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第三章 ドワーフ国騒乱!
その一 ドワーフ国の大使
しおりを挟むさて、ここは我が魔王国の魔王城。
その魔王所の謁見の間にある意味招かれざる来訪者が来ていた。
その女性の名はドワーフ国大使・アレフ。
「で。そのドワーフ国の大使が私に何用かしら?」
私はその大使へ何故にこの場に来たのかを訪ねた。
ちなみに現在謁見の間には私とアレフの他に私が最も信頼する宰相にして夫の太助と執事のパンジーがいる。
他には数十名の義勇兵がいるぐらいかしら。
「実は……先日我がドワーフ国の国王が暗殺されました」
「あっ?あのお爺さんが……」
そうか。
あのドワーフ国の国王ってかなりの高齢でいつ亡くなってもおかしくなかったけど……まさか暗殺されたなんて。
少し前にクロから近頃ドワーフ国の情勢が著しく悪いとは聞いてたけどあの国王が暗殺とは。
それにしてもあの気の良かった国王を暗殺だなんて誰が暗殺したのかしら。
「で、その国王を暗殺したのはどの勢力?まさか人間国かエルフ国の手の者じゃないでしょうね」
「国王を暗殺したのは……他でもない国王の娘である玉族ミルクでございます」
「え、ええええええええええええっ!」
そんなバカな!
私、そのミルクって人とは会った事があるのよ。
正直あの竹を割ったようなズバッとした人格者のミルクが自分の父親を暗殺?
「逆賊ミルクは同じく逆賊のローブと共謀して国王を暗殺、そしてそのままドワーフ国から逃亡して現在行方不明です」
「そう。それでドワーフ国としては魔王国の魔王である私にどうして欲しいと?」
「単刀直入にお願いします。もし逆賊ミルクとローブがこの魔王国に逃亡してきた場合は……問答無用で殺害してください」
「あれ?捕縛するとかの間違いじゃないの」
「はい、処刑にして殺処分です。これはドワーフ国暫定国政の決定事項です」
うわぁ。
普通それって捕らえて裁判するのが普通じゃないの?
それを即刻抹殺だなんて。
そういえば今、大使の口から暫定国政と言ってたけど?
「あの~っ、さっき暫定国政って言ってたけどどうゆう事?」
「現在ドワーフ国はヌーク大臣が暫定国王に就任されまして、それを機会に大臣や重鎮を一新し暫定国政を樹立しました」
「あちゃ~っ、これじゃ前の王朝は事実上断絶じゃないの」
「ですので……魔王ヒカル・グレーズ様、何卒我がドワーフ国の今後の為に二人の逆賊抹殺に協力をお願いします」
「……考えとくわ」
ドワーフ国の大使であるアレフはそのまま謁見の間を出て行った。
それにしても信じられないわ。
あのミルク王女が自分の父親を殺した?
ハッキリ言って絶対にあり得ないわ。
「太助……あの大使が言ってた事どう思う?」
「僕はミルクって人を知らないしドワーフ国の現状も把握できてない。ヒカルちゃんはどう感じた?」
「ミルクは絶対に……自分の父親を殺していない。これは何かの間違いよ」
私は一度そのミルク王女に直接会っている。
忘れもしない私が魔王になった直後の事だ。
「今から一年前ぐらいかしら。私が魔王になった直後……私は魔王国をどう沿冷めたらいいか悩んでいたの」
「そこへ現れたのがミルク王女さん」
「そう、ミルク王女は私の魔王就任式で暗殺された国王と一緒に現れて……」
「それで?」
「すると悩んでいた私に……悩むな!自分の信じる道を突き進め!と激を飛ばしたのよ」
「これは豪快な王女様だね」
「この激励の御蔭で私は悩むのをやめたわ。本当に竹を割ったような一本気のある女傑だったわ」
本当に一本気のある女傑。
それがドワーフ国王女ミルクの印象。
だから……あの一本気のあるミルク王女が自分の父親を殺すなんて絶対にあり得ないわ!
「そういえば……今ドワーフ国にはクロが探りを入れてる筈だね」
「いつもクロには無茶な事ばかりさせてるけど心配だな」
「――――只今戻りました」
うわっ!
噂をすれば何とやら。
本当にいつの間にいるんだから。
神出鬼没ってクロの為にあるような言葉ね。
「クロ、いい処へ戻ってきたわ。早速だけど……」
「――――魔王様に申し上げます。ミルク王女とローブ宰相の行方が判明しました」
「本当!どこにいるの?」
「――――現在ドワーフ国の反暫定国政派に保護されております」
「そう、無事だったんだ。それで詳しい場所は?」
「――――残念ながらここでは……ですがミルク王女から魔王様へ伝言を受けております」
えっ?
ミルク王女が私へ伝言?
とにかうクロ、それを私に話して。
「――――何奴!」
そこへ突然何処かから手裏剣が!
飛来した手裏剣をクロが手にした小刀で払う。
くそっ、狙いは私かクロかっ!
「曲者だっ!総員追えっ」
私の号令で謁見の間にいた義勇兵達が曲者を追って外へ。
「私も追うわ。クロは太助とパンジーをお願い!」
さて、その曲者ですが……一目散に城の外へ逃亡を図る。
流石は何処かの密偵らしく、その動きは素早い!
「失敗か、あの忍び……只者ではなかった」
「そんなに急いで何処に行くつもりだ?」
「!?」
なんと!
逃走中の曲者の前に……丁度正規軍の仕事を終えて魔王城に帰ってきた我らが左将軍・紫陽花アンナの姿があった。
「ますい!」
「ふっ、逃がすか!」
逃走を図る曲者……だけど相手があまりにも悪すぎた!
アンナは逃げようとする曲者の動きを完全に見切り……手にした剣で曲者を一刀両断!
「ふん、口ほどにもない」
あ~あ、哀れ曲者は真っ二つ!
そこへ遅れて私と義勇兵達が後を追ってきた。
「アンナ!曲者がこっちに……って」
「曲者ってコイツか?愚かな奴だ」
うわぁ、流石はアンナって処ね。
とりあえず曲者の顔を……って確かコイツはドワーフ最大使のアレフじゃない!
くそ~っ、コイツはドワーフ最のスパイだったのね。
あの時、私かクロを手裏剣で狙った辺り余程私とミルクを合わせたくなかったみたいね。
「コイツを魔法陣のある部屋へ!私が蘇生させて黒幕が誰か吐かせてやるんだから」
こうなったらダーク・リザレクションで無理にでもこのエセ大使を生き返らせて黒幕が誰か吐かせてやるんだから!
だが……世の中そんなに甘くはなかった!
「!?ヒカルっ、すぐにその遺体から離れろ」
「アンナ!」
アンナが何かを察したのか私や義勇兵達にアレフの遺体から離れろと訴えてきた。
私達はすぐにアレフの遺体から距離を置く。
すると……アレフの遺体から何やら不気味な液体が噴き出てきた。
そして、その不気味な液体はアレフの遺体を溶解させていき……最後には骨すら残る事無く溶けて消滅してしまった。
「ヒカル……今度はどんな面倒事に巻き込まれた。絶対に話してもらうぞ」
「わかったわアンナ。こうなるとドワーフ国だけの問題ではなくなったわ。後で太助と一緒に話すから」
そして、これが後に”ドワーフ国大騒乱”と歴史に残る大事件の始まりであった。
一体ドワーフ国で何が起こっているのよ。
まずはドワーフ国の現状把握とミルク王女とローブ宰相の行方を知る事ね。
さ~て、無敵の魔王様がドワーフ国で大暴れの巻が始まるわよ~っ💛
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