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第一幕 二人の出会い・そしてすべての始まり
その十一 決戦始まる
しおりを挟むその群栄は約五万ぐらいか。
いずれもその軍勢の男達の目は虚ろで生気がない。
彼等はただ錆びついた剣を握りしめ、ただ主の操り人形の如く我が国・魔王国へ侵攻してくる。
その様子を一人の黒装束の諜報員が離れた場所から見ていた。
諜報員はその手にリンクミラーを握り占めリンクミラーへ話しかける。
「総大将、敵はわが国の国境を越えました」
そのリンクミラーによる連絡を受けた人物。
彼女は義勇兵ギルドのギルドマスターの一人にしてこの戦いにおける総大将の一人ルル。
「では皆様、手筈通りに」
その間にも操り人形の男達は国境を越えて我が国へ侵攻してきた。
後一時間ぐらいでこの虚ろな軍勢は城下町の城壁まで到達するだろう。
その時!闇夜の大空から数匹のワイバーンが飛来してきた。
「各員作戦開始!私に続きなさい」
そのワイバーンの群れの先頭のワイバーンにはルルが乗っている!
無論、他のワイバーンには各々義勇兵が搭乗している。
そしてワイバーンに乗っているルルがワイバーン部隊へ攻撃開始の号令を発する!
ワイバーンは構わず進撃する男達の上空へ。
途中、男達の中にいた魔導士達が上空を飛ぶワイバーンへ火炎攻撃!
「総員一時回避!そして……その直後に攻撃開始」
ルルの部隊指揮は迅速であった。
襲い来る火炎攻撃にワイバーン部隊は素早く回避して対処する。
「今だ!トリモチ投下」
ルルの号令と共にワイバーンに乗っていた義勇兵は予め用意していた袋を地上にいる男達へ投下!
落下した袋は男達に命中して破裂!
中から何やら液体が出てきた。
すると……その液体は粘着性のある液体へ変化……地上にいた男達はそのまま動けず行動不能になった。
「流石は宰相様が用意したトリモチ。これなら誰も殺さずに取り押さえられますわ」
そこへルルのリンクミラーから着信音が。
「あっ、ララ!そっちはどう?」
(こっちも大成功よ。流石は宰相様、これなら操られている人達を無力化できるわ。それからパンジー様の部隊も同じく成功したそうよ)
「では作戦通り暫く待機ね。そして……魔王様と宰相様があれを執行した後は……」
(後は魔法でトリモチを除去して順次、奴隷の首輪の取り外し作業の開始ね)
実は操り人形の軍勢は三部隊に分かれていたので、それぞれ義勇兵を三部隊に分けていたのだ。
そして、それぞれの部隊をルル、ララ、パンジーを大将にして迎え撃っていたのだ。
勿論、ララとパンジーの部隊もあの奴隷部隊も同様の手段で無力化に成功している訳だが。
それにしても……本当に太助ってこうゆう悪知恵の回る事!
正直私達魔族だけだったら話にならなかったわ。
さ~て、その頃逆賊クリームはというと?
「はっはっはっ!今頃あのクソガキ魔王城で怯えているだろうな」
ウエスト山脈の麓で陣を取り数名の強そうな奴隷を囲んでいて自分は勝利を確信して赤ワインを飲んでるわ。
本当にほえ面言う事になるのはどっちかしら?
「大体仙台魔王は何故に私ではなくあのクソガキ女を魔王に選んだのだ?私こそが本当の魔王に相応しいのに!」
決まってるじゃないの!
単純に貴方は私より弱いからよ。
そうこうしている間にクロームの陣の周囲には……私と太助が数百名の牛兵魔導士と諜報員を引き連れて完全に包囲したわよ。
「それじゃあ……皆様お願いします」
太助の号令で魔導士達はそれぞれ所定の場所へ。
そして万が一に備えて諜報員達がその護衛を担当。
「皆、所定の場所についたみたいね。太助!」
「総員詠唱開始!今こそ僕達の国民を取り戻すぞ」
太助が合図を出す。
そして、この場にいる魔導士の詠唱が始まった!
