28 / 99
第二章 人間国の勇者と二人目の嫁
その十 太助とアンナ
しおりを挟む「魔王~~~っ!いい加減に正々堂々戦え~っ!」
あらら。
美味しいお弁当を食べ終えた直後で勇者にかけたデバフが解けちゃったみたい。
やれやれ……これでまた暫くの間私と勇者との追いかけっこが再開みたいね。
では、お言葉に甘えて勇者には格好のいい準備運動の相手を用意しますか。
サモン・スケルトン
はい私の呼びかけの応じて私の可愛いスケルトンの軍勢一万体を地の底から出てきたわ。
そして血気盛んな勇者アンナを完全に包囲!
「はい攻撃開始~っ!」
そして毎度おなじみのスケルトンによる総攻撃開始!
だけど当の勇者様は「ふざけるな!」と叫んで自身の闘気を放出!
あちゃ~っ!
嘘でしょう。
なんと闘気による凄まじい衝撃波で一万はいた可愛いスケルトン達が一瞬で消し飛ばされて消滅しちゃった!
こりゃあの闘気はアンデットを浄化させる作用があるみたい。
「今度こそ……今度こそ勝負の時だな」
「うはぁっ」
残念だけどこの脳筋にスケルトンとかのアンデット差し向けるのは無駄みたいね。
もう、こうなったら仕方がない。
私はロイドから貰った魔剣を握りしめて構える。
この様子を見た勇者は目を輝かせて「ようやく戦えるな」と全身に闘気を放出させながら私へ突進してきた!
「くらえっ!」
勇者アンナの黒い剣が私の脳天を捉える!
だ・け・ど!
勇者の黒い剣が私にあたった瞬間……私の姿は忽然と消えてしまった。
「くっ、何処だ」
「こっちこっち!」
すると私は勇者アンナの真後ろにいました~っ。
「くっ、いつの間に……こんどこそ!」
はい、また勇者アンナの黒い剣が私の体へ……当たった瞬間にま~た消えちゃった!
そして今度は勇者の左に私がいました💛
「くそっ、姑息な事を!」
それから暫く勇者は私を切ろうとすればハズレという事を繰り返すばかり。
はい皆様はお気付きですね。
先程から勇者が相手にしている私はただの幻影。
最初に私が剣を構えた時にイリューシンの魔法をあの脳筋勇者にかけたのよ。
その結果、勇者様は目に見える私の幻影を必死になって相手にしている訳。
では……本物の私はどうしてるかって?
「う~ん、やはり午後の紅茶はいいものねぇ」
いやぁ、いい晴れ模様だから無弁バックの中にあった白いテーブルとチェアを出してゆっくりと紅茶を飲んでいた訳。
本当に大爆笑ね。
おバカな勇者様は必死になって私の幻影を追いかけ回しているのだから💛
さ~て、後は何時間ぐらいで力尽きて倒れてくれるのかしら?
私はただ楽しくその様子を笑って見守るだけ。
こりゃ楽ですわぁ。
だけど……私のそんな考えは甘かった。
「ふ……ふざけるなぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁっ!」
あれ?
勇者の奴、自分の全身に闘気を集めて金色に発光。
なんか彼女に纏わりついた魔力が消えていくみたいだけど。
そして……その金色の光が消えた瞬間、勇者はゆっくりと紅茶を飲んでいる私の姿を捉えた。
「あちゃ~っ」
「き・さ・ま!何まったりと茶を飲んでいる……いい加減にしろよ、この卑怯者!!」
あらら、とうとう脳みそ筋肉の勇者様は完全にガチ切れしちゃったみたい。
こうなったらまたデバフかましてやろうかしら。
「覚悟しろっ、卑怯者の魔王め~っ」
「じゃあ……もう一度これをどうぞ!」
ハイパー・デバフ
はい、これで再び動きが止まる……かと思ったけど。
「同じ手は二度も受けぬわっ!」
げ~っ!
勇者の奴、自らの闘気を防御幕代わりにしてハイパー・デバフを無禄かしちゃった!
あ~っ!
