太助と魔王

温水康弘

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第三章 ドワーフ国騒乱!

その十 大砦攻防戦は大混戦!

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「いやぁ、ヒカルちゃん派手にやってるなぁ」
「しかし……宰相様も思い切った事を。まさか魔王様にあのような目立つ役割をさせるとは」
「はは、ヒカルちゃんって結構目立つの好きだからね。ある意味定在適所だよ」

 さて、ここは敵の大砦から少し離れた場所にある我が魔王国陣営。
 ここでは太助とルルとローブが総司令官として指揮を執っている。
 そして現在の線所での状況は巨大なリンクミラーで投影されているわ。

「おっ、ヒカルちゃん難なく北口ぶっ壊しちゃったよ。しかも敵さん必死に抵抗してるみたいだけど……」
「あの巨大魔王様には打つ手なしみたいですわ。初戦、蟻が群れても巨大な存在には勝てないという処でしょうか」

 無駄無駄無駄~っ!
 この無敵の私を阻む奴なんか存在しないんだから。
 唯一の不安要素は例の超移動大要塞ぐらいかしら。

「宰相様、そろそろ頃合いかと」
「そうだね!では北口へ陸戦部隊を突入させよう」
「では……待機中の陸戦部隊に突入命令!最優先事項はとらわれているドワーフ国の国民の救助!」

 ルルが手にしたリンクミラーで大砦近くで待機している各陸戦部隊へ突入指令!
 その陸戦部隊を現場指揮をするのは……この三人!

「いよっしゃぁ!総員突入だ」
「アンナ、あくまで最優先事項はドワーフの救助だという事を忘れずに」
「わかってるよ、ファブリーズ」
「すまぬ、今回は我が国の配下も作戦に参加するので……」
「気にしないでくださいミルク王女。でも大丈夫ですか?宰相様が我が国の正規軍の一部をお貸ししてもいいと申してましたが」
「いや、これは元々我がドワーフ国の問題だ。故に我々は独自にドワーフだけの部隊で参加させてもらう」

 今回の陸戦部隊は三部隊。
 まずはアンナが指揮する千人の精鋭。
 続いてファブリーズが指揮する千人の精鋭。
 ちなみに今回連れてきた残り千人は万が一の予備戦力として温存だ。
 それに陣を敷いている太助達の防衛の事もあるしね。
 そして最後の一部隊だが……ミルク王女が指揮を執り構成員はボルト将軍を始め現在最後まで生き残っている百人のドワーフ族の精鋭達だ。
 流石に明らかにミルクの部隊の戦力が少ないので戦力を分け与えたいと申し出たのだがミルクとボルトさんが断った。
 
「ではミルク王女の部隊は捕らえられているドワーフ国の民衆の救助を最優先に動いてください」
「そして私とファブリーズの部隊がミルク王女の邪魔をする連中を排除してやるぜ」
「それと可能なら例の改造兵士を作っている施設を破壊せよと宰相様からのお達しです。あの非人道的な施設は即刻破壊するのが一番だとの事です」
「そうだ!あの超移動大要塞って奴も……ってアレ見つけtら多分ウチのヒカルがぶっ潰すか」
「アンナ殿、ファブリーズ殿……忝い。では参ろうか戦場へ」

 そして再び敵の大砦へ。
 相変わらず巨大な私が蟻のような兵隊さん達とご遊戯中!
 だから無駄だって。
 武器だろうが魔法だろうが……今の私には通用しないと言ってるでしょう。
 そして……更に追い打ちで~す💛

「大変ですエルス大臣様!北口の向こう側から軍勢が……あの旗は魔王国です!」
「見るからにその総数は約二千!凄まじい勢いで北口を突破してきます」
「魔王国の魔王軍だと!撃てっ迎え撃て!それと例の改造兵士を出せっ」

 だけど時既に遅し!
 我が魔王軍の陸戦部隊はそれぞれ加速魔法を用いて疾風迅雷の如く北口なんか突き抜けて大砦内部へ突入だぁ~っ!
 ただでさえ巨大な私で浮足立ってるのに……これはもう終わったかしら。

「魔王軍右将軍ファブリーズここにありですわ!すぐに冥府へ赴きたいのでしたら……お相手いたしますわ」
「同じく左将軍紫陽花アンナ推参!命が惜しくないなら来るがいい!」

 あらら、この二人ったら敵陣に突入早々張り切っちゃって。
 早速命知らずの兵隊達や仕官の皆様が遥か遠くへぶっ飛ばされてるわ。
 しかもこの二人の将軍だけじゃなくて……ウチの精鋭達も凄いのなんの!
 流石は一人一人が一騎当千の実力者揃いの正規軍の皆様。
 この大砦にいる皆様ではもう話になりませんねぇ。
 だけど……ここで終わるエルス大臣じゃなかったわ。

