太助と魔王

温水康弘

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第三章 ドワーフ国騒乱!

その六 不死身の兵隊をぶっ飛ばせ!

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 という訳で私はミルクの助太刀として参上した訳だけど。
 いやぁ。
 この包囲している不気味な兵隊どもが結構厄介だったようで。

「うりゃっ」

 まずは兵士の一人を私の鉄拳でぶっ飛ばす!
 当然その兵士はぶっ飛ぶ訳だけど……その兵士ったら私の鉄拳受けてすぐに立ち上がってきたのよねぇ。

「あちゃ~っ、結構タフね」
「ヒカル!気を付けて。コイツ等には魔法は通じないし私の斬撃でもすぐに再生してくるわ」

 えっ?
 原則魔法も直接攻撃も駄目って事?
 しかも、その場にいたローブ曰く。

「しかもコイツ等はアンデットではないから浄化魔法も受け付けない。正に不死身の兵隊だ」

 おいぃマジですか。
 本当に面倒な連中ね。
 幸いコイツ等の技量は恐れるに足りないけど、このままではいずれ追いつめられるわね。
 そこへ……はい援軍!

「まお……お嬢様、単独行動は駄目ですよ」
「お嬢様!こいつ等始末してもいいですね」

 ここで私のお供であるアンナとリーズが登場。
 
「二人共気を付けて!こいつ等には魔法や直接攻撃は通じないわよ」

 私はアンナとリーズに忠告するが……どうもこの脳筋のコンビには聞く耳は無いみたい。

「お嬢様……ご安心ください」

 あれ?
 何も考えてないアンナとは違ってリーズには何か考えがあるみたいね。
 リーズはそのまま三人の兵士に襲われる。
 しかし、リーズはその兵士の攻撃を軽々と回避。
 一瞬の隙を突き兵士の一人の胸部へ必殺の手刀を叩きこむ!
 リーズの手刀は兵士の胸の中へ!

「やはり!」

 なんとリーズは兵士の胸の中から不気味に輝く緑色の塊をえぐり出した。
 すると、緑色の塊を抜かれた兵士はその場に倒れて二度と動かなくなった。

「お嬢様!奴等の弱点は胸の中にあるこのコアです!」

 リーズは私達に兵士からえぐり出したコアを見せる。
 その後でリーズは手にしたコアを握りつぶして破壊!
 リーズ、よくやったわ。
 これで連中の弱点は判ったわ。

「そうか……弱点さえ判ればこっちのものだっ!」

 弱点判明と共にミルクの目に輝きが戻る!
 狙いは日石の胸部に埋め込まれたコア!
 ミルクはその大斧を力一杯振りかざし襲い来る兵士達の胸部目掛けて横一文字に斬撃!

「六人中……四人は手ごたえあり!」

 襲ってきた兵士六人中、四人はコアの破壊に成功したらしく二度と起き上がる事は無かったが仕損じた二人は切断された箇所をくっつけてまた襲ってくる。
 一方のアンナとリーズも片っ端から襲い来る兵士に埋め込まれたコアを粉砕もしくは切断して撃破していく。
 だが、やはり兵士の数が著しく多すぎる。
 いくら弱点が判明してるといっても多勢に無勢だ。

「これは面倒ね。こうなったら……一気にいくわよ」

 こうなると……私の出番ね。

「アンナ、リーズ!できるだけ連中を一か所に集めてくれる?」
「「了解!」」

 アンナとリーズは私の指示通りに兵士達を一か所に集めていく。
 こうゆう時はこの二人の無敵レベルの強さが役に立つわ。
 兵士達はアンナとリーズの強さに成す術が無いままほぼ全員一か所に集められたわ。
 よ~し!ここからは私の出番ね。
 
「ふふふ!ここは一発私の最上級魔法で一挙に処分してあげるわ」
「えっ?ヒカル、あいつ等に生半端な魔法は通じないわよ。ここは地道に連中のコアを破壊したほうが」
「言ったでしょうミルク!一挙に処分するって」

 では、自称・不死身の兵隊の皆様!
 これより私が一気に消滅してあげま~す💛

 我は今望む。
 我の前にいる者を闇の光の粒へ消し去り給え。
 出でよ闇夜の鉄槌よ!


 はい、私の最強魔法の一つのお披露目よ!
 ミルク、私の力を見てなさい。


 さぁ、今こそ救えぬその体と魂を闇の光にして消し去り給え!
 全ては闇の神の祝福と共に!




