太助と魔王

温水康弘

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第一幕 二人の出会い・そしてすべての始まり

その八 魔法装備を作ろう!そして太助のリンクミラー

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 義勇兵パレードから数日が経過した。
 あれから太助は毎晩一緒に寝てくれる。
 流石にまだエッチを求めてはくれないが一緒に添い寝するだけでも心地いいものだ。
 国の公務については義勇兵パレードが思わぬ大成功により意外と出店の収入とかでガッポリだ。
 これには太助も素直に喜んでたな。
 もっともここ数日はパレードの後始末として太助はギルドマスターであるルルとララと一緒に税務整理に忙しかった様子。
 私も私でルルとララに頼まれて義勇兵魔導士の修練を手助けする毎日。
 確かに魔導士個人個人の能力が今一つだったのが課題の一つだったので私的に魔導士を鍛錬させてみた。

「いい!超火炎魔法はできる限り魔力を集中させるのが肝心よ!」
「「「はい魔王様!」」」

 最高位魔法は原則魔力を集中して圧縮してから一気に解き放つのが極意だ。
 これは私が幼い時に魔法の師匠から教わった事だ。
 おかげで私は魔王国で最強の孫座になれたのだ。
 そういえば師匠は私が魔王になった後で旅に出たみたいだけど今何処にいるのだろうか。
 もし、ここにいたなら太助に魔法を教えてあげて欲しいと頼むのだが。
 そして気が付けば義勇兵魔導士達はメキメキと実力をつけてきた。
 現に魔導士のほぼ全員が基本的な最高位魔法を習得できたのだから。

 それから今日の修練を終えて私は一息をつく。
 もう夕方か。
 そこへ太助が私の前へ。

「お疲れ様。少し見学してたけど魔導士の修練は順調みたいだね」
「うん!結構皆頑張ってるよ」

 それから私と太助は魔王城への帰り道。
 少し中身のない会話をしながら今後の事を語り合う。

「魔導士はヒカルちゃんが教えてるから問題なさそうだけど……やっぱり戦士の装備が問題かな」
「戦士達に関しては技量事態は現状でも問題ないから猶更装備が問題ね」

 この前の義勇兵パレードで判明した義勇兵の問題点。
 戦士の装備絡みと魔導士の熟練不足。
 魔導士に関しては私が最上級魔法を教えてるからあまり問題がないがやはり戦士の装備が厄介だ。

「やはり鋼では我が国の戦士の技量に耐えられないのが致命的ね」
「いっそモンクみたいに素手で戦う戦士に育成する?」
「モンクなら義勇兵の戦士の中に数百名程いるけど……彼等は原則治癒魔法を使うのが主で素手で戦うのはあくまで防衛目的だしね」
「なら猶更装備品を充実させないといけないね」

 やっぱり義勇兵が使えるそれなりに強力な装備品が必要だ。
 これには私も太助も頭が痛い。

「資金とかの現実を考えるとやはりミスリルかな?あれなら鋼よりも堅いし軽い上に魔法付与にも耐えられるし」
「ミスリル?」
「幸い我が国はミスリルが豊富にあるわ。ただ……ひとつ問題があるの」
「問題?」
「ほら、わが国って現在大人の男が殆ど行方不明でしょ。だからミスリルを加工できる職人が著しく不足してるのよ」
「あぁ、ここでその問題か」
「だから今残ってる職人だけではとてもじゃないけどミスリルの加工が難しいのよ」

 本当にこうゆう時は大人の男がいないと面倒だ。
 折角ミスリルそのものは豊富にあるのに!
 肝心の職人が足りないのは致命的だよ。

「……」
「どうしたの太助?」
「なら……僕に考えがあるよ。もし上手くいったら職人は今いる数だけでなんとかなるかも知れない”」

 太助が思いついた手段。
 それは魔力で運用するオートメーション工場を作るという事だった。

「つまり……鍛冶師に頼んで魔力で動く全自動の武具の部品装置を作るんだ」
「えっ?」
「そして全自動で武装の部品を工場で作成して最後の仕上げと調整を鍛冶師の手で行うんだ」
「えええっ」
「そうすれば少ない鍛冶師の人数でも大量の武具が作成できるよ」

 はは……正直こんな事思いつくなんて。
 太助ってやっぱり頭がいいな!
 そうなると善は急げ!
 私と太助は早速鍛冶屋ギルドへ。
 すぐにそのオートメーション作成機械を作ってもらおう!



 それから一週間後。




 いやはや我が国の鍛冶師達は女子供だけでも優秀な事で。
 なんと機械の設計を二日で終えて更に三日でその機械装置を二十台程完成させてしまった。
 そして残る二日で工場に設置してテスト運電をしてしまった。

「え?もう出来ちゃったの?」
「ハッハッハッ!我が国の鍛冶師ギルドの底力を思い知ったか!」

 工場完成の報告を受けた私と太助は工場へ。
 これには流石の太助も唖然としていたな。
 では早速私と太助は工場の中へ。

「うわぁ、もう動いてるんだ」
「そりゃそうよ。ここは剣を作ってるエリアね」

 そこには次々とオートメーションにより剣の部品が自動的に作られていく。
 長い刃に握りて、それに鞘まで自動的に製作されていく。
 そして出来上がった部品を職人や鍛冶師が組み立ててから最後の刃の研ぎ作業を行っている。
 更に最後の仕上げとして魔導士により魔法付与が行われて量産型の魔剣が次々と出来上がりとなる。