「!?ファブリーズ」
「えぇ……やはり現れましたか。可哀そうな方々が」

 砦の中央にある建物から出てきましたわよ……この一見の被害者でもある改造兵士の皆様が。
 その数は……訳一万人近く。
 つまり、既に一万人以上のドワーフの民が犠牲になったという事である。
 外道め。

「よ~し、この可哀そうな人達を成仏させる為にみつぶしてやるかって……あれ?」

 あれ?
 どうゆう訳か少し私の伸長が若干縮んだ感じが。
 そこへ本陣にいる太助から魔法通信が。

(ヒカルちゃん!そろそろ巨大化魔法の効力が切れる頃だ。ここはアンナ姉ちゃんとファブリーズに増させて一旦退却して)

 くそ~っ!
 こんな時に魔力切れとは。
 アンナ、ファブリーズ……ここは任せたわよ!

 シュワッチ!

 私は飛行魔法を行使して太助の待つ本陣へ退却。
 無論魔力消費の事を考えて帰路の途中で元の大きさへ。
 この状況にエルス大臣は一安心した様子。

「とりあえずあのデカ物はいなくなったか。となると残るは地上にいる魔王軍を蹴散らせば言い訳よ」

 エルス大臣は其の手に大きな杖を手にして……一万近くいえる改造兵士に指令を出す!

「無敵の改造兵士よ!侵入者どもを殲滅せよ。一人残らずな」

 あちゃ~っ。
 私が魔力切れで引いたのをいい事にアンナ達正規軍へ改造兵士の群れを襲わせてきたわ!

「くそっ、体内にあるコアを破壊すれば倒せるのだが……コイツ等前に戦った時よりも強くなってるぞ」
「しかもコアが埋め込んでいる箇所もランダムに変えてるみたいで……はぁ、ようやく一人目倒せたわ」

 う~ん。
 どうやら連中もバカではなかったみたいね。
 基本的な身体能力は著しく向上してる上に急所であるコアも個体ごとに様々な箇所に埋め込んでるから狙いが定まらない。
 こりゃいくら一騎当千揃いの陸戦部隊も必要以上に疲労するわね。
 この様子を本陣でモニターしていた太助とローブ。

「太助……敵も考えてるぞ。どうするんだ?」
「想定内だね。まず僕だったらこうしてるけどね。だが!」
「えっ?」
「ルル、すぐに航空魔導士部隊を出撃だ。連中の倒し方は判ってるね」
「はい!仰せのままに」



「エルス大臣様、北の上空から複数の魔導士らしいのが飛来してきます!」
「くっ、あれが噂の航空魔導士部隊か。だが……いくら空から攻撃しようとも我が改造兵士の敵ではないわ」

 これは余裕ぶってますねぇエルス大臣さん。
 では航空魔導士部隊が到着したので……アンナとファブリーズの部隊は一旦引け――――っ!
 さもないと魔導士部隊による爆撃に巻き込まれちゃうぞ。

「敵の陸戦部隊が退却していきます」
「陸からの攻撃を諦めて空から攻撃か。ならば改造兵士に弓を装備させよ!一人残らず撃ち落としてやる」

 おやおや、改造兵士の皆様はエルス大臣の命令で弓矢に持ち替えたみたい。
 まぁ、これは太助も想定内でしょうが。

「やっぱり弓矢装備か。では……ルルさん手筈通りに」
「では魔導士部隊……手筈通りに殲滅開始です!」

 本陣にいるルルがリンクミラーで魔導士の一人に連絡。
 すると……数名の上空にいる魔導士が何やら詠唱を。
 はい、これで準備完了で~す💛



 エリア・サーチ





 すると大砦中にいる改造兵士の体の一部が光り出す。
 そう!
 今、改造兵士の光っておる箇所は……他でもない奴等の急所であるコア!
 それを見た魔導士の一人が号令を出す!

「総員、あの輝いている部分を狙えっ!そこが奴等の急所だ」

 はい、こうなると一方的でございます。
 上空から貫通効果のあるマジックアローやマジックミサイルによる雨あられ。
 いくら魔法耐性があるといっても我が魔王国の魔導士レベルになれば改造兵士如きの魔法耐性なんか意味が無いわよ。
 魔法のレベルが違いすぎるのよ!
 レベルが!
 おまけに改造兵士が弓矢で迎撃しようとしてるけど……航空魔導士部隊って弓矢の射程距離外から攻撃してるから結局無意味~っ💛

 はいっ、気が付けばドワーフ国暫定国政が誇る改造兵士は全く打つ手無しで全滅と相成りました。

「う、嘘でしょう……我が改造兵士が全滅?」

 あ~あ、エルス大臣さんお気の毒。 
 完全に顔が引きつっているわねぇ。
 そこへ追い打ちとばかりにアンナとファブリーズが率いる陸戦部隊が再突入!
 これでこの大砦が陥落するのも時間の問題ね💛




「まだだ……こうなったら超移動大要塞を起動して皆殺しにしてやる!」






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