太助と魔王

温水康弘

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第三章 ドワーフ国騒乱!

その五 ミルク王女とローブ

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 さて、私達魔王ご一行とボルトさんと会合してから次の日。
 場所は変わってノーズ山脈にある既に放置されている廃墟当然の砦。
 そこの外で一人のドワーフ少女が巨大な斧を手にして振り回していた。
 そのドワーフ少女をよく見ると実に鍛え上げられた全身の筋肉が盛り上がっている。
 余程、長年厳しい鍛錬を続けた成果がその肉体に宿っているのだろう。

「九百九十八!九百九十九!……千っ!」

 これは凄い。
 あの斧の重量は確か十トンは下らない筈。
 それを旋回も素振りするとはとんでもない怪力を持つドワーフ少女だ。

「やぁ、ミルク……朝から鍛錬とは感心するね」
「おはようローブ。今日もいい天気だな」

 ドワーフ少女であるミルク王女の元へ同じくドワーフの少年であるローブが駆け寄ってきた。
 ローブの姿を見たミルクの表情は何処か明るい。
 そんなミルク王女にローブはコップに入った牛乳を手渡す。

「ありがとう」
「それで……ミルク、先程ボルトさんから伝令が来た。魔王ヒカル・グレーズがこのドワーフ国に来ているそうだ」
「えっ?ヒカルが」
「現在ボルトさんと合流してこちらに向かっているそうだ。もうすぐ会えるよ」
「そうか……あの小さな魔王がどう立派になったか本当に楽しみだわ」

 ふとミルク王女の表情が明るくなった。
 もうすぐ父親の最後の言葉にあった「魔王ヒカル・グレーズに会え」の意味。
 恐らく直接出会えばどうゆう意味をするのかがハッキリする筈だ。

「僕も是非会いたい人がいるんだ」
「魔王国の宰相である百合太助ね。相当な切れ者だという噂よ」
「しかも、あの史上最強といえる魔王の婿だものね。是非直接会って色々と話を聞きたいよ」
「おや?ドワーフで知恵者と評判のローブさんも気になる人がいるんだ」
「まぁ、報告だと彼もこのドワーフ国へ来ているみたいだし……是非著k説会って話がしたいよ」

 思えば、この二人はミルク王女の父親である国王暗殺の濡れ衣を着せられている。
 故に現在のドワーフ国に居場所は無い。
 しかも追われた後のドワーフ国はいい噂は聞かない。
 人々は徴兵されて、城下町の治安は悪化。
 おまけに新型麻薬の蔓延で狂人が町を徘徊している。
 しかもヌーク大臣が長になっている暫定国政は無謀にも魔王国へ戦争を仕掛けようとしている始末。
 ヌーク大臣は現在の魔王国の軍事力を把握していないのか?
 噂では飛行魔法を用いた航空魔導士部隊があるそうではないか。
 陸戦戦力が主体のドワーフ国の軍隊では……上空から一方的に爆撃されて惨敗されるのがオチだというのに。
 それとも……何か秘密裡に新兵器でも作っているのか?

「いずれにしてもヌーク大臣の動向が気になるね」
「まさか……父上を殺害したのはヌーク?」
「まだ結論を出すのは早いよ。亡くなった国王には結構敵が多かったからね。まぁ流石に魔王国の仕業ではないのは間違いないけど」
「うふふ、確かに国民個人の能力は高いけど還俗野心のないのが多いからね。先日ヒカルに討伐されたクロームみたいな例外もいるけど」
「とりあえず砦に戻ろうか。魔王ヒカル様と宰相太助様を迎えないといけないしね」

 とりあえずミルクとローブはボルトと魔王一行を出迎える準備の為に砦に戻ろうとした。
 だが!
 砦のある方向から無いやら火煙が!

「ローブ!」
「ミルク!」

 急ぎミルクとローブが砦へ!
 そこで二人が観たものは……一言でいえば惨劇であった。
 突如出現した暫定国政による兵士達の奇襲により砦側の戦力は総崩れ。
 一方的に虐殺されていた!