やがてクロームの陣に巨大な魔法陣が。
リンクダウン!
魔導士の詠唱完了と共に魔法陣は光り輝く!
流石に陣の中央にいたクロームもこの異変には気づいたようで。
「!?な、一体何が起こった」
それと同時にわが国へ攻め込んでいた奴隷達のトリモチに対する抵抗がなくなった。
まるで操り人形の糸が切れたように。
これを見たルルは待機していた義勇兵に命じる!
「今だ、すぐに中和剤でトリモチを撤去!その後速やかに男達に着けられた奴隷の首輪を順次撤去せよ」
ルルの命令に従い地上で待機していた義勇兵兵士達は予め用意していたトリモチの中和剤の入った袋を動かなくなった男達へ浴びせる。
するとトリモチは消えていき……その直後に義勇兵兵士達が男達へ駆け寄る。
そして男達に付いていた奴隷の首輪を力技で次々と引きちぎる!
「やはり古物書に記されていた通り魔力を断たれた奴隷の首輪は物理で引きちぎれるのですね」
そして奴隷の首輪を外された男達は義勇兵のモンクや魔導士により治療の為に搬送されていく。
男達を取り戻した義勇兵の女性達の表情は本当に明るい。
そこへルルのリンクミラーからまた着信音。
「あっララ!」
(そちらはどう?)
「作戦は大成功よ!そちらはどうかしら?」
(こちらも現在あの首輪を外した人達を保護している最中よ。パンジー様も同様だって)
「そう、本当にあの宰相様は凄いわね。まさかここまで上手くいくなんて」
よしよし!
これであのクズを始末するのに遠慮はいらないわね!
さ~て、貴方が頼りにしていた人質部隊は完全に無力化よ。
では、再び逆賊クリームの陣の様子を見てみますか。
「おい!どうした、さっさと立ち上げれ」
おやおや!
私達が仕掛けた魔法で自分の傍に置いていた屈強な奴隷達もその影響で操り人形の糸が切れたみたい。
これで、もう残るは貴方一人よ!
「!?何奴」
さ~て、其の前に倒れている男達の回収を忘れずに!
流石は我が国が誇る諜報員。
さっさとクロームの傍にいる男達の回収を済ませちゃった💛
「なっ……これは」
「どう?全ての操り人形に見放された感想は?」
「き、貴様―――っ!」
はい、ここで主人公にして魔王国の魔王ヒカル・グレーズのご入場よ。
「ば、バカな!私の親愛なる兵がいなくなるなんて」
「兵だって?笑わせるんじゃないわよ。貴方は誰かの自由を奪わないといけない……独りぼっちよ」
「何を言う!私こそが真の魔王だっ!クソガキが出る幕はないわっ。それに貴様には私のような知略を講じる能力がないではないか!」
よく吠えるバカね。
「確かに私は何か策を講じる頭はないわ。だけど……私には私を信じてくれる国民と友達の太助がいる!」
「太助?なんだそいつは」
「もう一度言うわ、太助は私の対等の友達よ!そして友達がいない貴方なんか……私の敵ではないわ!」
その時、私のリンクミラーから着信音。
応答するとそれは太助からだ。
(ヒカルちゃん、僕と魔導士達や諜報員達の避難は完了したよ……だから思いっきりぶっ飛ばしちゃってよ!)
「オーケー!」
さ~て、そろそろこのバカへのお仕置きの時間よ。
このオッサンどう調理してやろうかしら?
「己~っ!私もクローム将軍と呼ばれた男、お前のような小娘に遅れは取らん!」
「さぁオッサン、これから魔王様が直々にお仕置きしてあげる💛」
いよいよこの内乱も大詰め!
果たして、この世紀の対決の結末は?
まぁ、当然勝つのは私だけどね💛
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