太助と魔王

温水康弘

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第二章 人間国の勇者と二人目の嫁

その十三 無敵の私、人間国で大暴れ!

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「何っ、失敗しただと!」

 こちらは毎度おなじみの人間国にあるお城の謁見の間。
 どうやら憎たらしい皇帝陛下様が私と用済みのアンナの始末に失敗したと伝令から報告を受けてるみたい。
 それを聞いた皇帝の面が実に面白いわねぇ。
 や~い!
 悔しいですか?
 私にしてみれば実にメシウマですがね!

「皇帝陛下、これは面倒な事になりました。あの出来損ないが我々の敵に回るとなれば……」
「宰相、確かに面倒だな。だがw勝っている筈だ。奴等に私の命を奪う事はできぬと……この絶対防御の護符がある限りな」
「確かに……今頃奴等は何もできずに悔しい思いをしているでしょう」

 か~っ!
 ホントあの絶対防御の護符がなければ、あのクズ皇帝なんかコテンパンにして跡形もなく存在を消滅させてやるのに!
 だけど……私達はアンタ達をギャフンを言わせるぐらいの事はできるんだからね!
 では、そろそろ私達を甘く見るとどうなるか思い知らせてあげるからね!

「とにかく……次の手をうつとするかな宰相」
「はっ、なんならまた役立たずの子供を生贄にして別の勇者を召喚するのはどうでしょう」
「そうだな、我が人間国に不要な人間など不要だ。よし、急いで意識の準備を」
「はっ!」

 はぁ~っ?
 性懲りもなく皇帝の奴ま~た子供を生贄にして勇者を召喚する気なの?
 アンナだけでも十分面倒だったのにシャレにならないわ。
 そうはさせるものですか!

 それでは……皆、作戦開始よ!


「皇帝陛下に緊急報告です!」
「どうした?」
「魔王国の方角から何かの飛行物体が飛来してきます!それもとてつもない速度で接近してきます」
「なんだと!」

 あらあら。
 慌てて皇帝と宰相が城の外まで出て見れば?
 はい、それは凄まじい速度で魔王国が誇る数発のミサイルが人間国のお城目掛けて飛んできま~す💛

「総員、劇劇だ!」
「駄目です、早すぎて間に合いません!!」

 はい残念でした。
 そして飛来してきた数発のミサイルは人間国のお城の中庭で無事に着弾!
 あれ?
 普通ここで豪快な大爆発だけど……それでは詰まらないでしょ。
 まぁ、この後の人間国の衛兵の対応は早かったらしく着弾した数発のミサイルを完全包囲。
 これで今宵のギャラリーは出揃った感じかしら?
 その直後で……ミサイルの内一発の弾頭の扉がゆっくりと開く。
 そして、弾頭の中から出てきたのは?

「あ~ら?これは皇帝陛下、またお会いしましたわね」
「ま、魔王ヒカル・グレーズ!」

 はっはっはっ!
 これは大相なお出迎えご苦労ね。
 こ~んなんい沢山のギャライーを用意してくれたのですもの。

「魔王!ここで会ったが百年目っ、今日こそは貴様の命日にしてくれる」
「ここに集まっている皆様……本日は私が主催する盛大なショータイムに集まってくれてありがとうございます💛」
「何を戯言を……総員かかれっ!」

 はい、血気盛んな衛兵というお客さんが私を襲ってきました~っ。
 では、これより私が主催するショータイム開催で~す!

「では……派手に行きましょうか」

 多数のお客様が槍とか剣を持って襲い掛かる中で……私は魔法の詠唱を始める。
 では、私の豪快な芸をご覧あれ!




 ジ・ラージ




 すると、私の体が五メートル、十メートル、二十メートルとどんどん大きくなり……最終的に私は全長五十メートルの大巨人になっていました~っ!
 どう?
 びっくりした?
 では、ここでお客様の反応をどうぞ!

