太助と魔王

温水康弘

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第三章 ドワーフ国騒乱!

その九 救出作戦開始!

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 次の日。
 私達は作戦準備を急いでいた。
 既にクロと数名の配下が先行して例の改造兵士生産設備と超移動大要塞の建造現場を偵察しに行っている。
 私もコショウ問屋の衣装ではなく魔王国の魔王としての戦闘用の正装を身に着けて装備の最終確認だ。

「あれ?ヒカルちゃんの戦闘服……新しくなってるね」
「うん!ロイドが作ってくれたものよ。前のより魔法耐性や物理体制が良くなっている上に巨大化しても破けずに同じ大きさになってくれるの」
「はは……じゃあ前の人間国の時のように巨大化したら全裸になる事はないんだね」
「まぁね」

 更に私は無限バックから一本の杖を取り出した。
 これが私の新しい武装だ。

「今度は剣じゃないんだ」
「私って本質的に魔法使いでしょう。だから魔法の威力が向上する杖を用意してもらったの。それに……」

 私は手にした杖に魔力を込める。
 すると杖が閃光に包まれる。
 まるで魔力で形成された剣のようだ。

「これって任意で魔法剣にもなるんだ。凄いでしょう太助」
「本当に僕達……戦争をやるんだね」
「そりゃ今回はこっちから仕掛けないとね」

 そう、今回は避けられない戦争だ。
 ルルからの連絡だと後三時間程で正規軍の精鋭がここに到着する。
 間もなくノーズ山脈は戦場になる。
 これには私と太助にその配下達は勿論、ミルク王女やローブさん達ドワーフの皆様も覚悟はできている。
 私の戦闘準備が整った時、アンナとファブリーズが入って来た。

「失礼します魔王様に宰相様」
「入るぞヒカル、太助ちゃん」
「おっ、二人共装備が一新されてるみたいね」

 実はロイドから新装備を与えられたのは私だけではない。
 アンナとファブリーズも今度の戦いの為に装備を一新したのだ。
 ファブリーズは深紅の新たな戦闘服に右手に漆黒の手甲を装備している。

「この戦闘服は以前の物よりも桁違いに耐久力が向上してる上に魔法能力を向上させる効果もあるのですわ」
「ロイドも相当気合を入れて作ったのね」
「そして、この手甲は魔力を込めたら通常の数倍の破壊力を発揮するそうです。魔王様、このファブリーズ必ずご期待に応えてご覧に入れます」

 これは頼もしい右将軍ね。
 そういえばアンナの方も装備が一新されてるわね。
 見るからにアンナの白い甲冑……なんか違和感を感じるのよね。
 まさかロイドの奴、何か仕掛けでもしてるんじゃないの?

「ふふふ、さてはヒカルはこの甲冑に仕掛けがあると考えてますね」
「あのロイドの事だからね」
「答えを言えば図星です。この甲冑には私の闘気に反応して……これは百聞は一見に如かず!実際に見てからの楽しみです」

 ろ、ロイド……一体アンナにどんな機能を持つ甲冑を与えたのかしら?
 
「どうだ?準備は出来てるかヒカル」
「あっ、ミルク」
「流石に戦場へ赴くのに全裸ではないみたいだな」

 一方のミルク王女はドワーフ職人お手製による最上級品の革製防具みたいだ。
 耐久力は金属製の防具よりは劣るが動きやすい上に上級魔法に対する体制も備わっているそうだ。
 そして勿論、武器は愛用の大斧だ。

「それにしても皆揃って気合が入ってるね」
「そうゆう太助こそ新しい服を着て……太助も戦う気?」
「まさか!だけどね、この服は各種防御魔法や探査・連絡とかの魔法を常時使用できる特別性なんだ」
「そうかぁ、賊に言う指揮官用の防備なんだ。ある意味太助にピッタリね」

 ロイドったら太助にもそんな装備を。
 という訳で太助、指揮とナビゲートは頼むわよ。

 それから私達は戦闘準備を整えた後に全ての簡易ハウスを収納して出陣準備。
 さて……時間的にそろそろかな?

