太助と魔王

温水康弘

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第三章 ドワーフ国騒乱!

その七 タダより高い見返りはありません!

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「どう?少しは落ち着いた」
「うむ、まさか一流ホテルの一室のような設備が揃っている持ち運びできる簡易ハウスとはな」
「これぞ我が魔王国の技術陣の賜物よ」

 現在、私達はミルク王女とローブと合流してノーズ山脈の奥地で複数の簡易ハウスを用いてキャンプをしている。
 何しろこの簡易ハウスは風呂に食堂、更に大きなベットも完備している豪華仕様だ。
 これにはミルク王女とローブ、それにボルトさんとその配下達も大満足だ。
 
「それにしてもズルいぞヒカル。こんな充実したハウスがあるとはな。タダとは言わないからこのハウスを私に譲ってくれ」
「それは……私の太助と貴方の相棒との交渉次第ね」

 私達が和気藹々としている間、太助とローブが今回の救援に関する話をしていた。
 まぁ、流石に我が魔王国に助けを求める訳だから……タダって訳にはいかないわよね。

「魔王国宰相殿、魔王国が要求する見返りに関しては承知しました。ですが承知の通り現在我が国の実験は……」
「見返りはこの国を正常な状態に戻してからで結構ですよ。それより今回発生すると思われる戦争賠償についてですが」
「そうですね。正直ミルク王女と私には戦争賠償は支払えませんよ。それとも魔王国はあの見返りの他に何かお望みですか」
「ははは、流石にミルク様からは賠償金は要求しませんよ。要求するのは例の暫定国政を仕切っている大臣達の財産ですね」
「成程、あの大臣達からなら相当搾り取れる筈ですね」
「勿論その搾り取った金は全額はいりませんよ。そうですね……三分の一ぐらいは魔王国が頂いて残りはドワーフ国復興に使ってください」
「てっきり全額搾り取ると思ってましたが……それに関しては助かります」
「僕達は決してハイエナではありませんから。ですがあの暫定国政を潰すのが前提ですが」

 さて、私達魔王国がドワーフ国のミルク王女への国政奪回の手助けをする事になりましたが。
 その見返りとして……現在ドワーフ国で盛んな牛と豚の家畜飼育技術の無償提供と数百匹の牛と豚の提供だ。
 更に生意気にも我が魔王国へ戦争を仕掛けようとした暫定国政のヌーク大臣を始めとする幹部どもに賠償金として全財産没収だ。
 もっとも没収した賠償金の三分の二はドワーフ国の立て直しとして用いる事になる訳ですが。
 他にも要求したい事があるが……それはドワーフ国が元通りになった後になりそうね。

「では……よろしくお願いします、ローブ宰相」
「こちらこそ必ず魔王国の要求に答えられるに頑張ります。それと今の僕は宰相ではありませんよ」
「いいえ、貴方こそドワーフ国の宰相です」

 太助とローブは互いに手を繋ぎ打倒・暫定国政を誓い合った。
 確かにあの暫定国政ではドワーフ国の為にならないし魔王国にとってもデメリットにしかならないしね。

「ヒカルちゃん、とりあえず話が纏まったよ」
「お疲れ様、太助……チュッ💛」
「おやおや!ヒカルって結婚したとは聞いてたけど実に頭の良さそうな旦那様ね」
「あ~れ?そうゆうミルクにもいるじゃないの……最高の宰相様が」
「???」

 ん?
 今の私の言葉でミルクは少し顔が赤くなってるけど……一方のローブさんは何処かねぇ。
 相手が王女とか身分地代だとかで遠慮しているのか。
 それともただ鈍いだけなのか。
 いずれにしても、こうゆうのが相手だとミルクも苦労しそうだなぁ。

「そうだ!今日は私が夕食を作るとするか!」
「えっ?ミルクが」
「今夜は……ヒカル達やボルトの配下達も楽しめるのがいいかな……ねぇヒカル!」
「何よ」
「大きな鉄板は無い?それも出来るだけ大きいの!」

 まぁ……前にロイドが作って献上してくれた大きな料理用の鉄板ならあるけど。
 だけどあれって大きいからせいぜい大きなドラゴンの肉を焼くぐらいしか使い道無いんだけど。
 ミルク……まさかドラゴンの肉でも焼くつもりかしら?