「はは……素っ裸の巨人だ」
「小さなオッパイだな……とてつもなく巨大だけど」
「幼女もこうなると絶景だな」

 あらら、意外と好評なのは何故かしら?
 この時、私は巨大化した際に福を破いて全裸になったみたいだけど……私、この時は気付いてないのよね。

「ええい!何をしている、裸だろうが相手は魔王だっ!早く打ち取れ」

 そんな中でもこの皇帝って結構ブレないのね。
 結局お客様達、皇帝の命令には逆らえないみたいで一部の女性兵士以外は青を赤らめながら渋々攻撃開始!
 だけど……残念でした!

「何よ?そ~んな攻撃委託も痒くもないわよぉ」

 そうである。
 どうも私って巨大化した事によって体も鋼鉄よりも堅くなったらしくて兵士の剣や槍、果ては並の魔法攻撃は一切通じなくなってるみたい。
 いやぁ、私ってやっぱり無敵なんだなぁ。

「じゃあ……今度はこっちから行こうかな!」

 私はお客様の攻撃は完全に無視して一路お城の方へ。
 そして、お城の一角へ力いっぱいに殴りかかる。



 ズズ~~~~ン!




 あ~ら、これは結構脆いものね。
 お城の屋根と壁が私の一撃で粉々に壊れて崩れていくわ。
 それにより瓦礫や破片が地上へ落下!
 この場にいたお客様達が次々と大怪我をする羽目に。

「こうなったら、このまま城を更地にしてやるわ!」

 はい、これより人間国のお城を跡形もなくぶつ壊して更地にしちゃいましょう💛
 当然、城の兵士ならぬお客様が邪魔してくるけど気にしない気にしない!



 さて、この間にクロは上手くやってくれてるかしら?
 兵士や皇帝は気付いてないけど……私が入ぅっていたミサイルの弾頭なんだけど。
 実はもう蓋が開いて中身がないんだけどね。

 その頃、人間国のお城から少し離れた上空で数匹のワイバーンが待機してる訳なんだけど。
 そのワイバーンには我が国が誇る航空魔導士部隊と指揮官のルルとナナ、そして太助が搭乗してる訳なんだけど。
 あらら、太助ったら自分のリンクミラーにある超望遠機能で私の大活躍をルルとララと一緒に見てるみたいだけど💛

「はは……魔王様完全に巨大なドラゴンですね」
「いいえルル、あれは何かの巨大生物みたですわ」
「……」
「宰相様?いかがなされましたか」
「なんで全裸で……しかもあれは大怪獣みたいじゃないか。派手にやりすぎだよヒカルちゃん」

 あらら、ルルとララはともかく太助は私のこの戦法は不評みたいね。
 もっとも後でその理由を聞いた時には……私は恥ずかしくなったけど。



 だけど、その時だった。
 城の地下室の何処かが凄まじい大爆発が次々と起こった!




「!?どうした」
「皇帝陛下!どうやら何者かが城内へ侵入した模様です」
「まさか……あの爆発は?」
「侵入者は城の地下施設を片っ端から破壊して回っている模様です」
「地下施設を?まさか……勇者召喚に使う魔法陣は」
「残念ながら……その魔法陣も修復不可能まで破壊されました」

 おや~っ?
 皇帝さん完全に青ざめてるわよぉ。
 そう、これこそ今回の私達の目的……二度と勇者召喚ができないように召喚用の魔法陣を完全に粉砕した訳なのよ。
 つ・ま・り!
 私はその囮……陽動だった訳!
 まさか魔王である私が直々に陽動をやるとは流石に皇帝も思いつかなかったでしょうね。

 そして、私が半壊させた城の上空に赤い信号弾。
 どうやらクロと配下の諜報員が上手くやったみたいね。
 さぁ、作戦は成功よ。
 そして、その赤い信号弾は遠くで待機していた太助達の目に届く。