「ほほう、これはいい魔剣ね」

 私は出来上がった魔剣のサンプルを手にして結構いい出来だと感じる。
 そこへ鍛冶師の一人が私の元へ。

「どうですか魔王様。ミスリル製の魔剣でございます。念じて一振りすれば炎が発する火炎剣にもなります」

 うわぁ。
 こんなのが量産品?
 しかも鍛冶師曰くこれを一日五百本は作成可能だという。
 単純計算で約四十日ぐらいで魔剣を全義勇兵兵士に支給する事ができる!
 実際はお休みとかも考慮しても約二か月で全義勇兵に行き渡る!
 普通ミスリルの剣作るのに一日三十本が限界なのを巻上げるとこれはすごい効率だ。

「どうやら上手くいったみたいだね」
「太助!これは凄いよ。これなら早く義勇兵に魔剣や魔法防具を支給させられるわ」

 私は太助に抱き着いてキス!
 もう感激だわ。

「太助!試しに私がこの魔剣試していい?」
「そうだね、僕もできた魔剣の性能が知りたいし」

 そして私と太助は工場にある空き地へ。
 空き地には私達二人の他に工場の責任者が立ち会っている。

「魔王様!くれぐれも加減してお願いします。流石に量産型魔剣では魔王様の能力に耐えられませんから」

 確かにそうね。
 これは義勇兵の兵士の為に作られた量産型魔剣。
 私ぐらいの能力だと耐えられずに壊してしまいそうだ。

「では……試しに切れ味を!」

 私は魔剣を手にして予め設置していたオリハルコンの塊へ切りつけた!
 すると、オリハルコンの塊はあっさりと真っ二つ!
 これは凄いわぁ。
 一応手加減して剣を振ったのだがここまでの切れ味とは。
 流石はミスリルにわが国が誇る鍛冶師や職人の努力の賜物だ。

「確か、この魔剣って魔力を込めたら火炎が出るのよね」
「あっ駄目だよヒカルちゃん」
「えっ?」
「ヒカルちゃんがやったら多分魔力が強すぎて剣が壊れるよ。ここは他の人にやらせたほうがいいよ」
「じゃあ太助がやってみる?」

 という訳で魔剣を太助に手渡した。
 だけど人間である太助にあの魔剣を扱えるかな?

「結構軽いんだね。僕でも片手で持てるな」
「あまり振り回さないでね。これでも凄い切れ味だから」
「じゃあ……そろそろいくよ」

 太助は剣を構えて念を込める。
 すると剣の刃から炎が宿る。
 そして、太助は剣を振り下ろす!
 すると剣の炎は剣から離れて飛んでいき数メートル先で大爆発!

「うわぁ!これは……」
「まぁ、太助ならこんなものね。どう?量産型とはいえ魔剣を扱った感想は」
「はは……確かにすごいね。だけど僕には扱えそうにないや」

 とにかく、これで魔剣の性能テストかおしまい。
 これには私も大満足だ。
 流石に全ての義勇兵達の手に渡るのは約二か月ぐらい後だがこれで義勇兵の装備のメドがついた。
 それから私と太助は他の工場も見学。
 こちらも生産体制は順調みたいだ。
 
「それにしても……これだけの工場をたった一週間で作ったなんて魔族ってとんでもないね」
「やると決めたら素早くやるのが魔族だからね。まぁ何もしてない時はのんびりだけど」
「大人の男性がいないのに……もう呆れたとしか言いようがないよ」

 それから工場の視察を終えた私と太助は工場を出て帰る事に。
 その帰り道の途中で私はある事を思い出した!

「あっ、そうだ」
「何?」
「実は足助に渡したいものがあったのよ」

 私は太助に緑色の手鏡を手渡した。

「ヒカルちゃん。これって」
「うん!太助の為に用意したリンクミラーだよ」

 実は義勇兵パレードの次の日に私はリンクミラーの職人を訪ねて太助のリンクミラー製作を依頼してたの。
 そして一昨日ようやく完成して受け取ってたけど昨日は色々あって手渡せなかったのよね。

「ありがとう!」
「操作方法は今夜教えてあげるからね。それから既に私とルルとララ、それにパンジーのリンクミラーと同期済みだからね」
「じゃあヒカルちゃんとはこれで連絡が取れるんだね」
「そうだよ。これからは離れていても連絡が取れるからね」

 太助は私から貰ったリンクミラーが気に入ったらしく、あれから色々といじっているみたい。
 私は寝室のベットで太助にリンクミラーに関する操作方法を教えてあげた。

「へぇ、通話の他に時計とかコンパス、それに地図まで。これはスマホだね」
「スマホ?」
「僕のいた世界にもこのリンクミラーと同じようなものがあったんだ。それがスマホなんだ」
「そうなんだ」

 太助のいた世界か。
 そういえば太助は全身傷だらけで私に召喚されたっけ。
 思えばどうして太助はあんな事になっていたのかな。
 時々それを太助に効こうとすると黙ったままだし。
 だけど……いつかは話して欲しいな。

 この日は太助と夜遅くまでリンクミラーの事を聞かれてばかりであった。
 そして気が付けば私達は手を取り合ってベットの上で眠っていた。
 楽しい一時はすぐに終わるものだ。




 そして明日も魔王として忙しくなる。
 その当たり前がいつまでも続くといいな。


 



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