 ギガ・イレース




 はい、自称・不死身の兵隊の真上に漆黒のエネルギーの塊がゆっくりと!
 落ちていく落ちていく落ちていく!
 流石にこの漆黒のエネルギーの塊を受けては自称・不死身の兵隊もか・た・な・し!
 連中は体内のコアごと完全に消滅していったわ。
 最後に残るは地面にでっかいクレーター。
 やっぱり、私って最強で無敵ねぇ💛

「お~い、ヒカ……じゃなかったお嬢様~っ」
「あっ、助さん💛」

 そこへボルトさんに連れられて太助……いや助さんが駆けつけてきた。
 大丈夫だよ。
 もう片付いたから。

「ミルク様、ローブ様ご無事で」
「ボルト!無事だったのね」
「はい、なんとか任部を果たして戻ってきました……ですがもうこの砦は使い物になりませんね」
「恐らくあの不死身の兵隊は暫定国政の手の物ね。それにしてもあんな兵士を……ヌークは何を考えてるのかしら」

 ミルクが推測通りあの兵士を作ったのが暫定国政だとしたら完全に人の道を踏み外した行為ね。
 もし、あの自称・不死身の兵隊どもが魔王国へ攻め込んだら面倒な事になりそうね。

「さ~て、助けてくれてありがとうね。魔王国の魔王ヒカル・グレーズ様!」
「えっ?私はお節介なコショウ問屋の一人娘……」
「とぼけても無駄よ。商人の娘があんなとんでもない最上級魔法なんか使える訳がないでしょう!ヒカル」

 あらら、どうやらミルクには完全に正体を見破れてるようで。
 こうなったら潔く正体を明かすしかないわね。

「魔王国の魔王ヒカル・グレーズよ。ドワーフ国の王女ミルク……義により助けに来たわ」
「私は魔王国正規軍左将軍の紫陽花アンナだ。今回は魔王の護衛ておして同行している」
「同じく魔王国正規軍右将軍ファブリーズでございます」

 そして最後に紹介するのは当然。

「魔王国宰相の百合太助です」
「君が魔王国の宰相か。僕はドワーフ国の元宰相のローブです」
「貴方が……是非一度お会いしたかったです」

 あれ?
 そういえばクロはどうしたの。

「太助、クロがいないみたいだけど」
「クロだったら近くに怪しい奴がいたから追いかけて行ったよ。多分あの兵士達を裏で操っていた奴だと思う」
「成程、あの兵士達には何処か自分の意志が無い感じがしたからね」
「多分、僕達の介入でミルク王女暗殺に失敗したから……今頃この一見の黒幕と接触してる可能性が高いよ」

 えっ?
 黒幕へ報告だって?
 となると……私達ここに留まるのは危険だわ。

「ミルク、ここに留まるのは危険よ。すぐにここから離れた方がいいわ」
「えっ?ここを離れるといっても何処に行けばいいのよ。私達にはほかに逃げ場は無いわ」
「アンナ、予備の簡易ハウスを出せばここにいる全員収容できるよね」
「確かに可能だけど……問題は食料よ。三か月分あると言っても私達だけの分しか……」

 あちゃ~っ。
 私達の他にミルク・ローブ・ボルトの他に生き残ってるボルトさんの配下の事を考えると食料が厳しいか。

「食料か……確かこの砦の食糧庫が無事だった筈。それを運び出せば暫くは問題ないだろう」

 ミルク……それは助かるわ。
 じゃあ食糧庫にある食料を私の無限バックに入れたらなんとかなりそうね。
 えっ?無限バックみたいなのだったらミルクも持ってるの?
 じゃあ、砦の食料はミルクが持っていて。
 とにかく別の追っ手が来ない内にここからずらかるわよ。




 さて、一方で例の自称・不死身の兵隊を操っていた奴を追いかけてクロがたどり着いたのは?




「何っ、失敗しただと」
「申し訳ございません。思わぬ邪魔が入りまして」

 どうやら、ここはドワーフ国のお城。
 そこではヌーク大臣が誰かと話しているみたい。

「エルス、あの改造兵士は我々が魔王国へ攻め込む為の切り札だ。折角あの国王を抹殺して権力を手にしたというのに」
「奴等はコショウ問屋の連中だと言ってました。一体何者でしょう」
「そんな事はどうでもいい!それより改造兵士の増産と超移動大要塞の完成を急げ」

 そうか!
 やっぱり国王を暗殺してミルクに濡れ衣を着せたのはヌーク大臣だったのね。
 しかもドワーフ国を私物化して悪政三昧。
 更に人々を徴兵しては改造兵士にしたのもコイツの仕業かっ外道め!
 おまけにエルスという女大臣に命じて超移動大要塞なんてものを。

「――――外道。すぐに魔王様に知らせないと」

 以上、この一部始終を聞いていたクロ。
 この後、クロはこの場から離れて私達の元へ。





 さて、今回の黒幕がはっきりした訳だけど……これから色々と面倒な事になりそうね。






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