「よし、作戦成功だ!」
「総員全速前進!すぐに魔王様と諜報員の回収を開始する」

「やられた。奴等は最初から二度と勇者を召喚できぬように魔法陣を破壊したのだ」
「皇帝陛下!お気を確かに」
「許さぬ……許さぬぞ魔王!殺せっ、あの生意気な魔王を生かして返すな!」

 あ~あ、とうとう逆上しちゃったみたいね。
 本当はこのままクソ皇帝をこの巨大な足で踏みつぶしたいけど例の絶対防御の護符があるから無理なのよね。
 いずれにしても、そろそろ潮時かな。

「――――魔王様、ご無事で何よりです」
「あっ、クロも大丈夫だった?それに皆もお疲れ様」

 丁度クロ達諜報員の皆様も戻ってきたし……逃げる算段を考えていた時だった。

「お~い!ヒカルちゃん」
「「魔王様、ご無事で!」」

 これはいい処に来てくれたわ。
 太助が航空魔導士部隊を引き連れて迎えに来てくれたわ。

「航空魔導士部隊出撃!魔王様と諜報部隊の回収作業を急げ」

 ルルの号令でワイバーンから航空魔導士部隊の精鋭が大空へ!
 そして私やクロを襲う衛兵を次々と大空から撃退していく。

「ひ~か~る~ちゃ~ん!迎えに来たよ」
「あっ!太助~っ」

 地上に降りたワイバーンから飛び降りた太助が私に駆け寄ってきた。
 まぁ……迎えが来た以上、私が巨大化してる意味がないよね。
 という訳で……元の大きさへ!

 はい、私の体は徐々に小さくなって本来の伸長に戻りました。

「太助~っ💛」
「……」
「どうしたの太助?そんな白い目をして」
「……ヒカルちゃん、服!」
「あっ」

 この時、私は巨大化の影響で服が破けて裸になっていた事に気付いた。
 つまり……私は裸で兵隊相手にしたり城を半壊させたりしてたって訳?
 うわあああああああっ!
 私、往来を裸でうろついていた事に?
 こっ、これは流石に……恥ずかしい!

 それからララに手渡された衣服を着た私は太助の手を握りながら「じゃあ、帰ろうか」とほほ笑む。
 太助もそれに応じるように微笑む。
 さぁ、クロ達諜報員達も回収完了したし……いざ撤収よ!

「くそっ、待て~っ魔王!」
「そんじゃね!バカ皇帝さんバイバ~イ!」

 はい、これでさようなら!
 私達はワイバーンに乗って一目散に帰路につく。
 あれ?
 太助、そのスイッチは何?

「ふふふ、これは僕からの置き土産さ!」
「えっ?」

 太助は迷わず手にしたスイッチを入れちゃった。
 すると……人間国の城に残されていた数本のミサイルが……それは凄まじい大爆発!
 その大爆発は物凄く、ただでさえ半壊していた城が跡形もなく吹き飛んだ。
 終いには私達にも見えるぐらいの巨大なキノコ雲が見えた。
 これは私が見てもえげつないわ。

「はははははははh!これで暫くは人間国も魔王国に攻め込めないだろうね」
「ハァ~~~~~っ、太助……やっぱりやっちゃったわね」
「これで少しはスッキリしたよ。少しはアンナ姉ちゃんの恨み思い知ったか」
「はは……ははは」

 本当に太助を怒らせると恐ろしいわね。
 流石に太助がミサイルに仕込んだ魔法爆弾はブラック・ギガンテック程の破壊力はないそうだけど……今度ばかりは人間国の皆様もお気の毒様。
 さて……そんな中でも生きている奴が約一名!
 あぁ、やっぱり瓦礫の中からしぶとく這い上がって来たわよ。




「おのれ~っ!よくも我が人間国をここまでコケにしやがって!この皇帝の名に懸けて必ず魔王国を滅ぼしてやるからな!」
 




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