太助と魔王

温水康弘

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第一幕 二人の出会い・そしてすべての始まり

その十 決戦前夜

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 あれから太助は何やr庵路と動いているみたいだ。
 私が見かけて話しかけても全く相手にしないし、顔も何処か怖い。
 クローム将軍がわが国を攻めてくるまで後二日。

「本当にどうしたらいいの?」

 現在城下町はそのクローム将軍が攻めてくる事で話題になっている。
 流石に行方不明になっていた男達がクローム将軍の奴隷にされている事はパニックになるので公表していないが、いざ戦いになったら我が国の義勇兵は戦えないだろう。
 
「太助?」

 私は太助の書斎を訪ねたが肝心の太助はいない。
 しかも私が半日前に置いておいたお弁当も食べていない様子だ。
 昨日からこんな調子である。
 私も色々とどうすればいいのか考えてるが妙案が思いつかない。

 そんな中、太助は一人城の外に出ていた。
 太助もクローム将軍に操られている国民達をどうやって解放するか悩んでいた。

「はぁ、あのクズぶっ飛ばすにはどうすればいいんだ」

 暫く太助は一人で悩んでいた。
 それは私と同じか。
 だけど……そんな時だった。

「―――宰相様」
「!?クロじゃないか」

 悩める太助の前にクロの姿が。
 意識はあるみたいだが、まだ万全ではないのか動きがぎこちない。
 太助は……そんなクロに奴隷の首輪に関して知ってる事はないかと問いかける。
 するとクロはこう答えた。

「―――奴隷の首輪ですか。あれは主の魔力で首輪をつけた人の意思を奪い操り人形にする代物ですからね」
「操り人形?」
「―――要は魔王様がスケルトンやアーマーナイトを操るのと同じ要領を生きた人間でやってるようなものです」
「クロ!例えば……スケルトンと術者とのリンクを断つ事は可能か?」
「―――確か周囲の魔力を遮断する魔法・リンクダウンという魔法があります」
「リンクダウン?」
「―――これさえあればスケルトンは命令を受け入れられなくなり動けなくなります。ただ、これを行使するには術者を上回る能力を持った魔導士の力が必要です」

 それから少しの間、太助は黙っていた。
 そして……太助は二やりと笑いクロを抱きしめて感謝の言葉を!

¥ありがとう!勝てる、これなら勝てるぞ!!」
「―――さ、宰相様」

 そこへ私が通りかかる訳ですが。

「あれ?太助ったら何をやってるの」
「あっ、ヒカルちゃん」
「ズルい!私も抱き着く」

 私は太助とクロに抱き着いた。
 そして太助の表情が明るい事に気づいた。



 それから次の日、クローム将軍が攻めてくるのは明日。
 魔王城には私と太助、それにパンジーとルル&ナナ……それに数名の官僚達が大会議室に集まっていた。




「まずはヒカルちゃん……魔王ヒカル・グレーズから、お言葉があるよ」

 私はこの場にいる全員に明日攻めてくるクローム将軍に対して徹底抗戦を告げた。

「諸君!今度の我が国の国民に対する集団行方府警……いや集団拉致の首謀者である逆賊クローム将軍がその拉致した人々を奴隷にして我が国に攻めてくる」

 もう後には引けない。
 この場にいる幹部全員へ私の意思をぶちまけてやる。

「卑劣なクロームは拉致した国民達をあろう事か奴隷として自分の私利私欲の為に兵士に仕立て上げた」

 私の演説に太助を始めとする幹部達は黙って聞いている。

「しかし!我が宰相の太助は奴隷にされた国民を救いつつ逆賊クロームに鉄槌を与える策を講じてくれた……勝利は我ら魔億国にある!」

 この直後、大会議室中に大歓声が。
 拉致された男達を取り戻したいのは水面同じなのだ。

「では、作戦の詳細は宰相の太助が伝える。太助お願い」

 それから今度は太助が皆に作戦の詳細を。
 太助は大会議室のテーブルに魔王国周辺の地図を広げた。

「先程、諜報員から連絡が来た。現在逆賊クロームはここ……ウエスト山脈の麓に陣取っている」

 それから太助の話は続く。

「恐らく明日未明頃にここから助けるべき奴隷達にわが国を襲わせるつもりだ。そこで……」

 太助はまずルルとララに攻めてきた奴隷達に対する対処法を。
 具体的には可能な限り保護対象でもある男達への足止めだ。
 更に太助はルルとナナにある事をお願いするが……それは国家機密だから教えないよ。

「そして今回は僕が自ら魔導士と諜報員による特殊部隊を編成して指揮をとるよ。特に魔導士部隊には一番重要な役割があるからね」

 今回の戦いの肝は太助が直々に指揮する魔導士部隊。
 それと魔導士達の護衛として諜報員の精鋭達も重要な存在だ。
 
「そして……ヒカルちゃん」
「な~に!」
「今回はヒカルちゃんの出撃を許可するよ。バカな逆賊には最強の最終兵器をぶつけてやる!」

 ふっふっふっ!
 そうかぁ、私も舵板がある訳ね。

「最後に官僚の皆様は……敵味方問わず負傷者の保護をお願い。更に戦闘後の後始末もお願いします」
「「「はい!」」」

 これで戦う前の最終打ち合わせは終わり。
 後は敵の動向次第で臨機応変に動く事になるかな。
 そrから二時間後、城の大広間に今回の戦いに参加する義勇兵達が終結していた。
 無論、この義勇兵達の将はギルドマスターであるルルとララ。
 ルルとナナ、義勇兵の指揮は頼んだわよ!
 そして、私と太助はそんな義勇兵の前に立った。

「諸君!水面知ってるだろうが貴方達の大切な男達を拉致した逆賊クロームが男達を奴隷にして攻めてくる!」

 私はこの上ない大声で集まってくれた義勇兵達に演説を!

「だが、我が国にはそんな男達を救う術は、ここにいる宰相・百合太助が考案済みだ。だから諸君恐れる事はない!今こそ部ばわれた者達を取り戻そうではないか!」

 私はこの右腕を振り上げて……最後の一言を!

「行くぞ!今こそ奪われた愛する男達をこの手に取り戻せ!この魔王ヒカル・グレーズについてこい!」

 その直後、終結していた全ての義勇兵達は雄叫びを上げて喚起する!

「私達の夫と恋人を取り戻せ!」
「逆賊クロームを殺せ!」
「魔王ヒカル・グレーズ万歳!」

 城中に響き渡る義勇兵達による大韓機!
 いける!
 この士気ならいける!
 そこへ太助が私に話しかける。

「やっぱり人望あるじゃないか」
「太助」
「これだけの人達がヒカルちゃんと好き好んで戦ってくれるんだよ」
「へへ~っ!」
「それに比べて奴は……あれは魔王の器じゃないよ」

 そんな時、私と多久家の元へクロが現れた。

「クロ!もう大丈夫なの?」
「―――魔王様、敵に動きがありました」
「えっ?」
「―――敵は三手に分かれて我が国へ進撃を開始しました。なお逆賊クリームはウエスト山脈の陣から動いておりません」
「ようし、すぐにそれをルルとナナに伝えて」
「―――御意」

 するとクロは煙のように姿を消した。

「ヒカルちゃん、出陣の号令を」
「うん!」

 私は義勇兵達に対して「僧院出陣せよ!」と号令を出した!
 いよいよ戦いが始まる。
 魔王就任からの最大の問題を片付ける時が来た。
 今こそ全ての国民を取り戻す!



「太助……私に力を貸して!」




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