太助と魔王

温水康弘

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第二章 人間国の勇者と二人目の嫁

プロローグ

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 ここは私が大っ嫌いな人間族がわんさかいる人間国。
 あっ、同じ人間でも太助は大好きよ。
 その人間国の王城で今、ある事が行われようとしていた。

「宰相、あれの準備は出来てるか」
「すべての準備は整っております皇帝陛下」

 今、城にある玉座でふんぞり返っているオッサンが人間国の皇帝。
 そしてその傍にいる老人がこの国の宰相かな。

「間もなく我が帝国の魔導士が終結して勇者召喚の儀式が始まります」
「そうか……それにしてもあのクソガキめ!近頃は魔族の分際で統率された軍隊を組織してきおって益々魔王国へ攻め辛くなったものだ」

 おうおう!
 皇帝のオッサン完全に頭に青筋立てていますなぁ。
 まぁ何度せめても結果は同じだけどね💛

 それから儀式の準備が終わったのか皇帝と宰相は城の中にある魔法実験室へ。
 そこには人間にしては強い魔導士がわんさか集まってますわぁ。
 しっかも研究室の中央には御大層な魔法陣が。

「では皇帝、これより勇者召喚儀式をとり行います」
「うむ!」
「生贄をここへ!」

 えっ?池に寝だって。
 すると部屋に数名の人間の子供が連れてこられたぞ。
 そして、その子供達は鎖に繋がれて魔法陣中央へ配置されたわ。

「では……生贄を殺せ!そして、その汚れた魂を贄に我が国を救う勇者を召喚するのだ!」

 なんだって!
 それと生贄にされた子供達は身寄りのない孤児らしく、人間国の大人曰く全くの利用価値のないクズだという。
 そして、兵士が魔法陣の中央で……子供達の首をはねた。
 つまり……殺したのだ。
 そして、殺された子供達の首から大量の地が流れ魔法陣へ流れていく。

「さぁ皆の者!生贄は捧げられた。今こそ……この世界を救う伝説の勇者をこの世界へ召喚するのじゃ」

 宰相からの号令と共にこの場にいる魔導士が高らかに詠唱を始める。
 殺された子供達の血で満たされた魔法陣がその詠唱に反応し輝く。
 それと同時に魔法陣中央で放置されていた子供達の死体が光の粒となぅて消滅していく。

「あとどのぐらいかかる、宰相」
「後数分で結果が出ると思われます」

 おい皇帝!
 わざわざ勇者とやらを召喚するのに罪のない子供達の命を奪っておいて何涼しい顔してるのよ。
 私は太助を召喚するのに何も犠牲を出してないのに!

 それから数分後。
 魔法陣に変化が訪れた。
 魔法陣中央に光が集まり……やがてそれは一人の人間の形を形成していく。

「おおっ!」
「成功か」

 魔法陣の光は……完全に消滅。
 その魔法陣中央には一人の少女の姿があった。
 少女はそのまま目を覚ます。

「ここは……」

 少女は周囲を見渡す。
 しかし……今、自分に起こっている事は理解できずにいた。

「ようこそ!我が人間国へ……選ばれし勇者よ」

 戸惑っている少女の前に人間国の皇帝が駆け寄った。

「……勇者?」
「そうだ!君は我が国・人間国を救う為に遣わされた伝説の勇者なのだ」
「貴方は……それにここは?」
「そうだね……まずは一緒に食事をしながら我が国の現状とかを離そうかな」




 勇者召喚。
 その日、この大陸全土に暗雲が包んでいた。




 その暗雲はエルフ国やドワーフ国等の諸外国に不吉な予感を感じさせた。
 勿論、我が魔王国もその例外ではない。

「昼間だというのに嫌な天気だねヒカルちゃん」
「そうね。私も何か嫌な予感がするわ」

 私と太助も魔王城の窓から今日の不吉そうな天候に不吉を感じずにいられなかった。
 それと同時に太助は夕べクロからの報告にあった勇者召喚の事を思い出していた。

「勇者か」
「太助、夕べクロが言っていた事が気になるの?」 
「うん」

 それから暫くの間、私達は暗雲が包む天候を見ながら互いに考え込んでいた。

「もし……ヒカルちゃんと同等、いやそれ以上の存在が現れたらどうするんだい」
「太助、それは愚問よ。私の命は私だけのものじゃない。私の命は我が魔王国に捧げているのよ」
「……」
「私は魔王よ。例え自分と格上の存在が現れても魔王国を守る為なら戦うまでよ」
「そうだね、それでこそヒカルちゃんだよ」

 そうよ!
 例え相手が神だろうが悪魔だろうが我が魔王国を脅かすのなら徹底抗戦あるのみ。
 



 だけど……今度ばかりは渡井の不吉は最も最悪な形で的中する事になるとは、この時は太助も私も思ってはいなかった。






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