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第一幕 二人の出会い・そしてすべての始まり
その十五 港町ウエストの誕生……そして太助のプロポーズ
しおりを挟む私がウエスト山脈をぶっ飛ばしてから三週間後。
私と太助が魔王城でいつもの執務をしている時であった。
突如出現した黒い影。
その影……いや、その人物は諜報部の凄腕暗殺者であるクロ。
「あれ?今日はどうしたの」
「―――魔王様、朗報です。先日開発を始めましたウエスト海岸ですが、とりあえず関所及び数件の住居が完成したそうです」
えっ!それは本当?
そうなると……港町ウエストの運用開始って訳ね。
これには私の傍にいた太助も興味津々だ。
「そうか……まだ本格的ではないけど港町がいよいよねぇ。これは楽しみだな」
「太助!今度視察を兼ねて遊びに行こう」
「それはいいね。個人的には海の魚が食べたいな」
「―――村の住人からの報告では既に試験的に海の魚の捕獲をして試食してるとか。結構法版がいいと聞きます」
あらあら。
珍しく太助がよだれを垂らして二やついてる。
余程、海の魚が食べたいのかな。
「ようし、明日は港町ウエストへ視察しに行くぞ!」
という訳で明日はできたばかりの港町ウエストの視察を兼ねた海のお魚試食会と行きましょうか!
そしていつもは仕事最優先とこうゆうのに行きたがらない太助も珍しく「行きたい」と言ってきた。
とは言うもの流石に幹部全員で行くのは……いざ人間国が攻めてきた時の事を考えるとね。
そうゆう理由で流石に幹部全員で行くのは危険なので明日行くのは私と太助に官僚長ファブリーズ、それに護衛としてクロで行く事に。
という訳で私はファブリーズを呼び出して明日の視察へ同行するように伝える。
「ありがとうございます魔王様、このファブリーズ明日の視察へ同行させて頂きます」
「じゃあ、お願いね。処でファブリーズって今年いくつ?」
「へっ……十四です」
「貴方本当に大丈夫?十四歳になってまだ独身で処女だなんて……このままではオールドミスになるの確実よ」
「そ、そんな!」
言い忘れてたけど我が国って十一から十二で男引っかけて処女捨てるのが一般常識。
普通に襲い娘でも十三ぐらいで誰かの嫁さんになるのが普通。
だけど……このファブリーズってかなりの仕事人間で日頃男探さずに我が国の為に仕事ばかりしていた娘なのよ。
もっともその甲斐あって今は我が国に欠かせない官僚で一番偉い地位にいる訳だけど。
でも優秀な配下だけに正直不安なのよ。
ファブリーズって凄いナイスバディだから男の一人や二人寄って来てもいいものなのに。
私?
それに関しては心配無用!
もう相手がいるし……問題は相手が私を求めてくれるかの問題ね。
こうして次の日。
私達はワイバーンに乗って、いざ港町ウエストへ。
ワイバーンならほんの数十分で到着だ。
「うんうん、街道の工事も進んでるみたいだね」
「流石は我が国の男達ね。女だけではこうはいかないわね」
途中上空から地上の様子を見ていたが現在魔王国城下町から港町ウエストへ続く街道の工事を進めている。
流石に工事開始から三週間ではまだ街道は出来上がっていないが工事の信仰は順調みたいだ。
しかし……今度の港町ウエストの開発や街道工事等で結構資金がかかり、これには私も太助も頭が痛い。
おまけに隣国であるエルフ国からの要請でエルフ国の国境付近まで街道を敷いてくれという始末。
結局これらの資金に関しては官僚長であるファブリーズからの提案で我が国の税金を三パーセントアップする事になってしまった。
私と太助も税金を上げる事には難色を示したがファブリーズから現状を散々気化されて結局折れた。
やはりファブリーズのように非情な決断が出来る官僚の存在が不可欠なのを思い知らされた。
「うわぁ、結構開発が進んでるみたいだねヒカルちゃん」
「うん!堤防とかの施設の建造も進んでるみたいだしね」
これが私と太助が港町ウエストの現状を見た感想。
思ったよりも開発が進んでいて既に数百名の国民が住み着いている。
またファブリーズの提案で海の津波を防ぐ堤防や核施設の建設も進んでおり既に関所も港町ウエストに駐屯している義勇兵により機能している。
この辺はファブリーズの裁定の良さが出ている印象だ。
「ん?太助、あれは」
「あれは船だよ。海の上を移動する乗り物だよ」
なんと、船とかの海を移動する乗り物まで建造中とは。
ちなみにこれを考案して造船を指示したのはほかならぬファブリーズ。
本当に彼女って先を考えているわね。
これには太助も関心してるみたい。
「どうです魔王様に宰相様。やはり海と言えば船だと思いまして造船指示をしておきました。船に関しては書物で知ってましたので」
「凄いねファブリーズさん。船を作ろうと考えるなんて恐れ入るよ」
「ありがとうございます宰相様。あれ?魔王様」
今、私は海の方を見ていた。
この海の向こう側には何があるのだろうか。
もしかして別の大陸でもあるのか?