この勇者ったら曲りなりにも学習能力はあったのね!
「うおおおおおおおおおおっ!」
「やべっ」
私は咄嗟に魔剣を手にして勇者アンナの黒い剣と交えた!
「はっはっはっ、ようやく本当の決闘の始まりだな」
「くっ……剣筋が思い」
あ~あ!
結局はこうなっちゃう訳ね。
それにしてもこの脳筋勇者はなんてしぶとくてタフなのかしら?
生き埋めにしても成層圏から落としても死なないし……コイツは化け物よ。
もうこうなったら仕方がない。
ここからは真っ向勝負だ。
太助……約束破って御免。
ハイパー・バフ
とにかくこの化け物に対抗するには私も限界まで身体能力を上げるしかない。
私はハイパー・バフで限界まで自分の能力値を上げて勇者と真っ向勝負!
「行くわよ脳筋勇者!」
「いざ参るそ……魔王!」
行くわよ!
こうなったら徹底的にやってやるわ!
だけど……その時であった。
「はぁ……やっぱりアンナ姉ちゃんだ」
「!?だ、太助?」
なんと!
私と勇者アンナとの間に太助が?
どうして?
まさか……私の事が気になって来ちゃったの?
「あ……あああっ……」
「ん?」
おや?
なんだか勇者の様子がおかしいぞ。
お~い!
貴方……私と戦うんじゃなかったの?
「た、太助ちゃぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁん💛」
「へっ?」
ええっ!
勇者の奴、私の事を無視して太助へ一直線にまっしぐら!
そして……そのまま太助に抱きついちゃった!
「太助ちゃん太助ちゃん太助ちゃん!」
「はは……アンナ姉ちゃん苦しいよ」
「あっ、ごめんね。だけど……まさかこんな処で太助ちゃんに会えるなんて」
あの~っ。
先程から私の太助に馴れ馴れしいんだけど?
こら~っ、この脳筋勇者!
さっさと私の太助から離れなさい。
「太助……この女は誰?」
「紫陽花アンナ!僕の幼馴染だよ」
「そして……私の運命の男の子なんだよ!ねぇ太助💛」
はぁ~っ?
幼馴染だとぉっ!
!?
幼馴染って事は……この女って太助と元いた世界から召喚されたって事なの?
「とにかく……私の夫から離れなさい!この脳筋女~っ」
「えっ……夫だって?」
「そうよ!私と太助は結婚してるのよ!悪い?」
あっ、勇者が太助に抱き着いたままフリーズした。
これは下手な精神攻撃よりも効果アリだったみたい。
「太助ちゃん……このボケ魔王の言ってる事は本当なの?」
「うん。一緒に魔王城に住んでるよ」
「魔王城って……太助ちゃんって人間でしょう!どうして魔族の巣窟である魔王国に太助ちゃんがいる訳?」
「アンナ姉ちゃん……アンナ姉ちゃんは人間国の皇帝に騙されてるんだよ」
「えっ?」
これは一度詳しくこの脳筋バカ女に最初から説明したほうがよさそうね。
そうだ、丁度人数分の椅子が無弁バックに入っていたから取り出して……っと。
紅茶とお菓子もまだあるし、ここは三人でゆっくりとお茶会でも開いて……この世界に関する真実を語るとしますか。
それと私と太助が結婚している経緯も離さないとね。
「さぁ、アンナ姉ちゃん。久しぶりに一緒に話そうよ」
「……太助ちゃんが言うなら応じるしかないわね」
「では太助も脳筋バカも一緒にお茶とお菓子を楽しみながら色々と話をしましょう」
「私は脳筋バカではない!私はアンナだっ」
「ひいはい解りましたよ、脳筋アンナさん!」
「ま、魔王~っ!」
さて、後はこの脳筋勇者に関しては太助に任せるしかないわね。
まぁ私も話に加わるつもりだけど。
とにかく、この勇者に事の真実を伝えないといけないわ。
だけど……この時、私と太助は迂闊にも気が付かなかったわ。
今の私達の様子を見張っていた人間がいた事に。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)


冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる