鋭が防衛していた。
 しかし!
 その精鋭達も……この国士無双レベルといえる二人の魔王軍将軍の前では敵ではなかった。

「ファブリーズ」
「えぇ、流石に殺すには惜しい精鋭達ですわ。ただ仕える主君を間違えただけの事ですわ」

 流石に忠義溢れるドワーフの皆様を倒すのは私としても惜しいわね。
 さて、いよいよアンナとファブリーズは中枢部の中へ。

「これが中枢部」
「凄い魔力を感じます。あの魔法炉を破壊するか停止すれば」

 それにしても凄い魔力量を有している魔法炉ね。
 この分だと迂闊に破壊すると炉に充満している魔力が暴走して要塞は愚かこの辺一帯は跡形も無く消滅よ。
 となると何処かにある魔法炉の停止スイッチを探すしかないわね。

「お~い!もしかして……この大きなスイッチじゃないか」
「!?間違いありませんわ。これは緊急用の停止スイッチみたいですわ」
「じゃあ、さっさと押してしまおうぜ」

 やれやれ、どうやら緊急停止用のスイッチがあるみたいね。
 アンナ、ファブリーズ!
 さっさとそれを押して要塞の機能を停止させて。
 正直私ももう長くは持たないわ。

「では……ポチッっとな!」

 アンナがスイッチを押そうとした時であった!
 突如、アンナへ向けて大斧が飛んできた!
 咄嗟にアンナは回避。
 何があったのかと二人が後を向いて見ると?

「な、なんだあれは?」
「あれは……まさか」

 アンナとファブリーズが見たものは……漆黒の強化服を身に纏った超移動大要塞の司令官・エルス大臣であった!

「この要塞を荒らした侵入者はお前達か」
「お、お前は確かエルス大臣!」
「そうだ……我こそはドワーフ国のエルスだっ!」

 あらら、敵の大将が直々に出陣とは……これはこちらもそれ相応の礼儀で応じないとね。

「魔王国正規軍右将軍ファブリーズと申します」
「同じく左将軍紫陽花アンナだ。エルス殿……もし願わくば潔く降伏して武装解除を願いたい」

 アンナの降伏勧告にエルスは少しの間沈黙する。
 だが、エルスは其の手に鞭を手にして、こう言い放つ。

「すまぬ!私にも戦わなければならぬ理由があるのだ」
「エルス殿」
「いざ尋常に勝負!」

 エルスはその鞭を古いアンナとファブリーズに襲い掛かる!
 仕方がないとばかりにアンナは剣を握りしめファブリーズも総部している手甲に魔力を込めて戦闘態勢を取る!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ」
「ふん!」

 アンナは剣をエルスに振り下ろすが剣はエルスの鞭にはじかれて防御されてしまう。
 そこへファブリーズがエルスへ殴りかかろうとするが……エルスの鞭裁きは凄まじく迂闊に近づけない。
 流石のアンナとファブリーズも……まさか自分達と互角に戦える存在がこの世に存在していた事に驚きを隠せない。

「つ、強い」
「あの鞭裁き……明らかにあれはマスタークラスの実力ですわ」
「どうしたのかしら?それが魔王軍最強の二人の実力とは……正直がっかりですわ」

 まさか、あのアンナとファブリーズがここまで苦戦するとは。
 本当に世の中は広いものね。

「何故だ……お前程の女がどうしてあの逆賊ヌークに従っている?」
「戦ってみて判りましたが、貴方は悪い人ではないのでは?」
「何を言う?私はお前達の敵だそ」

 現状あの二人相手にここまで戦えるエルスが有利な状況。
 しかし、ファブリーズはそんなエルスの本質を見抜いている感じであった。
 彼女は決して悪人ではない。
 なら何故にこのような悪事に手を染めているのか?
 それは……要塞の艦橋にいる人物が関係していた。

「お母様!もうヌークに従ってはいけません。すぐに降伏して要塞の停止スイッチを……」
「煩い!」
「ああっ」

 環境の片隅で一人のドワーフの少女が鎖に繋がれている。
 そしてその少女は複数の小汚い大臣達に囲まれて痛めつけられている。
 少女の名はマリ。
 エルス大臣の一人娘である。
 もう皆様はお察しであろう。
 エルス大臣は一人娘のマリを人質にされておりヌーク大臣の言いなりにされていたのである!
 それにしてもなんと卑劣な。




 こうなると……何とかできるのは彼女しかいない!
 絶対にエルス大臣の娘さんを助けてあげて!





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