「おい!何だあのワイバーンの群れは」
「ふふふ……どうやら来たみたいね」

 丁度、魔王国のある方向から多数のワイバーンの群れが!
 そしてワイバーンの群れは私達の前で着陸。

「魔王様!お待たせしました」
「待ってたわよルル」
「はいっ!正規軍陸戦部隊三千人、航空魔導士部隊五千人、只今到着しました」
「うんうん!本当に助かるわ。ではそろそろ……」

 我が魔王国の精鋭八千人が到着~っ!
 これだけあれば前提国政の改造兵士なんか怖くないわね。

「おいヒカル」
「何よミルク」
「正直八千人だけでは不安だと思うが?これだけの兵力で大丈夫なのか」
「それについては心配無用よ。我が魔王国の正規軍は精鋭中の精鋭揃いよ。何しろ正規兵一人だけでも一騎当千の実力なんだから」

 私とアンナとファブリーズの能力の凄さで忘れがちだけど我が正規軍の兵士は無茶苦茶強いのよ。
 本当は今回来た正規軍の半分でも十二分なのよね。
 だけど今回は超移動大要塞の存在が不安要素になってるからこれだけの兵力を容易した訳。

「では……そろそろ敵の根拠地をぶっ潰しに行こうか!それで作戦なんだけどヒカルちゃん」
「何かしら太助」
「奇襲は出来るだけ大胆で奇抜な方がいいよ。だからヒカルちゅんに一つお願いが……」



 さて、場所は変わってノーズ山脈の某所にある暫定国政の大砦。
 そこでの見張りらしい兵士達が見回りしてる最中。
 まぁ、毎度あんなクズ連中にこき使われてお疲れ様ですねぇ。

「いよいよあの要塞が完成したら魔王国へ進撃か」
「それと……本当に可愛そうな貧民どもだな。人体改造されて化物にされるんだらな」
「しかも改造されたら最後、二度と元には戻れずに俺達の命令だけを聞く奴隷以下の兵隊にされるんだからな」
「魔王国の魔族ドモも驚くだろうな。何しろ体内のコアを破壊されない限り何度でも蘇る意思のない化物だからな」
「これで魔族の下等生物もおしまいだな」

 かぁ~っ!
 この頭の腐った暫定国政のバカ仕官どもめ。
 好き勝手に言いやがって。
 今に見てなさい。
 我が魔王国の力を思い知らせてやるんだから!




 エクスプロージョン

  


 はい、大砦で炸裂する爆裂魔法!
 当然これにより凄まじい大爆発が大砦の壁面を景気よくぶっ飛ばす!
 ふふふ、これはほんの挨拶代わりよぉ💛

「何事だ!」
「敵襲だっ!総員戦闘態勢をとれっ」
「畜生っ、何処から攻撃してきた!」

 はい挨拶代わりのエクスプロージョンで大砦の連中は阿鼻叫喚の大騒ぎ!
 だ・け・ど!
 これは貴方達が破滅するプロローグにすぎないんだから!
 そこへ大砦の責任者らしき女が出てきたわ。
 こいつ……確かエルス大臣だったっけ。

「落ち着け!すぐに体制を整えろっ。それと改造済みの改造兵士の出撃準備急げ」

 あらら、流石は腐っても現場指揮官。
 すぐに錯乱している仕官達を落ち着かせたみたい。
 だけど……貴方達が破滅する物語はまだほんのプロローグよ。
 はい、間髪入れずに第二弾!

「た、大変ですエルス様」
「どうした?」
「砦の北口の方から……巨人が!巨人が現れました」
「なんだと!」

 はい、こちらは大砦の北口でございま~す!
 にゃはっはっはっはっ!
 その北口前には……全長四十メートルの女の子が現れました~っ。
 もう言うまでも無いけど……この美少女大巨人はこの私!
 魔王国の魔王ヒカル・グレーズよ💛
 アンタ達が喧嘩売ろうとしている魔王国の魔王様が自ら鉄槌を下しに来たわよ!
 これを見たエルス大臣はそれはもう仰天!
 顔を引きつらせながら仕官達に無謀なご命令!





「何をしている!攻撃だっ、あれは魔王国の魔王だ……絶対に逃がすな!」






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