「とりあえずハウスの外に鉄板出して火も点けたわよ。ミルク……これから何を焼くつもり?」
「ヒカル!今夜は皆で焼肉よ。しかも……肉は牛肉よ」

 えっ?
 魔王国では食べられない筈の牛肉だって!
 まぁ、ドワーフ国では牛肉は珍しくないわね。
 
「アンナ姉ちゃん……牛肉の焼肉だって」
「牛肉による焼肉とはこっちの世界に来てからは初めてよね太助ちゃん」

 うわぁ。
 なんか太助とアンナの目がギラギラしているような。
 しかも二人揃ってよだれが雪崩のように出てるわよ。
 そういえば太助とアンナって別の世界から来たんだった。
 二人が元いた世界では牛肉は当たり前だったのかな?
 そこへミルクと配下数名が均等に切った牛肉と野菜を持ってきた。
 ちなみにこの食材はミルクが砦を出る際に持ち出したもの。
 そしてミルクは火の通った大きな鉄板の上に牛肉と野菜を乗せて焼き始めた。

「うおおおおっ!これは……いい匂い」
「そうでしょうヒカル、これが牛肉の匂いよ」

 確かに負担食べている鶏肉では味わえない匂い。
 これは確かにたまらない。

「では……そろそろ食べましょうか!」
「う~ん、これはいい焼け具合。食欲がそそりますねぇ」

 それでは……ミルクが用意していたタレを焼けた肉につけて頂こうとした時!

「「ちょっと待った~っ!」」
「あれ?太助にアンナどうしたの?」
「いやぁ、やっぱり焼肉にはこれと一緒じゃないとな!」
「お茶碗は人数分あるから大丈夫だよ」

 なんと、太助とアンナが持ってきたのは大きなお釜。
 お釜の中にはふっくらとした白いご飯!
 太助とアンナは私達にご飯を用意。

「では……皆様にご飯が用意された事で、では皆様美味しい焼肉を頂きましょう」

 そして、ようやく太助の挨拶でノーズ山脈某所にて盛大な焼肉パーティーが始まった。
 どれどれ?
 これは!白いご飯に焼肉って本当に愛称がいいわぁ💛
 これには私は勿論、ミルクにローブ、ボルトさんにその配下達も大好評!
 美味いっ!
 これは確かに食が進む!
 ファブリーズもこれはとばかりにご飯と組み合わせて大喚起!
  
「酒だ~っ!酒持ってこ~い!」
「ファブリーズ、先程からドワーフが用意したウォッカ飲みすぎよ」
「魔王様~っ、このウォッカって酒、いいですよぉ……まるで天に上るような気分ですわ」
「あちゃ~っ、完全に酔っぱらってるわ」

 なんかウォッカって著しくキツそうな酒みたい。
 私は遠慮しておこう。
 ん?
 あれは太助とアンナじゃないの。
 何か二人揃って泣きながら焼肉食べてるみたいだけど。

「ううっ、これだよ!これが牛肉だよ」
「久々に食べた……もう鶏肉は食べ飽きてた処だったからな」

 あらら。
 この分だと前にいた世界の事でも思い出してるのかしら?
 今の二人を邪魔するのは野暮ね。

 あれ?
 ミルクとローブが互いにウォッカ飲んで何か話してる。

「ローブ!そんなに私に魅力がないの~っ!」
「……」
「おい!さっきからダンマリして……なんか言ったらどうだっ」
「……」

 ミルクが自分の事訴えてるのにローブは先程からダンマリ。
 あ~っ情けない。
 いい加減ミルクの気持ちを……ってローブさん?

「……スースー」

 あらら。
 どうやら寝てるみたい。
 可哀そうなミルク、またしても空回りですか。
 ローブさんって意外と酒が弱かったようで。
 
 それから暫く焼肉パーティーが続いた訳ですが。
 気が付けば……いつの間にパーティーに加わっていた娘が一人!

「――――牛肉はいつ以来か。やはり美味だな」
「く、クロ……いつの間に」
「――――あっ、魔王様」
「魔王様じゃないでしょう。その様子だと何か掴んだみたいね」
「――――今の状況では報告を行うのは不適切と思われます。報告はこのパーティーが終わり落ち着いてからにします」

 まぁ、今はその方がいいわね。
 クロからの報告はパーティーが終わって皆の酔いがさめてからでも遅くはなさそう。
 だけど……私だけには今話して。
 幸い今の私は素面だし。




 それからパーティーは数時間程続いた。
 だけど、その間に私はクロから衝撃の事実を知る。
 こりゃ明日は荒れそうね。





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