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第二章 人間国の勇者と二人目の嫁
その十二 太助大暴走!
しおりを挟むあの勇者との決闘から二日後。
私達は勇者として利用されていた紫陽花アンナを保護して治療を行っていた。
医者曰く既に峠は越したそうなので一安心だがまだ安静が必要であった筈だが……?
ムシャムシャムシャバクバクバク!
「それにしてもよく食べるわねぇ」
「はは……もう大丈夫みたいだね」
「うお~い!肉だ肉!もっと肉を持ってこ~い!」
それにしてもこの脳筋女、よく食べるわね。
昨日意識がハッキリと戻ってから「飯持ってこい」の一点張りだったから仕方なくね。
既に彼女は三十人前の食事をペロリと平らげている。
コイツの胃袋はブラックホールじゅないのか?
「太助ちゃ~ん💛ここって鶏肉しかないの?牛はないのっ牛は!」
「御免ねアンナ姉ちゃん。魔王国は鶏しか家畜として飼育してないんだ」
「え~っ、ステーキ食べたい!ハンバーグ食べた~い!」
「じゃあ鶏肉のステーキと鶏肉のハンバーグはどう?」
「うげ~っ」
この贅沢女め。
残念だけど魔王国では牛肉とか豚肉は入手困難で私も滅多に食べられない贅沢品なのよ。
一応、太助の発案で今度牛と豚の家畜飼育が盛んなドワーフ国から技術提供してもらう予定だけどね。
「なら魚だっ!鮪の刺身か鉄火丼が食べたいよぉ💛」
「安心して、魚に関しては最近新鮮な魚が城下町に入荷してるkら」
まぁ……海産物に関しては近頃港町ウエストが出来たから結構入手し易くなってるしね。
そういえば次にアンナに運ぶ料理はその鉄火丼だったわね。
あっ、丁度その鉄火丼が運ばれてきたみたい。
「うおおおおっ!これよこれ。しかも醤油もあるの!」
「醤油については元々魔王国で生産されてたんだ。魔王国は農業については結構盛んだからね」
「では頂きま~す💛」
それにしてもあのムシャムシャと鉄火丼を食べてる様子見てると今だにこの前私と決闘をした勇者とは思えないわね。
見るからに只野食いしん坊にしか見えないけど。
「鉄火丼は前に太助と一緒に食べたけど確かに癖になる味だったわね」
「僕の故郷の味だからね。まさかこの世界に来て鉄火丼食べられるなんて意外だったよ」
こうなると私達も鉄火丼食べたくなるなぁ。
そこへアンナの病室へ一人の女性が入ってきた。
「あれ?ファブリーズじゃないの」
「失礼します魔王様に宰相様。こちらに勇者が入院されてると聞いて」
「!?お前は」
「暫くですね勇者さん……いえアンナさんというべきかしら」
なんと以前アンナと熾烈極まる死闘を繰り広げたファブリーズが。
どうもファブリーズはアンナと一度ゆっくりと話したいそうだ。
「こんにちは」
「お、おう……確かファブリーズとか言ったな」
「うふふ、今日は気まぐれで強敵(とも)とゆっくりと話がしたいと思いまして」
「私もだ。何なら一緒に飲まないか?強敵(とも)よ」
「こら~っ!流石に病人同士が酒を飲むんじゃない」
全く……だけど互いに全力で拳を交わした者同士何か思う事があるのだろうな。
しかも私と太助を放置して和やかに話を始めちゃったわ。
「ヒカルちゃん、ここは二人だけにしてあげようよ」
「そうね、案外あの二人気が合うかも知れないしね」
それから私と太助はアンナの病室から出た。
すると太助の表情が怖い感じがした。
「ヒカルちゃん、人間国の奴等……皆殺しにしていい?」
「えっ?」
「今まで散々魔王国や近隣諸国へ進撃して迷惑かけてるし……この前なんかアンナ姉ちゃんをあのような目に!」
「太助、ちょっと落ち着いて」
「いいよね……あんな連中跡形もなく吹っ飛ばしても」
ちょっと!
完全に怖い顔してるわよ太助。
そこへ私達の元へ知っている顔が駆け寄ってきた。
「おっ、魔王様に宰相様」
「ロイドじゃないの。どうしたの?こんな処まで」
「宰相様、例の物が出来ました……ですが本気ですか?あんな物を作って」
何っ、ロイドったら何を作ったのよ。
しかも太助の依頼で。
「丁度良かった。じゃあ早速人間国へぶち込んでよろうよ」
「い~~~っ!」
太助!
何物騒な事ロイドに話してるの?
しかもロイドが顔を真っ青にしてドン引きしてるじゃないの!