「太助、今は近隣の海しか行けないと思うけど……いつか、この海の向こう側へ行けたらなって思うの」
「案外別の大陸があって別の種族が文明を築いているのかもね」
「そう思うと……夢があるなぁ海って」
そう、いつか行ってみたいな。
あの海の向こう側へ。
もし、私の時代でなくても……次の世代の誰かがあの海の向こう側へ行って欲しいものだ。
「――――魔王様、村の者が海の魚をご馳走したいと」
「そう!今行くわ」
「うっはぁ!海の魚かぁ」
あら~っ。
太助ったらあんなにはしゃいでからに。
「うおおおおおおっ、秋刀魚に鮪、それにタコやイカまで」
「……太助、魚の刺身とかは川魚で食べた事あるけど、あの奇怪生物食べられるの?」
テーブルに並べられた数々の海の海産物。
太助は本当に美味しそうにしてるけど……私としては焼き魚と刺身はともかく、あの不気味生物はちょっと。
「うん!書物通り食べられますね、このタコとイカは」
「――――食わず嫌いは考え物です。これは珍味です」
「えっ?クロ、ファブリーズ!」
クロ!ファブリーズ!!
それ本当に大丈夫なの?
太助に至ってはもう満点の笑顔で食べてるわ。
私はタコの足を焼いたのを手にしていた。
不安だな。
「ヒカルちゃん、何をしてるの!さぁ騙されたと思って……ほら!」
「ええぃ、ままよ!」
私は……意を決して食べた。
!?美味いじゃない。
これは確かに美味しい。
これが海の味か。
私は気が付けば海の料理に無我夢中になっていた。
本当に大満足だ。
それから、暫くの間ファブリーズと太助が今後の開発計画を語り合っている最中、私は一人渚にたたずんでいた。
「世界が広がるって……結構面白いものね」
もうすぐ日が沈む。
とりあえず今夜はこの港町で泊まる予定である。
こうゆう時は……一人よりも二人のほうが。
嫌ね、柄にもない事を。
「ヒカルちゃん」
「えっ、太助」
あれ?
いつの間に太助が。
それから私達は黙って沈む夕日を一緒に見ていた。
「いつまでもこうしていられたらいいね」
「そ、そうね」
太助は……私にこれは綺麗な指輪を見せた。
「これはロイドさん……ルルとララのご主人に作ってもらったものなんだ」
「えっ!あのロイドが指輪を?」
ルルとララのご主人であるロイド。
彼は我が国で有数の鍛冶師で彼の作る武器防具は国宝品レベルに優秀な品を作れる職人である。
そんな魔王国で有名な人がどうして指輪を?
「これには祝福の宝石が埋め込まれていて……身に着けていると神の祝福があるらしいよ」
「それを私に?」
太助は少しの間黙り込んで……それから私にこう告げた。
「ヒカルちゃん、僕と結婚しよう」
「!?」
えっ、ええええええええええええええええええええええっ!
けっけっけっ結婚!
確かに私って太助の事好きだけど結婚とはね。
「この国では僕達ぐらいの年齢で結婚でしょう。だから……僕はヒカルちゃんと結婚したいんだ」
私は……一瞬頭の中がフリーズした。
けど、私はすぐに気持ちを立て直す。
勿論この返事はこうだ!
「うん!結婚しよう。これからも私の傍にいてね」
「ヒカルちゃん」
私と太助は沈む夕日を背景に互いにキスをした。
これは私と太助が夫婦になる誓いの口づけだ。
それから私は太助に結婚指輪を薬指につけてもらった。
その後、私と太助は一緒に月を見ていた。
これからの二人の未来を信じて。
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