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第二章 人間国の勇者と二人目の嫁
その五 勇者が来た!
しおりを挟む「あぁ……遂に来るんですね」
市役所が人間国の勇者による奇襲でぶっ壊された事で緊急招集された幹部会。
魔王国幹部が集まって最初にララが大きく溜息をつきながらこう述べた。
「全く、出来たばかりの市役所にこんな物投げつけやがって!」
私はその勇者が投げた槍をこの場にいる皆に見せた。
そして武具工場長であるロイドがその槍について説明した。
「これは魔王様が軽々と運んできたが……この槍の実際の重量はなんと十トンある」
「「「え~っ!」」」
まぁ、皆は驚くでしょうね。
十トンの重量もしてる槍なんか普通の人間は勿論の事、我々魔族でも義勇兵兵士でも精鋭中の精鋭しか扱える代物ではない。
しかも人間国の国境近くから城下町へ投げる芸当なんて魔王国でも私ぐらいしかできない。
これは間違いなく現在人間国には勇者がいる証拠である。
「げ……現在市役所の最上階は閉鎖。修復には一週間かかるそうです」
「フ、ファブリーズ……頭に青筋立てて怖い顔してるわよ」
そりゃそうだ。
何しろ勇者の攻撃で自分の自室が木っ端微塵にされたからねぇ。
唯一の救いはあの医薬所は最新の魔法技術を駆使して建築されていたから全壊は免れた事だろう。
もし……あの槍が他の施設へ落ちた場合は間違いなく完全破壊されて大惨事になっていた筈。
考えようによっては今回は運が良かったのかも知れない。
「ヒカルちゃん、間違いなく例の勇者はヒカルちゃんとは少なくとも互角の実力を持っているのは間違いないよ」
「私も今度ばかりはヤバいと思う。こ~んなクソ重い槍を軽々と国境超えて投げ来る奴よ」
「ん?ヒカルちゃん何笑ってるの」
「ふふふ……楽しみだわ」
「えええっ!」
「考えてみてよ。今まで私と喧嘩売った奴がどうなったか太助も知ってるでしょう?」
「……」
「今までの奴はハッキリ言って弱すぎだったのよ!同じ喧嘩するならやっぱり歯ごたえのある奴と喧嘩したいじゃないの」
「ヒカルちゃん」
「そこへ現れたのがあの勇者って奴!アイツなら少しは私を楽しませてくれるんじゃないかってね」
そうよ。
同じ喧嘩買うなら強い方がいいに決まってるじゃない!
しかも勇者なら相手にとって不足はないわっ。
あれ?
太助……何を勝手に幹部会進めてるの?
「という訳で次に人間国が進撃する際には間違いなく勇者が指揮してくると思われます!そこで宰相としての僕の提案ですが」
お~い!
何、私を無視して議論しているの~っ!
「人間の軍勢にはいつも通り義勇兵が対応します。ギルドマスターのルルとララには義勇兵の指揮をお願いします」
「「かしこまりました」」
まぁ、雑魚の人間国兵士には我が国が誇る義勇兵の力を思い知らせてやるのが一番ね。
そして勿論、勇者の相手は私よね太助!
「それと問題の勇者なんだけど……」
「私!私よね!」
「ロイドさん、我が国でヒカルちゃんの次に強い人に心当たりはありますか?」
「た、太助~っ!」
あれ?
太助の今の言葉に反応したのかロイドやルルとララを始めとする全ての幹部が一人の少女に視線を向けてるわ。
その少女は……現在殺意丸出しで頭に青筋立ててる……ファブリーズ!
「宰相様……私をご指名ですか?」
「う、うん。どうも……ここにいる皆がファブリーズさんが魔王国で二番目に強いと言ってるみたいだけど」
突如ファブリーズの体から漆黒のオーラが吹き手てるけど。
もしかして……ファブリーズって一年前の魔王決定戦の事を今だに根に持ってるのでは?