「太助!貴方一体何を考えてるの?」
「丁度良かったよ……ヒカルちゃんにも見せてあげるよ。我が国の最終兵器をね」
えっ?最終兵器だって。
なんか嫌~な予感がするんだけど。
とりかく私は太助とロイドに連れられて我が国の国営工場へ。
そこにある大きな倉庫。
この中で私はとんでもない代物を見る事になる!
「これって……とてつもなく大きな花火みたいだけど」
「これはミサイルだよ。遥か遠くの隣国へ攻撃できる遠距離攻撃兵器だよ」
「遠距離攻撃?」
「原理はロケット花火と同じでこれに推進剤や火薬を詰め込んでから標的に向けて発射するんだ」
うわぁ。
太助ったらロイドに頼んでこんな代物を。
「しかも……作戦に応じて先にある弾頭に様々な兵器を入れる事によって……ふふふ!」
「例えば……何を入れるの」
「そうだね、疫病を流行らせる病原菌とか普通の爆発力のある火薬とかね……だけど人間国にはこれをぶち込みたいんだ」
太助は漆黒の推奨を取り出した。
それって……まさか!
「ヒカルちゃんなら判るでしょう。これはブラック・ギガンテックを材料であるクロ水晶だよ」
「太助」
「安心して。これにはまだ魔力を注入してないから安全な状態だよ。だけど……アンナ姉ちゃんを勝手に酔いだして使い捨てにするなんて……」
「上段はやめてよ……太助」
「目には目を、歯には歯を、だからあの人間国へ……」
駄目!
太助は完全に自分を見失っている。
第一そんな極大レベルの魔法爆弾を人間国で爆破したら……卑劣な人間国と変わらないじゃないの!
私は太助に往復ビンタをして押さえつける!
「目を覚まして!元々人間と魔族は同じ種族なのよ。なのに人間国にいる罪のない人達まで虐殺するなんて絶対に駄目だ」
「でも……ヒカルちゃん」
「とにかく太助がそんな業を背負ったら駄目だよ」
私は太助を抱きしめて必死にこんな事をやめさせようと試みる。
そんな時であった。
「そうだよ……そんなの太助ちゃんらしくないよ」
なんと、私達の元へ紫陽花アンナがファブリーズと共に現れた。
アンナはファブリーズの肩を借りながら太助と私の元へ。
「アンナ姉ちゃん……まだ無理をしたら」
「大事な太助ちゃんがバカな事をしようとしてるのに……お姉ちゃんが黙ってる訳がないでしょう」
「……」
「とにかく、そんな物騒な水晶は捨てなさい。お姉ちゃん、そんな太助ちゃんは見たくないよ」
太助は大粒の涙を流しながら……手にした黒推奨を放した。
アンナはその黒推奨を拾い上げて投げ捨てる。
「大丈夫だよ。あのバカ皇帝をぶっ飛ばす方法はいくらでもあるんだから」
「ヒカルちゃん」
「ヒカル……その時は私も同行していいか?あのクソ皇帝、絶対に私を騙したクズ皇帝へ落とし前をつけてやる!」
こうなったらあの人間国皇帝に鉄槌を下してくれるわ!
だが、その皇帝へ鉄槌を下すにはある問題があった。
ではロイドさん説明どうぞ!
「だけど皇帝ぶっ倒すのは現状不可能だぞ。何しろ皇帝は絶対防御の護符を持ってるからな」
「絶対防御の護符?」
「あの人間国皇帝は代々その絶対防御の護符を引き継いでいてな……あれがある限り皇帝には一切の物理攻撃も魔法攻撃も通用しないからな」
そうなのよ。
あの皇帝がその絶対防御の護符を所持している限り魔王国が人間国を攻め込む事が困難なのよ。
本当、あの護符が無かったら苦労はしないわよ。
「じゃあ……」
「そう!例え人間国へ魔法爆弾落しても諸悪の根源であるクズ皇帝はピンピンしてる訳なの」
「くそっ、これでは落とし前をつける事ができないではないかっ」
あ~っ、あのクソ不死身皇帝をなんとかしたいけど現状打つ手なしだものね。
「きっと、あの皇帝また勇者を召喚してヒカルちゃんと魔王国を狙ってくるよ」
「そうね……せめてこれ以上勇者召喚を阻止できたらいいけど」
「あの~っ、それについてですが私に提案がありますが」
「何か妙案があるの?ファブリーズ」
ファブリーズは私達に作戦内容を放した。
成程。
これなら何とかなるかも知れないわ。
「だけどファブリーズさん。この作戦を一行するには電光石火のような迅速さを要求するよ。どうやって人間国へ強襲するつもり?」
「あるじゃないですか!ほら、そこに」
えっ?
このミサイルを使う気なの?
まぁ確かにこれならねぇ。
とにかく……今回はファブリーズの作戦立案を元にやってやりますか!
さ~て、あのクソ皇帝に一泡吹かせてやるわよ~っ!
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