「お、おのれ~っ!」
「ミルク!駄目だっ、まずは生存者の保護を」

 ミルク王女はローブの制止を聞かずに……その大斧を手に襲い来る暫定国政の兵士達へ突進していく!
 当然、ミルクの姿を見た兵士達はそれぞれ大斧を手にして襲い掛かっ得t来る。
 だが!

「逆賊ミルクだっ!殺せっ」
「いやああああああああああああああああっ!」

 ミルク王女の巨大な斧が襲い来る兵士を横一文字に数人まとめて……ぶった切る!
 ぶった切られた兵士数名は例外無しに首や上半身を切断されて命を落とす!

「我が名はドワーフ国国王が娘、ミルク王女である!命が惜しくない愚か者はかかってくるがいいい!」

 ここはドワーフ国の中でも屈強の女傑として恐れられているミルク王女。
 そこらのドワーフ兵士では束になっても歯が立たない。
 だが!

「な、何っ!」

 なんと、先程ミルク王女が豪快にぶった切られた筈の兵士が……首や胴体、切られた箇所を再び自力でくっつけて復活した!
 復活した兵士達は再びミルク王女へ襲い掛かる!

「くそっ」

 再びミルク王女の豪快な大斧による一撃が炸裂!
 また兵士達はバラバラに切り裂かれていくが……なんと兵士達は再び切られた箇所を再び接続して復活してくる。
 まるでゾンビかアンデットか?

「ば、化物めっ」

 そして一方のローブも同様であった。
 ローブは襲い来る兵士達へ得意の魔法攻撃を繰り出す!




 ファイヤーボール



 ローブの周囲に複数の火の玉が出現!
 そして、紅蓮のファイヤーボールが複数襲い来る兵士達を焼き尽くすべく飛んでいく!
 だが……ファイヤーボールはそれぞれの兵士へ命中するが、どうゆう訳かファイヤーボールは兵士達を焼き尽くす前に消えていく。

「ミルク!こいつ等に魔法が通じない」
「こっちも私の斬撃が通用しない!すぐに再生してしまうわ」
「再生?もしかしてコイツ等はアンデットか……ならば!」

 ローブは意を決して十字を切った後に魔法の詠唱を行う!
 するとローブの体から眩い光が放たれる。
 これは……アンデットに有効な浄化魔法!
 



 ピュリフィケーション




 ミルクとローブの周囲に神々の祝福による輝きが照らしていく。
 これで周囲にいる哀れな兵士達の魂も救済されて成仏する筈。
 そう、そうなる筈であった。

「そんな……消滅していない」
「ローブっ、コイツ等はアンデットじゃないわよ」

 物理攻撃は即座に再生復活。
 普通の魔法攻撃は全く歯が立たない。
 しかも明らかにアンデットの類ではない。
 正直こんな不死身の化物集団は見た事が無い!

「ローブ……このままでは私達の気力と体力が尽きてしまうぞ」
「打つ手なし……僕達の命運もここまでかな」
「最後まで諦めるな!絶対に……コイツ等にも弱点がある筈だっ」

 そうこうしている内にミルクとローブはその不死身の兵士達に完全に包囲されてしまった。
 もはや逃げ道は無い。

「……ローブ、すまないな。こんな場所まで付き合わせて」
「ミルクの為なら例え地獄の底だろうとお供しますよ」

 あらら、この二人ったら絶体絶命の時にそんな話してるの?
 本当に鬼えいね、ミルクとローブって。
 私って……こうゆうのを放置できないのよねぇ。
 あっ、二人を包囲していた兵士達が一斉に襲い掛かってきたわ!

「じゃあ……地獄で会いましょう」
「何処までもお供しますよ!」

 完全に死を覚悟した二人。
 もう迷いはない。
 二人して最後の戦いを始めようとした……その時!



 うりぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!




 突然、何者かが兵士の一部へ強襲!
 不意を突かれた兵士達は遠くへぶっ飛ばされた!
 そして、突如強襲して来た……一人の少女は驚くミルク王女とローブの眼前へ。
 ミルク王女には……その少女の姿には見覚えと面識があった!




「貴方……ヒカル、ヒカルなんでしょう!」
「ふふふ、私はコショウ問屋の一人娘よ。ただ……こうゆう事には放置できないお節介な処があるのよね💛」




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