「うわぁ……ファブリーズさん凄い殺気だけど」
このファブリーズに驚く太助。
そんな太助にロイドが説明開始。
「そりゃ強いですよ彼女。何しろ彼女は一年前の魔王決定戦で魔王様と最後まで魔王の座を争った程の実力ですから」
「となると……下手したらファブリーズさんが魔王になっていた可能性があったの?」
「はぁ、正直ファブリーズが魔王にならなくて良かったですよ。何しろ事あるごとに税金アップしてきそうですし」
「はは……」
そうだった。
確か今の魔王を決める際に私はこのファブリーズと最後まで魔王の座を争っていた。
その実力は本物で素手での先頭だけなら間違いなく私以上、しかも回復魔法も得意でいくら傷つけても治癒魔法使って何度も立ち上がってきたわね。
結局最後は私が最上級攻撃魔法を魔力が尽きるまで連続発射して何とか倒した記憶があるわ。
「ならば宰相・百合太助がファブリーズに命ずる!」
「はい……宰相様」
「ファブリーズには進撃してくる人間国の勇者を討伐せよ!勇者の生死は問わない。見事勇者を淵果たして欲しい」
「かしこまりました」
ひぃぃぃぃぃぃっ!
私とした事が一瞬ファブリーズに対して恐怖を感じたわ。
いかにも殺してやるって殺気が充満している感じ!
「太助……やっぱりファブリーズよりも私が勇者ぶっ倒しに行ったほうが?」
「ヒカルちゃんは我が国の魔王だよ。国の頂点に立つ人が軽々しい真似はしない!」
「ぷぅぅぅぅぅぅぅっ!」
あれ?
ファブリーズったら例の槍を手にして握りしめてるわ。
「魔王様、あんな勇者とかと名乗る不届き者は……私がこうしてあげますわっ!!」
グニャ!
あら~っ、ファブリーズったら十トンはある槍を軽々と捻じ曲げてから地面に叩き付けた!
当然十トンもある代物だ。
その叩きつけた衝撃で会議室……いや魔王城は大きく揺れた。
こら~っ!
城が壊れたらどうすんのよ!
「――――魔王様、緊急報告です」
「あっ、クロ」
そこへ何処かからクロが会議室に出現。
彼女が直接現れた事は……恐らく。
「――――現在、魔王国と人間国との国境の草原で人間国の軍勢が終結している模様です。その数は……三万!」
「三万とはいつもより多いわね。奴等今回は勝負に出たのかしら」
「――――それと報告したい事がもう一つ。今回人間国の軍勢を指揮しているのは……勇者です」
なんだって!
あぁ、とうとう満を持して人間国最大の切り札・勇者が出てきたか。
「――――現在、人間国の軍勢は我が国の国境を越えたそうです。いかがされますか?」
そりゃ当然出陣よ!
あ~んな有鬚なんか私が……って太助!その手を放して。
「幹部会決定で今回ヒカルちゃんは御留守番。ではルルとララ、それにファブリーズさんお願いします」
「ちえぇぇぇぇぇっ」
こうして義勇兵の精鋭二万人とファブリーズはいざ戦場へ!
さて、一方の人間国陣営はというと?
「勇者様、間もなく魔王国の領域内に入ります」
「そうか……ではそのまま前進せよ」
どうやら勇者率いる人間国の連中そのまま進軍するつもりだな。
だけど……我が魔王国の精鋭達はそう簡単にはいかないわよ!
「勇者様、将軍様」
そこへ人間国側の伝令が。
「たった今、魔王軍がこちらへ出撃したようです。その数は一万!」
「一万?我等三万の軍勢相手になめられたものだな。構わん蹴散らせ」
そこへ別の伝令が勇者達の元へ。
「大変です!魔王国の上空からワイバーンの大群が」
「成程、さしずめワイバーンから攻撃するつもりであろう。だが浅はかだな……弓兵!」
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